犬吠埼風は中二である   作:名も無き詩人

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第三話 SOS!即売会に参加せよ(後編)

周りの景色は、見たことがない風景。普通の植物とは全く違う色。ここが私の知っている世界ではない証拠。説明書に書かれていた樹海化による世界なのだろう。端末に書かれているマップには、《へび使い座》と表示されている。その表示がゆっくりと動いている。向かう方向は神樹様が住まう方向。説明書によると、バーテックスが神樹様に辿り着くとこの世界は滅びるという。だから、勇者はその前にバーテックスを倒さなくてはならない。

勇者に変身するためには、勇者アイコンを押せばいい。だけど、このアイコンを押したら、私は勇者の使命を得る。私はその使命に一人で耐えられるのだろうか。いや、耐えなくてはならない。家族を、友達を、世界を、私は守るんだ。

私は、アイコンを押した。服の形状が変わり、勇者の正装に変わる。そして、私の手には巨大な大剣が握られていた。バーテックスは私が視認できるくらいまでの距離につめてきた。

形状は、すらっとした細い身体、二本の腕はへびのように波打っている。あれに捕まられたら、かなりまずいだろう。私は大剣に力を込める。そして、一気に飛んだ。人間の跳躍力とは思えないほど、私の身体はあっと言う間にバーテックスの前まで飛んだ。近くで見ると分かる。このバーテックスという無機質な物体が異質であることを。バーテックスが私に気付いたのか、その腕を私目掛けて振り下ろす。私は、大剣でなんとか攻撃を防いだ。

「へびみたいに振り下ろしているけど、動作は遅いしこれなら」

バッテックスの攻撃をかわしながら、私の攻撃が徐々に当たり始める。

だけども、その攻撃は丸で相手にダメージを与えていないようだった。

「これ無理ゲーすぎ。どうやって、こんな奴を倒すのよ」

私の悲痛の叫びに、気づいたのか。バーテックスは二本の腕で同時に攻撃してきた。私は、一瞬のその攻撃をかわすことができなかった。衝撃と共に私は、吹き飛ばされていた。激痛が私の腹部を襲う。胃の中のものが逆流し、口から吐き出された。口の中が酸っぱい感じがした。

痛みはある。でも、いまの攻撃で死ななかった。普通の人間だったら死んでいた。

私は説明書の内容を再度思い出した。バーテックスを倒すには御魂を出して壊すしかない。御魂を出すには、祝詞を唱える必要がある。だけど、この攻撃の中で、祝詞を唱えるのは難しい。私があれこれ考えていると、樹海の茂みが揺れた。そして、その奥から見慣れた2人が現れた。

「どうして、樹と園子がいるの」

茂みから現れたのは、妹の樹と友達の園子だった。

「お姉ちゃん、ここどこ、それにあれは何?」

樹は不安そうに私を見ている。

そんな私たちの再開を前に、バーテックスは第2撃目の攻撃を繰り出した。

私はとっさに、大剣で攻撃を防げき、2人を守った。

バーテックスはいまの攻撃では私を倒せないと思ったのか、今度は二つの腕から、特大の炎を私はめがけて、放とうとする。その瞬間、樹と園子はあろうことか、私を突き飛ばした。

炎は2人を直撃し、豪炎の柱が辺りを焼き尽くした。

「よくも、樹と園子を。私はおこったぞーーーー!!!バーテックス!!」

私の中で何かが切れた。

私は大剣をバーテックスに構えて、咆哮する。その一撃により、バーテックスの御魂が出てきた。

私は大剣を両手で構えると、頭上に掲げてバーテックスに突進する。そんなの私の攻撃を防ごうとするも、祝詞の効力により、バーテックスは動けない。私は全身全霊を込めて、剣を振り下ろした。

「一刀両断!!」

御魂は真っ二つに割れて、その存在は霧散し、空へと登っていく。

私は遂にやったんだ。人類の敵バーテックスを倒したんだ。でも、その代償はあまりにも大きい。家族をまた失ってしまった。初めての親友とも呼べる友達を失ってしまった。私はこの業を背負って戦っていくしかない。

犬吠埼風の勇者としての戦いはこれからなのだ。

<FIN>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を勝手に私たちが死んだみたいにいってるのよ」

私は後ろを振り返る。そこには、乃木園子と犬吠埼樹が立っていた。

私は歓喜のあまりにも、2人に抱きついた。

「どうして、2人とも無事なの。バーテックスの攻撃を受けて助かるなんて」

樹は私に白い端末を見せた、そこには勇者アイコンが表示されている。

「センセイさんが、私にこの端末を渡してくれたの。さっきの攻撃もこの端末が光って守ってくれたんだ」

どうやらセンセイさんも春信先生とグルのようだ。今回のバーテックス戦は何か裏がありそうだ。私はそう思った。

「・・・おかしい」

園子が怪訝そうな顔で、辺りを見回す。

「バーテックスを倒したのに樹海化が解けない〜。ひょっとして、バーテックスは1体だけではないの〜」

「園子、この事態が何なのか知っているの。それに園子もこの空間に入れるってことは・・・」

「そう、私も勇者なんだ。でも、ただの勇者じゃない。最強の勇者。私はあなた達の一世代前の勇者。そして、本来は1年後にあなた達の暴走を止める役割を持っていた。でも、今回の件で、突然私はその任を解かれ、あなたと接触することに急遽なった。本来は、会うことはないのに。私があなたと会うときは、あなたが暴走したときだけ。でも、運命は変わった。だから、私はこの出会いを後悔しない。おそらく、これから最悪の事態が発生するはず。いるはずのない、13体目のバーテックスが最初にやって来た。この後、ハルるんの言っていたことが本当ならーーー」

けたたましいアラーム音が鳴り響く。最初に樹海化が発生した時の音とは別で、どこか壊れた音が響きわたる。

『緊急事態発生。緊急事態発生。超特別警報』

私は端末のマップを見た。そこには信じられない数のバーテックス達が表示されている。

おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、みずがめ座、うお座、12体のバーテックスがこちらにゆっくりと近づいてくる。

「一体だけでもあんなに手強かったのに、それが12体も・・・勝てるわけない」

「普通の勇者だったら、確かに難しいかな。でも、私は普通の勇者じゃないから。フゥ〜、心配しないで。私が絶対守るから。もう二度と、フゥ達を悲しませたりしないから。だから、私いくね」

園子の身体が光り輝くと、そこには勇者の服をまとった少女が立っていた。その顔は決意にあふれている。

「行ってくるね」

園子のその言葉のあと、一瞬で跳躍して、バーテックスの元へと飛んだ。

そのあとのことは、凄まじかった。初めの2、3体は園子の繰り出す素早い動きで、あっという間に霧散した。次の3体は同時に園子を攻撃するが、それを軽々とかわし、槍でなぎ払った。

残りのバーテックスは、合体して一つの巨大な要塞と化す。その時、園子の身体が光にあふれ、姿が変化した。その顔はとても凛々しく、神々しく感じた。合体したバーテックスの攻撃を、園子は受け止め、逆に切り裂いた。合体したバーテックスもろとも斬り伏せたのだ。12体のバーテックスは1人の勇者により、全て倒されてしまったのだ。

「ただいま〜」

すごい偉大なことをしでかした、本人はこんなのほほんとした少女なのにどこからこんなすごい力が出てきたのか。でも、今はそんなことはどうでもいい。園子が無事でよかった。

私が迎えると、園子が私の胸に飛び込んできた。

「おかえり、園子」

「おかえりなさい、園子さん」

園子が二人の言葉に涙する。

その再開の言葉のあと、空に大きな亀裂が走る。その亀裂から新たな脅威が現れた。

「そんな。14体目のバーテックスなんて」

先ほどとは違って、園子の顔が真っ青になる。

「もう一度、満開するしかない。じゃないと、この国は滅びる」

14体目バーテックスは今までのやつとは違い。ひどく小柄な形をしている。それになんだか人に近い形をしていた。背中には羽根のような物が付いている。まるで、旧時代の漫画に出てくる天使のような。

天使は、その優雅な動きとは裏腹に、直線的に攻撃を繰り出した。その攻撃を園子のせいれいが受け止めた。だが、その瞬間とんでもないことが起こった。天使はあろうことか、せいれいを掴み、口(?)の中に放り込んで、食べたのである。

その瞬間、園子の勇者服が霧散して、元の服に戻る。

「・・・そんな。そんなはずは無い。勇者の力を取られた?」

園子は戦意を喪失していた。だが、天使にとっては攻撃対象がただの止まった的になっただけ、園子に向けて無慈悲に繰り出す。私はその間を割って防御する。私にはせいれいが付いていないからかもしれないが、勇者の力は失われていない。でも、天使の攻撃が凄まじく防御をするのが精一杯。反撃の余地が無い。そして、痺れを切らせた天使が特大の攻撃を繰り出そうと力を貯め始めた。今度こそヤられると思った瞬間。それは起こった。

長い棒のような形状の物を持った短髪の少女が一瞬で、天使の攻撃をかき消したのだ。そして、天使は脅威を感じたのたのか。空の亀裂から撤退した。

謎の少女はこっちを向くと、園子の前に立つ。

「よう、お前が乃木か。うどんと蕎麦のどっちが優れているかを決めに来たぜ」

なんだか、よくわから無いことを言っている。うどんと蕎麦。何を言っているんだろうこの子は。園子は、短髪少女の言っていることをよく聞いてい無い。

「あー、なんか心ここに非ずか。そんなんじゃ、蕎麦が勝っちゃうよ。まあいいや、これじゃあ、勝負にもならないか。そこのアホそうな人」

なんかすごく失礼なことを言う人だな。

「ボクはシラトリ。この国の大社まで案内よろー。それから、寝床もね。夕飯はもちろん蕎麦だからね」

とっても失礼なボクっ娘の言葉のあと、樹海化警報が解かれたのか。辺り一面が真っ白になる。今日の戦いは終わったのだ。でも、あの天使の形をしたバーテックスはなんだったのか。そして、せいれいを食べられた園子は大丈夫なのだろうか。何よりも、この状況を読んでいた春信先生とセンセイさんの目的は何なのか。そして、謎のボクっ娘は何者なのか。分から無いことだらけである、でも1つ分かったことがある。私は初めての戦いに生き残ったのだ。誰一人犠牲者を出すことなく。それが、唯一の私の勝利でもあった。

 

 

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