「………」
紅莉は空中で腕を組み、目を閉じて待ち人を待っていた。
スカリエッティが行動を開始し、ミッドの町は今現在、混迷の真っただ中にあり、あちこちで何かが壊れる音や、誰かの声が聞こえてくる。
そんな中、紅莉はと言えば、ただ静かに待ち人を待っていた。はたから見れば、そこだけが、この戦闘という世界から切り離された別世界に思えるほど、静かな状態であった。
それはあくまで紅莉だけの話であって、紅莉の周りでは、エアが操作している無線誘導兵器―ガンスレイヴ―が次々と敵を落としていっていた。
はじめは紅莉も待ち人を待つ間はそれで時間をつぶそうと考えていたのだが、斬っても斬ってもきりがなく、早々に飽きてしまったのだ。
それならば、瞑想していたほうが遥かに有意義だと考えて、エアに任せっきりという、どうしようもない理由が存在していた。
「来たか」
スッと目を開けた紅莉の視線の先には、かつての上司であり、紅莉が尊敬できる数少ない人物、ゼスト・グランカイツがやってきていたのである。
「待たせたな」
「問題はないさ」
《もう少しで、千台の大台を狙えたんですがねぇ》
どれだけの数をスカリエッティが用意していたのかは分からないが、紅莉の周りには、本当にきりが無いくらいに湧いてきたのであった。
「おっさんとクイントさんには話を通してある。さ、行こうか。出来れば、あいつが行動に移す前に連絡をとれたらなって思ったんだけどね」
「そう、だな」
どこか歯切れが悪いゼストの答えに、紅莉は眉間に眉を寄せるがすぐに元の表情に戻し、ゼストを連れて、レジアスが待つミッド本部のレジアスの執務室まで案内した。
外の喧騒とはうって変わり、レジアスの執務室までの道は驚くほど静かであった。
カツカツとなる靴音と共に、目的の場所までやってきた紅莉とゼストの前に、一人の騎士が姿勢よくドアの前に立っていた。
「む」
「初めまして。烈火の将シグナムと申します。現在は六課に出向している身ですが、その前は、首都航空部隊の隊員として働いていました……貴方の、後輩となるものです」
「そう、か」
「……烈火の将」
シグナムを警戒したゼストだったが、シグナムはそんなゼストに穏やかな笑みを浮かべ、自分の紹介をして丁寧にお辞儀をした。
紹介を受けたゼストと言えば、そんなシグナムを見て、感慨深いものが湧きあがってきたが、今は時間が無いと、ぶっきらぼうに返してしまった。
更に、ロードとなるゼストについてきたアギトはと言えば、シグナムの紹介の中で、気になる部分があり、ポツリと零してした。
「お前は、ここに残ってもらう」
「なんでだよ!?」
「ここから先は、我々には関係のない話となる」
「だけど、ロードをただ一人中に入れるなんて!」
「安心しろ、とは言えないが、緋凰はそんな卑怯な真似をせん。奴は倒すならば、正面から倒す」
「正々堂々とは言えんがね」
紅莉の性格をよく知るシグナムは、そんなことを言いながら、溜息を吐く。
理由としては、間違ってないのだが、紅莉の場合は、敵との戦いが最も己を鍛えられるからという理由が多分に含まれているからである。
そんなことをこの場で言う必要もなければ、言えるわけでもないので黙っている。
そんなシグナムの態度を見て、ゼストが表情を和らげる。この男は理由が分かっているからである。
「もし、貴様が納得が出来ないと言うのであれば、この場で私を倒してもらう。もし、信じてなお、そんなことが起きようならば、この首を差しだそう」
「アギト」
「ちっ、わーったよ!だけど、アタシは納得した訳じゃねーぞ!」
シグナムの覚悟を聞き、ゼストの窘めるために名を呼ばれ、漸く不承不承で頷いたのである。
「さ、ボス」
「ああ」
紅莉の促されて、一緒に部屋に入ると、そこには椅子に座り厳しい顔をしたレジアスと、ソファーに座って、ゼストを見て瞳を潤ませるクイントがいたのであった。
「隊長!」
「ナカジマ。すまなかったな」
「いえ、生きていただけでも……メガーヌも生きていると、紅莉君に聞いたのですが」
「ああ、だが……」
「それに関しては、何とかするよ」
「そうか」
紅莉が言った何とかするという言葉に頷くゼスト。紅莉を知るからこそ、彼ならば、きっとなんとかしてくれると信じているからである。
それを確認できたクイントは改めて座りなおした後、口を閉ざす。これから話すのは自分ではない。自分はあくまで、未届けにきただけであるためだと考えているからである。
「レジアス。8年前、俺達の隊が全滅した時の任務を、お前は何故止めようとした」
「ワシは、愚かだった。現状のことしか考えられなくなり、手段を選ばなくなってしまっていた」
ゼストの問いに、答えになってない答えを返すレジアス。その表情はまるで懺悔しているかのようである。
「最後はワシが責任を取ればいいと考え、人員をどうにかしなければいけない、今の管理局の連中は信用できんと考えてしまっていたのだ」
レジアスの台詞を聞いて絶句するゼストとクイント。紅莉は表情を変えずに、壁に寄りかかり腕を組んで目をつむっている。
「お前は、俺らの事を信じてなかったのか?」
「違う!違うんだ!結局、個の力は集団では勝てない。勝つには圧倒的な力を持つものか、何かが無ければと思っていたのだ」
レジアスの言葉を聞いて、失望というよりも、悔しさを滲ませた表情で尋ねるゼストだったが、それに対して、レジアスは強く否定する。
「だからこそ、人造魔導師または戦闘機人が役に立つと思っていたのだ」
「そう、か」
付き合いが長いゼストだからこそ、レジアスの気持ちが分かった。彼は犯罪に近いことをやっていたが、結局のところ、この地上の平和の事しか考えてないと分かったからである。
「緋凰などの特殊な奴もいたが、結局全てをカバーなど出来るはずがなかった」
「そうか」
自分が倒れた後、その後の紅莉達がどうなったか分からないゼストだったが、あくの強い紅莉の事だ、色々と苦労したのだろうと同情したくなるゼスト。
実際、ゼストも紅莉を若干持て余していたのである。ただ、扱い事態は難しくもなく、また、割と素直だったので苦労を感じなかったのだ。
「緋凰とその使い魔があと10年、。10年早く生まれてきてくれていれば」
「そいつは無理な相談だな」
今まで黙っていた紅莉が、レジアスの言葉を聞いて否定の言葉を述べる。
「俺は、出会うべくして出会う奴らがいたからこそ、生まれたんだ。そこに管理局やボス、おっさんは関与してないよ」
瞼の裏で浮かび上がる顔を見て、口端を上げる紅莉。
「悪いが、そいつらのために俺も行かなきゃいけない。おっさん、ボス、俺は行くよ」
「そう、か。緋凰には俺の介錯を頼みたかったんだがな」
「悪いが、ボスほどの誇り高い騎士の介錯は俺には向かないんでね、外にいる奴に頼んでくれ。クロードに並び、騎士の鏡とでもいえるような奴だ。きっと、ボスの最期にふさわしいさ」
「隊長……」
ゼストの口から言い放たれた最期という言葉の意味を正確に受け取った紅莉は、やんわりと拒否をする。
また、その一連を見ていたクイントが泣きそうな顔でゼストを見やる。
「それじゃ。ボス、俺は貴方の部下でよかったと思っているよ」
「そうか。俺も、お前の上司でよかったと胸を張って言おう」
「ありがとうございました」
ゼストに頭を下げた紅莉は部屋を出ていくと、そこには何やら仲良くやっていた、シグナムとアギトがいた。
「終わったのか?」
「まだ、もう少しかかるだろう。すまんな、シグナム。面倒な役目を押し付けてしまった」
「いや、いい。お前には世話になっているんだ、これくらいはな」
「しかし、な」
紅莉としては、これからゼストが行おうとしているのをシグナムに託すのは流石に気が引けるのである。
「いいからいけ。貴様にはやることがあるのだろう?」
「……分かった。頼む」
シグナムの目を見た紅莉は、深く息を吐き出した後、ゆっくりと外へと歩き出していった。
ただ一人、話についていけないアギトだけがキョロキョロとしていたが、それはスルーであった。
「さてと」
外へと出た紅莉はゆりかごを睨むように見る。
次の瞬間、横からやってくる気配を感じてその場を飛びのく。
飛びのいた場所は、まるで何かが落ちてきたかのように、轟音を立ててクレーターを作り出した。
激しく煙が舞い上がったが、それはすぐに収まり、クレーターの中心には拳を突き立てているカダージュ一味の一人のロッズがいたのであった。
「何の用だ?お前は、クロードに用があるんだろう?ここで道草を食っている暇はないはずだぞ」
「関係ない。俺は、貴様を殺す!」
激しい殺気を紅莉にぶつけるロッズ。それを受けた紅莉も意戦闘態勢をとる。
「言っておくが、今の俺は激しく機嫌が悪い……やりすぎても知らんぞ」
ゆっくりと、刀に手を添える紅莉だったが、ロッズはそんなのは関係ないとばかりに、紅莉に向かって行く。
カダージュ一味の中でも、特殊な移動を持って高速で動けるロッズの動きを見切り、抜刀で胸を切り裂く紅莉。
「ちっ、浅いか」
抜刀後、すぐに体勢を整えた紅莉は、舌打ちをしながら敵を見る。
胸部を切り裂きはしたが、その実、直前で急停止して攻撃を最小限の被害で済まされてしまった。
「それに……」
警戒しながら、ロッズの実力が上がっていることに疑問に思う。
今までに二度、対峙した経緯から相手の実力を把握していた紅莉としては、先ほどの攻撃が避けられるとは思っていなかった。
事前に抜刀術を警戒していたとしても、それを上回るほどの攻撃だと自負していたのだ。
「がぁっ!」
「うおっと!?」
ロッズが再び接近してきて攻撃してきたのだが、想像以上の速度で持って攻撃してきて、対応が遅れかけた。
紙一重で避けられたとはいえ、今のは危なかった。
「やべっ」
紅莉の口から珍しく、焦ったような声が漏れたと思った次の瞬間、紅莉の体は、トラックに撥ねられたかと思うほどの衝撃と共にビル群を貫通しながら吹っ飛んで行った。
「ぐおっ」
早々に体勢を立ちあがった紅莉だったが、あまりの衝撃にダメージを隠し切れていない。
「まずいな」
ダメージがある体に鞭を打ち、確りと立ち上がると苦言の声を漏らす。
先ほどの攻撃はまずかった。
相手の攻撃を察知できたし、目でも追えた。けど、体がついていかなかったのである。
神速を使えば、何とか対抗できるかもしれないが、神速を使ってなお、互角に打ち合えるか微妙である。と、結論をつける紅莉。
「あそこまでの力はなかったと思うんだが?」
紅莉を追ってきたロッズを見据え、構え直す紅莉。
そんな紅莉を上から叩きつけるロッズだが、先ほどと同様に吹き飛ばされることはなかった。
先読みの技術により、ギリギリのところでポイントをずらし、ダメージを最小限に抑えつつ、反撃を繰り返す。
しかし、紅莉の攻撃は効いてないのか、当たりはするものの、相手を鈍らせるまでには至っていない。
《マスター》
そんな攻防を続ける中、エアから呼びかけがあった。
「どうした?今、余裕がないから手短にしろ」
《あちらの存在の体が徐々にですが、崩壊を始めております》
「あん?」
《スカリエッティが言っていた、身体の崩壊がかなりの早さで進んでいますね》
エアに言われて、改めて紅莉はロッズをよく観察する。
言われてみれば、体の端から徐々にだが体が崩れていると見えなくもない。
もともと、最初にあった時から、決死の覚悟で挑んできたのは察知していた。
しかし、まさか身体の崩壊を経てまで自分を倒しに来るとは思っていなかったのだ。
「このまま、時間切れを狙うのも出来る」
削られているが、それも軽症だ。このまま、相手の自滅を待つのも不可能ではない。
不可能ではないが、紅莉の選択肢に逃げの一手はない。
目の前の壁は悉く斬るのが緋凰流の教えなのだ。故に、紅莉は手札を切るのを厭わなかった。
「エア、セットアップ」
《ゲットレディ》
紅莉の指示のもと、エアが紅莉の体に魔法を付与していく。
薄い光の膜が紅莉覆い、体の隅々まで魔力が循環していく。
今の今まで、紅莉は一切魔法を使用してなかったのである。それを察知した、ロッズが警戒を強めた。
「敬意を払おう。お前の覚悟、しかと受け止めた。受け止めてなお、俺は、お前を斬る」
静かに口を開く紅莉に、ロッズが思わず後ずさりしそうになったが、ギリギリのところで踏ん張った。
紅莉は、納刀し抜刀の体勢を取る。
ロッズも理解していた。次の一撃で勝負が決まると言うことを。
「っ!」
先に仕掛けたのはロッズであった。自身が用いる全ての力を加速と右腕のみに収束し、一気に紅莉までとの距離を詰める。
紅莉の間合いから更に詰めたロッズは勝ったと確信する。
抜刀するには、既に距離が詰まりすぎていたためである。
持てる力の全てを右手に乗せ、拳を振るうが、それは叶わなかった。
気がつけば倒れ行く自分の体を不思議に思いながら、ロッズは最後に見たのは、いつの間にか技を放っていた紅莉の姿であった。
抜刀奥義【葬刃】。それを紅莉は使っただけだったが、魔法の力を借りた今、それは音を越え、光の速度に匹敵するほどの速度で放たれたのであった。
「やれやれ」
後ろで相手が倒れたのを確認した紅莉は、振り返らずに空へと上がる。
「さてと、行かないと……って、あれは酷い」
ゆりかごへと向かおうとした紅莉だったのだが、そこで目に映った光景に思わず、同情してしまった。
恐らくは、カダージュ一味のうちの誰かが召喚したであろう、バハムート震。
その震に対して、想定しているのが……
「ムーちゃん、カイちゃん、レーちゃん、やっちゃいなさい!」
アリシアが召喚したバハムート三体であった。流石の、震も三体のバハムート相手にはその体を出来るだけ小さくして、許してと叫んでいるように傍からみえたのであった。
「まぁ、あっちはアリシアに任せるか。はやても、いい感じに指揮が出来るているようだし、クロードも若干苦戦しているが、まだまだ余裕だろう」
改めて周りを確認した紅莉は一気にゆりかご内部へと突入していった。
「さてと……」
ゆりかごの内部に突入したのはいいけど、周りには誰もいなかった。まぁ、都合よく目的の場所に最初からたどり着くってのは無理があるからな。
「あっちこっちに気配が多いな」
《ハッキング完了。マップ出しますね》
「頼む」
相変わらずの早業で助かるな、こういう時は。
エアからマップを出してもらい、目的の場所を探ると、なのはの位置はここから、一つ先のエリアとなっていた。
目的地も分かったことだしさっさと行きますか。
「パパは私のものだー!」
「違うもん、紅莉君は私のだもん!」
やってきたら、何やら金髪っ子となのはが頭の悪い会話をしていた。なぁにこれ?
「あ、紅莉君。ちょっと待っていてね、この我がまま娘をちょちょいと躾けるから」
「パパ!待っていてね、ママの魔の手から逃がしてあげるから!」
さて、どうすればいいのだろうか?なのはとそう歳が変わらなさそうな子にパパと呼ばれる俺は。
傍から見れば、HENTAI以外の何物でもないよな?
いやまぁ、気配から察するにこの子はヴィヴィオってのは分かっているんだが、成長期にしても育ちすぎだろ?
そんでもって、なのははなのはで、笑顔で何を怖いこと言っているんだよ。
「おっと」
呆れて溜息をつこうとしたら、横から攻撃を受けそうになったので、飛びのく形で避けると、先ほどまで俺がいたところが爆発した。
「紅莉君!」
「パパ!」
「いいから、お前たちは勝手にやっていなさい」
「「はーい」」
仲がいいのか悪いのか。いや、実際はいいんだろうけど。ただ、殺伐とした親子喧嘩だな。
んで、攻撃を仕掛けてきたのは、この前から俺に因縁をつけてきていた銀髪っ子であった。
その後ろには、今のヴィヴィオとそっくりな子とチンクのセットで。
「おう、チンク。無事だったか?」
「……」
連れ去られたので心配して声をかけたのだが、返事が返ってこない。
物静かと言えば物静かな性格のチンクだが、あれで中々に会話が好きだから、こんな風に無視されるとは思わなかった。
「なんで、ドクターはこんな欠陥を」
「……」
銀髪娘が忌々しげにチンクを睨む。そういやこいつって、チンクもターゲットにしていたな。
「どいつもこいつも、チンクチンクと、私を何だと思っているんだ!」
どうやら、この娘は相当にチンクと比較されてきたらしいな。そういや、技が似ていると言えば似ているか?
「まぁ、敵の前であーだこーだ言っている時点で、ダメなんだが」
「なぁっ!?」
とりあえず、チンクを沈めてから横にいた、今のヴィヴィオとのそっくりさんを弾き飛ばす。
クロードの事前情報通り、斬った感触がかなり変だな。これが、聖王の鎧とか言う奴か。
「バスター!」
「負けないもん!」
なんか、本家の聖王の鎧相手に普通にダメージを通しているっぽいな、なのはは。つーことは、一定以上の威力は貫通するってことか?
それとも、ヴィヴィオを含めて本家に遠く及ばないかだが。
「ほれ、チンク起きろ」
「うっ」
気絶させたチンクに喝を入れて、目を覚まさせる。
「ここは……」
「運が良かったな。俺に再び殺気を向けていたら、お前、終わっていたぞ?」
「ぞっとしないな」
まぁ、俺もやりたか無かったから手っ取り早く一気に決めたんだが。
「チンク、そっちの銀髪娘を頼む。どうやら、お前さんに恨みがあるらしい」
「はて?恨みを買うようなことはないと思っていたんだが」
「どうやら、お前の能力と似ているのと関係があるっぽいな。なんでも、お前と比べられるとか」
「とは言われてもな。私はセイン以降の姉妹は知らないのだがな」
まぁ、それはあれだ。早く生まれたものの勤めと思ってくれ。一般人でも、兄や姉と比べられて、グレる子供だっているんだ。
本来ならば、親の務めなんだろうが、残念かな、こいつの親はまともじゃないのでな。
「とはいえ、姉妹にこうも殺気を向けられるはいただけないな。よかろう、今まで妹として甘んじていたが、ここら辺で私が姉のなんたるかを叩き込んでやろう」
ああ、妹であるということを気にしていたのか。たまに、お姉ちゃんだと言いたげな行動をしていたし、子供扱いはことさら嫌がっていたからなぁ。クイントさんの前では割と素直だったが。
「んで、こっちの子はっと」
「カットール、そいつは任せる。好きにしろ。きつようなら、私が終わるまで持たせろ」
「分かりました」
感情が希薄だな。表情の変化もないし。
「チンク、きつくなったら言え。纏めて相手するのも、俺は慣れているのでな」
「何、借りは作らない主義だ」
チンクの台詞に口角が上がりそうになるのを押さえて、目の前の少女、カットールを見る。
見れば見るほどにヴィヴィオと似ているな。オッドアイだし。
これで銀髪なら笑いものだが、残念ながら金髪だ。
「カムカム」
クイクイと手で挑発すると面白いように乗ってきて、攻撃を仕掛けてきた。
どうやら、徒手タイプであるようだ。他の連中は何かしらを装備していたと思うんだが。
すれ違いざまに首を斬りつけるも、虹色の光の衣に遮られる。
「ふむ」
まぁ、あのまま斬りつけたら流石にちょんぱはないが、結構酷いことになっていたから、よかったと言えばよかったのかね?
物理攻撃まで遮るとは一体どういう効果なのか?いや、教えられた所で理解できないだろうし、そもそもが、相手の情報なんてないのが当たり前。その場その場で、対応するのが剣士だ。
もちろん、事前情報の収集というのも、戦いにおいては重要なのは理解している。
理解はしているが、やはりないほうが自身のレベルアップにつながると考えてしまう当たり、どうしようもないな俺は。
「くぅっ」
おっ、徹には対応できないみたいだ。衝撃が突き抜けたのか、初めて表情を崩したぞ。
たった一撃をくらっただけだというのに、随分と苦悶の表情を浮かべるな。
今までにダメージなんて受けたことなかったせいか、痛みに耐性でもないんかね。
それに、攻撃一つとっても、おざなりすぎる。確かに、威力は高いし、危ないのは危ないが、冷静に対処すれば、こんなもの避けるのは容易い。
攻撃されればカウンターを叩き込むと言うのを、4~5回ほど続けていたら、とうとう立ち上がらなくなってしまった。弱っ。
意識を完全に刈り取るために、更に一撃を加えれば、完全に倒れ伏した。
チンクのほうはどうなったのかと気になって見てみれば、既に決着がついていた。
「ば、バカな!?」
「私に恨みを持っているのは構わないが、攻撃が素直すぎるな。紅莉と戦えば、嫌というほど、戦略というのがいかに重要なのか理解できる」
ふむ、どうやらチンクは相手の攻撃の全てを迎撃してなお、優位に物事を進め、最終的には討ち果たしたようだ。
後ろから近づいて、首筋に一撃を加えてやれば、素直に落ちていった。
「むっ。紅莉、流石に首に剣を当てるのは感心しないぞ。峰打ちだろうが、貴様の場合は、威力がシャレにならないのだからな」
「加減はしているんだがな」
チンクの苦言を聞き流しながら、なのははどうなったのかと見てみれば、結構苦戦していた。
「ヴィヴィオー」
「なあにパパ?」
俺の呼びかけに笑顔で答えた後、なにやらなのはに勝ち誇った顔をするヴィヴィオ。そんでもって、それを受けて大層悔しそうな顔をするなのは。うん、お前ら、今やるべきことじゃないからな。
「そろそろ、やめなさい。さもないと、明日からご飯はピーマンだ」
「ピーマンいやぁっ!ピーマンがおかずなんて、ヴィヴィオ、ごはん食べられないよ!?」
「飲み物も、ご飯も、パンも、何かもがピーマン尽くしだ。まぁ、好き嫌いが無くなるまで、否が応でもピーマンは混じるが」
「い、やぁぁぁぁっ!?」
「チャンス!スターライト・ブレイカー!」
「「鬼か!?」」
頭を抱えるヴィヴィオにこれ幸いと言った感じで、なのはがブレイカーを叩き込みやがった。
つか、まじで末恐ろしいなこいつ。目的のために、方法を選ばないところなんて、えぐいどころの話の騒ぎじゃないぞ。
「ふぅ、紅莉君ありがとう。洗脳自体は解けていたんだけど、中々止めるのが難しくって」
「洗脳って」
「ほら、あっち」
なのはが指差した方には、ぶっとい穴があいている。いや、来たときには気がついていたんだが、あえてスルーしたんだよね。
「あれ?なんか、AMFが強くなった?」
「どうやら、誰かが動力炉を破壊したようだな」
「ヴィータちゃんやったんだ」
とりあえず、ヴィヴィオを回収してっと。
「脱出すっか。お前ら、大丈夫か?」
「うん。大丈夫。ちょっとしんどいけど、AMF空間から抜ければ普通に飛べるよ」
「私は問題ないな」
「そんじゃ、こいつら回収して出るか」
「どうやって?」
「こうやってだよ。テトラ・グラマトン」
久々のレヴを解放する。流石に、元の魔力では厳しいものがあるし、いざとなれば、ゆりかごを沈めなきゃいかんからな。
「離れていろよー。アキシオン・ブレイカー、デッド・エンド・スラッシュ!」
刀を抜いてから、一気に振り下ろすと、ゆりかごが真っ二つに割れた。
「きゃぁぁぁっ!?紅莉君、やりすぎぃぃぃっ!」
「すまん、久々にやったら、加減を間違えた!」
落ちながら、文句を言ってくるなのはに謝りつつ体勢を整える。
いやぁ、やりすぎた。確かに魔力を乗っけていたのはいいんだが、ここまでとは。
「んじゃ、無事に脱出できたし、フェイト達もこっちに向かっているようだし、大団円だな」
「う~ん。紅莉君、その魔力の説明はどうするの?」
「クロノに一任する」
「もう」
呆れるなのはの頭を撫でてやってから、向かってくるフェイトに手をふる。
『みぃつけたぁ!』
そんな俺達だったが、突如世界に声が響いた。
†久遠放送局†
久遠「さぁさぁ、最終回が近づいてきたよ。早ければ後二回かな?」
リニス「さて、新しい戦闘機人ですが、説明する場所がなかったのでここでしますかね」
久遠「まずは銀髪っ子。名前はトレーディ」
リニス「13番目の戦闘機人であり、チンクの能力を魔導師っぽくした感じですね。チンクの汎用性を重要視したスカリエッティが慌てて作った一体です」
久遠「お次は、カットール。ヴィヴィオ似の子だね」
リニス「14番目の戦闘機人であり、ヴィヴィオを奪え返せなかった時の予備であり、慌てて目覚めさせたために、感情が希薄になっております。ちなみに、ソルジャー計画とのハイブリットであり、後付けで聖王の因子を埋め込んで、聖王の鎧を発動しているといった感じですね」
久遠「では、次回もお楽しみに」