咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩 作:隠戸海斗
第一試合
東三局0本場 親・純 ドラ三
蒲原 34400
{四五八⑦⑨35
現在、というか試合開始時点から既に最下位の蒲原。
是非とも上がって点差を詰めておきたいところだがあまり良くない配牌。
{東}が対子、さらに{西發中}が重なってくれれば勝機は見えてくるのだが。
とりあえず第一ツモの{②}を手に加えようとして悩む。
(んー・・・・・・・・・・・・いらないかな)
第一ツモが不要とは出鼻がくじかれた気がする。
しかしそんな事を考えていても仕方がない、不要な物は不要なのだ。
後で必要になる可能性もあるが。
(ま、そん時はそん時かな)
考えた挙句{②}をそのままツモ切りした。
一方その下家、ゆみの手牌。
ゆみ 46200
{一八③1334
索子の混一が容易そうな手牌、蒲原とは雲泥の差である。
とはいえ。
(・・・・・・捨てる牌に悩むところだな。
{北は自風、中}は役牌、あっさり手放すわけにはいかない。
索子で切れそうな牌は今のところ無い。
となると・・・・・・{一八③}しかないわけだが)
ツモが狙えればいいが敵に当たり牌を完全に抱えられる可能性もある。
できれば迷彩が施せるような捨て牌がいいのだが。
(・・・・・・考えていても仕方がない、ひとまず・・・・・・)
端から切って行こう、と{一}を切り捨てる。
そして4巡目。
ゆみ手牌
{③133446
む、とゆみの手が止まる。
混一の予定だったが、このツモで5つ目の対子だ。
七対子の可能性も見えて来た。
一先ず{北}を捨てる。
次巡。
{③③13344
ドラの{三}ツモだ。
(・・・・・・よし)
決めた、とゆみは{1}を捨てた。
対子5個とドラとくれば七対子を狙うのに理想的だ。
しかも{一}を既に手放している。
そこから「ドラが手牌に無い、使える手格好ではない」と読んでくれれば、ドラ単騎であろうと出てくる可能性がある。
ゆみも現在3位、まだ上を目指していかなければいけない所。
何とかこの手をものにしたい。
次巡{東}をツモる。
不要牌だ、と捨てた。
「ポン」
蒲原から声が上がる。
蒲原手牌
{四五五六八⑦⑨358中} {東東横東}
{中}を切って手を進める。
蒲原とて点数を稼ぎたい身、前に進もうとするのも当然だ。
そして。
{四五五六
{四五五六
{
{二
{二
時間はかかったが聴牌。
対するゆみは先程の{東}ポンから流れが変わってしまったようで手が全く進まず。
ゆみ手牌
{
(・・・・・・この局はダメか?)
手じまいを考えながら{3}をツモ切りする。
直後。
「チー」
純から声が上がった。
純 68100
{
{六}を切り出してタンヤオドラドラ聴牌だ。
(・・・・・・対面に聴牌気配、高くはなさそうだけど気をつけておかねぇとな)
聴牌と喰いずらしを同時に行う理想的なチー。
あとはこの手をツモるなりロン上がりするなりしてこの局は終了だ。
そして。
「ツモ」
同巡に決着がついた。
{一二
上がったのは蒲原だ。
「東ドラ赤、1000・2000」
パタンと手牌を閉じて点棒を渡す二人と違い、えっと声を上げかけたのは純。
(喰いずらせてない・・・・・・?
それとも元々上がれる流れに無かったのを、俺がずらして上がらせちまったのか・・・・・・?)
上がられた点数は高くない、まだまだ追いつかれる気配も無い。
だがしかし、どうやら今の自分に流れは無いようだ。
さっきの下手な上がりでケチがついてしまったか、と表情を歪めながら純も点棒を渡す。
東四局0本場 親・咲 ドラ{⑤}
さて、唐突だがこの配牌を見て欲しい。
咲 60100
配牌
{六九①⑨333667西西北} {白}
ここからどのような手を想像するだろうか?
オタ風の{西}が対子、{3}が暗刻、ドラも赤も無し、役牌は{白}が一枚のみ。
平和もタンヤオも絡まずどう考えてもリーヅモのみ、高くなりそうな気配は無い。
高く仕上げるには対子を重ねて三暗刻、それに裏ドラ期待と言ったところであろうか。
不要牌の候補としては{九①⑨}北辺り。
その辺は同様の考え。
だがここからこの手を高く仕上げる方法が、咲の場合他の人間と大きく違う。
まず{①}切り、そして。
{六九⑨33
{
{
間に何度か無駄ヅモはあったが、順調に手が進む。
ここまでは特に疑問を挟む余地も無いだろう。
だがその次。
{四[五]六
{
しかし、咲はそれをあっさりとツモ切りする。
そして次巡。
{四[五]六九33
聴牌、{5-8}索待ちだ。
ツモればリーヅモ赤の2000オール、裏が乗れば3900オールだ。
普通ならこれで十分と誰もがリーチをかけるだろう。
だが、咲はここから
{西}を切り捨てた。
次巡無駄ヅモだったがその次。
{四[五]六九3334566
「リーチです」
{西}を対子落とししてリーチ、{九}単騎だ。
これではリーヅモ赤で2000オール、先程リーチした時と点数が変わらない。
何を考えているのか。
それはこれ、次巡の{3}ツモが答え。
「カン!」
ジャラッと{3}を4つ晒す。
そしてツモってきたのは・・・・・・咲にとっては当然の上がり牌。
「ツモ!」
{四[五]六九456678} {3■■3} {
「リーヅモ赤嶺上開花、4000オールです」
同卓の三人の表情が変わる。
(わっはっはー、どんな配牌からその形になったんだ?)
(その手普通ならリーヅモ赤・・・・・・。
満貫には至らない手が嶺上開花のせいで届いたのか)
(くっ・・・・・・カンだから上がりの気配が感じられなかったし、そもそも喰いずらす牌も来なかった・・・・・・)
普段はのんびりした気配のある咲だが、さすが県大会優勝校の大将を務めただけはある。
一同は咲への警戒を改めた。
この親満で咲はトップ、点数は72800。
この半荘開始時に55100だったのであと2600も稼げば秀介の言う罰ゲームを回避できる状況である。
もっとも罰ゲームと言っても膝枕なのだが。
実際その罰が執行されるかどうかは別として。
東四局1本場 親・咲 ドラ{三}
ゆみ 41200
{[五]①⑥⑦⑦⑨2
トップの咲が親。
ここで上がっておかなければ点差を詰めるのがきつくなるだろう。
是非とも上がっておきたいこの手、しかし上がりが遠そうだ。
どうすればよいかと考えつつ{①、南}と不要牌を切り出していく。
そして3巡目。
{四[五]⑥⑥⑦⑦⑨
{發}を切りながらゆみは改めて自分の手牌に目を落とす。
手が横に伸びなければいつもの通り七対子を目指そうかと思っていたが{⑦}が暗刻。
次巡{3}ツモって{⑨}切り。
本命は七対子だがこれはもしや・・・・・・。
(上手く暗刻が重なれば三暗刻まで目指せるかもしれん)
そう思った次巡。
{四[五]⑥⑥⑦⑦⑦
来たか、と{2}を捨てる。
ここからはツモに願いをかけるだけだ。
{三-六ツモって⑥と3}待ちのツモり三暗刻というのがありきたり。
ロン上がりではリーチ白赤の3翻50符の6400、それでは咲を直撃であろうとも手を倒すのがはばかられる。
頼む、ツモらせてくれ・・・・・・と祈るように牌をツモっていく。
無駄ヅモが重なり、有効牌が入ったのは8巡目。
{四[五]⑥⑥⑦⑦⑦
「!」
ロン上がりでも三暗刻確定の{三-六}待ちだ。
こちらが先に入ってくれるとは好都合、もはや引く手は無い
「リーチ!」
{5}を捨ててリーチを宣言する。
その次巡、親の咲。
咲 72100
{二
通常この手は{七か⑤}を捨てて平和赤ドラを目指す。
しかしこの時のゆみの捨て牌がこの形。
ゆみ捨牌
{①南發⑨2④7} {
萬子が一牌も無いことから萬子が切り辛い。
仮に萬子以外の待ちとしても{④⑨}と切られての間四ケン{⑤-⑧}など切れた物ではない。
自分のリード点数と先に聴牌を取られたスピードを考え、咲はここから{5}を落としてあっさりと降りた。
無論萬子待ちが出にくいことはゆみも承知の上。
ましてドラスジの{三-六}待ちだ、出るわけがない。
しかしツモり三暗刻と違い待ちは多く、ツモりやすい。
降りてくれるならそれはそれで好都合だ。
数巡後、ゆみは上がり牌を手にする。
{四[五]⑥⑥⑦⑦⑦333白白白} {
「ツモ、リーチ三暗刻白赤。
裏無し、3100・6100」
親っかぶりだがまだ咲がトップだ。
再びひっくり返されたりしないように注意しなければ、と咲は意識を集中する。
もちろん他の面子も自身の点数から稼ぐべき点数とその為にどう打つべきかを考えているところだ。
そしていよいよ、南場突入。
南一局0本場 親・蒲原 ドラ{南}
「ありゃ」
ドラ表示牌をめくった蒲原から声が上がる。
それに釣られてではないが、一同も少しばかり表情が変わる。
場風の{南}がドラ、つまり鳴けば役牌ドラ3で満貫確定、いわゆるインスタント満貫と言うやつである。
カチャカチャと一同は配牌を受け取る。
蒲原 31300
{一二七①[⑤]⑦⑧9東
ゆみ 53500
{四五[五]八八③⑨14777發}
純 59000
{二二六七九②②⑥223東發}
咲 66700
{一三九九②⑥⑦⑨4
まずドラを手にしたのは蒲原と咲。
両者ともあっさり手放すような真似はしない。
他の牌から整理をしていく。
2巡目、純。
{二二六七九②②
この手はタンヤオ、と決めて{發}を切り出す。
配牌から対子である{二、②、2}。
目指すは三色同刻だがどうなるか。
3巡目、ゆみ。
{二四五[五]八八③
こちらも目指すはタンヤオ、そして三色同順だ。
純の{發}で誰も反応しなかったのを見て合わせ打ちをする。
そして同巡、咲。
{一三五九九②③
ドラを重ねる。
{南}があるなら他の役牌は不要と{發}を捨てる。
4巡目、ゆみ。
{二四五[五]八八③
順調に手が進む。
ここから切るのは・・・・・・と{二}に手をかけ、捨てた。
それを見た瞬間、純は{二}を晒す。
「ポン」
純手牌
{六七七②②④⑤⑥223} {横二二二}
{3}を捨て、タンヤオ三色同刻に一歩前進だ。
5巡目、純。
{六七七②
{七を切れば②、2}のシャボ待ち。
だが役はタンヤオのみ、目指していた三色同刻が消える。
(そんな安手を上がる位なら・・・・・・!)
タン、と純が切ったのは{五}。
暴牌上等と言わんばかりだ。
そんな純の想いが届いたのか、次巡。
{六七七②
{六}切ってタンヤオ三色同刻聴牌。
必ずこの手を上がる、と気合いを入れる純。
だがしかし、さらに次巡。
{七七②②
くっと純の動きが止まる。
未だドラは一枚も場に現れていない。
上がられる可能性はまだないだろうが、もし鳴かれたら自分に追いつかれる可能性がある。
どうする?と考えつつ、しかし。
(・・・・・・今更引く手は無い、突っ込むぜ!)
ダン、と力強く{南}を切り捨てる。
(良く切ったなー)
未だにドラを切れずにどうしようかと思っていた蒲原はその決断に感心したような表情をする。
しかし当然、既に対子で重ねている咲が見逃すわけがない。
「ポン」
切った純を含め、全員に緊張が走る。
が。
咲手牌
{一三五九②③⑥⑥⑦45} {
{九}を切る。
その手はまだ聴牌には程遠い。
無論上がりは目指しているのだが、今はまだプレッシャーと足止めの効果しかない。
果たして他家はどう打つか。
この動きで救われたのはドラを切りきれなかった蒲原だ。
酷い配牌から少しずつ手を進めて行ってようやくここまでこぎ付けることができた。
{六七⑤[⑤]⑦⑧⑨
遠慮なく行かせてもらうよーと蒲原は牌を横向きに捨てる。
「リーチ」
ドラ{南}を切ってのリーチ。
全員が蒲原に注目する。
咲はノーテンだが南ドラ3のインスタント満貫が露わに、純はタンヤオ三色同刻を内蔵。
少なくとも純は今のところ引く気は無いが、しかし危険牌を引いたらどうするかと考えずにはいられない。
三人共危険。
そんな中、実はゆみにも聴牌が入っていた。
{四[五]③④⑤45
望んでいた三色を目指してダマ。
それでも今現在タンピン手に赤ドラだ。
リーチをかけてツモれば満貫、裏が乗れば跳満である。
ゆみの視点からは他家の手の進行が不明だが、攻め気のある純と満貫確定の咲、どちらも危険だ。
もちろんリーチと来た蒲原も同様に危険。
しかし、三位のゆみとしても降りる気は無い。
危険牌を引いたら降りることももちろんできるが、この手リーチをかけなければタンピン赤。
ツモで1300・2600、ロンで2600、2位の純を直撃しても逆転ができない。
ましてや上位の咲も純もリーチをかけていないので、いざとなれば降りることもできる。
そんな中、自分がそんな弱気でどうする。
(・・・・・・勝利とは、攻めて勝ち取るものだ)
暴走上等、こちらも後退の道を閉ざした。
「リーチ」
これを機に咲は残念そうにしながらも降り打ちし、蒲原、ゆみ、純の三人対決が始まる。
そしてこの引き合いがまた長引いた。
降り打ちしている咲は当然だが、三人が三人共互いの上がり牌を引かないまま7巡が過ぎる。
流局まで残り2巡という終わり際、ようやく決着がついた。
「・・・・・・ツモ」
{四[五]③④⑤45667778} {
ゆみが手牌を倒す。
リーヅモタンピン赤、そして裏ドラが{四}。
跳満、3000・6000だ。
この上がりで見事ゆみが二人を一気に抜いてトップだ。
長かった攻防の末に、全員が一度「ふぅ」とため息をつく。
そしてお互いに顔を見合わせた。
「やるなぁ、ゆみちん。
でもまだ負けないぞー」
「ああ、次はこうはいかないだろうな」
「こっちだって、次は引き負けないぜ」
「次にドラが鳴けたらちゃんと勝負に絡んで行きますから」
ひとしきり笑い合った後、四人は山を崩して次の局へと進める。
南二局0本場 親・ゆみ ドラ{三}
7巡目。
「リーチです」
咲にあっさりと聴牌が入り、そのまま即リーチと行く。
そして2巡後。
「ツモ」
ジャラララと手牌が倒された。
{
「リーチ平和ツモドラ赤・・・・・・あ」
裏ドラを返すと出て来たのは{二}、あっさりと跳萬だ。
「えっと、裏二つで3000・6000」
これでまたあっさりと咲が逆転トップだ
「あっさりとやってくれる」
「俺だってまだまだ負けないぜ」
南三局0本場 親・純 ドラ{八}
「リーチ」
続いて純に聴牌が入る。
そして。
「・・・・・・ま、そりゃツモってくれないとな」
ダン、と力強く牌をツモる。
「ツモ!」
{⑦⑧⑨3334[5]67白白白} {
「リーチ一発ツモ白赤! 4000オール!」
「{4-7、2-5-8}の五面張・・・・・・」
「なるほど、確かにツモらないとだな」
咲とゆみが笑う。
「へっ、負けないって言っただろ?」
南三局1本場 親・純 ドラ{⑦}
「ポン!」
{6}を晒して聴牌。
純 68700
{⑦⑦西西發發發} {6横66白白横白}
対々白發ドラ2、跳満確定の手だ。
そんな果敢に攻めていた純の前に立ちはだかるのはゆみ。
「リーチ」
一瞬くっと表情を歪めたがすぐにそうでなくてはと笑う純。
数巡後、純はツモった{一}を捨てる。
「ロン」
今度はゆみが笑った。
{一二二六六⑤[⑤]⑧⑧66東東} {
「・・・・・・裏無し、リーチ七対子赤、6700」
55500点あったゆみはこの直撃で純を逆転、二位となる。
順位がめまぐるしく入れ替わる中、ようやくオーラスとなった。
南四局0本場 親・咲 ドラ{④}
「ポン」
この局も純は積極的に動き、真っ先に{發}をポンする。
だがこちらも負けるか、とゆみも聴牌。
「リーチ」
背中は見せないとばかりにリーチを宣言する。
それはまるで足を止めて鍔迫り合いをするかのように。
だがそんな二人に置いてきぼりを喰らう咲ではない。
「ポン」
{南}を晒し、二人に喰いつく。
(まだ来るか!)
(だが・・・・・・そうでなくてはな!)
純とゆみも笑う。
勝負はまだ分からない、と。
だが、咲にしてみればこの勝負はこの時点ですでについた。
次巡ツモってきた牌を手牌に加えると、手牌の一番端の牌をパタリと倒す。
現れたのは{南}だ。
「カン」
「「!!」」
全員が見守る中、咲はツモった嶺上牌をタァンと卓に晒す。
「・・・・・・ツモ」
{二四七八九②②345} {南
「南嶺上開花、1300オール」
激戦を制したのは咲。
緊張した空気が一気に緩み、全員大きなため息をついた。
「・・・・・・お疲れ様でした」
「お疲れ、いい試合だったぜ」
「お疲れ様でした」
ペコっと頭を下げて全員が席から立ち上がった。
その様子を見ていた周囲から拍手が上がる、それほどの激戦だったのだ。
三人共悪くない気分でそれを受けていた。
と、フッと笑っているゆみの肩をポンと叩く者がいる。
蒲原だ。
「・・・・・・ゆみちん、私の点棒が何だか少ない気がするんだけど」
「知らん」
第一試合
蒲原 17000
ゆみ 59900
純 57000
咲 76600
終わり際は点数載せた方が分かりやすいかなと思いました。
でも局が進む度にどんどん点数が減っていくワハハを見たら皆わらtty・・・げふん、えー、みんな泣いちゃうでしょ?