門星荘より愛などを込めて   作:モンスターX

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ワンダーランドへお引越し

「必要な書類はこれだけですね」

「ありがとうございました」

 

 俺は椅子に座ったまま体を伸ばした。パキパキと背中が鳴る。

 思っていたよりも書類を書くのに時間がかかった。普通の場合というものはよく知らないが、やはり、こういう場世に住むため特別な契約書に判子を押さなければいけないのかと思ったが、別にそういう事はなかった。ただ生年月日や血液型、氏名のほかに、種族とか出身星とか注意してほしい特性とかを書かされるとは思っていなかったが。

 正面に座る清美さんが言う。

 

「それじゃあ松浦さん。今から家に帰ってこっちに移ることってできますか?」

「え、今からですか……」

 

 俺は時間を確認する。

 気絶した分若干つらいが、まあ何とかなるだろう。

 

「大丈夫です。でもどうしてまた?」

「初めて不思議体験(こういうこと)があった日が、一番危ないですから。日をまたげば安心なんですけど……」

「わかりました……あと、俺に敬語なんて使わなくていいですよ。年下ですし、それに俺ももう一応ここの住人ですから」

「そう?じゃあ……」清美さんは少し驚いたような表情をしてから、すぐいたずらっぽい笑みを浮かべた。「よろしくね。影彦君」

 

 ふいに名前を呼ばれて、心拍数が跳ね上がる。

 ――落ち着け落ち着け。

 顔が熱い。赤くなってると思う。

 

「じゃあ、善は急げですね!清美さん」

「そうね。暗くならないうちに帰れるように行きましょう」

 

 反撃で下の名前で呼んでみるが、効果は無いようだ。

 それどころか声が上ずってしまって、さらに恥ずかしい。

 うんやめよう。あきらめて、家に向かおう。

 

「ん?行くって清美さんもついてきてくれるんですか?」

「もちろん。行きと帰りで何があるかわからないからね」

「それもそうですね」

「あとは……ラース君あたりにも一緒に来てもらおうかしら」

 

 清美さんと二人でと思って、心の中のガッツポーズをとった俺が、すぐにやさぐれる。

 あのイケメンと一緒かよ。

 その時突然、扉が開かれ。見たことがないイケメンが入ってきた。

 門星荘の顔面偏差値はどうなっているんだ。

 

「いや、きよちゃん。ラースじゃなくて僕が行くよ」

 

 落ち着いた声と、きっちりした雰囲気のイケメンに面食らう。

 うわ、微笑まれた。イケメンを憎む醜い心が浄化されそうだ。

 何とか俺は、がちがちの笑顔でその微笑みに答えた。

 

 すると急にイケメンは肩を震わせはじめ、ついには耐え切れなくなったように、爆笑しだした。

 え、この声って。

 

「ま、まさか鉱太郎さん!?」

「はははッ!!ぶっさいくなつらしとったで!」

「ごめんね。影彦君。コウちゃんが…」

「あ、いえ大丈夫です」

 

 うわーものすごくむかつく顔してる。イケメンだけに怒りは倍増だ。

 しかし、流石は従姉弟。どことなく雰囲気が似ている。

 

「ていうか、鉱太郎さん首あったんですね」

「おう。ま、いつでも出し入れできるし、つけない方が楽なんやけどな。あ、とれるでこれ」

「うわ、こわ!」

 

 首を唐突に引っこ抜く鉱太郎さんを見て、そのグロテスクさにビビったりしながらも、俺たちは三人で門星荘を出た。

 

 

 

  ◆

 

 

 

 我が自宅であったことを簡潔に述べるならば、要点は四つ

 

 1、家族に適当に事情を話すも失敗。追及される。

 

 2、鉱太郎さんが両親を懐柔。

 

 3、今日から門星荘に行くことを許される。

 

 4、荷物は少しずつ移していくことが決定する。

 

 結果として俺たちは、三人で帰路についていた。

 

「なんかすごいですね。主に鉱太郎さんの猫かぶり具合が」

「そのおかげで、いまここにいられるんやから、感謝しい」

「それについては感謝してますよ。………あれ?でもよかったんですか?思いっきり鉱太郎さんたちうちの人達に接しちゃってますけど、大丈夫なんですか?」

「ええ、私たち、人間に化けてるから。こいつ人間じゃないぞ、って理解というか、納得というか、そんな感じに思われなければ問題無いの」

「へー。……あれ?じゃあ、鉱太郎さんがあの時、首つけてたら……」

「……大丈夫だったでしょうね」

 

 あれれ?おかしいなー。さっき鉱太郎さんは門星荘に来た時点でアウト的なこと言ってた気がするなー。

 鉱太郎さんの方を見る。

 

「~~~~♪」

「おい」

「~~~~♪♪」

「こっちみろや」

 

 俺は大きなため息をついた。

 

「まあ、門星荘に住むのも、きっと悪くないですよね」

「もちろんよ。住民はみんないい人だから。今まで人間がいたことはないけどね」

「そうそう」

「鉱太郎さんは黙ってて」「コウちゃんは黙ってて」

 

「すまんかったって」そう言いながら鉱太郎さんはおどける。

 実際俺も怒ってなどいない。

 先ほど言ったように、門星荘に住むことに対して、もう大した嫌悪感はない。むしろ、不思議ウェルカムだ。清美さんもいるし。(最重要)

 

 荘まであと歩いて二十分といった所だろうか。

「あ!」と清美さんが前を歩いている男性をみて声を上げた。

 

「山寺さん!」

「おや、清美ちゃん、鉱太郎くん。……えと、君は……新しい入居者くんかな?」

「あ、はい!松浦 影彦と言います。よ、よろしくお願いします!」

「うんよろしく。僕は山寺 武則(やまでら たけのり)と名乗っています」

 

 俺は山寺さんと握手を交わす。

 落ち着いた人だ。話をしていて安心するタイプの。

 

「違ったらごめんね。影彦君……でいいかい?」

「大丈夫です」

「じゃあ、影彦君。君は人間かい?」

「はい。……あの山寺さんは?」

「僕は宇宙人だよ。リュフエッジ星から来たんだ」

「宇宙人ですか。………宇宙人!!!?」

「いい反応だねぇ」

 

 ぶったまげた。

 まさか宇宙人なんてものが実在するなんて。まあ、今更な気もするが。

 それに正直山寺さんは宇宙人ぽさが一ミリもない。一番近いのは、定年間際のサラリーマンだろうか。

 

 そんな風に自己紹介と雑談をしているうちに、いつの間にか荘に到着した。

 

「あーついたついた。やっぱかったるいわ(これ)

 

 そんなことを言いながら、首を取り外す鉱太郎さん。

 

「……やっぱり、首はあると辛かったりするんですか?重さとかで」

「いや、辛いってほどでもないんやけど。なんつーかな、全然サイズの違う帽子をかぶってる感じで、違和感がすごいな」

「ああ、わかるよその気持ち」

「え?」

 

 声に反応して、山寺さんの方を見る。

 そして、衝撃の光景を目の当たりにした。

 

「ぐ」

 

 小さく細い手足、大きな頭と目、そして銀と白の中間ぐらいの色をした肌。

 そうそれはまさしく――――

 

「グレイだあああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

 ――――宇宙人そのものであった。

 





~キャラクター図鑑 その2~

赤坂 清美

種族:バンシー 性別:女 年齢;19歳

身長:165㎝ バスト:Dカップ

好きなもの:ココア、猫、門星荘

嫌いなもの:コーヒー、蜂、死

特技:会計、暗記

目標:父が残した門星荘をできるだけ長く続けていくこと

特記:門星荘の管理人を務める女性。高い計算処理能力と記憶力を持ち、それらを利用して、荘の経営をしている。基本的に温厚かつ親切だが、怒るときは怒るそんな性格。血縁者は現在従姉弟の鉱太郎だけだが、荘の住民全員を家族だと思っている。高卒。
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