「それじゃ、情報を纏めようか」
一難去って、状況もようやく落ち着き、六課に帰ってきた俺たちは、休みをと言いたかったのだが、流石にそれをやるには状況が許されなかったため、会議室に集まっていた。
普段と違うとしたら、司会がはやてではなくて、クロードということだろうか。
「情報ってあれか、クロードとティファちゃんとの関係か?」
「ばっ!?ちが……」
「ほう」
違うと言いかけたクロードだったが、はやてにつかまってしまった。ざまぁ。
「ちがっ……紅莉てめぇっ!」
「ティファちゃんからクロードさんはどうしてますかって、よく聞かれるもんでなぁ」
「ちょっと、あっちで話そうか」
「ふふふ、今宵のレヴァンティンは血に飢えている」
「アイゼンの頑固汚れにしてやんよ」
「あらら、うふふ……」
おぉ、怖い怖い。
「ぎゃぁぁぁっ!?」
別の部屋からクロードの叫び声が聞こえるが、叫べるだけの元気があれば問題はないだろう。
「ねぇ、紅莉君。そのティファちゃんって?」
「ん?ベルカ地区で出会った、御歳10歳の可愛い子だよ」
黒髪が綺麗な子で、将来は絶対に美人になるなあれ。あと、予感だがシグナムを超える巨乳になると思う。
「いやぁ、すまんすまん。司会が使いもんにならなくなったし、私がやるわ」
艶々した笑顔で戻ってきた八神家に誰も何も言わない。なれたもんだな。
「それじゃ、怪我人も出ている、ティアナ達の話から聞こうか」
「はい」
はやてに指名されたティアナ嬢が綺麗な姿勢で立ちあがる。
「まずは、この映像を見てください」
ティアナ嬢が照らし出した映像には、金髪のポニテの子がヴィータをボコっている映像だった。
「おい、ティアナ!」
「あ、間違え……てませんね」
ヴィータが顔を赤くして、ティアナ嬢の名を叫んでいるが、彼女も図太くなったのか、華麗にスルーしている。
「恐らく、敵対勢力……戦闘機人だと思われるのですが、彼女が展開するこの光の衣とでも言うべきでしょうか、これが使われている間はですね、魔法が一切効きませんでした。それどころか、ヴィータ副隊長の物理的な攻撃もその大半は無効化していた感じです」
「へぇ。けど、映像だとまだギンガちゃんは健在のようだし、連れ去られるような状況には見えんが?」
確かに、敵が優位に戦ってはいるのだが、それを抜きにしてもギンガちゃんを連れされるだけの優位とは言えない。
「あ、それはですね、えっと……これです」
早送りにした映像を目的の所で止めたティアナ嬢が映し出したのを注意深く見ると、ギンガちゃんが勝手に倒れた。ついでとばかりにスバルちゃんも。
よくよく見れば、戦闘機人の子が何やらスイッチみたいなものを持ち出しているな。
「これで、なんでスバルちゃんが怪我したんだ?」
「あ、スバルも連れ去ろうとしていたんですが、その時に落盤がありまして、それに潰されました」
「……よく、生きていたな」
「丈夫が取り柄ですからね」
いやいや、それは行き過ぎだろ。まぁ、それで生きているし、怪我も軽いものだったからいいのか?
「それじゃ、次は六課にいこか」
「それでは、私が説明します」
ティアナ嬢が着席をしたのを確認したはやてが次の議題を出すと、今度はリニスが立ちあがった。
「六課にやってきた戦闘機人は全員、撃退はしました」
「みたいやな。まぁ、拘束しといて逃げられたんはちと痛いが、まぁ、人的被害はなかったしよしとしとこうか」
「はい、それについては大変申し訳ありません」
「んじゃ、ヴィヴィオとチンクが連れ去られたってのは?」
「はい。犯人はアイナさんです」
「アイナさんって寮母をしてくれたいた彼女だよな?」
「はい。どうやら、スカリエッティと繋がっていたようで、あの時のごたごたを用いた連れ去ったようです」
「なるほどなぁ。てか、ヴィヴィオを必要としとる理由が話からんな」
「チンクもな」
「スカリエッティでないので何とも。ただ、あの子はある人物のクローンなので、可能性だけなら」
リニスがさらっと落とした爆弾に一同が驚きの視線を送る。
「いやん、見つめないでください。照れます」
「真顔で言うな、バカたれ」
「すいません」
せめてそこは、顔を赤らめるべきだ。
「紅莉、リニスになんてことをしているの!」
ここでボケたリニスに対して、フェイトが憤慨する。知らんよ。俺は何もしてない。
「紅莉のせいですよ」
「濡れ衣だ。自分を確り持っていれば、染まらん」
「染まりますよ。紅莉筋もとい、紅莉菌を甘く見ないでください」
「人を病原菌のように言いおってからに」
「はやても似たようなものだからなー」
「死体は喋らんで?」
「さーせん!」
避けないことを言ったクロードだったが、速攻で黙らされて死体に戻った。
「んで、ヴィヴィオが誰かのクローンというのは?」
「恐らくですが、あの子は聖王オリヴィエのクローンかと。前に聖王教会から依頼された聖遺物の解析時に付着していた細胞と一致しましたし」
「なるほど」
「思い出した!」
そこで、今まで死体だったクロードが立ち上がる。
「さっきの戦闘機人の子の」
「また、浮気か?ええ加減にせいよ?」
「違うから!シリアスな場面を壊すな!」
「うっ、すまん」
嫉妬深すぎだろ。まぁ、そうしなければしそうだしなぁ、こいつの場合。
「さっきの戦闘機人の子が纏っていた、虹色の光だけど、あれって聖王の鎧かもしれない」
「なんじゃそれ」
「俺も詳しくは知らないけど、なんでもあらゆる災厄から身を守るとか何とか」
「ふ~ん」
それで、魔法や攻撃から身を守ったということか?つーことは、攻撃が効かないと言うことか?」
「いや、お前は相手をするなよ?殺しちまう」
「失敬な、相手が殺意を放ってなければ殺さんよ。手加減が効く相手ならば、問題はないしな」
「参考までに、効かない相手は?」
「お前のフルドライブクラス」
「いねーよ!」
世界は広いんだぞ?いるかも知れんぞ。まぁ、クロードの実力も年々上がってきているから、フルドライブされたら、流石に身体強化魔法使わんと追いつけんけど。
「はいはい、脳筋は放っておいて、話の続きいくで」
「こいつと一緒にしないでくれ」
「俺の台詞だ!」
「はいはい、本気で時間もったいないから次にいくで」
そういって、華麗にスルーするはやて。その内、お仕置きすんぞ……ダメだ、何故か喜びそうだ。
「私はMやないで!」
スパコーンとハリセンで叩かれた。口に出していたか?
「ゴホンッ。んで、次は紅莉君かな?」
わざとらしい咳払いをしてから、話を振られてたので頷く。俺は、皆と違って立たないけどな。
「とはいっても、俺がやったことなんて、ボスと会ってから、戦闘機人とバトってただけだがな」
「ボスってレジアス中将か?」
「なんで、おっさんがボスなんだよ。あれはおっさんだ」
「じゃあ、誰なんや」
「元首都防衛部隊ゼスト隊のボス、ゼスト・グランカイツだよ」
「師匠が生きていたのか!?」
「ああ。俺も驚いたさ。あ、後でクイントさんにメガーヌさんともども生きているって連絡入れなきゃ」
喜ぶだろうな、クイントさん。
「ちょいまち。ゼストさんがスカリエッティに協力しとるっちゅーことか?」
「どうだろうなぁ?協力っつーよりも、お互いを利用している間柄ってところか?そこは、カダージュ一味も一緒らしいが」
「ぽんぽん、新情報出すな!混乱しそうや!」
「すまんな」
「んで、まずはゼストさんや。スカリエッティと協力してるっちゅーんは?」
「なんでも、メガーヌさんが人造魔導師の実験体として使われているらしくてな。レリックで目覚めさせられるとか何とか、眉唾ものだがな。実質人質取られているに近いから、やっているっぽいな」
「なるほどなぁ」
俺の説明に納得を示す一同。何人かは、話を聞いて怒っているようだ。
「ああ、キャロにエリオ」
「「はい」」
「あの召喚師の少女はメガーヌさんの娘だからあまり怪我をさせないでくれよ。そして、出来れば友達になってくれ」
「わかりました。まかせて、お兄ちゃん」
「必ずやり遂げます!」
この二人も六課に来てから随分と逞しくなったものだ。みろ、フェイトがそっと目尻をハンカチでぬぐっているじゃないか。
「んで、次にカダージュ一味って言うのは?」
「そっちは、銀髪連中の総称らしい。カダージュ、ヤズー、ロッズというらしくてな。こっちは、俺とクロードが昔っから追っていた事件のソルジャー計画の成功体らしい」
俺の今の言葉にクロードが敏感に反応する。何だかんだで、恐らくだがこいつもある程度は予測していたんだろうな。
「なんや、そのソルジャー計画って」
「そういや、教えてなかったか。てか、俺に今聞くってことは、クロードからも効いてないか」
「なんか、事件を追っていると聞いとったけど、守秘義務が絡むから詳しくは聞いておらんのよ」
「そういや、そうだな。エア、資料を出してやれ」
《イエス》
エアに指示して、かつて見つけた資料を皆に見せると、それぞれが反応があるが、大半は顔を青くする。
「なんや、これ。人の尊厳どころか、まるでモルモットみたいな」
「そこに関しては、何も言えん。とりあえず、あの連中の狙いはクロードらしい」
「俺?そういや、そんなことを言っていたな。でも、なんで……」
「なんでも、不安定なんだとよ。体の組織の崩壊があるそうでな。完全になるために、お前を取り込みたいらしい」
「うげぇ」
「てか、詳しいな」
「前に、スカリエッティに聞いた」
『……』
「どうした、お前ら?」
『なにぃぃぃぃっ!?』
うるさっ。一体なんだよ。
「いつ会うたんや!?いや、それよりも何で捕まえてないんや!?」
「この前の休日だな。捕まえなかったのは、非番に仕事なんかできっか」
理由を告げるとがっくりと肩を落とす面々。いかんな、悪いことしたかな?
「分かっていたこととはいえ、流石にそれはないわ」
「すまんな。ちなみに、招かれた施設はやっぱりもぬけの殻みたいだ。エアが前にハッキングかけたが、何もないそうだ」
続けて言った言葉に、全員ががっくりと項垂れる。少なくても、俺らに戦いを挑んでいるんだ、そう簡単に捕まるわけがないだろうに。
「そうだ、アリシア」
「どうしたの?」
「バハムートを出すな。一応は、申請は通っていると言っても、あれはやりすぎだ」
「張り切りすぎちゃった。ごめんね、テヘ」
テヘペロじゃねぇっての。そのあとは、細々とした報告が終わり、解散となった。
(……ちゃん。……ちゃんね、きっと……)
彼女が俺に振り向いて、ほほ笑みかけてくる。
(大丈夫、私が……をきちんと守るから……)
俺を安心させようとしているのか、気丈にも笑顔を見せて安心させてこようとする。
(は、私の味方だよね?)
少し悲しそうだけど、それでも俺を信じていると目で訴えかけてくる。
(……ちゃん、大好き)
そう言って、彼女は俺に手を伸ばしてくる。
「うおっ!?」
伸ばされた手が俺に近づいてきた瞬間に跳び起きた。
「なんちゅー、夢を」
汗でぬれた髪を掻き上げながら、自嘲気味につぶやく。
夢を見るほど寝ていたということもそうだが、転生前のことを夢に見るなんて、な。
気持ち悪い汗をシャワーで流してから、鍛錬に向かった。
夢見が悪かったせいなのか知らないが、今一鍛錬に身が入らないな。
「紅莉君!?」
そんな中、なのは達が現れる。どうやら、なのは達の鍛錬の時間になったようだが、様子が少し変だな。
「どうしたの!?」
「どうしたって、鍛錬をしているだけだが?」
「顔が真っ青だよ?」
そういって、フェイトが近づいて鏡を渡してくれると、確かにいつもの血色のいい顔とは客観的に見ても言えないな。
「あー、なんか夢見が悪くてな。それの影響かもしれん」
「それに、よく見ればふらふらじゃん!」
「いや、ふらふらしているのは、幻武を使う影響でだな」
「重心が安定してない時点で説得力無いよ」
「それに、熱だって」
「はっはっは、俺の平熱は39度だから問題はない」
《嘘つかないでください。戦闘時にアドレナリンが分泌して熱が上がりますが、マスターの平熱は、幸い、人間の範疇です》
デバイスに裏切られた。てか、幸いってなんだよ。
「とにかく休んで!」
「とりあえず、日課が終わったらな」
「まだ終わってなかったの!?いつもは、私が来るまでに追加をやっているのに!?」
「起きるのが遅くてだな」
「その時点で、もう普通じゃないよ!」
「大丈夫だって、俺だって人間なんだ。こう言うこともある」
「えいっ」
突如フェイトの声が聞こえたと思ったら、頭に衝撃が走った。
「ぐっ、フェイト……」
「ほら、不意打ちに気がつかないじゃん。お願いだから、もう休んで。ね?」
よくよく見たら、フェイトもなのはも泣きそうな顔をしていた。いかんな、自分の都合でこいつらを泣かせては。
「分かった。すまないが、そうさせてもらう」
そう言って、俺はその場を後にした。
翌日、目覚めすっきりかと思ったら、どうやら2日間意識がなかったそうだ。その間、部屋になのはやらフェイト、リニス達が訪れたらしいが、全く気がつかなかった。
六課を一時放棄して、拠点を移動することになった。新たな拠点は、懐かしのアースらだった。ただし、型としては相当古いはずだったのだが、はやてが借り受けた段階で、リニスとアリシアが魔改造を施しているそうだ。
そして、決戦前ということで隊長陣達が集められた。
『通信で失礼するよ』
「おお、久々だな。今度、飯を食いに行こうぜ」
『体調不良で倒れたと聞いていたが、どうやら元気そうだな』
「あれは、俺もびっくりしたわ』
集められた場所では、遠距離通信なのかクロノの映像が映し出されていた。その隣では、カリムやその他知っている面々だ。
『紅莉、こちらは最悪の状況を考えて、艦隊を宇宙で待機させることに決まった』
「はい?」
『それについては、私が説明しますね』
カリムが話を引き継ぎ、説明をしていく。カリムの予言にあった、聖なる棺というのは、どうやらロストロギアの戦艦だそうで、なんでも宇宙空間から地上を焼き払うといった危険なものだそうだ。
そのため、クロノ達の海の連中は上がりきる前にそれを落とすという方針を取ったそうだ。
『出来れば、僕もやりたくはない。だが、犯罪者一つの命よりも、ミッドに住む住人達のほうが大切だ』
「分かっているさ。10を救うなんて出来っこないからな」
その理想を求める奴もいるだろう。だが、現実は厳しい。そもそもが、俺は9を切り捨てて1を守り通すような奴だからな。
『紅莉』
「あん?」
話が一通り済んだ後、まだ通信を切ってなかったクロノに呼びかけられた。
『いざとなったら、使っても構わないからな』
「使う?」
『レヴと言ったかな?あれだよ』
「……ああ!」
『保持者なのに忘れていたのか』
頭痛がするのか、額を押さえて頭を振るクロノ。使わないもんだからすっかり忘れていたぞ。
『まぁいい。とにかく、ためらうなよ』
「使う必要がある時には、周りはきにせんよ」
『君ならそういうと思っていた。本当ならば、僕も行きたいが、中々どうして動けなくてな』
「まぁ、出世すると言うことはそういうことだろうな」
『ありがたくも何もないがな。頼んだぞ』
「任せておきな」
ふっと笑うとクロノとの通信が切れる。
「どうやら、調子は良さそうやな」
「ああ、完璧だ。お前らも心配かけたな」
「ううん。紅莉君が元気なら、それでいいんだ」
「うん、いつもは私たちがお世話になっているんだもん、たまにはいいよね」
嬉しいねぇ。これは、負けられねぇな。
『やぁ、緋凰紅莉』
「スカリエッティ。随分と派手なことをしてくれるじゃないか」
スカリエッティが随分と派手な演説をしてくれる。こう言った組織には多かれ少なかれ、闇と言える部分があるが、よくもまぁ、あれだけのものを集められたものだ。
『君が肯定したんだよ?欲望に忠実なのは悪くない、と』
「そうだったな」
『だから私は、私がやりたいようにさせてもらう。私を生み出したことがどういうことなのかを、私と言う人物がどうなのかを!』
「上等だ。覚悟しておくんだな」
『フフ、フハハ、ハハハハハッ!これを見ても、なおも尽きぬ闘争心。流石だ、流石だよ。ああ、君こそ覚悟をしておくんだね。私たちだけではない、カダージュ一味も、全てが、全てを賭して事をなさせようとするんだ。生半可はかえって逆効果だと知るといい』
言うだけ言って、通信が切れた。後ろを見れば、各々やる気の満ちた顔をしている。
「先行は任せる。俺は、野暮用を済ませてから合流する」
「分かったよ。本当はしてもらいたいけど、エスコートは任せて」
「紅莉の出番はないかもね」
「空は、私とアインスに任せい」
「アタシはなのはと行ってくる」
「私は、緋凰に呼ばれているの、それを済ませてから行かせてもらいます」
さぁ、戦いを始めよう。
†久遠放送局†
久遠「紅莉が人間だった」
リニス「いやまぁ、生物学上は人間?ですが」
久遠「その時点で、人間か怪しいじゃん」
リニス「それだけ、可笑しい存在なのです」
久遠「ちなみに、中盤の悪夢云々は実は休日の部分でやるつもりなのを、作者が忘れていました」
リニス「物語も終盤にせまりましたね。後4,5話で終わりですかね?」
久遠「では、次回もお楽しみに」