咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

15 / 83
15福路美穂子その4 デジタルと能力者

第五試合 親順

文堂→咲→数絵→和

 

 

第六試合 親順

優希→美穂子→蒲原→智紀

 

 

 

親決め後、席に着いた数絵が視線を向けたのは上家の咲。

個人戦の直接対決でマクられた因縁の相手である。

 

「今日は勝たせてもらいます」

 

目が合ったところでそう告げる。

咲はむ?と表情を変え、しかしすぐに笑顔で返事をした。

 

「よろしくお願いします」

 

予想外に柔らかい返事。

対戦の最中はもっとこう・・・・・・「10年早い」とか言いそうな威圧感を感じたものだが。

素っ気ない返事は寂しかったが、そんな事を言われたらそれはそれでイラつくだろう。

まぁ、相手の反応がどうであれ自分はやるべきことをやるだけ。

数絵は小さく深呼吸して意識を改めた。

 

「よろしくお願いします」

 

 

(宮永さん・・・・・・気合いが入っているようですね)

 

そしてもう一人、言わずと知れたスーパーデジタルの全中王者(インターミドルチャンピオン)和。

その手元にはいつも通りのエトペン。

 

(練習とは言え試合に変わりはありません。

 私も気を抜けませんね)

 

小さく深呼吸して卓に意識を向ける。

 

「よろしくお願いします」

 

 

そしてそんな空気に一人入りこめない文堂。

少し気弱に挨拶するしかできなかった。

 

 

 

 

一方、もう一卓。

席に着いた優希は下家の美穂子に目を向ける。

その視線に気づいたのか美穂子も顔を上げ、目が合った。

 

県大会の団体戦先鋒同士でぶつかった時、龍門渕に一方的にやられていたのを助けてくれたことには感謝だ。

が、その後いいように使われて気づけば点数をさらわれていき、結局いつの間にやらトップは美穂子という結果だった。

思わず訪れたリベンジの機会。

 

「今回は負けないじぇ!」

 

ビシッと言い放つ。

美穂子はくすっと笑って返事をした。

 

「お手柔らかに、よろしくお願いします」

 

残った智紀、蒲原は大会でさして全力を出せず不本意な結果に終わったが、それ故にどのような打ち方をするのかが不明。

 

この試合がどういう展開を迎えるか、当人たちにも見学者にも不明だ。

 

「わっはっは、よろしくお願いしますー」

「・・・・・・よろしくお願いします」

 

揃ってぺこりと頭を下げ、試合は始まる。

 

 

 

 

 

第五試合

東一局0本場 親・文堂 ドラ{中}

 

文堂配牌

 

{一三九九⑤⑦55789東南} {二}

 

(・・・・・・これは・・・・・・)

 

とりあえず{南}を切る。

そして次巡。

 

{一二三九九⑤⑦55(横⑦)789東}

 

予想外。

この面子を相手にかなりの好配牌、ツモもよさそうだ。

東場の親、ダブ東は魅力的だがそれよりもこの手は平和手に伸ばすのが最善と思われる。

あっさりと{東}はここで捨てた。

 

そのまま流れに乗って7巡目。

 

{一二三三五⑤⑥⑦5(横二)5789}

 

多少無駄ヅモはあったものの、手なりであっさり聴牌。

前巡既に聴牌していたが、待ちがいい平和手へと手変わり待ちをしていたら一巡で有効牌が来る、幸先がいい。

 

「リーチです」

 

しかも捨て牌はこの形。

 

{南東九九八⑦} {横五(リーチ)}

 

巡目は早いが索子の混一を思わせる捨て牌だ。

上手くハマってくれればあっさりロン上がりも可能だろうと期待しておく。

 

 

一方の和。

 

{三四四五六七七(横一)八③④233}

 

{一}は不要牌。

だが和の視線は文堂の捨て牌に向く。

そして少しだけ手を止め、{3}を切り出した。

 

 

「え、{3}っすか・・・・・・?」

 

それを後ろで見学していたモモは思わず声を漏らす。

文堂のリーチは索子の混一と見てもおかしくないと思うのだが。

 

「おそらく混一は無いと読んだのだろう」

 

そこにゆみが解説を付ける。

と言っても原村和本人ではないのでおそらく、と一言ついてだが。

 

「混一で第一打字牌というのはまずあり得ない。

 それだったら{九}二枚を先に落としているだろう。

 それに原村和の事だ、余り牌無しで門前混一が7巡で聴牌になるなんて精々何%以下、とか考えているのかもしれない。

 

 どうであれあの捨て牌から索子の混一以外と読んだ場合、危険なのはリーチ宣言牌{五}の裏スジか跨ぎスジ。

 {三-六、一-四-七}の可能性をより危険視したのだろう」

 

「な、なるほど・・・・・・」

 

私ならあっさり{一}切っちゃいそうっすけど、とモモは改めて卓に視線を戻す。

 

「・・・・・・モモの場合ステルスがあるから切っても大丈夫とか思ってるかもしれないが、そう言う捨て牌読みを覚えて損は無いぞ。

 来年には先輩だ、ステルスに頼らず後輩にそう言う技術を教えられるようにならないとな。

 それに万に一つ、気配が消える前に狙い打ちされてトバされる、何てことになったら目も当てられないしな」

 

ゆみがそう言うとモモは「が、頑張るっす」と気合いを入れるのだった。

そんなモモを見てフッと笑うと、ゆみも卓に視線を戻す。

 

 

9巡目。

 

咲手牌

 

{③④(横四)⑧⑧⑨⑨6688北(ドラ)中}

 

{(ドラ)}が鳴いていければ満貫確定、手もあっという間に進めて行けただろうが、さすがにあっさり切る様な面子ではない。

手なりで進めて行ったが牌が重なるようで七対子一向聴だ。

ちらっと文堂の捨て牌に目を向ける。

 

文堂捨て牌

 

{南東九九八⑦横五(リーチ)②二}

 

あれから一向に捨て牌に索子が増えない。

混一の可能性を消しきれない咲としては{四}の方が安全と見て切り捨てる。

 

「ロンです」

 

パタッと文堂は手牌を倒した。

 

「リーチ平和・・・・・・裏1、5800です」

「あ、はい」

 

振り込んだことに変わりは無いが安くて良かったと咲は一安心する。

一方点棒を受け取った文堂は、よしと自分に気合を入れ直す。

この面子からとりあえず先制して点数が奪えたのは僥倖だ

先制だけでなくこの調子で上がりを取っていきたい。

 

 

 

東一局1本場 親・文堂 ドラ{五}

 

文堂手牌

 

{一三[五](ドラ)九①③④⑦⑦147南} {③}

 

先程よりは少し配牌が落ちたか。

しかし麻雀とはそういうもの、上がり続ければ手が良くなるなんてオカルトだ。

和ならそう言うに違いない。

{九}を切り出す。

 

しかしその後、6巡目。

 

{一二三[五](ドラ)①③③④⑦(横6)⑦478}

 

無駄ヅモはあったものの順調に手は進む。

やはり流れは掴んだか。

{①}を切り出す。

この局も行けるかもしれない、そう思った直後だった。

 

「リーチです」

 

和から声が上がる。

 

和捨て牌

 

{①白四⑥六} {横3(リーチ)}

 

(早い! しかも何ですかその捨て牌は!?)

 

デジタルの和が何をどう考えてそんな捨て牌になったのか。

配牌は? ツモは?

数絵も和の捨て牌を見て同様の意見だ。

 

数絵手牌

 

{二二五七七八九⑤(横二)⑧⑧556}

 

(捨て牌は全て手出しだったはず・・・・・・しかもドラそばの{四}を三巡で切るとは。

 チャンタ・・・・・・いや、でも最初の{①白}切りが解せない。

 混一? それでも{白}の切り出しが・・・・・・よっぽどいい配牌でタンピン手?)

 

わけが分からない、と数絵は特に確証も無く{七}を切り出す。

何を狙っているのか分からないことには読みようがない。

 

 

 

(ふーん・・・・・・なるほどね)

 

和の手牌を見てきた久がその対面、咲の後ろにいる秀介の隣に戻ってくる。

 

「さてシュウ、和の手牌は何でしょう?」

 

ふふっと笑いながら久はそう言った。

果たして秀介はその手牌を読めるのか。

 

「・・・・・・まぁ・・・・・・」

 

秀介は腕を組んで考えながら、しかし確信しているように答えた。

 

「七対子だろ」

「あら」

 

久の反応、どうやら正解のようだ。

しかし何故分かったのか?

 

「{①白}辺りでは普通に手を進める予定だったんだろうが、ドラ表示牌の{四}早切り、あれは七対子くらいしかあり得ない。

 おそらく5巡目で張ってたんだろうが{3}単騎はよっぽどの確信が無いと狙い辛い。

 ツモ、ロンどちらを狙ったにしても他家の捨て牌を見るに{3}が確実に不要牌だと言える者はまだいない。

 手牌に抱えられている可能性、及び今後ツモられた時に手に抱えられる可能性大だ。

 それを考えて逆に狙いやすそうな牌・・・・・・ヤオチュー牌辺りに待ち変えしたってところじゃないか?」

 

はー・・・・・・と、久以外にもそれが聞こえていた面子から声が上がる。

 

「・・・・・・相変わらずその読みはありえないわ」

 

久も思わずそう言う。

秀介はフッと笑った。

 

「デジタル舐めんな」

「デジタルを名乗りたければもっとそれらしい打ち方してよ」

「悪待ちのお前が言うか」

「私はそんなにデジタルなんて名乗ってないもの。

 ただ考え方の一部としてデジタル思考を使わせて貰ってはいるけど」

「明日からもっとデジタルしようぜ、俺のように」

「あんたの打ち方はあんたにしか無理よ」

 

漫才のようなやり取りに周囲から笑いが起こる。

 

 

そんな事をしているうちに10巡目、文堂に聴牌が入る。

 

文堂手牌

 

{一二三[五](ドラ)六③③④⑦(横四)⑦678}

 

和の待ちは気になる。

しかしこちらも平和にドラと赤、リーチをかけてツモるか裏ドラで親満だ、引く手は無い。

 

「リーチ!」

 

{③}を切ってリーチと行く。

和の手が七対子なら、めくり合いとなれば平和手の方が有利。

どちらが引くかというそんな勝負の中。

 

数絵手牌

 

{二二二(ドラ)五七八九(横9)⑧⑧567}

 

数絵が不要牌の{9}をツモ切りする。

直後。

 

「ロン」

 

和が手を倒した。

 

{一一三三⑨⑨22889中中} {(ロン)}

 

役は秀介の読み通り七対子、ヤオチュー牌の{9}待ち。

裏ドラをめくると現れたのは{7}。

 

「リーチ七対子裏2、8000です」

 

 

 

東二局0本場 親・咲 ドラ{6}

 

咲配牌

 

{七八②③④⑦⑧18東西北白} {5}

 

折角の親番だ、ここは上がっておきたい。

そして受け取った配牌はこの形。

順調に面子が揃えば字牌整理をしている間に聴牌できるだろう。

{1}を切り出す。

 

和配牌

 

{一四①②③⑥1(横①)245(ドラ)南西}

 

一方文堂の流れを食い止めたことでこちらに流れが来たのか、和の配牌がよくなった。

もっとも本人に言わせれば、配牌で三向聴の手が入る確率がどうたらと言うところだろう。

ともかく良形のこの手、こちらも順調に進めばあっという間に聴牌できると思われる。

{一}を捨てる。

 

そして進んで7巡目。

 

{三四[五]①①②③(横4)11235(ドラ)}

 

「リーチ」

 

他家は鳴きも入っておらず、手の進行が遅いと見て和は{①}切りで先制リーチをかける。

文堂も数絵も降り打ち。

咲が喰いついてこようとしたが結局和の上がりとなる。

 

「ツモ」

 

{三四[五]①②③112345(ドラ)} {(ツモ)}

 

「リーヅモ平和ドラ1赤1、2000・4000です」

 

 

 

東三局0本場 親・数絵 ドラ{4}

 

和手牌

 

{⑥⑦⑧1(ドラ)46(横6)778東東東}

 

流れは途切れない和、6巡で聴牌である。

 

「リーチです」

 

{1}を切り捨てる和。

それと同時に。

 

「カン」

 

声が上がる。

 

(宮永さん!)

 

和がバッと顔を上げた時には既にその手に嶺上牌。

タァンと卓に晒された。

 

「ツモ」

 

ジャラララと手牌が倒れる。

 

 

{[五]六七⑦⑧⑨35南南} {1横111} {(ドラツモ)}

 

 

「嶺上開花ドラ1赤1、5200」

 

 

流れに乗った和をあっさりと止める、その時点ですでに驚きである。

流れなど信じていない和としてみれば特にそんな驚きは無く、ただ咲が上がっただけという認識だろう。

チラッと視線を向けると咲と目が合う。

 

点差は一先ず和がリード。

だがまだ東場、そして咲の実力を知っている身としてはまだこの程度のリードでは足りない。

 

(・・・・・・負けませんよ、宮永さん)

(すぐに追いつくからね、原村さん)

 

お互いにフッと笑い合った。

 

 

 

 

 

先程靖子が告げたとおり、この試合が終わったら昼食である。

それを直接告げられたのは秀介のみだが、既に何人かは昼食を意識している時間帯である。

 

そんな中、彼女の手にはしっかりと好物のタコスが握られていた。

 

昼食前にそんな物をと言うべきか、一足早い昼食ととるべきか。

いずれにしろ彼女ならきっとこう答えるだろう。

 

「タコスは別腹だじぇ!」

 

 

 

第六試合

東一局0本場 親・優希 ドラ{8}

 

優希配牌

 

{一三[五]七七①7779東中中} {①}

 

(さぁ、トバしていくじぇ!)

 

速攻高打点を得意とする優希は迷わず{東}を切り出す。

そして3巡、無駄ヅモなく聴牌である。

 

{三四[五]七七①①7(横①)779中中}

 

「リーチだじぇ!」

 

東初の親の3巡リーチ、誰も立ち向かえない。

読めないゆえに下手な牌を切れず、喰いずらしもできないまま2巡後。

 

「ツモ!」

 

あっさりと手牌が倒された。

 

{三四[五]七七①①①777中中} {(ツモ)}

 

「リーヅモ三暗刻中赤1! 6000オール!」

 

 

(・・・・・・相変わらずの速攻高打点。

 南場まで凌ぐのは大変そうね、50000点もあってよかったわ)

 

美穂子は点棒を渡しながら少しだけ愚痴る。

だが表情はいつもの通り笑顔だ。

そう、南場になれば彼女の流れも終わる。

それまでは無理をせず、隙を見て上がりを取って流して行くだけだ。

 

 

 

東一局1本場 親・優希 ドラ{2}

 

この局も優希の速攻があっさりと決まる。

 

「ツモ!」

 

{五[五]③④[⑤]⑦⑧⑨(ドラ)3888} {(ツモ)}

 

「リーヅモドラ1赤2、4100オール!」

 

 

 

東一局2本場 親・優希 ドラ{⑨}

 

優希配牌

 

{七九九④⑤⑦⑦(ドラ)338南西} {3}

 

相変わらず配牌が落ちない。

{西}を切ってガンガン攻める姿勢を続ける。

 

美穂子配牌

 

{一二五六②④⑧(ドラ)25(横⑨)東北發}

 

(うーん・・・・・・)

 

手牌はあまり良くならない。

しかし美穂子は相手の癖から手の進行を読み、自分の手の進行の参照にする打ち手。

卓に着く前からデータ収集で癖を掴んでいるが、実際の対局でより詳しいデータを得る為にも前半は見に回る事が多い。

それを考えれば今現在配牌が悪くてもあまり問題にはならないだろう。

だがしかしあまりこのまま上がられ続けられるのも良くない。

二局の上がりで優希の点数はあっという間に8万点越えだ。

 

降りるのはいつでもできる。

誰かの手に聴牌気配を感じるまでは通常通り手を進めて行ってもいいだろう。

そう考え{北}を切り出す。

 

蒲原配牌

 

{二二三七①②⑥15(横⑦)6東北發}

 

未だ優希の流れにある中、蒲原の手は悪くない。

4つある塔子がそのまま横に伸びてくれれば良形の平和手になってくれるだろう。

{北}を切り出す。

 

 

そして5巡目。

 

優希手牌

 

{九九④(横九)⑤⑦⑦⑦(ドラ)12333}

 

早くも聴牌だ。

しかしここで優希の手が止まる。

いつもならこのまま流れに任せてドラ切りリーチと行くところだが、一手変わりで三暗刻だ。

しかもドラが使えず赤も無いこの手、どうあがいてもリーチツモしかなさそうに見える。

それなら東場の流れがある今のうちに三暗刻まで手を伸ばして点数を稼いでおきたい。

 

欲張りなのかもしれない。

確かに変に欲張るとそれは悪い結果となるだろう。

しかしこの早い巡目で好手牌。

 

(ただのリーチツモで上がったら、それこそもったいないじぇ!)

 

通常ではありえない一手、優希は{1}を切って聴牌を崩す。

ギャラリーも「いや、それはありえない」「何を考えてるの?」とざわつく。

 

そして次巡。

 

{九九九④⑤⑦⑦⑦(横⑦)(ドラ)2333}

 

「カン!」

 

{⑦}を暗槓。

その一手にギャラリーはさらにざわめく。

新ドラは{5}、またしても手に絡まない。

だが、嶺上牌は{③}。

 

「リーチだじぇ!」

 

{2を切って⑨}単騎だ。

 

 

 

「ドラ単騎・・・・・・」

 

少し無謀じゃないか?と京太郎が呟く。

確かにヤオチュー牌の{⑨}は使い辛いし、いずれ出るかもしれない。

しかしドラはドラだ、降り打ちで抱え込まれる可能性もある。

それが聞こえたのか、隣にいた未春が声をかけてくる。

 

「いえ、{⑦}を暗槓していますし、吊り出される可能性もあるかと」

「吊り出し・・・・・・?」

 

聞き慣れない単語なのか、京太郎が首を傾げる。

それを見て未春はクスッと笑い、説明をしてくれた。

 

「{⑦}が使い切られてしまったので、もう{⑦⑧⑨}の面子が成り立つことはあり得ません。

 そうなると{⑧⑨}のペンチャンで待っている人がいたら、手牌整理で切り出される可能性があるってことです。

 確かに手牌に抱え込んで降り打ちの可能性もありますが、逆に攻め気のある人がそう言う手格好になっていたら・・・・・・」

「な、なるほど」

 

可能性はある、と京太郎は意気込んで優希を応援する。

 

(・・・・・・もっとも、うちのキャプテンがそんなのに引っ掛かるとは思いませんけどね)

 

そして未春は未春でキャプテンを応援していた。

 

 

 

美穂子手牌

 

{一二三五六②④⑤(ドラ)⑨2(横③)(ドラ)6}

 

{2}を切り出す美穂子。

残念ながら{(ドラ)}は頭、溢れ出る形にはなっていない。

むしろ優希の待ちは既にあと1枚しかないということだ。

 

前述の通り、美穂子と優希は県大会で既に同じ卓を囲んだ間柄。

なので、美穂子は既に優希の癖からその手牌をおおよそ掴んでいる。

 

(こちらから見て左から4牌目の{2}を切り出してリーチ宣言。

 ならばそこから左3つは面子確定。

 さらにそこから1牌飛んで4つの{⑦}を暗槓。

 嶺上牌を右側に加えた結果綺麗に二面子。

 

 {■■■(リーチ宣言牌)■} {⑦■■⑦} {■■(嶺上牌)■■■}

 

 つまり待ちはカンした{⑦と2}の間の一牌、{1は現物だから⑧⑨}のいずれか。

 この場合より危険なのは{(ドラ)}の単騎待ち)

 

{(ドラ)}は美穂子が頭として使っているので上がれる可能性は低い。

{⑧}ならドラも絡まないので比較的安全ではある。

が、暗槓してリーチということはドラが全部で4種類になるということ。

ということは裏ドラが乗る危険性も十分考えなければならないし、下手にカンした{⑦}が乗ったらそれだけで満貫確定、ツモで跳満だ。

この点差からさらに跳満ツモは勘弁して貰いたい。

 

(私自身手は悪くないから上がりを目指すことはできる。

 でもいざとなったら誰かを援護しないとね)

 

候補としては下家の蒲原、手の進行はよさそうだ。

まだ切り方や癖は把握していないので手は正確に把握できていないが、それでも援護くらいはできるだろう。

 

そんな蒲原も優希と同巡に聴牌が入った。

 

蒲原手牌

 

{二二三四六七(横五)①②③14(ドラ)6}

 

「リーチ」

 

流れに乗っている優希を恐れることなく、{1}を横向きに捨ててリーチ棒を出す。

{二-五-八}の三面張だ。

こうなると優希はきつい。

引いてきた牌は{4}。

とりあえず凌いだ。

 

が、同巡。

 

「わっはっは、一発ツモだぞー」

 

 

{二二三四五六七①②③4(ドラ)横八(ツモ)}

 

 

美穂子が援護するまでも無く、あっさりと蒲原が上がりをとった。

 

「裏・・・・・・むむ、一個しか乗らないかー。

 まぁ平和だし仕方ないか、3000・6000と2本場」

 

 

がっつりリードが取れたのはいいが、親が流れてしまった。

 

(くっ、大事な親番が流れちゃったじぇ・・・・・・。

 でも・・・・・・まだ東場、諦めないじぇ!)

 

後は残る東場で少しでも稼いで南場を凌ぐのみ。

 

 

 

東二局0本場 親・美穂子 ドラ{五}

 

優希 73100

手牌

 

{三三四[五](ドラ)六④④⑥(横⑤)67東東東}

 

「リーチだじぇ!」

 

{④}を切ってリーチをかける優希。

現在6巡目、まだまだ彼女の流れは終わらない。

2巡後。

 

「ツモ!」

 

{三三四[五](ドラ)六④⑤⑥67東東東} {(ツモ)}

 

「リーヅモ東ドラ1赤1、2000・4000!」

 

 

(あらら・・・・・・)

 

これで優希は再び8万点越え。

美穂子は親っかぶりで最下位転落、その差は既に5万点近い。

東場の親はやり過ごしたが、このままでは南場が訪れる頃には更に点差が開いてしまうだろう。

 

(そろそろ、止めないとね)

 

くすっと笑った。

 

 




こうしてみると、上がってから次の局が始まるまでの間を繋いでくれていたCV白石稔の解説者、及びこーこちゃん&アラフォ・・・サーの解説は重要な役割だったんだなーと思います。
文章だと素っ気なく終わって次の局に行っちゃったりしちゃいますからね、注意しないと。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。