咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩 作:隠戸海斗
なまじいい手が入るものだから。
(・・・・・・うっかり忘れていた・・・・・・)
そう考えてゆみは首を横に振る。
(いや、忘れようとしていたというところか。
いくら集中的に狙われたからと言って、あの天江衣が折れるわけがなかった。
意識から取り除いて久に集中したのはミスだったな)
麻雀は四人でやるもの、それを忘れてはいけない。
そう考えてゆみはふと顔を上げる。
(・・・・・・ならば・・・・・・)
対面に座るこの男は?
志野崎秀介、彼もまた死んではいるまい。
ゆみは改めて自分に言い聞かせた。
南二局0本場 親・衣 ドラ{④}
ゆみ 96600
配牌
{一二二五六七①[⑤]113南發}
良くは無いが酷いわけでも無い。
123の三色。
{①が伸びずとも[⑤]}を面子に絡めた平和手。
{南か發}の役牌。
どれも狙って行けるだろう。
衣が親番ということは海底を狙うには下家の秀介から鳴かなければならない。
ここまで秀介は衣に有利になることは一切してこなかった。
となれば衣は速攻を仕掛けるしかない。
そして鳴きを入れた速攻ならば役も手の進行も読みやすい。
仮に海底狙いで秀介以外からの鳴きに頼るとしても、久からポンした後にゆみからチー。
もしくはゆみから3回鳴くしかない。
そう考えたゆみの思考は、衣の第一打で僅かばかり揺らぐ。
衣の第一打、{⑦}。
よほどいい手なのか、染め手や三色に進める気なのか。
「・・・・・・げほっ」
直後不意に、妙に濁った咳が聞こえた。
何事?と顔を上げると秀介が口元を押さえていた。
どうやら彼の咳だったらしい。
「・・・・・・・・・・・・まこ」
しばし沈黙した後、秀介は財布を取り出してポイッとまこに投げた。
「悪い、それで何か買ってきてくれ」
「えぇ!? いいところですのに!」
「頼むよ」
むぐーと不満そうに頬を膨らませていたまこだったが、やがて小さくため息をついて卓に背を向ける。
「・・・・・・リンゴジュースでいいですか?」
「ああ、頼む。
是非とも頼む」
「はいはい」
そんな会話を交わした後、まこは小走りで自動販売機を目指した。
「悪かったね、続けようか」
秀介はそう言って牌をツモると、手から{⑨}を切り捨てる。
ふと先程の咳で唾でも飛んでいたのか、浴衣の手元で軽く卓を拭いた。
その様子を見ながら久は秀介の表情を窺うように声をかける。
「どうしたの? 急に咳とか」
「むせた」
「むせたって・・・・・・」
なんだ、と久は小さくため息をついた。
「ああ、心配してくれたのか、ありがとう」
心配そうに見ていた最中、不意にニッと笑いかけられてはさすがに直視できない。
「・・・・・・別に、平気ならいいけど」
何となく視線を逸らしながらそう返した。
その後、{久の東}打を経てゆみのツモ番だ。
{一二二五六七①[⑤]1
あっさり手が進んだ、いいツモだ。
{123}の面子に固定するよりは、現状のまま{1-4}受け入れを残していた方がいいだろう。
三色を捨てることになるが、まずは{①}を切る。
2巡目。
衣は{八、秀介は1、久は南}をそれぞれ手出し。
そしてゆみ。
{一二
(悪くない、ツモは流れに乗っているようだな)
{二}を切り出して面子を固定する。
3巡目。
衣は{3を手出し、秀介は東をツモ切り}。
そして久は{東南に続いて西}を手出しで捨てる。
直後。
「ポン」
衣から声が上がった。
(動いたか、天江衣)
{西を鳴いて四}切り。
{西}は久の風なので衣が鳴いても役はつかない。
チャンタ、対々、役牌バック辺りか。
{⑦八3四}という捨て牌で染め手というのは少し考え辛い。
秀介が{⑧}を切った後、久が少考して{白}を切り出す。
一鳴きの衣相手に役牌切りは危険だが、それをしてきたということは久の手も悪くないのだろう。
(さて、私はどうするかな)
{一二三五六
ツモったのは{九}。
同時にゆみの頭に予感が走る。
(・・・・・・この手は一通か)
{一二三四五六七八九1123} {4}
一通ならばこう言う最終形を狙うのが一番だ。
だがその為には役牌も{[⑤]}も切らなければならない。
どちらも衣に対し切りたくない牌だ。
しかしだからと言って切らなければこの手は死ぬ。
いくら衣が強敵だからと言っても、攻めずに勝てるような相手では無い。
例え現在4万点以上リードしているとしてもだ。
(・・・・・・なら進もう)
いつかは切らなければならないのだ。
ならば早いうちに切っておいたっていいだろう。
それに、ただ鳴かれるだけで終わらせるつもりはない。
(動くなら、動いてみろ)
ゆみは手から{[⑤]}を切り出した。
「ポン」
衣から声が上がり、{横[⑤]⑤[⑤]}と晒される。
そして衣は{七}を切り出した。
{[⑤]}が二つは中々痛い。
だがそちらではなく、衣のその動きをゆみはしっかりと見ていた。
(・・・・・・役は対々ではない?
しかもまだ聴牌をしていないのか?)
ゆみから見て今しがた鳴いた{[⑤]}の左側が3牌、まず間違いなく面子が確定している。
反対に{[⑤]}の右二牌を飛ばして{七}が切り出され、その右側の牌は二牌。
捨て牌の{四}は一番右端、{八は七}の二つ左からそれぞれ捨てられた。
{西横西西} {横[⑤]⑤[⑤]} {■■■
左側の二牌が{五か六}の対子だとしても、残った二牌が待ちの形になっていないように見える。
なっていたとしてもあり得るのは唯一{七八の六-九}待ちだ。
手牌で{七}が対子になっていたと予測できるが、それを崩したということは対々ではない。
大方左の三牌が役牌暗刻なのだろう。
久の{白}をスルーしたのは既に暗刻になっていたからか、もしくは既に二牌切られている{東以外の役牌、南發中}が暗刻なのか。
(役牌赤赤、右側の対子が{五}ならばそこにも赤が混じっている可能性がある。
となれば満貫もありえるか)
一先ず聴牌していたとしても、{六-九}さえ切らなければ当たられることは無いのだ。
同巡のゆみのツモは、自分の手牌にもある{南}。
これで衣の役牌候補から{南}が消えた。
まぁ、どの道既に暗刻になっているのなら{發や中}を切っても問題無いだろうが。
そして巡は進み、10巡目に衣が手牌から{七}を切り出す。
待ち変えか、やはり聴牌していなかったのか。
(しかし速攻にしては手の進みが遅い・・・・・・?)
そこまで考えてゆみはハッとする。
まさか、速攻狙いではないのか!?
あれから自分の手は進んでいない。
久と秀介の捨て牌にも、一度捨てた牌が何牌か並んでいる。
手の進みが遅れる一向聴地獄。
さらに久とゆみからそれぞれ鳴いたということは。
(狙いは海底か!)
そして妨害の鳴きを入れることもできず、そのまま
「ツモ」
{五[五]②③456} {横[⑤]⑤[⑤]} {西横西西} {
「海底撈月、赤3。
4000オール」
ぎゅっとゆみは自身の手を握った。
(海底のみ・・・・・・捨てられた役牌の数から手牌に役牌が無いかもしれないと思っていたが、まさか海底のみだとは・・・・・・)
読みが外れた、まるで心がかき乱されるように嫌な予感だ。
県大会でも同じものを感じたな、とゆみは思っていた。
南二局1本場 親・衣 ドラ{7}
久 110600
配牌
{二④④⑤⑥13346
久もゆみと同じような心境だった。
直接戦うのはこの試合が初めてだし序盤は秀介が衣を圧倒していたので、「対決」という意味ではようやく叶ったという状態だろう。
だからこそわかる、衣の強さ。
(・・・・・・序盤から動いたと思ったら海底狙い・・・・・・。
ホント、緩急が自在ね)
こうなると終始警戒し続けるしかない。
だがそうなると余計に体力を使う事になりそうだ。
一先ず衣の{西、秀介の北}切りの後に回ってきた久の第一ツモに意識を向ける。
{二④④⑤⑥13
ふむ、いいところをツモった。
{二}に手を向けかけたが、今しがた衣が切った{西}も気になる。
自風の{西}が早くも一枚切れ。
この後手牌に重ねられるだろうか、今のうちに処理してしまってもいいのではと気になってしまう。
が。
(・・・・・・可能性が薄くなってもまだ0じゃない)
あっさり重ねる可能性もあるし、ここは取っておいてもいいだろう。
諦めるのはもう一枚切られてからでいい。
久は{二}を手放した。
そしてゆみ。
ゆみ 92600
{一二五八①⑧228
(・・・・・・配牌が落ちたな)
ちょっと有効な上がり形が見えない。
精々得意の七対子が狙えたらいいなという程度か。
やれやれと{8}を切り出した。
2巡目、衣は{1}を手出しで捨てた。
秀介は手出しで{九}。
そして久。
{④④⑤⑥133
(あら、いいところ)
これで{④⑦258}を引けば絶好の平和聴牌だ。
そうなると切るのは{西にするか中にするか}迷うところだ。
一枚切れの{西を切ってしまいたい気もするし、まだ出ていない中}を誰かが手牌で重ねる前に切ってしまいたい気もする。
少し考え、久は{中}を手に取った。
({西}は私しか使えない風牌。
一方{中}は誰でも使える危険な役牌、さっさと処分しちゃいましょう)
それに、と久は手牌に視線を落とす。
この手はこんな未来も待っている。
{④⑤⑥123456
一枚切れの{西}単騎。
もう一枚誰かが切れば地獄単騎だ。
今の状態の天江衣を相手に久の麻雀がどこまで通じるか。
(試してみたい・・・・・・!)
スパッと{中}を切り出した。
続いてゆみ。
{一二五八
いよいよ七対子しかなさそうだ。
ドラも絡まないこの手、精々裏狙いか。
今しがた久が切った{中}を合わせ打ちする。
3巡目。
衣は{8}切り。
秀介はある意味久の望み通りか{西}をツモ切りした。
聴牌できたら地獄単騎ね、と少しばかり嬉しそうに牌をツモる。
{④④⑤⑥123
残念、不要牌だ。
そのままツモ切りする。
{一二五
少考の後、ゆみは{二}を捨てた。
4巡目、衣は{②をツモ切り、秀介は手出しで八}。
そして久が山に手を伸ばす。
{④④⑤⑥123
(ああ、もう!)
折角のいい手なのにツモが進まない。
久は打牌が荒くならないようにと注意しながら牌を切る。
それからしばらくゆみも久も衣もツモ切りが続き、大きな動きは無かった。
そして6巡目。
有効牌が入ったのか別の有効そうな牌を引いたのか、ゆみがツモ牌を手牌に収め、{⑧}を切り出した。
途端。
「チー」
衣が動いた。
衣捨牌
{西18②3③} {六}
捨て牌だけ見れば萬子の混一かと思えるが、{横⑧⑦⑨}と晒してそれはあり得ない。
また海底狙いもあり得る。
そうなればゆみから鳴いた以上さらに久が鳴かせるわけにはいかない。
ポンはされたくないなぁ、と考えながら久は牌をツモる。
{④④⑤⑥123
{中}、自分が一度切っている上にゆみも合わせ打ちした牌だ。
(・・・・・・これなら鳴かれないか)
手は進まなかったが一応安全か、と久はそれを手放した。
何の警戒も無く。
「ロン」
「・・・・・・え?」
ジャラララと衣の手牌が倒された。
{[5]6
「小三元ドラ赤、18300」
(しまった! 今回は速攻!?)
今更ながら久は自分の選択を後悔した。
鳴きは無くても上がりはあり得た。
よくよく見れば捨て牌に{白も發}も一枚も出ていない。
そんな状況でしかも自分のお株を奪われる地獄単騎待ち!
この一撃で久は92300。
ゆみが92600なので逆転されてしまった。
さらに衣も84500と射程圏内に捕えられてしまっている。
(しかしこれは・・・・・・)
(・・・・・・中々厄介だな)
久だけでなくゆみも、衣に視線を向けながらそう思う。
先程の局に見せた、鳴きを二つ入れて海底コースに入れつつ速攻上がり。
今回の久の打牌もそれが影響したものだ。
これではどちらを警戒すればいいのか分からない。
この終局間際で、天江衣もまた成長をしたのだろうか。
南二局2本場 親・衣 ドラ{9}
「ポン」
この局も2巡で衣が鳴きを入れる。
久からの{白}ポン、海底コースに入れない為にはゆみがチーをさせてはならない。
しかし、それはあまりにも困難だ。
ゆみ 92600
{六七九九①③④4
ちらっと衣の捨て牌に目を向ける。
衣捨牌
{1二東⑧8} {西}
(ポンをさせないように牌を絞ることならまだしも、チーをされないようにするのは難しすぎる・・・・・・。
天江衣の事だ、出来面子からチーしても最終的に張り直して上がるくらいするだろう)
ならばどうすればいい?
警戒するだけ無駄と、自身の手の進行を優先するか?
いや、そんなことをしていてさくさく振り込むような事態や衣の手助けをするようなことになればそれこそ衣の独壇場になってしまうだろう。
かと言って安全な牌だけを切り続けていては手が死んでしまう。
(くっ・・・・・・)
悩んだ挙句、ゆみは{①}を捨てて自分の手を進める。
鳴かれることを半ば承知で。
「チー」
そしてやはり鳴かれてしまった。
(こ、今度はどっち・・・・・・?)
(速攻か、海底か・・・・・・)
久もゆみも、周囲のメンバーも衣の上がりを見守るしかできない。
「ツモ」
それは衣がチーをしてから2巡後のことだった。
{七九①①①
「チャンタ白ドラ2、4200オール」
この上がりで衣は二人を逆転、2位に躍り出る。
そして残る相手は、ここしばらく沈黙を貫いている・・・・・・。
(・・・・・・しゅーすけ・・・・・・)
衣は彼を真正面から見据える。
(勝負だ、しゅーすけ。
我が陣形を打ち破ってみよ!)
当の秀介は衣の気合いに気付いているようだったが様子は変わらず。
だがそれでも構わない。
「覚悟しておけよ」とまで言った本人が今更手を抜くわけがない。
だから衣は、彼に全力をぶつけるだけだった。
卓に牌を流し込み、山が現れる。
衣が振った賽の目は6、秀介の山からの取り出しだった。
南二局3本場 親・衣 ドラ{西}
衣 97100
配牌
{一二五六七九②[⑤]⑦11
衣は第一打に{②}を選ぶ。
ここからどんな手を想像しているのか。
続いて秀介は牌をツモり、軽く一息ついて{二}を切る。
ところでその手牌の端の一牌が伏せられているのは何であろうか?
ともかくその後、久とゆみは{東}をそれぞれ切り出した。
2巡目。
{一二五六七九[⑤]
ドラを重ねる。
前巡の秀介と同じ{二}を切る。
続いて秀介は{④、久とゆみは揃って1}を捨てた。
3巡目。
{一五六七九[⑤]⑦
{一}を切る。
そして秀介が{9}をツモ切りした後に、久が{
「ポン」
衣はそれを拾い、{九}を捨てる。
そして次巡。
{五六七[⑤]⑦
{發}を切り出して一向聴だ。
このまま行けば鳴き三色ドラ3赤1で満貫だ。
今回狙うのはまた速攻か。
否、衣には見えていた。
(・・・・・・海底牌は{6}・・・・・・)
海底撈月が加われば跳満、そちらが狙いだ。
二人を引き離しつつ一気に秀介との距離を詰めることができる。
もしもこの後ゆみから{⑥}が零れればそれが成し遂げられるだろう。
そしてそんな衣の執念か。
ゆみ 88400
{
(・・・・・・また・・・・・・七対子くらいしかできないか)
牌が中々横に伸びてくれない。
どうするかと考えた挙句に手を伸ばしたのは、衣が欲した{⑥}。
(・・・・・・天江衣の手助けにならないといいが・・・・・・)
頼む、と祈っても衣には通じない。
「チー」
{五六七1157中} {横⑥[⑤]⑦} {
{中}を切ってコースイン、である。
もしも衣がこの手を跳満ツモで上がれば、衣の点数は116000で秀介は118600。
完全に射程圏内である。
(しゅーすけ・・・・・・覚悟して貰うぞ!)
海底コースで一向聴地獄。
しかも海底と速攻の二択で周囲を混乱させる上がりの連発。
今の衣の支配力に敵う者はこの場にいない。
「ロン」
彼一人を除いて。
{4七八九⑦⑧⑨56南南南中} {
「ダブ南、3200の3本付け」
「なっ!?」
衣は思わず声を上げた。
秀介は3巡目からずっとツモ切りだったはずだ。
仮に配牌が良くても衣の支配力の前ではツモは凍りつくはず。
ましてや今の自分は絶好調。
なのに上がられた?
振り込んでしまった?
いや、秀介ならそれくらいのことはやると思っていた。
だがしかし、聴牌の気配すら感じられずに上がられた!?
(ど、どうして・・・・・・?)
そう言えば点数の読み間違えもした事があった。
やはり衣の感覚がおかしくなってしまったのか!?
「・・・・・・し、しゅーすけ・・・・・・衣に何かしたのか?」
「ん? 何かって?」
キョトンとする秀介の表情は誤魔化しているのか本当に知らないのか区別がつかない。
だが。
「それはもしや、
そう言って軽くにやりと笑うのを見れば明らか。
「っ!」
やはり何かされていた!と衣は軽く唇を噛む。
だが何を? 何をされていたのだ?
能力を所持する人間はいくつかに分類される。
限定的、条件付きで自身の配牌や引きを強くする強化型。
優希、妹尾、悪待ちの久などが代表的だ。
また彼女らはまだ出会っていないが、悪石の巫女、白糸台のフィッシャー、背向のトヨネ、ドラ爆などもこれに該当する。
能力者の大半がここに分類されているだろう。
他家の手の進行を邪魔する妨害型。
純や海底狙いの衣などだ。
岩手の片眼鏡少女や噂に聞く大星淡も該当する。
牌に直接関わらない部分で発揮する特殊型。
モモのステルスや美穂子の右目、危険察知、箱下にならない、照魔鏡。
などなど。
時にそれらを複数持つ者もいる。
衣自身も速攻と妨害を使い分けることが可能だ。
つまり「能力は一人一つ一種類」ではないということ。
それが能力の推測を難しくしているのだ。
秀介の能力を知らない衣は、自身が海底狙いで他家の手を封殺しているにもかかわらず速攻で上がることが秀介の能力のヒントになると思っていた。
狙い打ちはあくまで技術で、速攻こそが秀介の能力なのだと推測していたのだ、が。
衣の聴牌察知、点数察知を妨害するのはどういうことか。
それが一つの能力の応用によるものなのか、それとも複数の能力によるものなのか、はたまた誰でもできる技術の延長なのかが区別できないでいるのだ。
(・・・・・・やはり一筋縄ではいかないか、しゅーすけ)
これが能力なのか技術なのかは不明。
だが志野崎秀介はそう言うことが可能な打ち手なのだと深く考えない割り切りも、ある種強者と戦う為に必要なものだ。
だから衣はあっさりと受け入れた。
振り込んでしまったが点数は高くない。
その前に稼いでいたので一時期に比べれば点差は大分詰まった。
気分は大分楽だ。
さぁ、残すは南三局と南四局。
秀介がここからまた何連荘するかは不明だが、今度はそんな一方的にさせるわけにはいかない。
(ここはしゅーすけの親を流すのが最優先!)
その考えはゆみも久も同じ。
速攻が秀介の得意分野なのも十分承知だが、それでも秀介より先に上がりを取ることを目指す。
3人が共同戦線を張ってでも!
ゆみ 88400
衣 93000
秀介 129200
久 88100
さて、終わりが近いです。
話の終わりを書くのはいつでも寂しいもの。
だからこそしっかり仕上げなければ。