咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

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笑いで締めないと死んでしまう病は無事に完治しました。
その代わり後遺症でこのお話は少しばかりネタが多い気がします、気がするだけです(



14志野崎秀介その2 推理と先手

ベッドに横になり、夕暮れの空を眺めながら秀介は考える。

 

考えるのは久の事だ。

 

死神にも言われたし、まこにも言われてしまったし。

それに自覚もしている。

 

中身とか前世とか、そういうものはもろもろ捨て去って、今現在の志野崎秀介として考える。

 

 

久は幼馴染、子供の頃から面倒を見て来た。

秀介は久をよく知っているし、久も秀介をよく知っている。

小学校、中学校と共に麻雀を打ってきた。

 

久は一番仲がいい女。

 

いや、そんなものでは済ませられない。

 

中学三年の夏、あの大会の夜、事前に言われていた死神の警告を忘れるほど必死になって久を守った。

何故?

ただの幼馴染相手にそんな事をするか?

あの頃は娘ほど年の離れた相手だと思っていた?

 

本当にそうか?

 

いや、そんなもので片付けてはいけない。

 

多分、そう言うことなんだろう。

 

 

志野崎秀介は、

 

久が

 

好き

 

 

なのか?

 

 

「むぅ・・・・・・」

 

そこで首を傾げてしまう辺りがいけない。

中身の年齢差とか考えていたら、多分今回の人生でも伴侶となる女は現れないだろう。

前世ではそう言うことは全く考えてこなかった男である。

 

考えてみれば久ほど秀介の相手が務まる女もいないだろう。

靖子? 秀介があれを恋愛の対象と見たことは一度も無いのではなかろうか。

 

しかし久は?

 

思い返してみれば何度か今までにない感情を感じた記憶がある。

ああ、こいつはいい女だな、と。

まこに言ったのとは違う、本当に、本当に。

 

 

「・・・・・・そうか・・・・・・」

 

 

自分の傍に置いておきたい女だと思ったのか、と秀介は一人頷く。

 

 

まこにも言われた。

 

久の隣に自分以外の男がいたら?

 

はっきりと嫌だと思った。

 

ならつまりそう言う事なのだろう、うん。

 

 

 

志野崎秀介は幼馴染の竹井久が好きなのだ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・ん」

 

眠ってしまっていたようだ。

時間を確認するともうかなり遅い、外も暗いし。

 

「・・・・・・なんだ、まだ会議は続いてるのか?」

 

まったくしょうがない、と秀介はリンゴジュースの補給がてら部室を出た。

 

が、生徒会議室に向かってみると既に会議は終わった後だという。

 

「どこにいるんだ全く・・・・・・」

 

電話かメールでもしてみようと携帯を取り出すと、メールが届いているのに気づいた。

「何事?」と一言だけ書いてある。

 

「・・・・・・それはこっちの台詞なんだが」

 

やれやれと思いつつ何が起こっているか考えてみた。

 

 

まずこちらに「何事?」というメールが届いているということは、久は秀介に何かあったと思っている。

では何故そんな事を思ったのか?

メールで連絡しているということから、どこからかメールの連絡を受け取ったのではないかと推測する。

どこかから「志野崎秀介が危険!」とか「志野崎秀介を預かっている!」とか連絡を受けたか?

いや、それにしては「何事?」なんて軽い一言過ぎる。

 

こちらに一言「何事?」とだけ来そうな連絡を考えてみようか。

 

「志野崎秀介が事故に遭ったって聞いたんだけど本当?」

いや、多分久なら「あんたが事故に遭ったってことになってるんだけど本当?」とか連絡入れてきそうだ。

 

「志野崎秀介が女の子に呼び出されてたよ」

いや、久なら「後で話聞かせて(にっこり」とか送ってくるだろう。

っていうか電話が直接来るだろう。

こちらが出るまで延々と。

 

「・・・・・・俺関係じゃないのか?」

 

他の可能性を考えてみよう。

 

例えばまこから連絡が行ったとする。

 

「志野崎先輩がまだ来てないんじゃけど」

いや、だったら久は部室に来て起こしてるだろう。

 

「志野崎先輩が事故に!」

いや、だったら久はまこに連絡して詳細を聞くだろう。

っていうか事故とかから離れよう。

 

「喫茶店が忙しいから手伝って!」

いや、秀介に連絡が来る理由がない。

 

逆に「喫茶店が暇、遊びに来てー」

いや、だから久が秀介に連絡する理由がないって。

 

「喫茶店が暇、志野崎先輩と一緒に遊びに来てー」

いやいや、だったらまこは秀介に直接連絡・・・・・・?

 

「あ、俺あいつのアドレス知らないな」

 

そうか、それで久に連絡したんだな、と秀介は思い至る。

 

「喫茶店が暇、志野崎先輩と一緒に遊びに来てー」

いや、それで久が秀介に「何事?」とは聞かないだろう。

 

「喫茶店でイベントがあってん、志野崎先輩と遊びに来んしゃい」

いや、それで久が秀介に(

 

 

そもそもこの高校生活において、秀介は久をずっと部室で待っていたのだ。

久は秀介が部室にいると知ってるはず。

何故部室の秀介をスルーしてメールで連絡をしてきたのだろうか?

考えられる理由としては、秀介が部室にいないと思ったからだろう。

では何故部室にいないと思ったのか。

まこを一人で帰らせるのは忍びないと一緒に喫茶店まで行ったとでも思ったのだろうか?

だったらその時に秀介から久に連絡するだろう。

 

いや待て、そう言えば、と秀介は思い至る。

秀介自身もさっき気付いたことだし、久は秀介とまこがとっくに連絡先を交換してると思ってるのかもしれない。

 

そうなれば、例えば「喫茶店がピンチ! 特に麻雀で!」とか連絡が行ったとする。

久は「だったらシュウに頼みなさいよ」と思うだろう。

しかしそこで、逆に既に秀介に連絡を出した後かもしれないと思ったら?

もしくは秀介も既に喫茶店に行ってるのかも、と思ったのかもしれない。

秀介が来ているにもかかわらず麻雀でピンチ、どんな事態? 「何事?」となるのではないか?

多分。

よく分かんないけど。

 

 

確証はないが結論を出した秀介は、一先ず「今どこにいる? とりあえず喫茶店に向かうぞ?」とメールを送る。

 

(さてさてこの推測、当たっていてくれればいいんだがなぁ)

 

そう思いつつ秀介は学校を後にした。

 

そして、ふと眠る前に考えていた事を思い出して立ち止まる。

 

「・・・・・・そうだな、先送りにするのもよくない」

 

再び携帯を取り出し、「それから、用件が済んだら話があるんだが」と新たにメールを送っておいた。

 

 

 

 

 

チリリーンといつも通り喫茶店の鈴の音が秀介を迎えてくれる。

が、中の空気が違う。

特に麻雀卓のある辺り。

 

何かがいるな?と、この時代に来てからは初めての強い相手の気配を感じていた。

と言ってもそれほど強い気配とは思えないが。

卓を覗き込んでみると、やはり久とまこが揃っていた。

秀介の予測は当たっていたようだ、よかった。

しかし状況はよくない様子。

少しばかり声をかけず、様子を見てみる。

 

と。

 

「!?」

 

一人の男が目に入る。

それと同時に、背中に痛みを感じた気がした。

 

間違いない。

あの男は、自分の背中に傷を残した男!!

 

ギリッと歯が鳴る。

こんなところで今度は何の用だ?

そう思いつつ卓の様子を見る。

 

 

まこの対面の男がひたすらまこを狙い撃ちしている模様。

だがまこも必死で回避しているようだ。

普段秀介に狙われていた経験が生きたか。

しかしそれにしても、と秀介は対面の動きを観察する。

あの狙い方は異常だ。

秀介でも「死神の力」を使うからこそ狙えるようなものの、それを素でやる人間がいるとは思えない。

後ろの男が手牌を通しているのは間違いなさそうだが、久もまこも手牌の一部を隠して手の進行を読めないようにしている。

となると。

 

(・・・・・・あいつも同じような力を持っているのか・・・・・・?)

 

疑うべきはまずそこ。

そもそもこの時代には、自分や前回の人生の城ヶ崎には及ばないものの、不思議な能力を持った者が数多く存在している。

悪待ちの久にしろ、染め手のまこにしろ、彼女達と一緒にテレビ中継で見た全国大会の出場者にしろ、まくりの女王と呼ばれるプロかっこわらいにしろ。

いや失礼、靖子は秀介が狙い撃ちをしているから負けているのであり、本来はプロを名乗るに値する素晴らしい腕の持ち主である。

と、今更取ってつけたようなフォローをしたところで、改めてその男に意識を向けてみる。

やはりあいつも手牌が透けて見えるくらいの能力は持っているのかもしれない。

 

「「聴牌」」

「「ノーテン」」

 

久は上がりにかけているようだが、あのスーツの男が有効牌を上手く散らして上がれないようにしているようだ。

しかし・・・・・・。

 

(久もまこもかなり追いつめられているな・・・・・・)

 

冷静になれば気づくこともあっただろうに。

それとも普段の自分の上がりっぷりで妙なトラウマでも植え付けてしまったか?なんて思いつつ見守る。

 

 

やがて。

 

「・・・・・・ノーテン・・・・・・罰符でトビじゃ・・・・・・」

 

まこが席を立った。

最下位は席を離れてもう打てないルールか?と思っていると、見慣れた常連が席に着く。

秀介は少ない人ごみにまぎれてこっそり近寄ると、まこを引っ張り込む。

 

「な、何?」

 

さすがに驚いたようだが、秀介はまこの口元に手をあてて顔を合わせる。

 

「んんっ!」

「しーっ・・・・・・」

 

声を上げないように、と合図をするとまこはこくこくと頷いた。

それを確認して秀介は口から手を離す。

 

「し、志野崎先輩!」

「状況を説明してくれ」

「わ、分かった!」

 

そしてまこに連れられて卓から少し離れ、状況や今打っている麻雀のルールを聞く。

 

「・・・・・・なるほど」

「ど、どうじゃ? やれそうか? 志野崎先輩?」

 

まこは不安そうに聞く。

やれやれ、と秀介はまこの頭を撫でた。

 

「後輩が心配そうな顔をするんじゃない。

 「お願いします、先輩」と一言言えばいいんだ」

 

そう言って笑った。

まこも安心したように笑う。

 

「ほんならお願いします、先輩」

 

その言葉に、秀介はぐっと親指を立てた。

 

 

「だが断る」

 

「ちょっと!?」

「冗談だ」

「タチが悪いて! こんな時に!」

 

はっはっはっと笑いつつ、しかし少し声を落としてまこに聞く。

 

「ところでまこ、そういうことなら俺は正体を隠した方がいいと思うんだ。

 なんか顔を隠すような仮面とか無いか?」

 

そう言うとまこは軽くこちらを睨みつつ、しかし何か思いついたのかポンと手を叩いた。

 

「あるわ、先輩。

 こっちへ」

 

そう言われて店の奥に連れて行かれた。

 

 

案内されたのは更衣室だった。

 

「えっと、仮面を付けとるのは・・・・・・」

 

ごそごそと衣装を探しているようだ。

 

「先輩、やっぱり100点棒銜える為に口元は無い方がええじゃろ?」

「ああ、分かってるじゃないか」

 

そこはこだわりなのか、秀介はそう言って笑った。

一方のまこもごそごそと衣装を取り出して並べながら笑った。

 

「ほんなら、この中から選びんさい」

 

 

ジャーンと現れたのは仮面を付けた数々のキャラクター衣裳だった。

 

 

「・・・・・・まこ、別に仮面だけくれれば衣装は・・・・・・」

「不謹慎なタイミングで冗談言った罰じゃ」

 

むぅ、意外に根に持つタイプだ、と思いながら秀介は衣装を見てみる。

 

 

「これは?」

「結局素顔は晒されなかったけど多分ムウと同じじゃないかと噂の人」

「クルーゼ隊長か」

 

 

「これは?」

「V3の相棒」

「確かに口元が空いてるのはこいつだけだけどさぁ」

 

 

「これは?」

「華蝶仮面とか言うたか」

「女衣装を添えるとか何考えてんだ」

 

 

「これは・・・・・・聞くまでも無いな」

「何故じゃ?」

「坊やだからさ」

 

 

「これは?」

「ロナ家の強化人間」

「ってかこれフルフェイスじゃねぇか。

 口元は無い方がいいと言ったのに用意するとは、つくづく女と言うものは御しがたいな」

「そうさせたのは仮面を外せないあなたでしょう?」

「まだ言うか」

 

 

良く分からないが多分ろくなものではない、と秀介は突っぱねていく。

仕方がないと適当にマスクを選んだところ、「そのマスクならこのマントは外しちゃいかん」と押し付けられた。

服は拒否したところ制服にマントと言うよく分からない服装にさせられてしまった。

 

「・・・・・・ちなみにこの衣装は?」

「お母さんとお姉さんが人形な一家の父親」

「クローバー家か」

 

 

 

そして再び店内に参上、久の肩を叩いたところである。

 

「誰っ!?」

 

久の反応も仕方ないと思いつつ席に座った。

いや、久も分かってて思わず言ってしまったのだろうが。

とりあえず名乗るか、と秀介は対面のスーツ男、藤に言う。

こほん、とできるだけ声を似せて。

 

「初めまして、レリウスだ」

「・・・・・・ふざけてるのですか?」

 

やっぱりそう思われるか、とレリウスはマントを外す。

 

「俺を探してるらしいからな、顔も名前も教えない方がいいかと思って」

「・・・・・・それでその格好は無いでしょ」

 

久もジト目でレリウスを見る。

 

「・・・・・・まこが嫌がる俺を無理矢理・・・・・・」

「・・・・・・ありえるわね」

 

そこで納得してしまうのがまこクオリティ。

さて、冗談はこの辺でと秀介は改めて挨拶する。

 

「そういうわけでお前たちが探してるのは俺だ。

 何の用か知らんが、お店に迷惑をかけず早急に撤退して頂きたい」

 

そう言うと藤はフッと笑った。

 

「あなたと戦いに来たのにそれを目前に帰るほどお人好しではありませんよ。

 あなたも座っている辺りを見ると、麻雀で追い返す気なのでしょう?」

 

その言葉に秀介もやれやれと首を振りつつ笑った。

 

「戦いが目的か? それともその後何か話でもあるのかな?

 まこ、お客さんに迷惑をかける連中はもはや客じゃなくていいだろ?」

「ええ、やっちゃってください、レリウスさん」

 

秀介の言葉にまこもノリノリで返した。

老人の方もハッハッハッと声を上げて笑った。

 

「ヒーロー参上か。

 藤、こいつはどうじゃ?」

 

老人の言葉に藤は暫し秀介を見ていたが、やがて笑った。

 

「・・・・・・本当にあなたが噂の人物ですか?

 とても強いようには感じられませんね」

「・・・っ!」

 

藤の言葉に悔しそうな表情をしたのは久。

それを秀介は宥める。

 

「そうか・・・・・・なら藤、蹴散らしてしまうが良い」

「任せてください」

 

カララララと藤が賽を回す。

久が親だ。

 

親順

久→レリウス→老人→藤

 

「では始めましょうか」

 

藤の言葉に久が改めて賽を振り、試合開始となった。

 

 

 

 

東一局0本場 親・久 ドラ{白}

 

8巡目。

 

藤捨て牌

 

{南北中六九82}

 

藤手牌

 

{一二三①②③⑤⑦⑧(横3)⑨299}

 

(来ましたね)

 

順調に進んで純チャン三色聴牌だ。

捨て牌は字牌を先切り、さらに端牌も捨てている。

 

(これで純チャンとは読めないでしょう。

 さて、噂の対面は・・・・・・?)

 

ちらっと秀介の方を見る。

秀介も久同様手牌の一部を伏せており、完全には通されていない。

 

だが。

 

 

(・・・・・・フッ、見えますよ、あなたの手牌)

 

 

{三三①①②④⑤⑤⑧14西西}

 

 

藤はいかなる手段を用いてか、しっかりと秀介の手を見通していた。

 

(七対子狙いですか・・・・・・。

 しかも私の待ち{1-4}を抱えている。

 対子にならなければ切り出されるでしょうが・・・・・・ロン上がりは厳しいかもしれませんね)

 

そう思いつつタァンと{⑤}を切り捨てる藤。

そして久の番を終えて、秀介が牌をツモる。

不要牌の{六}だ。

 

が、藤が見ている目の前で秀介は{4}に手をかけた。

 

「・・・・・・藤って言ったけ? 対面の」

「・・・・・・ええ、そうですが?」

 

秀介はその後、{4}を捨て牌に置いた。

 

「挨拶代わりだ、受け取っとけ」

「・・・・・・!?」

 

それはまるで、藤の待ちが{1-4}だと読み切っているかのように。

何故!? 何故こちらの待ちが分かる!?

まさか・・・・・・手牌が見えている!?

藤が驚愕する中、秀介は笑った。

 

 

「そんなに驚くことじゃないだろ?

 捨て牌は字牌先切り、それ以外も端の2、8牌が多い。

 だが{六}の出が早すぎる。

 その後の{九82}がチャンタや純チャンを否定しているように見えるが、純チャン決め打ちで不要牌を切ったってだけだろう。

 その割に{⑤}の出が遅い。

 それは筒子に一通の目があったからだ。

 その{⑤は①②③⑤⑦⑧⑨からの⑤}切り。

 {六九}の先切りは手牌にその周辺の牌が無いからだ、あっても萬子は下寄りのみ。

 逆に聴牌近くで切られた{82}は周辺に牌がある。

 {8は899}からの頭確定。

 もし筒子の{④⑥}が来たら一通に移行する為に純チャン三色と両天秤で残しておいた牌{2}に、純チャン三色に必要な{3}を引いて聴牌。

 リーチをかけなかったのは、七対子狙いの俺の手から{1-4}が零れるか不安だったから」

 

 

ビシッと指差してやる。

 

「だろ?」

 

 

周囲のギャラリーも含め全員が口を開けたまま固まる。

そんな間抜け面を晒さなかったのは、普段打ち慣れている久とまこくらいなもの。

 

 

「・・・・・・どうした? 上がらないのか? 純チャン三色じゃないと嫌か?」

 

手牌を倒さずに固まっている藤に笑いかける秀介。

藤は暫し考えた後、手牌を倒した。

 

「・・・・・・ロンです、平和のみ」

「ほいよ」

 

チャリンと1000点棒を差し出す秀介。

ふぅ、とため息をつくと藤が苦笑いを浮かべる。

 

「・・・・・・これは見誤りました。

 まさかこれほどの腕とは・・・・・・」

「そりゃどうも」

 

素っ気なく返事をする秀介。

 

久とまこにも安堵の表情が浮かぶ。

 

(やっぱりさすがね、シュウ)

(さすが志野崎先輩じゃ、これならきっと勝てる!)

 

 

だが、これだけの腕を見せられながらも藤は笑っていた。

 

(なるほど、これは予想外。

 しかし・・・・・・手牌も山も見通せる私があなたに振り込むことはありません。

 どう抵抗しようと、あなたの負けは確定ですよ)

 

クククと小さく笑う藤。

 

 

「・・・・・・さてと、俺の親番・・・・・・」

 

秀介はそう言って賽を回すと同時に、取り出した100点棒を銜えた。

 

「・・・・・・オーラスだ」

 

 

あれだけの腕を見せられても笑っていた藤が、それを見た途端に表情を変えた。

 

「・・・・・・どうした?」

 

配牌を取っていかない藤に老人が声をかける。

 

「・・・・・・こいつ・・・・・・点棒を銜えた途端に・・・・・・気配が・・・・・・!」

 

「・・・・・・気配がどうした?」

 

 

「・・・・・・こいつ・・・・・・やばいです・・・・・・」

 

 




仮面の男レリウス、一体何者なんだ(
「俺は○○しただけで相手の強さが分かる!」とか言うやつの噛ませ犬臭は半端ない。
あと強さを数値化する奴とか。

秀介は実際には敵の手牌が見えているけど、それっぽい理由を付けて手牌を読んでいるかのように見せているだけです。
すなわち心理攻撃です。

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