咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

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今回小難しい話が長々と入っています。
理解できなかったら悪いのは作者の文章力です(



06上埜久その1 打ち方と実験

1年程、そんな感じで靖子と両親と共に麻雀を打った秀介。

 

{六七八九九②②③④④白白白} {(ツモ)}

 

「この手は何点か計算してみろ」

 

靖子が用意した手牌を見てあっさりと答えを出す。

 

副底20+{白}暗刻8+カンチャン2+ツモ2=32符は切り上げで40符。

 

「ツモ白一盃口。

 40符3翻は子で5200、親で7700。

 ツモだから子1300(いちさん)2600(にーろく)、親2600オール」

 

その答えに靖子は秀介の頭にポンと手を乗せる。

 

「・・・・・・何て言うか、もう完璧だな」

「教えが良かったので」

「そんなこと微塵も思ってないくせに」

 

そんな軽口を叩き合うくらいには仲がいい。

 

「では次の問題だ」

 

そう言って靖子が問題を出すのは秀介ではなく、その向かいに座る久。

 

{一二三四六七八九333發發} {(ツモ)}

 

「この手、子で何点か計算してみろ」

 

んー、と悩んだ久は指で符を数えながら計算していく。

 

「副底20+カンチャン2+ツモ2+{3}暗刻4=28、切り上げで30。

 役はイッツーツモ。

 イッツーが2役だから、30符3ファンで、えーと・・・・・・1000・2000!」

「答えは正解だ。

 が、{發}対子の2符を忘れているぞ」

「あ、そっか」

 

しまったと慌てる久の頭を撫でる靖子。

やはり仲がいい。

この二人も加えて本当の家族のようだと、秀介は何度でも思う。

 

 

さてそれでは、と靖子が牌を全て自動卓に入れて声を上げる。

 

「また半荘打ってみようか」

 

そう言うといつもどこから湧いてくるのか、「ママが打つわ!」「いや! パパが!」と騒ぎ始める二人が現れるのだが、まぁいい。

 

 

 

秀介、久、靖子、両親のどちらか。

この面子で打つことが良くあるのだが。

何度も打っていると気づくことがある。

 

それは靖子の打ち方だ。

 

靖子は前半から飛ばして行く打ち方を好む。

流れを掴むのが上手いのだ。

だが、その流れを最後まで維持することができない。

その結果。

 

「ロン」

 

{一二三五六七(ドラ)九⑥⑥⑥33} {(ロン)}

 

「リーチ一通ドラ1、8000」

「うぐっ・・・・・・またまくられた・・・・・・」

 

ラストで秀介にまくられて2位、もしくは3位という結果がほとんどとなっている。

 

「・・・・・・何で最後に逆転されるんだろう・・・・・・」

 

がっくりとうなだれる靖子に秀介は言ってやる。

 

「「まくりの王様」とか呼んでもいいよ」

「なんだと」

 

その結果頭をぐりぐりされるのだが、まぁそれは我慢しておこう。

 

「いいだろう」

 

靖子はすぐに元気を取り戻し、秀介に告げた。

 

「なら私は最初にリードを作って逃げ切る、「快速の女王」となってやろうではないか!」

 

ビシッと秀介を指差しながらそう宣言する靖子。

それを見て秀介はやれやれと首を振る。

 

その打ち方があってないから負けるんだろうに。

 

「靖子姉さんも狙ってみれば?」

「何を?」

「ラストのまくり」

 

秀介の言葉に、むむむと考え込む靖子。

そんな打ち方考えたことも無いと言いたげだ。

 

「色々打ち方変えてみればいいじゃない」

 

さり気ないアドバイス。

現在高校生の靖子がこんな年下に言われて聞くかどうかは不明だが。

 

「・・・・・・やってみるか」

 

やる気になってくれたようで結構、と秀介は小さく安堵の息をつく。

 

そんな靖子の出鼻をくじくような真似はしない。

秀介は特に喰いずらしや意地悪な捨牌迷彩もせず、前半に小上がりを何度か、それ以降は流れのままに打ってやった。

すると後半になって靖子が流れを掴み、上がりを重ねるようになる。

上手く行ったようだと秀介が見守る中。

 

「ツモ!」

 

バシッ!と靖子の上がりが炸裂した。

 

{一二三九九①②③北北發發發} {(ツモ)}

 

「發チャンタツモ、満貫で逆転!」

 

見事まくりに成功したのである。

 

「やった! シュウ相手に久々トップだ!」

 

ひゃっほーいとはしゃぐ靖子。

よかったよかったと秀介は温かい目で見守るのだった。

 

傍目には大人げない高校生を見るかのような目に見えたかもしれないが。

 

 

ラストのまくりを狙い始めてから調子が良くなっていく靖子。

そんな感じで靖子の調子が良くなっていくと、それに相対して不機嫌になっていく人物が一人。

久である。

この年で秀介の両親よりは強いのでラスは引かない。

それはいいのだが、今まで靖子がラストに点を取られて3位と言う時に何とか2位に残っていた久、靖子が安定して強くなって秀介も上位を譲らないとなると、必然万年3位に転落である。

まだ仕方ないと割り切れる年齢ではない。

 

ならば、と秀介は次に久に助けを送るために画策する。

 

ちなみに4位が定位置の両親にはずっとその位置でいてもらいたいので放置である。

 

 

「久」

「・・・・・・なに、シュウくん」

 

不機嫌な久に話しかける秀介。

本当に不機嫌そうだが助けないわけにはいかない。

 

「協力して靖子姉さん倒さない?」

 

その言葉に、む?と久の表情が変わる。

 

「最近靖子姉さん調子に乗ってるから。

 俺がサポートするから久が靖子姉さん倒してよ」

「わ、私が?」

 

何やら不安そうな久。

だが秀介はあれこれと丸めこみ、久をやる気にさせる。

 

「うん、やってみる!」

「よし」

 

そうと決まれば、と先程またトップでひゃっほーいとはしゃいでいる靖子に勝負を挑むのであった。

 

 

麻雀と言うのはトップを取るよりもトップを取らせる方が容易い。

自分の点棒をそっくり相手に与えればいいのだから。

 

ましてや自分にはデジタル思考と、「死神の力」がある。

 

自分で上がりを取ることも、靖子から点棒を奪うことも、久に点棒を与えることも容易だ。

 

そんなわけで場を完全に支配し、オーラスである。

トップは親の靖子、2位が秀介、3位に久と言う状況。

靖子はオーラスだけでなく調子が良ければ南三局、はては南二局から上がり始め、オーラスに最速で上がって上がりやめと言う手も使うようになった。

実に成長したものだ、と感心する秀介だったが今回はそうも言っていられない。

 

トップの靖子は好調。

ならばと万年ビリの両親に鳴きを入れさせて喰いずらし、久に有効牌を入れる。

そしてトドメ。

 

「リーチ」

「むっ」

 

秀介のリーチに靖子の表情が曇る。

ここでリーチする以上逆転確定だろう、ツモらせるわけにもいかないし振り込むなどもっての外。

慎重に手を回さざるを得ない。

 

だが残念。

 

{五六七八④[⑤]⑥46777西}

 

秀介のこの手はノーテンリーチである。

 

これで靖子の意識と警戒をこちらに向けさせ、時間を稼いだ上でこれから上がる久に1000点を献上すると言う実に便利な手だ。

 

もっとも人が手牌を見ているところでやったら速攻チョンボだが。

 

「ロン!」

「えっ!?」

 

作戦成功、久が靖子からロン上がりだ。

 

{2234678999南南南} {(ロン)}

 

「南面前混一、8000!」

「り、リー棒入れて逆転・・・・・・ぐはっ!」

 

がくっと靖子は卓に倒れ込んだ。

 

「やったー!」

 

久がトップを取るのは、この面子で打って確か初めてのはずだ。

はしゃぐのも当然だろうし、自分も褒めてやらなければ。

 

と。

 

「・・・・・・ちょっとトイレ」

「・・・・・・いってら・・・・・・」

 

靖子はぐったりと項垂れたまま手を振って見送ってくれる。

 

「お父さん、代わりに入ってもいいよ」

 

秀介はそう言ってリビングを後にした。

後ろから「よーし、パパ張りきっちゃうぞー!」とはしゃぐ声が聞こえたが無視する。

 

 

向かうのはトイレ。

便座の蓋を開けた途端、やはりそれがこみ上げて来た。

 

 

「げほっ!」

 

 

びちゃびちゃ、と便座が真っ赤に染まる。

 

万が一誰かに見られたら大騒ぎだ、こんな子供が血を吐く姿なんて。

 

 

だが何故だ?

これくらいの能力の使用なら普段からちょこちょこしている。

あの死神は「使い過ぎるとまた死んじゃうからね。注意しなさいよ」とは言っていた。

が、血を吐くほど無茶をした記憶は無い。

 

何故だ・・・・・・?

 

 

ふと、その続きの言葉が甦る。

 

「あ、リンゴジュース飲めば多少軽減されるけど」

 

 

・・・・・・・・・・・・。

 

 

「ただいま。

 ジュースあったよね?」

 

リビングに戻り、麻雀に白熱しているメンバーを放っておいて冷蔵庫からリンゴジュースを取り出す。

まさかな、と思いつつ一口飲んだ。

 

嘘みたいに体調が落ち着いていく。

 

「・・・・・・マジで?」

 

そう呟かざるを得ない。

コップ一杯飲み終える頃には完全に元気になっていた。

 

 

「シュウくん・・・・・・靖子さんが手がつけられない・・・・・・」

 

ふと久の声が聞こえる。

様子を見てみると、まくりをやめたのか東場から圧倒的なトップを取っていた。

 

やれやれ、と秀介は大人げない靖子に言う。

 

「靖子姉さん、うちの両親にトップ取らせる練習とかしてみれば?

 プロになったらそういう技術も必要かもしれないよ」

「むむ?」

 

秀介の言葉に靖子は腕を組んで考え込む。

 

「・・・・・・なるほど、何が起こるか分からないからな。

 よし決めた、その挑戦受けてやろう、シュウ」

 

別に挑戦した覚えは無いんだけどと思いつつ、どうやら大人げない靖子姉さんは打ち方を変えてくれるようだ。

よかったと秀介は一人安心する。

 

そんな靖子に久が「がんがん振り込まれてもつまんない・・・・・・」と呟くので、「なら読まれにくい待ちにしてみれば?」と言ってみた。

 

久が悪待ちに目覚めた切っ掛けがそれかどうかは分からない。

 

 

それはそれとして、リンゴジュースを飲むと能力の使用による副作用が落ち着いたのは確かだ。

便利だという言葉と不便だという言葉が同時に頭の中を占める。

そしてさらに、死神に言ってやりたい言葉が浮かんできた。

 

 

何故こんな身体にした。

 

 

 

それから数年、秀介はこの死神の力を使いこなすべく靖子や久と打ったり、時には一人で延々と打ったりした。

 

「死神の力」の能力は二つ。

一つは牌が透けて見えるもの。

これはON、OFFができない代わりにいわゆる代償と言われるものは必要ない。

 

そしてもう一つ。

これはON、OFFができる代わりに何度も発動していると発動後に吐血、軽くても頭痛に見舞われる。

 

欲しいと思った牌をツモったり、不要牌を他者に押し付けたりできるというもの。

 

 

もっというならば、山の牌が入れ替えられるのだ。

 

 

 

新木桂の頃から思っていた事だが、それは実に不思議な光景だった。

山を積んでいるその最中から既に牌が透けて見えるのだ。

自動卓なら山が現れたその時から。

 

例えば山に{東}を見つける。

それを表に返すと確かに間違いなく{東}なのだ。

 

 

そしてここからが、志野崎秀介になってから明確に強力になったと意識したところだ。

 

 

別の場所に今度は{⑥}を見つける。

そしてその牌に意識を向けながら、{1}に変わるようにと強く念じる。

するとその瞬間、その牌は{⑥から1}に変わる。

同時に別の場所に存在する{1が⑥}に変わるのだ。

それをツモると間違いなくそれは{1}。

 

そして最後にその牌を元に戻し、{九}に変われと念じる。

だが今度はその牌は変わらず、表にしても{1}のままだ。

 

この不思議な現象について、デジタル思考の先駆者と呼ばれた思考で考え続けていた。

そんなある日、一冊の難しい本から一つの理論を見つける。

量子力学、異なる二つの現象が同時に存在するという重ね合わせ。

 

いわゆる「シュレーディンガーの猫」というやつだ。

 

生きている猫と死んでいる猫、箱の中にいるのはどちらなのか観測するまで不明である。

それは誰かによって観測されるまで、生きている可能性と死んでいる可能性が50%ずつで存在し、「同時に重なり合っている」。

その箱の中には生きている猫と死んでいる猫が同時に存在し、誰かに観測されると同時にどちらか片方が消滅する。

箱の中の猫は生きているし死んでもいるとも言える。

 

それを今の秀介の牌の状態に当てはめてみる。

 

透けて見える{東}は間違いなく{東}であり、ツモったときに別の牌に変わっていたりはしない。

このことから見えている{東}は秀介によって観測されていると言えなくもない。

だがその{東は変われと念じれば別の牌⑥}に容易く姿を変える。

そこからさらに{1、九}へと念じれば、同様に姿を変える。

それは実際に秀介がツモるまでいくらでも変えられる。

ならばそれは透けて見えるとは言っても不確定な事象に入ると言っていいだろう。

さすがに「死神の力」といえども人の手牌や表ドラを入れ替えたりすることはできない。

当然自分の手牌もだ。

それは既に誰かによって観測されているものだから。

 

このことから秀介はこの「死神の力」を、「不確定な領域に干渉する力」だと結論付けた。

 

例えば事故にしろ故意にしろ山の一部が崩れて誰かに牌が観測されたとする。

するともう秀介はその牌に対して「死神の力」を使い、牌を入れ替えることができない。

つまり例えば、これは実験のしようが無いが、他の誰かが牌に印をつけて判別をする「ガン牌」をしていたとする。

そうなるとおそらく秀介には牌の入れ替えを行うことができない。

逆に言えば、秀介が牌の入れ替えが行えないということは、その牌には誰かの手によりガン付けがされているということだ。

もしくは積み込まれたりすり替えられたりした後だということ。

 

新木桂の頃、最初にこの能力を使った時は「欲しい牌がそこにいてくれる」なんて思ったものだが、その頃から無意識下でこの入れ替えに近い事を行っていたのかもしれない。

その後長く麻雀生活を続ける過程で明確にこの能力を意識し、それ以降は自らの意思で牌の入れ替えを行えるようになった。

そう考えるとこの能力は新木桂の頃よりも強くなったというよりは、この自動卓という環境がより能力の使用に適していたのだろう。

手積みというのはアラが出る。

完全に裏返した状態からかき混ぜてもふとした拍子に表になってしまう牌は何牌もあるだろう。

一度見た牌というのは無意識下でいくらか記憶しているもの。

だからこそ、入れ替えたりできない牌も存在した。

特に城ヶ崎との対決時はそれがピンポイントで城ヶ崎のツモと重なったりして入れ替えられず、とんでもなく苦戦したものだ。

それこそ勝利と引き換えに命を失うほどに。

 

だが自動卓は違う。

各局の決着後、卓の中に牌を入れてかき混ぜ、山を完成させて下からせり上げるという仕組みになっている。

つまり牌が姿を消してからせり上がってくるまでの間は、誰にも観測されていない状態となるわけだ。

もはや入れ替えができない牌は存在しなくなる。

当初能力が強くなったと勘違いしたのも無理は無い。

 

更に疑問を重ねてみる。

ならばガン牌に対して秀介は何も出来ないのか?

これも実験のしようが無いが、一つだけ可能性がある。

 

先程も告げたように、自動卓の場合は牌が姿を消してからせり上がってくるまでの間、誰にも観測されていない状態となるわけだ。

ましてや通常自動卓は二組の牌を交互に使用するようになっている。

観測されていない時間は長い。

その状態から既に特定の場所に特定の牌が来るようにと念じていれば、山が観測されてから牌を入れ替える必要も無くなるのではないか。

配牌やドラというものは賽の目によって決まる。

さすがにそこに干渉するような能力は持ち合わせていないので、秀介に配牌をいじることはできない。

いじるとしても賽の目が出次第すぐに能力を使用しなければならない。

咄嗟に能力を使うというのは平常時に使うよりも身体への負担が大きい、なので秀介としても控えたいところ。

だがツモは別だ。

例えば自分が親の時、鳴きが入らなければ自分がツモる牌は自分の目の前の上山の偶数列の牌と決まっている。

南家なら下山奇数列、西なら上山の奇数列だ。

対面も同様。

上家、下家は奇数と偶数が入れ替わる。

故にその列に自分が欲しい牌をあらかじめ仕込んでおけば、例えガン牌が相手であろうとも有利な勝負を行うことができる。

 

もっとも一度それを実際に行ってみたところ、勝負の途中にもかかわらず視界がぐらりと揺れるほど具合が悪くなった。

即座にリンゴジュースを摂取したが、それでも抑えきれずトイレに駆け込むことになった。

おかげで吐血の瞬間は誰にも見られなかったが、これはかなり自分に負担をかけるようだ。

残念ながらその局は代わりに入った親が勝手に進めて行ったので、結局のところ仕込みが成功したのかどうかは不明。

体調が悪くなるほどの代償を支払ったからと言って成功したとは限らない。

発動条件を満たしていない、意味のない能力に無駄な代償を支払ったという可能性もある。

 

同様に家に誰もいない日に、実験が成功したのかどうか分かりやすいように自分の目の前の山の牌を全て萬子にしてみようとしたこともある。

その時も同様に吐血、それに加えて激しい頭痛でその後ろくに身動きが取れなくなってしまった。

何とかトイレに駆け込んだので卓や床を汚すことは無かったが、家に一人でいるタイミングでなかったら即座に救急車を呼ばれていた事だろう。

それでも何とか頑張って卓まで這って戻って積み込んだ山を確認してみたが、山は萬子に染まりきっていなかった。

半分くらいは染まっていたのでおそらくそれくらいが秀介が入れ替えができる牌数の限界なのだろうと結論付けている。

もっとも何度かに分けて時間をかけて行えばできなくはないので、「一度に」入れ替えできる牌の数の限度だろうが。

 

自分の限度を見極める為に中々無茶をしたものである。

リンゴジュースが無ければ子供の頃から入院、通院生活を送る事になっていたかもしれない。

新木桂の頃にはできなかった事だ。

おかげでかなり明確に能力を知ることができた、その点に関してはこんな体質にした事を死神に感謝をしてもいい。

 

 

そうして自分の能力に対して様々な実験を終わらせた後、秀介は椅子の背にもたれかかる。

まだ子供なのでタバコは吸えない。

ヘビースモーカーだった彼にとって中々きついことだが、代わりに100点棒を取り出して銜えることで形だけでも取り繕う。

煙は混じっていないが、フーと息を吐いて秀介は思いを馳せる。

 

(死神・・・・・・)

 

前回の人生で二度だけ会ったあの死神を名乗る女。

彼女を思い浮かべ秀介は、ははっと声をあげた。

 

 

 

「なるほど、やっぱりお前は死神だ」

 

 

 




天使ではない。
はてさて、この能力に対する感想はどうなることやら。

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