犬吠埼風は中二である   作:名も無き詩人

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第二話 日本酒とファーストキスと幽霊少女 (1/3)

私は目をさますと辺りを見回した。いつもとは違う景色。私の部屋では無い。白い壁に白いベッド。外を見ると夕暮れすぎなのか、海の向こうがうっすらと紅い。私は夕飯の買い物を思い出し、立ち上がろうとすると、足に激痛が走った。私は前のめりに倒れ込もうとした瞬間、どこか優しくて柔らかい床が、私を受け止めてくれた。

「間一髪セーフだな」

私を抱きしめた、その男は、私の頭に手を乗せる。

「なんであなたがこんなところにいるの。と言うか私はどうしてこんなところにいるの」

「覚えていないのか。昨日の夜のことを。あんなに激しかったのに」

「全然覚えていないわ」

「風ちゃんはアレだね。飲むと記憶を失くすタイプだね」

「飲むと?」

私は昨日のことをよく思い出した。そう言えば、昨日は家で鍋焼きパーティーをしたのだった。私と樹、それに乃木春信先生の3人でだ。

熱々の鍋焼きを囲って食べたところまでは覚えている。

「確か昨日は鍋焼き囲って、勇者部結成に向けて、あれその後のことが思い出せない」

「やれやれ、風ちゃんは僕のお酒を水と間違えて飲んじゃったんだよ。あれには焦ったね」

「・・・」

「ほんの一口だったけど、顔真っ赤にさせて。ほとんど何言っているのか。分からないよ状態で。服を脱ぎ出そうとした時には、樹ちゃんに止めてもらったよ。でも風ちゃんは言うこと聞かずに、『私は勇者だー』って言っていきなり家を飛び出して、僕も樹ちゃんもビックリ」

いつの間にか彼の後ろに樹が立ってる。

「お姉ちゃん、大変だったんだよ。乃木先生が見つけなかったら、もっと大変なことになっていたよ」

「私、何しちゃったわけ」

「うん、橋の上から川に向かってダイブした」

「嘘、え、そんなことしたの私」

「いつもキリッとしたお姉ちゃんが駄々こねて、乃木先生もたじたじだったよ。でも、川に飛び込んだ、お姉ちゃんを乃木先生が助けてくれたから。それに乃木先生が適切な処置をしてくれなかったら、お姉ちゃんどうなってたか」

樹の目から涙がポロポロと溢れる。どうやら、樹にすごく心配をかけてしまったようだ。

「まったく、可愛い樹ちゃんを泣かせて、悪いお姉ちゃんだね、キミは」

「何、私を悪者扱いしているのよ。元の原因はあなたがお酒を持ち込んだからでしょ」

「いや、うどんには日本酒でしょ。琴平町に住んでる友人からもらった日本酒を。まさか、風ちゃんが飲むとは思わなかったよ」

「まあ、いいわ。樹に心配かけちゃったし、どうやらあなたにも助けられたようだしね。今回は見逃してあげる」

「それは、良かったよ」

彼が安堵する。それを見て樹が話す。

「でも、お姉ちゃん、あんまり気にしないでね。アレはノーカンだと思うよ」

顔を赤くして樹が言う。

「樹、何言ってるの?」

「私、人工呼吸見るの初めてだったから」

「誰と誰が人工呼吸をしたの」

「・・・」

「待って、頭が混乱してきた。私は橋からダイブした、そこを助けたのが乃木先生。ということは、えー!!」

私は混乱した。そんなわけない。私のファーストキスがこんなことで奪われるはずがない。私は恐る恐る彼の顔を見た。

「いや、あれは人命救助だよ。チューじゃないさ」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

私の声にならない声が病室に響き渡る。私のファーストキスは、お酒を飲んで酔っ払い、橋からダイブして、彼が溺れた私を助け、彼の人工呼吸によって散ったのだった。

 

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