咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩 作:隠戸海斗
第四試合
東4局0本場 親・未春 ドラ{7}
まこはこの試合が始まってから気になっていたことがあった。
それは先程から清澄の麻雀部員が揃ってもう一つの卓の見学に行ってしまっていることではなく。
いや、それはそれで気になる事だが今言いたいのはそう言うことではない。
現在親を務めている風越の吉留未春のことだ。
まこ 53300
手牌
{六111245
面前混一聴牌。
捨て牌からも見え見えなのでリーチをかけない事で手の進行を悟らせない。
それに対して未春は、不要牌を手から取り出そうとして一瞬止まる。
それから捨て牌を見回して改めて別の牌を切る。
毎回ではないがそんな打ち方をしている時があるのだ。
そして流局。
「「聴牌」」
「「ノーテン」」
未春手牌
{四四⑤⑥⑦⑦⑧⑨23} {東東横東}
先程未春が切ろうとして止めた牌は{2と3}だ。
まこが索子の染め手であることは察していただろうから押さえておいてもおかしくは無い。
おかしいのは{2と3は押さえるくせに、5や8}はあっさりと切っていることだ。
こうして流局した時や回し打ちして上がった時の形を見ると、そうやって押さえているのは誰かの上がり牌。
(・・・・・・間違いない、吉留さんはわしらの当たり牌を見切っとる)
それもただのデジタルや人の癖を見抜いての事ではなく、
おそらく第六感的なもので、だ。
通常そんなことはあり得ない。
が、そんなあり得ない事が出来る連中はこの合宿に参加しているメンバー内にもごろごろいる。
目の前でそういう現象を見せられている以上、「そんなオカルトあり得ません」などとは言っていられない。
吉留未春からロン上がりは不可能と考えて打つしかないだろう。
とはいえ。
(・・・・・・まぁ、わしは読みやすい染め手がよう来おるし、元々ツモ狙いが多いけぇ対して問題は無いじゃろ)
東4局流れ1本場 親・未春 ドラ{6}
まこの推測通り、未春は他者の上がり牌を察知することができる。
それも直感的に。
しかしそれほど有効な能力ではない。
色々と制約があるのだ。
まずこの危険察知、他者の上がり牌を切ろうとした時にしか発動しない。
手の中に牌が収まっている状態で「これとこれが誰々の上がり牌」と見切れるわけではないのだ。
さらに手にした牌が危険だと察知できても、それが誰の上がり牌かまでは分からない。
本当に上がり牌が分かるだけなのだ。
そしてもう一つ、一巡に一度しか発動してくれないのだ。
つまり誰かの上がり牌だと察して手牌に収め、その後再び別の誰かの上がり牌を手にしたとしてもその時には危険と感じることができないのだ。
それでもこの能力との付き合いも長い。
それに加えて風越のキャプテン美穂子はデジタル派に見えてこう言う話に中々理解がある。
そんなキャプテンの助言もあってこの能力を完全にものにした未春。
レギュラーを獲得した実力は伊達ではない。
そんな自信を胸に手を進めていって10巡目。
既にタンピン三色が見える良形の一向聴だ。
未春手牌
{五六七③④⑤[⑤]
(ん、無駄ヅモ・・・・・・)
やれやれとそれを切ろうとした刹那、ピタッと手が止まる。
(・・・・・・この感じ・・・・・・誰かの危険牌!?)
ちらっと全員の様子を見る。
(・・・・・・染谷さんは捨て牌から見て萬子の染め手・・・・・・それとも染め手に見せた普通の手?
深堀さんはいつもの調子ならまだのはず・・・・・・。
となると・・・・・・)
対面のゆみが第一候補。
いずれにしても{①}は切れず、そのまま抱えるしかない。
どうするかと悩んだ挙句に{⑤}を切り出す。
そして2巡後。
{五六七①③④[⑤]
危険牌の{①}が手牌に溶け込んだ、ありがたい。
{5}を切って聴牌を取る。
そして数巡後、聴牌を疑ったゆみやまこを抑えて見事上がりきった。
「平和ツモドラ2赤1、4100オールです」
東4局2本場 親・未春 ドラ{③}
まこ 50200
手牌
{三四六八九
(ん~・・・・・・今回は染め手に行けなさそうじゃの)
愚痴をこぼしつつ少しだけ悩む。
そして。
(・・・・・・決めた、今回は三色を目指す)
{西}を切って手を進める。
そして9巡目。
{三四六七八九②
何とかここまでこれた。
「リーチじゃ」
{九}を切り出す。
まこ捨て牌
{西東白中南⑨一七} {
それに対して。
未春 54200
手牌
{三三四五六
タンヤオドラドラ、シャボ待ちという形で聴牌していた。
そこに引いてきたまこの当たり牌。
ツモ切りしようとした途端にピタッと手が止まる。
(・・・・・・もしかして染谷さんの当たり牌?)
当たり牌となれば切るわけにはいかない。
それを手中に収めて{三}を切り出す。
当たり牌を抑えた上でタンピンドラドラの聴牌、悪くない。
そして次巡。
{二三四五六
(あらら・・・・・・)
ドラの{③}が暗刻になってしまった。
{二}はまこの当たり牌なので切れないとして、{六}を切ってのタンヤオドラ3かそのままツモ切りしてのタンピンドラドラ。
どちらをとるか。
むぅ、と少し悩み未春は{五}に手をかける。
途端、ピタッと手が止まった。
(やっぱりこれも当たり牌、なら染谷さんの待ちは{二-五}!)
{五を手に収め、六}を切り出した。
まこの待ちが{二-五}なら同テン、仮に誰かが捨てても頭ハネできるし、自分で引いてももちろんよしと考えての結論だ。
未春捨て牌
{北發⑨①白中北⑧2三} {六}
そんな未春の捨て牌に目を付けた者が一人。
対面のゆみである。
気になったのは今の捨て方、{三六}切りである。
(・・・・・・さっきから気になっていたのだが、彼女は人の当たり牌を察知しているかのような打ち回しをしている時がある。
先程の局も私の上がり牌を抑えての上がりだったようだし。
・・・・・・となると、今の不自然な切り出し方も清澄の上がり牌を抑えての事か・・・・・・?)
それはつまり逆に言えば、未春の打ち方をじっと観察すれば他家の上がり牌を読むこともできる、ということなのではないか?
じっと捨て牌を観察して思考を回転させる。
(清澄の聴牌後の{三、六}切り・・・・・・すでに10巡目だし不要牌として抱えていたとは考えにくい。
仮に手牌に{三四五六とあったのなら三はまだしも六}は切れないはず。
おそらく{三三四五六か三四五六六}の形だろう。
しかも{三三切りや六六}切りにしなかった。
安全を考えれば同じ牌を切った方がいいだろうにそうしなかったのは・・・・・・おそらく{三六}と切れば聴牌になるからだ。
つまり{三四五か四五六}+清澄の当たり牌で聴牌ということ)
そこまでくれば予測がつく。
({二を引きこんでの二三四五か、七を引きこんでの四五六七}。
清澄の捨て牌に{七があるのだから七}を危険牌として止める理由は無い。
つまり、{二}が清澄の当たり牌か)
まこの捨て牌は端牌が多く、精々タンヤオ手か索子の染め手くらいとしか読むことはできない。
待ちが萬子なら索子の混一は消えて、平和を絡めて待ちは{二-五}と言う可能性が濃厚。
ゆみ 59800
手牌
{二六⑤[⑤]⑨46
(・・・・・・清澄の捨て牌、索子の染め手辺りを警戒していたがタンピン手か。
待ちは{二-五}で決め打たせてもらおう)
ゆみは{4を切り出し、次巡六}を切る。
そしてまた数巡後。
「ツモ」
ジャラッと手を倒した。
{二二⑤[⑤]⑨66東東南南北北} {
「七対子ツモ赤1、
その手牌を見てまこは顔をしかめる。
({六や4を切っておいて二}は止めて上がりじゃと・・・・・・?
わしの捨て牌からそこまで読んだんか?
いや、そこまで読めるとは・・・・・・)
一方未春は嫌な予感を感じていた。
(まさかこの人も危険察知ができるの?
それともただのデジタルでここまで読めるものなの・・・・・・?)
もしくは・・・・・・先程の{三六}切りを回し打ちだと見抜いて、そこから自分の手を読まれた?
だとするとつまり・・・・・・。
(り、利用された!?
もしかして私の能力バレてますか!?)
ごくっと唾を飲み込む。
大会決勝まで残った鶴賀の大将、甘く見ていたわけではないがこれほどとは!
まこもちらっとゆみの表情を窺う。
(吉留さんの手牌を読んでそこからわしの当たり牌を見抜いたんか?
たしか「反射」とかいう相当高等な技術のはずじゃ。
昔志野崎先輩に教えて貰ったけどよう分からんくてわしには使いこなせんかったが・・・・・・)
まこはパタンと手牌を閉じ、自動卓の穴に牌を流し込む。
(・・・・・・昨日は藤田プロのお手伝い気分で打っとったが・・・・・・なるほど、もう少し気ぃ入れんとなぁ)
牌を流し終え、山ができると同時にまこは眼鏡を外した。
「・・・・・・大会で見た以上に、彼女相当打てますね」
「風越のキャプテンさんにそう言って貰えると鼻が高いですよー」
美穂子の呟きを聞き逃さなかった蒲原が答える。
「彼女は麻雀を始めてどれくらいかご存知ですか?」
「まだ2年くらい、むっきーやモモの方が麻雀歴長いくらいかなー」
わっはっはっと笑う蒲原とは裏腹に表情を変える美穂子。
(2年!? 2年であんな高等な打ち方を身につけているなんて・・・・・・!)
再びゆみに向き直ってその様子を観察する。
(・・・・・・天江衣と宮永咲さん・・・・・・県大会の決勝卓で魔物は二人だと思ってたけど、とんでもない)
彼女も十分魔物だ。
南一局0本場 親・まこ
まこ 47400
(むぅ・・・・・・せめて原点の50000は持って終わりたいところじゃけど)
そう思いつつ手を進めるが、8巡目。
「リーチ」
ゆみがリーチを宣言する。
(せっかくの親番で稼ぎたいところに・・・・・・!)
まこも未春も回し打ちするが、結局ツモられる。
「ツモ、リーヅモ七対子赤1、2000・4000」
(また親っかぶり・・・・・・くぅぅ・・・・・・!)
南二局0本場 親・ゆみ ドラ{③}
まこ 43400
手牌
{二三四七九①④
何とか点数を稼ぎたい状況。
そうでなくても70000点を超えているゆみの点数は削りたいところだ。
しかし未春の危険察知にゆみの手牌読み、どちらも厄介極まりない。
ならば、とまこは{①}に手をかける。
(わしもちょっくら、利用させてもらおうかいの)
5巡目。
「ポン」
まこは{西}を晒す。
(南場で北家が{西}ポン・・・・・・何を狙っている・・・・・・?)
ゆみは不審そうな表情でまこの捨て牌に目を向ける。
萬子、筒子が並んでいて明らかに索子の混一狙い。
(また染め手か・・・・・・良く入るな、清澄)
そして11巡目。
(・・・・・・風越、この局はまだ危険牌を抱えたようなそぶりは見えない。
清澄もまだ張っていないのか?)
なら攻め時か、とゆみは不要牌の{一}を切る。
途端。
「ロンです」
「!?」
ジャラッと未春は手牌を倒した。
{一②②
「發一盃口ドラドラ赤1、8000です」
バッとゆみの視線がまこに向く。
(聴牌気配がないからと油断した・・・・・・ブラフか!?)
(ふふん、気づいたか)
まこ手牌
{二三四④⑥⑥1269} {横西西西}
染め手を狙っているように見せておいてその実ノーテン。
当然未春の危険察知も働かない。
今度はまこが未春の能力を利用してゆみの点棒を削った形だ。
しかしこうしてみると、厄介と思っていた未春の能力だが。
(・・・・・・結構利用できそうなもんじゃの)
そんなまこの視線に気づいたのか未春が表情をゆがめる。
(わ、私の事踏み台にしようとか思ってますかー!?)
未春の危険察知は別の事に対しても発動していたようだ。
南三局0本場 親・深堀 ドラ{9}
そしてこの局まだ5巡目、未春が不要牌を切ろうとしたところでピタッと手が止まった。
(まだ5巡目なのに!?)
まことゆみの様子を見るが、まこは手牌に目を落としたまま、そしてゆみは今の未春の不要牌察知を感じた模様。
(やっぱり私の能力バレてるー!
ってそれよりも! 二人の様子を見るとどちらも聴牌していない?
ってことは・・・・・・)
ちらっと深堀の様子を見る。
ここまで一度も上がっていない深堀だったが・・・・・・。
(・・・・・・き、来てる・・・・・・)
未春は危険牌を抑えて別の牌を切る。
その打ち回しにゆみとまこの目も深堀に向く。
(風越の深堀・・・・・・今までノー和了だったが・・・・・・)
(まさか・・・・・・流れを読んだりだとかツキを蓄えたりだとかしとったんか!?)
次巡、深堀は手牌から先程未春が止めた不要牌を切る。
そして。
「リーチ」
聴牌を宣言した。
(聴牌してたのに待ち変え・・・・・・?)
(ちゅーことは・・・・・・高目手変わりしたんか?)
ゆみとまこも警戒しつつ打ち回す。
未春に至ってはもう降り打ちのようだ。
そして健闘むなしく数巡後。
「ツモ」
ダァンと牌が卓に叩きつけられ、ジャララララと手牌が倒される。
{一一二二三三⑦⑦⑧⑧⑨
「リーピンツモ純チャン二盃口ドラ2」
(
(そこまで入ってるか・・・・・・!)
12000オール。
たった一度の上がりでトップだ。
これには見学者もびっくりだ。
蒲原も開いた口がふさがらない。
「・・・・・・ゆみちんがコツコツ離してきた点差が一気に逆転・・・・・・!」
「あれがあるから深堀さんは怖いんです」
「いや、怖すぎですよ」
美穂子のくすっという笑いに、さすがの蒲原もいつものようには笑えない。
南三局1本場 親・深堀 ドラ{6}
まこは手牌整理をしながら深堀に意識を向ける。
(・・・・・・まずい、この手のタイプは一度上がるとそれ以降も高い手が入ってくる・・・・・・)
先程の上がりでまこは31400、4位転落だ。
この調子で上がり続けられたら次以降の試合が相当キツくなる。
ましてや直撃で上がられたら。
(まずいまずい! 振り込みだけは絶対避けんと!
けどもう南三局、ラス目が逃げ回ってても勝てん!)
どこかでチャンスを見つけて上がりに向かわないと!
そしてまた6巡目、未春の手がピタッと止まった。
それをゆみは見逃さない。
(聴牌・・・・・・また深堀か・・・・・・)
こうなると手がつけられない。
ゆみは現在55800の2位、このまま終えても十分と言えるだろう。
(・・・・・・無理はできない)
怪しい牌を抑えながら回し打ちをするしかない。
一方同じ学校の未春は3位でありながらそれほど危機感を抱いていない。
それは同じチームメイトとして深堀の事をよく知っているから。
(深堀さんはこうやって一撃で逆転手が入る人。
そこがとても怖くて・・・・・・でもとても優しい人)
タンと不要牌を切る。
(その優しさが魅力で、時に弱点で。
コーチにも怒られることがありましたよね)
タンと不要牌を切る。
(でも今は・・・・・・単純に嬉しいですよ)
深堀が{四}を切り、未春にフッと笑いかける。
未春も笑い返した。
{五六④⑤⑤⑥⑥⑦45
「ロン、タンピン三色ドラ1、8300」
「はい」
点棒のやり取りをする二人に、さすがにまこもゆみも違和感があった。
(今のは・・・・・・どう見てもわざと振りこんだとしか思えん!)
(点数を稼いで味方を援護・・・・・・。
なるほど、このゲームの決勝卓は点数が多い上位4名だったな。
味方を増やして後々有利になろうという作戦か。
これは賢いと言わざるを得ないな・・・・・・)
これで未春は53100、ゆみとはわずかに2700点差。
一度の上がりで逆転される可能性は大いにある。
そして勝負はオーラスに突入する。
南四局0本場 親・未春 ドラ{三}
配牌を受け取ると同時に各々自分の点数からやる事を即座に決める。
ゆみ 55800
手牌
{六八八[⑤]⑧1359南北中中}
(・・・・・・トップの深堀との点差は3900、わずかだ。
できるだけ多くの点を取りたいところだが最悪4000のツモで逆転する。
赤があるこの手、リーヅモ赤1でも十分逆転。
{中}は対子だが鳴かずにツモ待ちか頭として使う)
未春 53100
手牌
{一二五八⑤⑧5669南西發} {七}
(深堀さんとは6600点差、2000オール以上で上がればそこで上がりやめができる。
リーヅモ平和に裏ドラ期待するよりは567の三色辺りを狙いたいところ。
ドラが引ければ一番なんですけど)
{西}に手をかけ、捨てる。
深堀 59700
手牌
{一一五九①③③⑦244西發}
(ツモ上がりでは吉留さんが親っかぶり・・・・・・。
他の二人を狙いつつ援護をしていく)
そして現在最下位のまこ。
配牌を受け取って悩んでいる。
現在3位の未春とすら20000点以上の差がある。
倍満ツモでもようやく3位という状況だ。
そんな状況でどうするか。
まこはため息を一つつくと、ニッと笑った。
(ほんなら、三倍満でも役満でも狙うだけじゃ)
志を決めたところでそれぞれ手を進めて行く。
そして8巡目。
ゆみ手牌
{六七八八[⑤]⑥1
{9}を切って一向聴。
(・・・・・・{④-⑦が来てくれれば五-八、中}の三面張になる。
狙い通りになったとしてもリーチは必須か・・・・・・)
リーチをかけなければ{中}を引かない限りツモっても逆転できない。
そしてその{中}もまこの捨て牌に一つある。
残る一枚を期待するよりはリーヅモ赤1を狙った方がいいだろう。
未春手牌
{一二
手の寄り方が微妙だ。
678か789の三色も狙えそうな形。
しかしどちらかは切り捨てなければならない。
次局もあると考えればとにかく上がりにかけなければならないし、{9}を切り出して受け入れを広くする。
混戦状態でそれぞれが手を進める最中、まこが小さく一息ついた。
(・・・・・・ようやく来おったか)
まこ手牌
{①①①②④⑤⑥
面前清一と一盃口、高めの一通を引いても倍満止まり。
リーチをかけてツモればようやく三倍満。
なら、それを狙うのみ!
「リーチ!」
そしてそれを機に全員の手が動き出す。
ゆみ手牌
{六七八八八[⑤]⑥
{五-八・中}の変則三面張!
(来てくれたか、最高形で)
ならばこちらも引く道理は無い。
{5}を切って千点棒を出す。
「リーチ」
深堀はチャッとツモると暫し考え、手牌から{一}を切り出した。
未春手牌
{一二
({⑤}を切れば受け入れの広い一向聴だけど・・・・・・!)
まこがどう見ても筒子の混一。
いや、逆転を狙って清一だろう。
(でも、試してみる価値はある!)
{⑤}に手をかける。
何の反応も無い。
(ならよし!)
そのまま{⑤}を切った。
そして次巡{五をツモ、6}を切って平和ドラ1聴牌だ。
そのまま互いに上がり牌を引かず、残りツモも少なくなって来た時、
まこの手に上がり牌が舞い込んできた。
{①①①②④⑤⑥⑦⑦⑧⑧⑨⑨} {
「!!」
思わず手が止まる。
高めの一通が消えてリーヅモ清一一盃口で倍満。
通常なら当然裏ドラ期待もせずに見逃して高めツモ狙い。
だが。
(・・・・・・なんか引っかかる! 過去に似たような場面を見たような・・・・・・!)
何がどう引っかかるのかは説明できない。
だが、まこの過去の経験が危機を告げる。
それ以上突っ込んではならない、と。
そしてまこはその経験を頼りに今まで打って来たのだ。
経験とは歴史、血肉。
無碍にはできない。
くっ、と一瞬歯が鳴り、まこは断腸の思いでツモ牌を表にした。
「ツモじゃ!」
ジャラッと手牌を倒す。
「リーヅモ清一一盃口!」
裏ドラをめくるが現れたのは{3}。
「・・・・・・裏無し、4000・8000じゃ」
第四試合終了
まこ 48400
ゆみ 50800
深堀 55700
未春 45100
「はぁぁ・・・・・・」
がくっと項垂れて眼鏡を戻すまこ。
(・・・・・・親っかぶりでまくられた・・・・・・)
同じくがっくりと項垂れながらも、納得いかなそうにまこをみる未春。
それはゆみも同様。
(清澄・・・・・・三着確定で上がるとは・・・・・・。
逆転を諦めないでツモ切りするタイプだと思っていたのだがな)
そんな二人の感情を知ってか知らずか、苦笑いを浮かべるまこ。
不意に深堀が口を開いた。
「・・・・・・何故{③}ツモを狙わなかったの?」
二人の気持ちを代弁するように。
まこはやはり苦笑いを浮かべながら答えた。
「わしも普段ならそうした。
じゃけど今回は別じゃ。
よう分からんが、どうしても引ける気がせんかったんじゃ」
その言葉にゆみは自分の手牌を晒す。
{③}は無い。
未春も自分の手牌を倒して晒す。
やはり{③}は無い。
ならば・・・・・・?
フッと笑いながら深堀が手牌を晒した。
「いい読みです」
{一一一四五①③③③③444}
{③}は全て深堀が押さえていた。
あのまま{③}ツモにこだわっていたら決して上がれずに誰かに上がられたか、最悪振り込んでいた可能性が高いだろう。
結果的に正解。
だが、今度はまこが疑問をぶつける番だ。
「三暗刻が狙えたじゃろ。
なんで{③}を暗槓して{①}単騎に受けずに役無しにしとるんじゃ?
仮に自分で上がらずとも吉留さんにドラを乗せる手伝いができるじゃろ」
深堀は事もなげに答えた。
「あなたが筒子待ちというのは明白だったから、この辺りを抑えておけばツモを期待して空回りさせられると思った。
その間に吉留さんが上がれれば、と」
まさにそうなりかけていた。
深堀の読み通りになるところだったわけだ。
危ないところだった、とまこが笑う。
「いじわるなお人じゃのう」
深堀はフッと笑って返した。
「かわしたくせに」
あー、頭痛い。
何故こんな面子を集めた・・・・・・くそ、藤田プロめ(
みはるんの能力はゲームの物を使いました。
深堀さんは能力無いけど、なんかこんなイメージなんで(