咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

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今回ちょっと短いです、ごめんなさい。



09龍門渕透華その2 ステルスと氷

第一試合

南ニ局0本場 親・モモ ドラ{4}

 

「リーチだし!」

「ポンですわ!」

 

透華 57800

 

{二三七九⑨⑨(ドラ)4567} {發横發發}

 

池田のリーチ宣言に合わせて、切られた{發}を鳴く透華。

{九}を落として一向聴だ。

 

(トップとは言えまだ原点から+7800・・・・・・。

 安全圏とは言えませんわ)

 

勝負を楽しむという点では十分に面白い展開。

だが何とかもっと点数を稼ぎたいところだ。

 

(焦ってはいけませんわ、まだ点数はこっちの方が上なんですし)

 

数巡後。

 

{二三七⑨⑨(ドラ)56(横一)7} {發横發發}

 

(發ドラドラ聴牌ですわ!)

 

{七}を切り出す透華。

その直後、モモが手牌を倒す。

 

「ロンっすよ」

「・・・え!?」

 

{五六③④⑤⑥⑦⑧23(ドラ)88} {(ロン)}

 

「リーチタンピンドラ1・・・・・・裏1つ。

 満貫っす」

(なっ・・・・・・また!?)

 

少し乱暴に手牌を倒し、点棒を差し出す透華。

この親満振り込みは痛い。

一撃で4位転落だ。

 

でもまだまだ。

 

(他の方からも点棒頂きましょうか)

 

自動卓に牌を流し込み、再び気配を虚ろにしながらモモはニコッと笑った。

 

 

 

南ニ局1本場 親・モモ ドラ{1}

 

9巡目。

 

池田 50000

 

{七八九③③⑧(ドラ)22(横⑦)338}

 

(来たし! リーチ平和一盃口ドラ2で満貫確定!)

「リーチだし!」

 

{8}切ってリーチと行く。

 

そんな手に振り込む透華ではない。

あっさりと回避する。

 

そして数巡後、少し考えた久の手から{⑥}が零れる。

 

「ロンだし!」

 

ジャラッと手牌が倒れた。

 

「リーチ平和一盃口ドラ2! 裏ドラが・・・・・・」

 

池田が自分の目の前の王牌の裏ドラを手にしたその時であった。

 

「待ってくださいっす。

 それ、フリテンっすよ」

「へ?」

 

トントンとモモが自分の捨て牌を叩いているのが見えた。

 

そこには確かに{⑨}が転がっていた。

 

「にゃ!? にゃんで!?」

「チョンボっすね」

 

ニコッと微笑みかけるモモ。

その後靖子に確認を取る。

 

「チョンボ時の裁定はどうなってるっすか?」

「一応、あがり放棄で続行だが・・・・・・」

 

カタンという音と共に池田の手から零れ落ちた裏ドラが露わになる。

 

「・・・・・・裏ドラが晒されるとそうもいかんな、満貫払い」

 

うぐぅ、としょぼくれながらも8000点を場に出す池田。

 

「な・・・・・・何でこんなミスを・・・・・・」

 

(さてさて)

 

龍門渕と風越からは点を頂いた。

残るは正面に座る清澄、久である。

 

 

 

南ニ局2本場 親・モモ ドラ{南}

 

モモ 62200

 

{一二三①②③⑤⑦1(横6)368西}

 

三色一向聴、この時まだ5巡目だ。

 

(この局ももらったっすよ)

 

{西}を切るモモ。

狙うは対面の久だが、他二人から出ても容赦なく上がるし、ツモでも当然上がる。

 

(よくオリ打ちしてるっぽいっすから狙えなかったっすけど。

 今回は打ち取らせてもらうっすよ、清澄さん)

 

既に姿は誰にも認知されていない。

それは同卓の敵だけでなく、周囲で見ている人間にも、だ。

モモは一人笑う。

この状態になった自分、ステルスモモから逃げられる人間は・・・・・・いない。

 

 

「・・・・・・あら」

 

 

はずだった。

 

 

「ごめんなさい、ツモっちゃったわ」

「ふぇ?」

 

 

ジャラッと久の手牌が倒れる。

 

 

{四五③④⑤⑨⑨123(ドラ)南南} {(ツモ)}

 

 

「南ドラ3、満貫ね」

 

狙い打とうと決めた直後にインスタント満貫であっさり逃げられた。

むぅ、と悔しそうにするモモ。

 

久としても普通に手を進める予定は無かったのだが。

 

(・・・・・・モモちゃんはもう気配が消えてるし・・・・・・ロン上がりが狙えないと私の悪待ちもあんまり意味がないからね。

 ・・・・・・でも、全国には似たような猛者がいるかもしれないし、何とか普通に打てるようにならないと)

 

でないと折角の合宿の意味がない、と久は少しばかり反省する。

 

 

 

南三局0本場 親・透華 ドラ{東}

 

透華 45600

 

{一二三六①②⑥⑦⑨(横7)27西中}

 

(現在3位・・・・・・トップとは12400点差・・・・・・。

 この親で何とか連荘しませんと!)

 

そうは思うが手牌が思わしくない。

もちろん上がるのが最低条件として、少しでも高い点数で上がりたい。

となるとこの手、筒子が伸びての一通か、123の三色を目指したい所。

 

(条件はきついけれども、狙うしかありませんわ!)

 

一方ラス目の池田。

 

池田 39800

 

{三四八①⑤⑤3(横6)46(ドラ)東東白}

 

(この局は私がアガらせてもらうし!)

 

池田とてここで諦めはしない。

トップとの差は2万弱、そしてドラ暗刻。

他に役は必要だが、ここで最低満貫だけでもアガっておけばオーラスが楽になる。

ましてや3位の透華が親。

4位に引き摺り落とすチャンスでもある。

 

(良く分からないチョンボもやらかしちゃったし。

 ここは何としても上がるし!)

 

 

そして、無駄ヅモが続きながらも少しずつ手を進めていった透華が一向聴になる。

 

{一二二三①②⑥⑦⑦(横③)2377}

 

(一向聴・・・・・・!

 なんとかここまでこれましたけど・・・・・・)

 

{二}を叩き切る透華。

だが。

 

池田手牌

 

{三四八(横二)⑤⑤⑤3466(ドラ)東東}

 

「来たし! リーチ!!」

(!! 先を取られた・・・・・・)

 

透華の願いもむなしく先に張ったのは池田。

モモも久も手が入らないのか降り気味。

そしてこれ以降透華も手が進まず、数巡後池田がアガリをとる。

 

「ツモ! リーチドラ3、満貫!」

 

混戦状態のまま迎えるはいよいよオーラスである。

 

 

 

「・・・・・・今のは痛いな、龍門渕。

 そしてどうやら善戦しているな、久」

「ですね」

 

試合を終えて見学に回っていた秀介の言葉に咲も頷く。

 

「・・・・・・にしても変だじぇ。

 あの人ときどきいること忘れちゃうしぃ・・・・・・」

 

優希が目をこすりながらモモを見ている。

秀介もふむ、と顎をさすりながら頷く。

 

「あれはまた変わった能力を持ってるな。

 あんなのは初めて見たぞ」

「・・・・・・能力なんてそんな非科学的な話しないでください」

 

なにやら膨れながら和が口を挟んでくる。

 

「のどちゃんはスーパーデジタルだから、見失わないんだじぇ」

「だから・・・・・・見失うとかそういうオカルトはありえません」

「何はともあれオーラスだね」

 

咲の言葉に全員が卓の方を見る。

卓上では洗牌された山が現れ、久が賽を振っていた。

 

 

 

(ラス目・・・・・・)

 

透華が表情をゆがめる。

 

(名門龍門渕の副将を務めるこの私が・・・・・・オーラスでラス目?

 

 はじめを元気づける為にもトップで帰ると誓ったこの私が・・・・・・私が・・・・・・!)

 

 

 

ピシッ、と空気が凍った。

 

 

 

 

 

南四局0本場 親・久 ドラ{四}

 

モモ 56000

手牌

 

{二二五七①③⑦⑨(横④)349北北}

 

(う~ん・・・・・・トップ目だし、変に荒れる前にさっさと上がって終わりにしちゃいたいところっすけど)

 

手が伸びるかどうかはツモ次第と、あまり気負わずに{9}を切って手を進めていった。

 

5巡目。

 

「ポン」

 

透華が捨てた{6}を池田が鳴く。

が、捨て牌を見る限り染め手ではない。

 

(対々? タンヤオか役牌を入れても5200程度・・・・・・。

 私との点差は8200。

 今の私から直撃を取ることは不可能っすから、逆転には満貫ツモが必要っすね。

 となればドラでも抱えてるっすか)

 

モモ手牌

 

{二二五六七③④⑦⑨(横⑤)34北北}

 

(このまま行くとシャボ待ち・・・・・・{北}は仕方ないとしても{二}は周辺の牌を引いておきたいっすね)

 

{⑨}を切り出すモモ。

紛れが起きる前に上がってしまいたい。

だが。

 

「カン!」

 

池田が透華の{2}を明カンする。

そして新ドラ表示牌がめくられ、{1}が現れた。

周りもざわめく。

 

「よっしゃ!」

 

カンされたのは{2}、そして新ドラ表示牌が{1}。

ということは・・・・・・。

 

(風越さんがドラ4! タンヤオか役牌つけて満貫か、対々で跳満!!

 まずいっす、跳満ならツモはもちろん誰から上がっても逆転されるっす!)

 

今の自分が振ることはないが、誰から上がっても逆転と言うのはまずい。

一応池田の下家である自分は池田の上がり牌を切ってフリテンにさせるという手が十分に使える。

それを期待して手を進めて行くしかない。

 

モモ手牌

 

{二二五六七③④⑤⑦3(横⑥)4北北}

 

(む・・・・・・ここで{⑥}はありがたいっすね)

 

一向聴は変わらず。

だが{二か北}を切れば平和がつく。

とにかく上がれば勝利のモモにとってリーチをかけなくて済む手役はありがたい。

ちらっと池田の捨て牌を見る。

 

(対々、タンヤオ、どちらも可能性はあるっす。

 {北}は風越さんの役牌じゃない・・・・・・これが上がり牌の可能性は低いっす。

 なら今私がやるべきなのは・・・・・・)

 

スパン、と{二}を切りだした。

 

(これが上がり牌でもフリテンっすよ? 風越さん)

 

姿は見えないがにこっと笑いかけてやる。

 

と。

 

「チー」

 

透華の捨てた{⑦}を鳴く久。

現在久はわずか1400点差で2位。

 

(こっちもまずいっす・・・・・・ロンならまだしもツモられたら一翻でも逆転されるっす!)

 

二役あったら池田と同じくどこから上がっても逆転である。

トップなのにここまで追い詰められるとは!

 

だが。

 

(燃えるっす! 負けないっすよ!)

 

モモはこの試合を楽しんでいた。

 

もちろん逆転を目指す池田も久も。

 

 

 

そんな中、

 

あまりに静かすぎた彼女は唐突に

 

 

 

「・・・・・・ツモ」

 

 

パタンと手牌を倒した。

 

 

透華 捨て牌

 

{北發77④九4二}

 

手牌

 

{一一二二三三(ドラ)五六七南南南} {(ドラツモ)}

 

「南混一色ツモ一盃口ドラ2」

 

「「「なっ!?」」」

 

その捨て牌で萬子の面前混一(メンホン)!?

が、すぐに思い至る久。

 

池田が鳴いた{6と2、久が鳴いた⑦}。

それらを捨て牌に混ぜれば萬子が少ないのは一目瞭然。

しかも切り出しは後半に偏っている。

 

(周りの人間に鳴かせることで捨て牌の数を減らし、手の進行を隠すなんて・・・・・・!)

 

久は改めて透華を見る。

 

普段の目立ちたがり屋なお嬢様はどこへやら、氷のように冷静な判断力。

 

そして手牌を悟らせぬ治水の河。

 

 

龍門渕透華、ラストで僅差の逆転。

 

 

 

池田 43800

モモ 52000

透華 57600

久  46600

 

 




いきなり治水とか言われても今後透華の出番がなかったら能力分からんですよ(
とりあえずこんな感じでまとめてみました。
小林立先生の今後の展開に期待!

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