否定者とほぼ無能者も来るそうですよ?《一時凍結かつ作り直し予定》 作:tomlet
「ハーメルンのゲームの攻略の目処は立ったのか?」
ゲーム再開の前日、零斗は十六夜に自分の作戦を伝えていた。
「あぁ、攻略の目処は立ってる、ただあのペストとかいう斑ロリ、あの魔王をはじめとする奴らの戦力を抑えられるかどうかが重要だな」
と、しかしそこで十六夜は。
「お前はめんどくさい魔王に絡まれてんだろ?しかも相手はまだ”
「あぁ、俺はあの野郎を倒してすぐお前達に加勢に行く。だがもし、俺が予想外に時間をかけてしまったら、その上で、お前たちがペストを抑えられないなら。ペストを俺がいるところまで誘導してくれ」
まだ言うか、と十六夜は呆れるが、零斗の目が本気であることに気づき、頭から零斗の言葉を否定する気が起きなかった。
「十六夜、俺は今、ペストのようなタイプの相手に対して最高クラスのジョーカーになれる。これは間違いない。だから、もし、ペストと俺が組み合えば、たとえどんな状態だろうと俺が勝つ。だから」
そこで十六夜は零斗の発言に口を挟む。
「お前の力は信用してやる。だからこそ、お前はお前の相手の魔王様をぶっ飛ばしてこい。それでまだ手が空いてるなら、ペストを抑え込むのを手伝え」
「あぁ、わかったよ、十六夜。無理すんなよ」
ハッ、誰に言ってんだ、と返し、ゲーム攻略へ再び動き出す十六夜。
それを見送る零斗も、再び魔王攻略のために新しい力の試運転に戻るのだった。
※
「よう、遅かったじゃねぇか」
ゲーム開始30分前、前回戦った場所にそいつはいた。
「その様子だと、多少はマシになったか?鏡野 零斗」
零斗は目の前の魔王に感謝していた。それは自分と向き合う機会をくれたからだ、自分の中にあるものと、自分が一番大切なものに気づくきっかけになったからだ。
「あぁ、おかげさまでな。ついでにお前の考察の方もやらせてもらったよ」
ホゥ、と笑う目の前の魔王。そして、零斗は続ける。
「俺は最初、お前は弁慶だと思ってた。だが、それならお前の力の説明がつかない。お前が弁慶だとするなら、お前がそれだけの力を持つのはお前の誕生にまつわる伝承の一つとしてあげられる天狗との半妖としての霊格が乗った場合しか想定できない。だが、お前からはそんなものは一切感じない、代わりに感じるのは呪詛だけだ。そして、逸話がどれだけ真実かなんてしらねぇが、お前が本物の弁慶なら尊敬する君主である牛若丸をかたどった人形で、旅芸人みたいに金を稼ぐなんてしないだろ?」
弁慶誕生の逸話において、父親となった男の説は大雑把に二つに分かれる、一つは山伏、そしてもう一つが天狗だ。
「周りくでぇな、何が言いたいんだ?舌戦でしか見込みがねぇからこんなくだらねぇ答え合わせしてんのか?時間をかけすぎだ」
「じゃあ、俺の回答を出そう。お前は弁慶に襲われ太刀を奪われた武士999人の魂だろ?」
太刀が武士の魂そのものだと言うのなら、それはそうとうな恨みになるはずだ、坊主に殺され、魂までうばれるのだから。
「で?なんてよべばいい?鬼若とでもよべばいいのか?」
「そうだな、俺には名なんてねぇしなぁ、ウチの雇い主の嬢ちゃんが自分を殺した病の名を名乗ってることだし、俺はそれでいいや。それじゃ始めようか、”呪いの王”ッ!」
ゲーム再開時間ジャスト、鬼若は黒の”
『ギフトゲーム -京の都の幽鬼-
・プレイヤー一覧
・鏡野 零斗
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの殺害
・プレイヤーの武器の全ての略奪
・プレイヤー側 勝利条件
・ゲームマスターを打倒
・ホストの武器が全て使用不能になった場合
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
"強奪幽鬼"印』
「おい、俺は武器なんか持ってねぇぞ」
零斗の言葉に鬼若はハッ、と笑い。
「だったら、その手足をちぎりゃ俺の勝ちじゃねぇか!!」
「ぬかせ!亡霊ッ!」
飛びかかり、薙刀を振るう鬼若、対する零斗は薙刀の柄を弾いて受け流す。
「前回とは逆だな!木っ端魔王ッ!」
力任せに鬼若を殴りつける零斗、すかさず鬼若は大量の刀の内の一本でいなし受け止める。しかし、その刀に一筋の亀裂が入る。
「悪いな、三流魔王!今俺はスッゲェ気分がいいんだよ!」
そのまま防御のための刀をへし折る零斗。
「まずは一本だ。その薙刀も含めると、残り999本か?」
零斗の挑発に鬼若は挑発で応じる。
「おいおい、結局真正面からの殴り合いかよ。力を得て帰ってきたんだろ?使えよ、使わねぇなら、押し勝っちまうぞ!」
鬼若の霊格が跳ね上がる。
「鬼化による強化、か」
「これが俺の本来の霊格だ。どうした、せっかく覚えた力だろ?早く使えよ」
確かに目の鬼若からは威圧感が増している。それこそ、それこそ隷属させられたアルゴールに届きそうなほどに。
「上等だ、後悔すんなよ!バトルジャンキーッ!」
発言とともに零斗の周りに呪いが渦を巻く。圧倒的なまでの質量を持った呪いは二点に集まり収束する。
「それが、”呪いの王”の力か?」
集まった呪いは宙に浮く黒の王冠と黒いマントに形を変え____
「うん、やっぱこのマント邪魔だ」
たと思ったらマフラーに変わった。
「なるほど、呪いの力を宿す伸縮自在の布ってわけか。んで、そっちの王冠はなんだよ?」
面白そうに尋ねる鬼若に零斗は。
「まぁ、そっちはただのシンボルみてぇなもんだ、気にすんな」
「ハン、そうかよ。手の内明かして吠えずら書くなよ、
呪いに近づくのは危険と判断したのか、遠距離から刀を投擲する牛若。
「下の下だな、潰せ」
零斗が命じると圧倒的な速度で刀に迫り飲み込む黒い布。そして、黒い布が通過した瞬間、刀は粒子となりサラサラと崩れ落ちた。
「風化の呪いだ、本来は敵方の拠点に対して放つ呪いだけどな。さぁ、どうする?千近い刀全て、俺に投げつけてみるか?」
すると鬼若は遠距離からでは無理だと判断したのか武器を構えまっすぐ向かってくる。
「そうだ、それでいい。あんたを真正面から倒さねぇと、俺の気が晴れねぇんだよ!」
今度は布を三つに分け、二本の刀と迎撃用のマフラーにして、向かってくる鬼若を迎え撃つ
「叩き切られろ、三下魔王ッ!」
ぶつかり合う刀と刀。しかし、どちらが有利かは火を見るよりも明らかだった。
「テメェ、いちいち刀同士がぶつかるごとに俺らの魂砕きやがってっ!」
かたや千の刀を持つ魔王、かたや無限の呪いを収める王。二人の間には手数の差と武器の差がありすぎる。
約一時間に渡る刀と刀のぶつけ合い。
ついに鬼若の武器は薙刀だけとなる。
「ケッ、やってくれやがるぜ呪いの王。あの時殺しときゃ良かったな」
悪態を吐く鬼若、30分ほど前から、鬼若は回避以外の行動をとらなくなっていた。
「逃げんなよ、鬼若」
「言ったろ、俺の仕事は足止めだ。テメェにはまだまだ、俺の相手をしてもらうぜッ!」
鬼若が手近にあった石を投げる、それに対して、零斗はなんの動作もとることはない。石は迎撃用のマフラーによって撃ち落とされ、砂となり消える。
「お前、魔王の中で最弱クラスだろ?間違いなくお前ならうちの同士一人で完封できる」
「いいたかねぇがその通りだな。雇い主の方がずっと強ぇし、場合によっちゃ雇い主の使役する悪魔にも負けるかもしれねぇな」
ハハハと笑う鬼若。この男は明らかに十六夜より弱い。なのになんで、俺はこの前押し負けたのだろう。
「何でだ?なんで俺はお前に負けた。いや、なんでお前は俺に勝てた?」
率直すぎる疑問、今となっては負ける気もしない男。決して十六夜が弱いわけではない、むしろ強い部類に入る。しかし十六夜一人で完封できそうなほど弱い男。
「あんたは、俺の戦い方を知ってるんじゃないのか?」
零斗は一つの仮説を立て、鬼若からその言質を取ろうとしていた。
黙ったままの鬼若。零斗は言葉を切らさず続ける。
「具体的に言うぞ、この世界にはまだクソ親父が生きてて、前の世界で俺に起こったことを、なんらかの恩恵で監視してた。そして、お前に俺の弱点、欠点の情報をリークしたんじゃないのか?」
零斗の中でルイオスの剣を見たときから燻っている疑問。零斗の父親は対象に呪いを宿すことの天才だった。そうでなければ、自分のような化け物は生まれない。そしてそこまで得意なものが、この”箱庭”に関わっていない筈がない。
その零斗の質問に対し鬼若は
「ハッ、たとえ知ってたとしても教えるかよ、ンなもん」
ギフトカードを取り出し、薙刀ではない武器を取り出す。一振りの日本刀、ルイオスが持っていた刀より、さらに思い呪いの重圧を感じる。
「まだ持ってたのか、千本超えてんじゃねぇかよ。けどな」
零斗の頭上にずっと浮遊していた王冠が黒く光を放つ。その光に触れる鬼若の刀。そんなものは関係ないとばかりに迫る鬼若。今度はマフラーによる迎撃すらせずに棒立ちで迎え撃つ零斗。鬼若の全力の斬撃、しかしそれは零斗の肌にあと少しで触れる、というところで完全に止まる。
「呪いの王に対して、呪いで挑んで勝てると思うのか?」
これが黒い王冠の能力、呪いを力の源とするものを完全に支配する威光。これこそがペストに対するジョーカーを自称した所以。
動かない鬼若の刀、それならば、と薙刀を打ち付けようとする、しかしそれは零斗のマフラーによって絡め取られる。その瞬間に鬼若の敗北が確定する。あとは薙刀に風化の呪いを流し込むだけだり
「さっきの問いだがな、鏡野 零斗。答えられねぇ」
「答えろ、略奪の幽鬼。あのクソ野郎は生きているのか?そして今どこにいるんだ?答えるのなら見逃してやってもいい、お前には魔王なんて向いてないから、普通に生きればいいだろう」
「ハッ、答えるわけねぇだろ」
鬼若はそれでも譲らない。
「俺はな、腐っても武士なんだよ。いろんなもん奪われて、無様に殺されて、それでも俺たちは武士なんだよ。殺すなら殺せ、俺は何一つテメェには教えねぇ」
誇り、武士道。零斗には想像もできない生き方、だからこそ零斗は美しいと思った、思ってしまった。
「そうか、悪かったな」
だからこそ零斗は、目の前の誇り高き武士に最後の一撃を叩き込む。
「じゃあな、気高き武士」
薙刀に呪いを流し込み、呪いの刀で鬼若を切り裂く。ゲームをクリアされたことで崩壊する鬼若のゲームの世界。そこから出て行くのは、呪いを宿した否定者だけだった。
次回はペストのゲームに干渉します。
では今日はこの辺で