咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

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※ごらんのお話は咲-Saki-二次創作「とりあえずタバコが吸いたい先輩」で間違いありません。
今回から唐突に章が変わっております。
この「B story」は「A story」までの評価、お気に入り、感想が一変するやもしれない「超展開」によって構成されております。
本編の続きをお待ちの方々はしばらくお待ちください。
いや、これも本編ではあるんですけれども。
「は?ここで区切ったの?何故?イミフ」と思われるかもしれませんが、急かされたからとか言う理由は決してありません。
「このタイミングでこの話を差し込むのがベスト」と判断した作者のシナリオ構成能力が変態だったというだけです(



B story
01新木桂その1 登場と裏切り


とある料亭にて、勝負の場は開かれた。

 

 

用意されているのは麻雀卓と麻雀牌。

 

周囲には勝負を行う二組。

河本と言う男と、彼に金を貸している原田組。

そして立会人が十名ほど。

 

公平を期すために立会人の二人が入り、両者の代打ちが一人ずつ入る勝負となる。

 

河本が借りている金は、彼の知らない所で利息が増やされて、既に100万。

現在で言うと1000万を超えている。

しかも期日も設定され、もはや返せる金額ではない。

 

その金額をかけ、彼は今日勝負に挑む。

立てた代打ちはまだ来ないが、彼は対戦相手にせかされる中、ひたすらに待った。

 

 

カラカラと戸が開かれ、彼は現れた。

 

「・・・・・・最後でしたか、遅れました」

 

彼はそう言って頭を下げるだけ。

だが彼を呼んだ河本はそれを責めることもせず、ただ頭を下げた。

 

「・・・・・・来てくれたか・・・・・・ありがとう・・・・・・」

「お構いなく」

 

スッと彼は卓に着いた。

 

向かい合うのは対戦相手、琴野。

卓に着いた彼を見てフッと笑う。

 

「ずいぶん若いな。

 河本のおっさんが頼りにする位だ、どんな男かと思ったが。

 (あん)ちゃん、遊びで来てたりしないだろうね」

 

ヒヒヒと笑う。

彼はそんな対戦相手を見ても表情を崩さず、一言告げた。

 

 

「プロが卓について笑うな」

 

 

「・・・・・・何だと?」

 

チッと舌打ちする。

険悪な雰囲気の中、試合は始まった。

 

 

 

南四局0本場 ドラ{八}

 

「リーチ!」

 

琴野が牌を横に倒す。

現在2位、トップは目の前の男。

この手を上がれば逆転だ。

 

数巡後、下家から上がり牌の{4}が零れる。

 

「ロン!」

 

{二三四(ドラ)八八⑥⑥⑦⑧⑨23} {(ロン)}

 

「リーチドラ3! 満貫で逆転・・・・・・」

 

「悪いな」

 

ジャラッと、彼も手牌を倒した。

 

{五六七②②③③④④1234} {(ロン)}

 

「一盃口のみ、頭ハネだ」

「なっ!?」

 

逆転ならず、トップは河本が呼んだ男。

決着はついた。

 

「終わりだな」

 

彼は席を立ち、銜えていた煙草を近くの灰皿に置く。

 

「あ、ありがとうございました!」

 

河本は彼の背に頭を下げるが、彼は何も言わずにその場を後にした。

 

 

彼の名は新木(あらき)(かつら)

 

これは彼が28歳の時の出来事である。

 

 

 

 

 

彼のスタイルはデジタル打ち。

現代と比べても決して劣らない精度で敵の手牌、山の残り牌を計算していた。

イカサマでもなく、勘でもなく、彼が「裏」の世界で麻雀を打ち始めてから負けたという話は聞かなかった。

 

どこかの組や、誰かのお抱えの代打ちになるわけでもなく、彼は様々な依頼で麻雀を打った。

あの日の河本も依頼人の一人。

時に高い報酬で、時に義理絡みで金を受け取ることなく、彼は麻雀を打ち続けた。

 

 

 

2年して、そんな彼にまた新たな依頼が入る。

 

ある料亭にて食事に呼ばれ向かった新木の前に現れたのは、いつぞや対戦した原田組の代打ち、琴野であった。

 

「うちの組で困ったことがあるんだ、新木。

 一つ助けてはくれないか?」

 

前回負けた身でありながら、しかし敬語だったり臆する態度だったりはせず、琴野は新木にそう言った。

 

「・・・・・・内容次第だ」

「そうかい、とりあえず話そう」

 

酒をすすめながら彼は話を始めた。

 

「ある老人を倒してほしい」

 

 

その老人は資産家で、とてつもない金を持っているという。

そして老人は麻雀で勝負をし、自分に勝てばその金をくれるというのだ。

ただし持ってきた金が尽きたらそれで終わりというもの。

 

 

「・・・・・・終わりって、どうなるんだ」

「それは俺も知らねぇ。

 いや、組の連中も、他の連中も知らねぇんだ」

 

琴野は酒をくいっと飲み、言った。

 

 

「誰も戻ってこねぇからな」

 

 

「・・・・・・」

 

新木も酒を飲み、コップをテーブルに置くと。

 

「・・・・・・それで、ルールは?」

 

そう聞いた。

 

「・・・・・・やる気か」

「依頼だろう?」

「・・・・・・助かる」

 

明かされているルールは点数を現金として、ウマ、オカは無くそのままやりとりするというものらしい。

それと入るのは一度に二人まで。

そして、金が尽きたらそれで終わり。

 

「金はこっちで用意する。

 いざって時に尽きてギリギリ負けましたってんじゃ話にならないから多めにな」

「・・・・・・分かった」

 

新木が頷くと琴野は彼のコップに酒を注ぎ、自分のコップを持つ。

 

「勝利を願って」

「・・・・・・」

 

カチャンとグラスが音を立てた。

 

 

 

 

 

それから数週間して、新木の元に迎えが来た。

車で移動すること1時間ほど、とある豪邸の前に到着する。

 

「よ、来たか」

 

門の前で迎えてくれたのは、彼にこの話を持ちかけた琴野。

 

「二人まで入れるっつーからな、俺も入る」

「・・・・・・いいのか?」

 

戻って来た人間はいないと言っていなかったか。

ならもしもの時は彼も道連れと言う事になる。

 

「構わん。

 それにあんたとならやれそうな気がするからな」

 

そう言って琴野は笑った。

 

「行くぞ」

 

二人は金の入った鞄を手に、豪邸に入っていく。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

迎えてくれたのはメイド。

 

「新木様と琴野様ですね? お待ちしておりました。

 こちらへどうぞ」

 

案内されて豪邸の奥へ奥へ。

一つの部屋に案内される。

 

扉を開けるとそこは狭い部屋。

その真ん中に麻雀卓。

そして、奥に老人が一人。

その後ろにドアが一つ。

 

「クゥクゥクゥ・・・・・・来たか」

 

しわがれた声で老人は迎える。

 

「良く来てくれた・・・・・・座りたまえ・・・・・・」

「どうぞ、お好きな席へ。

 ただし一人は主様の向かいに座って頂きます」

 

席を促され、どうする?と琴野が新木の顔を見る。

 

「・・・・・・俺が座ろう」

 

新木はそう言って老人の正面に座る。

琴野はちらっとメイドを見た後に、新木の上家に座る。

メイドはまだ立ったままだ。

 

「まずは名乗ろうか・・・・・・。

 ワシは億蔵(おくら)と言う・・・・・・」

「主様のお世話をしております、メイドのエリスと申します」

「・・・・・・新木桂・・・・・・」

「琴野だ」

 

「では、ルールを説明いたします」

 

互いに自己紹介をした後、エリスが大量の点棒を持ってくる。

 

「1点が1000円計算で、まず初めに全ての現金を点棒に変えて頂きます」

「1点が1000円?

 ってことは・・・・・・」

 

琴野が指を立てて計算しようとする中、新木はあっさりと告げる。

 

「俺達が持ってきた1億ずつは、それぞれ10万点になるのか」

「な、なるほど・・・・・・」

 

琴野が頷く。

 

「点棒が尽きるまで、半荘ではなく一荘を延々と打って頂きます。

 なお、勝負が始まると終わるまでこの部屋からは出られませんので、食事、トイレ等は今のうちに済ませておいてください」

 

エリスがそう告げると新木は頷いた。

 

「・・・・・・分かった。

 ルール説明が全て終わったら少し時間をくれ」

「・・・・・・宜しいですか? 主様」

「構わんよ・・・・・・」

「では説明が終わったら時間を取ります」

 

億蔵の確認を取り、エリスは承諾した。

 

「他は通常の麻雀と同じです。

 一発あり、裏ドラ、槓ドラ、槓裏あり。

 赤無し、喰いタン後付けあり。

 それと点数が多いので役満はローカルダブルルールを採用しています。

 つまり四暗刻単騎、国士無双十三面待ち、純正九蓮宝燈、大四喜はダブル扱いです」

「・・・・・・分かった」

 

ダブル役満が多いのは珍しいが、それ以外では点棒くらいしか特殊なところはなさそうだ。

ルール説明が終わったところで少し休憩となる。

 

「お食事は?」

 

エリスの言葉に新木は首を横に振る。

 

「いや、いい。

 それより煙草は吸ってもいいか?」

 

懐から煙草を取り出しながらそう言うと、エリスも首を横に振った。

 

「主様は高齢です故、健康を害する煙草はお控えください」

「・・・・・・なら、今のうちに吸っておくか」

 

 

部屋を出るとトイレの場所だけ教えてもらい、新木は煙草をふかした。

 

「・・・・・・いけそうか?」

 

琴野が不安げに話しかけてくる。

 

「・・・・・・いつだって不安はある。

 負けたらどうなるか・・・・・・全身をナイフで細切れにされる夢を見たこともある」

「や、やめてくれよ・・・・・・」

 

ひーっと首をすくめる琴野。

 

「いつだって不安が半分は占める。

 残り半分で色々考えて麻雀やるもんだ」

「そ、そんなもんなのか・・・・・・?」

 

良く分からんね、という表情で琴野は苦笑いを浮かべる。

 

 

休憩時間が終わり、二人は部屋に戻り、席に着く。

エリスは箱に10万点分の点棒を取り分け、二人に渡してきた。

 

「クゥクゥクゥ・・・・・・それが尽きた時、君達は負けるわけだ・・・・・・」

 

億蔵は楽しげに笑った。

琴野はその笑いに気味悪がっていたが、新木は変わらぬ表情で聞いた。

 

「・・・・・・それで、そちらの点数はいくらなんだ?」

 

億蔵は怪しげに笑い、エリスに指示を出す。

エリスはそれに従い、億蔵の後ろにあったドアを開けた。

 

 

札束の壁が現れた。

 

 

「なっ!?」

 

琴野が声を上げた。

一体いくらになるのか・・・・・・。

 

「ざっと100億ある。

 点棒に直すと、まぁ・・・・・・1000万点じゃな」

「い、1000万!?」

 

点棒が0になったら終わりというルールだったはず。

これでは終わるのはいつになるのやら。

 

「・・・・・・そっちのメイドは?」

「エリスの負け分もワシが払う・・・・・・。

 まぁ、山分けして・・・・・・500万点ずつってところかの、クゥクゥクゥ・・・・・・」

「・・・・・・長期戦になりそうだな」

「クゥクゥクゥ・・・・・・まぁ、たっぷり楽しもうではないか・・・・・・」

 

億蔵は笑いながら、卓の上の麻雀牌を混ぜていく。

3人もそれに続いて、牌を混ぜ始めた。

 

こうして勝負は始まった。

 

 

親順 億蔵→琴野→新木→エリス

 

 

「ツモ」

 

パタンと新木が手牌を倒す。

 

{五五②③④⑤⑥⑦566(ドラ)8} {(ツモ)}

 

「リーヅモタンピンドラ1、2000(にー)4000(よん)

「・・・・・・変わった点数の読み方をなさいますね」

「よく言われる」

 

エリスの言葉にも特に表情を変えることなく点棒を受け取り、局は続けられる。

 

 

{(ドラ)七八③④⑥⑦⑧123北北} {(ツモ)}

 

「ツモ、平和ドラ1、700・1300です」

 

エリスも負けじと牌を倒す。

億蔵の老人はまだ上がらない。

琴野も手の進みが良くないのか聴牌すらおぼつかない様子だ。

自分が上がって稼ぐしかないか、と新木は手を進めて行く。

 

 

「リーチ」

 

エリスが牌を横に倒し、千点棒を場に出す。

 

捨て牌

 

{北中8南一7} {横九(リーチ)}

 

早い巡目のリーチ。

だが、新木にとっては怖くない。

彼のデジタル思考からしてみればこれでもかなり手牌は透ける。

 

(ツモ切りは{南と7}。

 {北と中は不要牌として、その後手牌から出た8}。

 {一よりも早い段階で切られていることからそれよりも不要、つまり8}の周辺の牌が手牌に存在しないことを意味する。

 逆に{一}は順子として繋がる可能性があったという事。

 萬子は下寄り、{三四五}辺り。

 索子はあってもやはり下寄り、少なくとも{5}以下。

 手牌の並びから考えて筒子は面子として出来上がっている可能性がある。

 索子の下寄りの待ち・・・・・・か)

 

その読みを起点に危険牌の周辺を抱え込み、安牌を切り出して行く。

 

そして数巡後。

 

「ツモ」

 

{一二三四五六②②⑥⑦⑧45} {(ツモ)}

 

「平和ツモ、700(なな)400(よん)

「・・・・・・!」

 

新木捨て牌

 

{西北發⑨9中2八} {九}

 

エリス手牌

 

{三四五③④⑤⑦⑧⑨3345}

 

一通が狙えたのにそれを捨ててエリスの上がり牌を止められる{45}を手中に留めている。

捨て牌の不自然な切り出し方、エリスは自分の手が読まれたことを察する。

 

「・・・・・・待ちを読まれたか、エリス」

「・・・・・・そのようです、主様」

 

億蔵の言葉に頭を下げるエリス。

 

「クゥクゥクゥ・・・・・・まぁ、そうでなくては面白くないものよの」

 

 

勝負は東場から南場、そして西場、北場と進み、一荘を終える。

この時点で新木は167500点、琴野はあまり上がれずに69000点となっている。

このままツモ狙いで続けると琴野の点数も削れてしまい、一度の振り込みでピンチになる可能性がある。

仕方がないと新木はロン上がりに移行する。

狙いはこの試合始ってから一度も上がっていない億蔵。

既に捨て牌、手牌整理の癖も読み切った。

狙うのはたやすい。

また席の関係上エリスに安手で頭ハネをされる可能性も無い。

代わりに億蔵が先に聴牌をすると安目を振り込まれる可能性はあるが。

 

 

{一二三⑨⑨⑨78(ドラ)北中中中} {(ロン)}

 

「ロン、中チャンタドラ1、満貫」

「む・・・・・・またロン上がりか・・・・・・狙い打たれとるのぉ」

 

億蔵も自分が狙われている事を察し回避しようとするが、それでも新木は逃がさない。

 

{三四①①①22277東東東} {(ロン)}

 

「ロン、ダブ東三暗刻、満貫」

「うぐ・・・・・・」

 

ここは無いという所でロン上がり。

またそうかと思うと見え見えの裏スジでロン上がり。

ドンドン狙い打ち、点数は20万点に迫った。

しかし相手は原点500万点である。

早々終わらない。

 

 

どうするかと思っていた所、事態は急転する。

 

 

琴野が切った{北}で、エリスが手牌を倒した。

 

「ロンです」

 

{四四四⑨⑨⑨222777北} {(ロン)}

 

「四暗刻、単騎はダブル扱い。

 64000です」

「なっ!?」

 

一撃で残り5000点!

 

「・・・・・・この勝負に挑んで帰った者がいない、というのは聞き及んでいるかと思います。

 つまり、片方が負けてももう一人も共に敗北という扱いになります」

 

エリスは表情を崩すことなく、そう宣告する。

 

「ぐっ! ま、待て! 振り込んだのは俺だろう!

 仮にトビでも俺だけ敗北にしてくれ!」

 

琴野がそう言うが億蔵は笑って返すのみ。

 

「トビは敗北・・・・・・じゃが、相方が点数を貸すと言うのなら続行させてもよいがの・・・・・・。

 敗北する時は両者共にじゃ・・・・・・」

「・・・・・・分かった」

 

億蔵の言葉に新木は箱から点棒を取り出し、琴野に渡す。

 

「俺はまだ大分ある。

 5万点、持って行け」

「ぐっ・・・・・・す、すまねぇ!」

 

琴野は新木に頭を下げ、それを受け取る。

20万点が近かった新木の点棒はこれで14万点を割った。

 

ダブル役満振り込み。

だが新木は諦めない。

必ず勝って帰ると、配牌を受け取り、{北}を捨てる。

 

「・・・・・・まぁ、こんなものですか、噂の新木と言う男も・・・・・・」

 

む?と視線を向ける。

 

同時にエリスは手牌を倒した。

 

 

{四四四白白白發發發中中中北} {(ロン)}

 

 

「大三元四暗刻単騎、親のトリプルで144000」

「何だと!?」

 

エリスは手牌を一つ切ったのみ、すなわち配牌で聴牌していたと言う事になる。

 

「バカな!?」

 

席から立ち上がった瞬間、ガコッ!と後ろから頭を殴られた。

ガシャンと牌の上に身体が崩れ落ちる。

 

「トビで終了ですね」

「では回収します」

 

後ろから声が聞こえる。

聞いたことのない男の声。

知らない男が新木の身体をグイと持ち上げる。

 

「・・・・・・待て・・・・・・」

 

頭から血を流しつつ、新木が声を上げる。

 

「ほ、まだ意識があるか・・・・・・」

 

笑い声を上げる億蔵を睨みながら、新木が言う。

 

「・・・・・・琴野の点棒がまだ残っている・・・・・・。

 まだトビじゃない・・・・・・」

 

男の手を払いのけて、新木は席に座り直す。

 

その様子を見て、億蔵はやはり笑った。

表情を崩さなかったエリスも、この時ばかりはクスリと笑った。

 

「・・・・・・琴野・・・・・・」

 

スッと手を差し出す。

琴野から点棒を受け取る為に。

 

が。

 

「・・・・・・ク・・・・・・」

 

 

琴野の表情が醜く歪んだ。

 

 

「ククククク、はっははははははははは!!!!

 

 まだ気づかねぇのかよ!?

 てめぇにやる点棒はねぇ!! トビで終了だよ!!」

 

「な、に・・・・・・!?」

 

点棒の代わりに琴野の拳がその手に叩き落される。

 

「がっ!? ぐっ・・・・・・!?」

 

「なぁ、億蔵のじいさん、もうネタばらししてもいいだろ?」

「クゥクゥクゥ、いいじゃろう・・・・・・」

 

気づけば億蔵の表情も同じように醜く。

 

「てめぇは嵌められたんだよ! 俺にな!

 今までの奴らも全員そうだ!

 組の連中には俺は見送りってことにしていたが、実際は俺が生贄の奴らと組んでここで打ち、わざと点棒を減らして負けたんだよ!!

 なんせ、俺が紹介してやらねぇとこんなところで麻雀打ちたがる奴なんかいないからなぁ」

「クゥクゥクゥ、それは酷い言い分じゃのぉ・・・・・・」

「ハハハハ、すまねぇな、じいさん」

 

笑い合った後、琴野は新木の顔に拳を叩き落す。

 

「ぐっ・・・!!」

「無敗とかいう噂があったけど、こうなると案外脆いもんじゃねぇか、新木、え?」

「・・・・・・組の連中も全員グルか・・・・・・?」

「組の連中は俺の裏切りを知らねぇよ。

 ってそんなことはどうでもいいか」

 

さらに腹にも蹴りを入れる。

 

新木は椅子ごと床に倒された。

 

「どうだい? じいさん。

 「裏切られた男の顔」、今回も堪能したかい?」

「クゥクゥクゥ、十分じゃ・・・・・・。

 今回も持ってきた1億、そのまま持って行け・・・・・・」

 

 

新木ほどの腕が立つ麻雀打ちが裏切られて負けるその顔を見る、それだけを楽しみに老人はこの麻雀を行っているのか。

 

老人の歪んだ愉悦を満たす為の生贄。

 

いや、よく見ればここにいる連中全員が歪んだ笑みを浮かべている。

 

 

全員が全員か・・・・・・。

 

 

「じいさん、最後にこいつに処遇を教えてやるんだろう?」

「おお、そうじゃった、クゥクゥクゥ・・・・・・」

 

億蔵は最後に一際醜く笑った。

 

 

「お前は新薬の実験台になる。

 死ぬまでな。

 薬が完成したらそれを売りに出し、また新たな金となる。

 ワシはこの金で城を築くんじゃ!!

 お前もその踏み台の一つとしてやろう、クゥクゥクゥ!!」

 

 

「・・・・・・ふざ・・・け・・・・・・」

 

「まだ意識があるみてぇじゃねぇか。

 とっとと寝ちまいな」

 

最後に琴野の蹴りが新木の顔面を捕える。

 

床に倒れ込み、そこで新木の意識は途切れた。

 

 




ちょいと急ぎ足で失礼。
感想でもありましたが、過去のお話をいつかはやるのだろうというのはサブタイトル的に察しておられたと思います。
いつかって今さ!

冒頭にも書きましたがこのお話は「超展開」によって構成されております。
「こんな展開俺は認めねぇ!こんな話は二度と読まねぇ!」となる可能性が無きにしも非ず。
あなたにはこの物語を拒否する権利があります(今更
それを踏まえた上でこの「B story」にどうぞお付き合いくださいませ。

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