咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩 作:隠戸海斗
「四校合同合宿、ですか」
「そうなのよ」
咲と久がそんな話をしていた。
久主催の元、各校の麻雀部当てに手紙を送ったらしい。
実際は藤田プロ主催なのだがそれを隠しているのでそう言う形になっているのだ。
「他の参加高は龍門渕と風越女子と鶴賀・・・・・・夏の県予選の決勝メンバーね」
「なんでわざわざ・・・・・・」
まこが呆れ顔で口を挟んでくる。
「色々考えてるのよ。
戦えなかった人たちと戦ってみたり、やられた人たちにリベンジしてみたりね」
「・・・・・・それは確かに・・・・・・」
(そうか・・・・・・)
咲はふと、あの少女の事を思い出す。
年は一つ上だが少女というのがふさわしい、そして麻雀の実力はずっと上だった・・・・・・あの天江衣のことを。
(あの子とも、また打てるんだ・・・・・・)
「ツモ」
「え!?」
「リーヅモ七対子、裏・・・・・・乗って跳満だな」
「まだ7巡だじぇ!」
「・・・・・・まくられました・・・」
「これで俺の逆転トップだ」
「ぬあ~! 先輩マジつえ~!」
ふと、卓の方からそんな声が聞こえてくる。
打ってるのは優希、京太郎、和、そして秀介だ。
「先輩の順位、2-2-1だじぇ・・・・・・。
私なんか1-3-4と下がり調子に・・・・・・タコスパワーがあるとゆーのに!」
「俺なんか4-4-3だぞ!
くぅ~! この間打ったときは調子よかったのになぁ~・・・・・・」
「さすがシュウね、和も優希もいいように弄んじゃって・・・・・・」
久がそんな様子を見ながらクスッと笑う。
「・・・・・・あの・・・・・・志野崎先輩ってどれくらい強いんですか?
私、あの人がぶっちぎってるとこ見たこと無いんですけど・・・・・・」
咲がおそるおそる聞く。
確かに安定して強いのは認めるが、それでも藤田プロや衣、姉と打ったときの様な威圧感は全然感じなかったからだ。
「そうねぇ・・・・・・お願いすれば存分にヘコませてくれるかもよ?」
「う・・・・・・」
久にそう言われて身をすくめる咲。
だがピンと来ない。
「あの・・・・・・染谷先輩は志野崎先輩がどれくらい強いか知ってますか?」
「わしか? うん、知っとるよ。
あれはそうじゃねぇ・・・・・・ちょっと戦いとうなくなるっちゅーか・・・・・・」
「大丈夫よ。
シュウは手加減のできるヤツだから」
久はそういうと咲にウインクしてみせる。
「誰かさんと違って上手にね」
「・・・・・・え?」
キョトンとする咲。
それはもしかして昔の連続±0のことを言っているのであろうか。
「も、もしかして志野崎先輩も±0とかやってたんでしょうか・・・・・・?」
「あいつはそんな分かりやすいことしないわよ。
逆に、だからあなたのスコアを見たときはすぐに分かったけどね」
「あぅ・・・・・・」
恐縮です、と身を縮める咲。
「志野崎先輩の本気・・・・・・見てみたいです」
膝を抱きながら咲はぼそっと呟く。
途端にまこの表情が変わったのが分かった。
「・・・・・・染谷先輩?」
「・・・・・・怖い物知らずっちゅーのは恐ろしいもんじゃのう」
「え? え?」
苦笑いをしつつも顔を背けるまこ。
咲はその反応の意味が分からずにおろおろしてしまう。
「あいつは私たち相手に本気は出さないわ」
久が笑いながらそう言う。
その後。
「・・・・・・出せないって言った方が正しいけどね」
そう小さく呟いた。
だがすぐにそれを吹き飛ばすように笑いながら助け船を出す。
もっとも助け舟と呼べるかは分からないが。
「でも、お願いすればその片鱗くらいは見せてくれるんじゃないかしら。
シュウ!」
「おう」
と、久は突然秀介に声を掛ける。
秀介は返事をしてこちらを向いた。
「宮永さんがね、全力でヘコませて欲しいって」
「え? ちょ・・・・・・え!?」
久の突然の台詞に慌てる咲。
秀介は「マジで?」と笑った後、手招きしてきた。
「いいぜ、入んな」
「・・・・・・ちょっと待ってください」
と、それを止めたのは和だった。
「・・・・・・つまりなんですか、志野崎先輩は本気じゃなかったと?」
その台詞に久が今更ながら「しまった・・・・・・」と頭を抱えた。
「・・・・・・ちょっと考えりゃ分かることじゃろ・・・・・・」
まこが苦笑いしながらその様子を見ていた。
見ているだけで助ける気はないらしい。
「私、そういうの嫌いです。
どうして手加減なんてするんですか・・・・・・?
そんなことされて、私達が楽しいとでも?
自分が本気じゃないのに翻弄されてる私たちを見て、何が楽しいんですか!」
和は思いの限りをぶつけるようにそう言ってきた。
秀介は苦笑いを浮かべる。
「違うわ、原村さん」
そこに助けを出したのは久だった。
「シュウには全力を出せない理由が・・・・・・」
そこまで言って、はっとした表情で口元を塞ぐ久。
だが時すでに遅し。
「どんな理由ですか!?」
「それは・・・・・・」
視線を逸らして言い淀む。
「久」
このままでは矛先が久に向うと判断したのか、秀介がそれを阻んだ。
そして改めて和に向き合う。
「いいぜ、この際だ。
実力差をはっきりさせておこうか」
「・・・・・・望むところです」
ゴゴゴゴゴ!と両者の間に異様な空気が流れた。
その様子を見守るしか出来ない周囲の方々。
「・・・・・・で、宮永さんと原村さんと、あと一人誰が入る?」
秀介の一言に顔を合わせる一同。
まこはもう入る気がないらしく顔を背けている。
ただでさえ押され気味だった優希と京太郎はわざわざ入るだろうか?
そうなると・・・・・・。
「仕方ないわねぇ」
久が名乗りを上げた。
「私が入るわ」
「・・・・・・お前と打つのも久しぶりだな。
確かまこと合わせて3人で打ってた頃以来だな」
「一緒に打つのはそうね・・・・・・」
暫し考えた後に、久は少しばかり寂しそうな表情を浮かべた。
「・・・・・・11月の喫茶店以来だわ・・・・・・」
「喫茶店・・・・・・そうだったか、スマンな」
「・・・・・・ううん、そうね、本当に久しぶり・・・・・・」
そういいながら久が場から風牌を4種抜き取る。
「さ、場所決めしましょ」
何も知らない咲と和は何事かと顔を見合わせるのみだ。
4牌をカシャッと軽く混ぜる久。
「さ、どうぞ」
その牌を和、咲、秀介の順で取り、残った牌を久が手にする。
「ん、俺が{東}か」
「・・・・・・{西}です」
「{北}ですね」
「となると私が{南}か」
親順は秀介→久→和→咲となった。
「さてと・・・・・・」
秀介が起家マークをセットして呟く。
「オーラス、かしら」
「おいおい、人の台詞を取るなよ」
割って入ってきた久に苦笑いする秀介。
「・・・・・・?」
「オーラス・・・・・・って」
それはつまり、もう自分達に親番は回ってこないと言いたいのだろうか。
だとしたら・・・・・・。
「・・・・・・侮辱ですか」
「さぁてね」
和が睨むが秀介はあっさりといなして卓を起動させ、穴に牌を流し込んでいく。
和も不機嫌そうにそれを手伝う。
「・・・・・・ん、わしはちょっくら飲みモンでも買ってくるけぇ」
ふと、まこが部室の出口に向う。
「むむ、染谷先輩は対局見ないんですか?」
「志野崎先輩が本気出した対局は正直見ても参考になりゃせんよ」
「???」
優希が首を傾げるがまこは行ってしまった。
「あ、リンゴ頼めるか?」
「あいおー・・・・・・って相変わらずですか」
まこの背中を見送りながら秀介が声を掛けると返事が帰って来たが、それを最後にまこはドアの向こうに姿を消した。
「・・・・・・んじゃ、俺は志野崎先輩の手牌でも見せてもらおうかな」
「のあ! ずるい! 私も見るじぇ!」
「こら、騒ぐなよ」
京太郎と優希に後ろで騒がれ、秀介が苦笑いしながら叱る。
久はそんな様子を楽しげに見ていた。
和は不満そうだったが。
そして咲はどうしていいかわからずに縮まっていた。
東一局0本場 親・秀介 ドラ{中}
全員で配牌を取り終える。
(どれどれ・・・・・・)
(先輩の配牌は・・・・・・)
京太郎と優希が揃って秀介の手牌を覗き込む。
「・・・・・・?」
「別に普通だじぇ」
「静かにしてろって」
秀介は苦笑いしながらドラ表示牌の{發}を切る。
「・・・・・・?」
和は首をかしげながら、久が切り終わった後にツモる。
2巡目。
咲が{8}を切ると。
「チー」
秀介が{横879}と晒し、{7}を切り出す。
(早いですね・・・・・・)
そして4巡目、秀介はツモってきた牌を裏向きのまま手牌の脇に置いた。
「ツモだ」
「ふぇ!?」
咲が思わず声を上げる。
秀介がシュッと牌を右から左になぞると、わずかに遅れて手牌がジャラララと倒れる。
そして最後にツモってきた牌をピンと表に返した。
{七八①①③④⑤東東東} {横879} {
「ダブ東、1000オール」
「は、早! マジ早っ! 無駄ヅモも全然なかったぞ!」
「でも安いじぇ」
京太郎と優希が揃って騒ぐ。
その感想は和も同様だった。
(・・・・・・早アガリ・・・・・・。
ですが、小さなアガリでは点差は大きく開きません。
すぐにひっくり返して見せますよ)
ガシャッと手牌を崩し、卓の穴に牌を流し込むと、秀介は100点棒を右隅に置く。
「とりあえず、1本場」
「・・・・・・とりあえず?」
咲が聞くが、秀介は笑うだけ。
山がセットされるとすぐに賽を回して局を始めてしまった。
東一局1本場 親・秀介 ドラ{三}
6巡目。
「ツモ」
「え!?」
{
「ツモドラ1、1000オールの1本付け」
「また早い・・・・・・」
和が小さく呟く。
だがまだまだひっくり返せない状況ではない。
「先輩、何でリーチしなかったんだじぇ?」
「ん? 俺のリーチを狙って誰かさんがツモ順ずらそうとしてたからね」
「ふぇ?」
優希はきょとんとした表情で首をかしげる。
対して、和はわずかに表情を曇らせた。
和手牌
{
タンヤオ系の手牌、いざとなったら鳴きタンで流せる良形だ。
基本面前で進めるつもりだったが、もし秀介が鳴いたりリーチを掛けてきたら喰いずらそうと考えての形。
実際、秀介が前巡切った{5}を鳴こうか迷ったくらいだ。
鳴きもリーチも無かったので見送ってしまったが・・・。
(・・・・・・読まれた? まさか・・・・・・)
和は自らの考えを否定するように手牌を伏せた。
秀介は右隅に2本目の点棒を積む。
「続いて2本場、何本積むかな?
・・・・・・しかし・・・・・・」
そう言った後、秀介は何故かもう一本100点棒を取り出し、タバコのように口に
その瞬間、咲は背筋にゾッとするものを感じた。
思わず秀介を見やる。
が、秀介は何でも無いような顔で呟いた。
「・・・・・・タバコが吸いてぇな」
「高校生でしょ、成人まで待ちなさい」
慣れたやり取りのように久がそう返した。
今のは何?
嫌な予感を感じながら、咲は自動卓の穴に牌を流していった。
「戻ったぞー。
皆の分も買ってきとるけぇ、好きなもん持って行き」
しばらくしてまこが部室に戻ってきた。
ビニール袋にはペットボトルのジュースがかなり入っている。
が、一人として食いついてこない。
「おう、おかえり。
リンゴを頼む」
一人、秀介だけが食いついてきたようだ。
「あいよ、少々お待ちを」
「ところでまこ、公式ルールでは八連荘って無いんだっけ?
久しぶりだから忘れちまったよ」
「うん? 役満ですか? 無しですよー」
そう答え、袋から指定されたジュースを取り出したところで手が止まる。
「・・・・・・先輩、8本積みなさっと?」
「今な」
チャリッと100点棒が積まれた音がする。
まこはジュースを片手にそーっと卓を覗き込む。
場はなにやらどよーんとしていた。
(あちゃぁ・・・・・・)
まこは顔に手を当てる。
咲と和の凹み具合が、まさに目も当てられないと言った感じだ。
「・・・・・・今点数はどんな感じじゃ?」
「あ、染谷先輩、おかえりっス」
「志野崎先輩以外全員4000点割ってるじぇ・・・・・・」
「一方的っスよ・・・・・・」
京太郎と優希に聞くとそんな答えが返ってくる。
まこは大きなため息をついた。
「・・・・・・先輩の本気は久しぶりじゃけど、少しは衰えてるかと思ったら・・・・・・。
あ、ド□リ濃厚タコス味っての売ってたけぇ、飲む?」
「マジですか!? 飲むじぇ!」
東一局8本場 親・秀介 ドラ{2}
秀介配牌
{一一三六八八③③⑥⑧8東中} {五}
「・・・・・・さて、先輩どうしよるかいな?」
まこが呟くと、秀介が口を開いた。
「お前も帰って来たしな、そろそろ終わらせようか」
そして、{⑧}を切り出した。
「・・・・・・ないわぁ」
「・・・・・・ですよね・・・・・・」
まこと京太郎がボソッと呟く。
そして6巡目。
{一一五
「ないわ」
「ないじぇ」
「ですよねー」
「リーチ」
秀介捨て牌
{⑧三東六四} {
後ろの三人の言葉など気にせず、秀介はリーチを掛けた。
七対子{⑥}待ちだ。
「・・・・・・なんじゃろ、あの捨て牌は」
「索子の混一色にしか見えない私はダメな子だじぇ・・・・・・」
「いや、皆そう思うよ・・・・・・」
そして一発目のツモは・・・・・・。
「{五}、ですね」
「捨て牌に索子が増えんなぁ」
「これはきっと誰か振り込むじぇ・・・・・・」
「ゆうてもこの先輩、ツモ上がりも多いかんなぁ」
三人は好き勝手話している。
やがて和や咲から筒子が零れ始める。
「ん~、危険だじぇ・・・・・・」
優希が呟いて数巡後、和の手牌から{⑥}が零れる。
「ロン」
「・・・・・・っ!」
パタッと手牌の{⑥}だけを倒して前に出す。
その後手牌をジャラッと倒した。
「リーチ七対子、4800の8本付け」
「・・・・・・と、トビです・・・・・・」
和の点棒が空となり、終了となった。
「・・・・・・ほ、ホントに東一局で終わらせたし・・・・・・」
京太郎が愕然と呟く。
「じゃからゆーたじゃろ。
わしはもう戦いとうない。
・・・・・・ゆうてもまだ全力でも無いみたいじゃけどな」
わしも昔はいじめられたもんじゃ、とまこがしみじみと語る。
「・・・・・・マジですか」
「・・・・・・人間じゃないじぇ」
「楽しんで貰えたかな?」
秀介が和にそういう。
と、和の目尻にじわっと涙が浮かぶ。
そして、がたっと席を立つと走って行ってしまった。
「あ、原村さん!」
それを追って咲も出て行ってしまった。
「・・・・・・青春?」
「違うわよバカ」
「まぁ、分かってるけど」
秀介は久と漫才のようなやり取りをして席を立ち、銜えていた100点棒を戻す。
と。
「・・・・・・っ・・・・・・」
ぐらっと身体が揺れた。
「ちょ、シュウ!?」
久が慌ててそれを支える。
「志野崎先輩!?」
と、まこも駆け寄る。
その様子に京太郎と優希も何事かと二人の方を見る。
が、秀介は二人に支えられるわけでもなく立ち上がると頭を押さえて見せた。
「・・・・・・久しぶりに打ちすぎたかな。
頭痛くなってきた」
「どんだけ・・・・・・」
「だじぇ・・・・・・」
その一言に京太郎と優希がずっこける。
「まこ、リンゴくれ。
少し休む」
「あ、どうぞ」
まこは買ってきたリンゴ100%ジュースを差し出す。
秀介はそれを受け取るとベッドに腰掛けた。
「・・・・・・ところでなんでリンゴジュースなんだじぇ?」
ふと優希が尋ねた。
京太郎が「そっとしておいてやれよ」と言ったが気にしていない模様。
すると秀介は幾分真面目な表情で答えた。
「・・・・・・俺の消耗した麻雀力はリンゴジュースによってしか補給できないんだ」
「ただ好きなだけでしょ」
久が突っ込みを入れると途端に表情を崩して笑い出す秀介。
優希はそんな様子を見て一言。
「よし、私今度からタコスの他にリンゴジュースも飲むじぇ!」
「流され安すぎだろ」
京太郎があきれた様子で呟いた。
そして、あっと思い出したように言葉を続ける。
「そういえば・・・・・・さっき「志野崎先輩が全力を出せない理由がある」とか聞こえた気がしたんですけど・・・・・・」
「む、私も聞いたじぇ」
京太郎と優希がそう言う。
途端に久とまこの空気が沈む。
(なんだじぇ、この空気・・・・・・)
(聞いちゃいけないことだったかな・・・?)
でもさっきは久が自分から言おうとしていた気がする。
となると・・・・・・どうなのだろうか。
「タコスが切れると人の身を保てない私のよーに、きっと先輩は全力を出すと副作用があるんだじぇ」
「だから何になる気だ」
重い空気に耐えきれずにはっちゃけてみる優希とそれに突っ込む京太郎。
二人のやり取りを見て秀介も楽しげに笑った。
「ほう、タコスちゃんにはそんな副作用があるのか」
「先輩はどんな副作用なんだじぇ?」
にこーっと笑いかける優希を見て「だから違うだろ・・・・・・」と京太郎が突っ込む。
「実は俺が全力を出すとその反動でな・・・・・・」
と、秀介がリンゴジュースで麻雀力を補給しながら口を開いた。
「「・・・・・・その反動で?」」
「5リットルの血を吐いて死ぬ」
一瞬ゾクッとした京太郎と優希。
が。
「・・・・・・先輩、以前にも5リットル血を吐いたんスか?」
「んー、そんなに吐いてたら死んでるな、常識的に」
「でも部長達は先輩の本気を見てるんスよね。
じゃあ何で今生きてるんスか?」
「・・・・・・実はその時、とっさに手持ちのリンゴジュースを輸血してだな」
「そこは血液を循環させておいてくださいよ、人として」
そこまできて優希もはっと気がついた。
「先輩嘘ついたじぇ!」
「すぐに気づけよ」
秀介は笑いながら再びリンゴジュースを口にする。
「なんだぁ、騙されたじぇ」
「俺も一瞬信じかけた・・・・・・」
ぷーっと膨れる優希と、騙されたことに気づいて脱力する京太郎であった。
「全く二人とも、シュウはこういう性格だから言うこと全部信じちゃダメよ」
と、久もそういう。
二人は「肝に銘じます」と頷いた。
「まぁ、シュウは少し休んでて。
宮永さんたちが戻ってくるまで私たちで打ってましょう」
「・・・・・・そうしますか」
「よっしゃあ! 今度は私が八連荘やるじぇ!」
やがて笑顔になった一同は卓に着く。
「ほら、まこも」
「あ・・・・・・うん」
秀介はそんな四人を笑顔で見守っていた。
ただ一人、笑顔ではなかったまこを気にかけながら。
ド□リ濃厚ジュースも既に懐かしい。