方針は二つ。
繰り返す世界で戦った、アルルを守っていた能力者の中から一人選んで世界とアルルを守らせること。
そいつには最後に必ずアルルを殺してもらうこと。
俺は自らの力で『木漏れ日現象』を起こすことができる。だから記憶の引継ぎは問題ないが、協力者はそうはいかない。
だからアルルを殺すことで、記憶と力を引き継いでもらう。
最初の被験者は決まっている。
最もアルルを生かせる可能性は高いが、上手くいく可能性は低い人間。
所有するネメシスは、『
自らの大切な物を代償に、好きな魔法を創り出せる――戦闘狂の魔女だ。
まず、半殺しにして無理やり能力を使わせて、アルルを生かしたまま『木漏れ日現象』を消せるか試してみたが、自らの命を代償に捧げさせてもその魔法は創れなかった。
戦闘狂なだけあって命を捨てる事に抵抗が無かったからか、大した出力がなく、『木漏れ日現象』消滅後五分間しかアルルは生存出来なかった。
なので三十週ほど繰り返させたが、限界のようだ。
月陽 奏麻が負けそうになるたびに手を出すことで、最後の特異点でアルルを殺させることで、強くなった。
生贄は軽く、魔法は強力に。
一周繰り返すだけで、街を消し。
二週繰り返せば、大陸を沈めて。
三週目では、敵を生贄に魔法を生み始める。
ネメシスの代償で敵を倒すとか正気を疑ったが、奴からしたら戦う相手が居なくなるのは立派な代償なのだろう。
反面、徐々に本人が楽しめる戦いが無いほどに能力が強化された結果、どの周回も三周も経てば俺に挑み、破れ、自らを代償にアルルを生かす魔法を使って死んでいく。
それでもアルルを普通の少女に戻すことはできない。
アルルの寿命が一日を超えるまでに必要なのは、三周繰り返した月陽 相馬が、ユーラシア大陸とアメリカ大陸を代償に創った魔法でようやくだった。
この地球以外の宇宙を代償に捧げさせても、大して時間は伸びなかった。
おそらく、戦う相手がいるかも分からない場所を滅ぼしても、本人にとって痛手でも何でもないからだろう。
そう思って宇宙の生命体を探す魔法を創らせたが、個人で星を滅ぼす怪物の眼鏡にかなうことはなかった。
魔法の代償で脳髄だけの存在が、宇宙人を滅ぼしていたのは、もはや滑稽ですらあったが。
そして実験を始めてから三十週目の月陽 奏麻が能力ごと粉々になっていくのを見送りながら、結論を下す。
「月陽 奏麻ではアルルを救えないようだ」