「リョーマ君! 待って! リョーマ君ってば!!」
一人の少女が必死に前を歩く少年を追いかけた。
少年は振り向くこともせずに黙々と歩き続ける。
「リョーマ君!!」
何とか追いついた桜乃はリョーマの袖口を強く掴んだ。
それにより歩みは止まる。
「・・・何」
「どうして・・・、どうして留学のこと黙ってたの・・・・・」
「なんで話さなきゃいけないわけ?」
「!
だって・・・、だって私、リョーマ君の彼女でしょ・・・・・?」
リョーマの冷たい目に桜乃は怯えたように身を縮め、自信がなさそうに問う。
その拍子に先ほどまで掴んでいた袖口から手を離してしまった。
「・・・彼女、ねぇ・・・・・」
「・・・わ、私、リョーマ君のこと大好きだよ!
だから・・・、だから言ってほしかった・・・・・」
自分の気持ちを一生懸命伝えようとする桜乃はなんと健気なことだろう。
それに反してリョーマは無表情のまま言った。
「スキ?ナニソレ」
「え・・・?」
「本気で言ってるわけ、ソレ
俺は別にあんたのことなんてなんとも思ってないんだけど
今まで遊びで付き合ってただけだしね
勘違いして本気になられてもはっきり言って迷惑なんだよね」
桜乃は驚きに目を見開き、廊下に座り込んだ。
その目からは次から次へと大粒の涙が流れ、彼女の頬を濡らしていった。
「いい機会だからさ
さっさと終わりにしたいんだよね」
そんな桜乃の様子を見てもなんとも思わないのか、表情を動かさずに言い募る。
「そ、そんな・・・、ひどい・・・・・・ひどいよ・・・・・・・・」
つぶやくように言う桜乃。
そしてとうとう顔を両手で覆ってしまう。
そんな彼女を一瞥するとリョーマはそのままその場を離れていった。
・・・強くその手を握りしめながら。
(これでよかったんだ、これで・・・
このまま君を残してもたださびしい思いをさせるだけだから)
「っ・・・」
近くにあった空き教室に入るとリョーマは耐えていた涙を流し、声が漏れぬよう
強く唇をかんだ。
そこは桜乃がいたところからずいぶん離れた場所だった。
(・・・桜乃・・・・ごめん・・・・)
少年の想いは彼女に届かない。
(それでも・・・好きなんだよ、・・・・リョーマ君・・・・・)
そして、少女の想いも少年には届かない。
end