ここから始まる高校生活。
-通学路-
国立魔法大学付属第一高等学校。
それが恭次となのはが通う事になった学校である。
この世界は恭次となのはが住んでいた世界ではない。
二人の元いた世界は元々、魔法というものが存在しないのである。
そんな二人が魔法と出会ったのは偶然や必然が重なったためでもあるが、そのおかげで出会えた絆というものがある。
その絆が生んだのが、前方に待つ二人の少女との友情である。
「なのは、恭次さんおはよう。」
「おはようさんや、なのはちゃん。恭次さん!」
フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと八神はやてである。
「おはよう!フェイトちゃん、はやてちゃん。」
「二人とも、おはよう。」
元気な挨拶を返すなのはと静かにだがしっかり通る声で挨拶を返す恭次。
ようやく揃ったと4人で学校へ向かう。
「いや~、うちらも遂に花の女子高生やな~。」
「はやてちゃん、それ自分で言う事?」
「せや!うちら考えてみたら仕事仕事で学生生活をあまり楽しんでない気がするんや。」
「確かに出向は多かったね。」
「その時の分をここで取り戻すんや!!」
熱弁するはやてに、「確かにそうかも……」と考えるなのはと、「そんなものなのかな~?」と考えるフェイトの三人を見ている恭次であった。
確かに三人とも時空管理局の中ではかなり希少な魔導士たちだ。
なのはは、時空管理局武装隊の戦技教導官。
フェイトは、時空管理局執務官。
そしてはやては、本局特別捜査官と日々忙しい子たちなのだ。
恭次もまた別口で忙しいのだが、ここでは割愛しておく。
前方で楽しそうに話をしている女性陣だが、ふいにはやてが恭次の方へ振り返った。
「そうや、肝心な事を聞かな!」
「「「?」」」
はやての言葉に疑問を持つ三人。
「恭次さんに聞きたいんや。どうや、これ?」
制服姿のはやては一回転してみせる。
「「あ~。」」
その言葉と行動に納得したのは女性陣。
「???」
だが分かっていないのは朴念仁。
基本的に恭次は周りの変化に機微だ。
殊、戦いの中での変化などは。
だが年頃の少女に対してはどうだろう……。
「どうや?」
自分を見せびらかすように問いかけるはやて。
「……!?そうか。」
5分ほどが経ち、ここでようやく恭次が何かに気づいた。
やっと気づいたか~となのはとフェイトは一安心。
「すまない、気づくのが遅れてしまったな。」
本当に申し訳なさそうに語る恭次。
どんな言葉が貰えるか、はやては緊張していたが
「はやて、ちょっと身長伸びたんだな。」
パコーーーーーーーンッ!!
「ちゃうわ!!」
とスリッパで一閃。
「違うのか?そもそもどこに隠していた、そんなもの?」
「そんな細かい事はどうでもええわ!ていうか身長伸びた事でどうや?なんて聞かへんわ。だいたいうちも気づかんかったわ!ほんまは違う所が育ってほしいのに~~!!」
"""違う所"""
その言葉に三人の視線はある一点に集中される。
だが恭次はすぐに視線を逸らしたが。
女性にとっては大きな問題だろう。
三人を比較してみよう。
なのはは年相応よりもいい方だろう。
フェイトはちょっと育ち過ぎではというほどだ。
だがはやては…………言わぬが花であろうか。
「うちかて悪くないのに~(ToT)/~~~。周りがボン・キュ・ボンばかりに……。」
はやてがしゃがみ込み、地面に『の』の字を書いていると、
「あははは(^^;)。恭次さん、私はどうですか?」
苦笑いしていたが、さりげなくフェイトは聞いてみる。
すると恭次は、
「ああ、とても似合っているよ。俺に言われてもあまりうれしくないだろうがな。」
「そんな事ないです、嬉しいです……もっと言ってもらいたいな~///。」
「ん?何か言ったか?」
「!?いえ、何でもありません!」
「そうか?」
と傍から見ればカップルの初々しさ全開といったところだろうか。
だがそんなやりとりに納得出来ないのが
「なんでや!?」
「?」
「フェイトちゃんにはすぐ似合う言うたのに、なんでうちは身長なんや!?やっぱり胸なんか、おっぱいなんか!!??」
その発言に恭次とフェイトは真っ赤になる。
「あ~、はやても似合ってるぞ?」
「なんで疑問形なんや!確かにフェイトちゃんのおっぱいはすごいで!!だからって全部意識持っていかれたんか!?」
「ばっ!?///」
「はやて!?///」
はやてが胸部を連呼するので、フェイトは隠すような仕草を取る。
だがそれが逆に男子の視線を引き付けている事に気づかないのがフェイトという少女である。
この時、ファンクラブが発足される切っ掛けとなったのは言うまでもない。
ちなみになのはは、昨日既に言われているのでそれを思い出して赤くなりながら笑顔を浮かべていた。
しょぼくれるはやてと共に第一高校に向かう面々。
思っていたよりも随分早く、到着した恭次たち。
するとそこには先に来ていた男女が言い争い(?)をしていた。
-達也視点-
「やっぱり納得出来ません!如何してお兄様が補欠なのですか!!入試の成績だってトップだったじゃありませんか!!」
「新入生総代は、私では無くお兄様がするべきなのです!」
「あのな深雪、ここではペーパーテストより魔法技能が優先される。俺の技能からすれば補欠でも入れた事の方が奇跡だ。」
このセリフを聞いていた恭次はこう思ったらしい。
"いや、彼よりも俺の方が入れたのが奇跡なんだが……"
深雪の言葉は加熱していき
「そんな事言って!お兄様に勉学や体術で勝てる人間などおりません!本当なら魔法だって――」
「深雪!」
迫力のある声に深雪は黙ってしまう。
「それは言っても仕方の無い事なんだ。お前にだって分かっているだろ?」
と優しく諭す兄。
「も、申し訳ありません……お兄様。」
「謝る必要は無い。お前は怒れない俺の代わりに怒ってくれるからね。その気持ちだけで俺はいつも救われてるんだ。」
「嘘です……。」
「嘘じゃない。それにお前が俺の事を考えてくれているように、俺はお前の事をいつも思っているんだ。」
「お兄様、そんな///」
顔を赤らめて
「想っているだなんて///」
「???」
達也と深雪では捉え方が違うようだった。
深雪は背を向けながら、達也の言葉を反芻しながら体をくねらせていた。
「深雪。たとえお前が答辞を辞退しても、二科生である俺が答辞をする事はない。分かっているだろう。」
「………。」
その言葉に落ち込む深雪。
だがフォローを忘れない達也は、両肩を抱き
「このダメ兄貴に可愛い妹の晴れ姿を見せてくれ。お前は俺の自慢なんだから。」
「!!///」
至上の幸せを感じたような深雪。
達也の説得で深雪は機嫌を直し講堂へ向かい、達也は中庭の方へ歩いて行った。
-恭次視点-
傍からみたら愛の囁きのようにしか見えなかったやり取りに恭次はともかく、なのはやフェイト・はやて。そして周りにいた野次馬たちも顔が真っ赤になっていた。
どうやら会話を聞いていると、兄妹のようであったが。
「なんやったんやろ~、さっきの?///」
「あれで兄妹なのかな~?///」
「ふにゃーーーー///」
「妹さんの事を大切にしているのだな、彼は。」
その言葉になのはは顔を赤らめながら、恭次に語りかける。
「ごほん。お兄ちゃん、見ましたか!さっきのが兄妹のあるべき姿だよ///」
「……いや、いくらなんでも違うのでは?」
「違くないよ。あれこそ世界の真理だよ!」
と右手を胸に置き、左手は腰に当て自信満々に言うなのは。
なんだかんだ言っても士郎の血をしっかり引いている少女だ。
言っている事がそっくりだ……。
「……フェイトよ、どう思う?あれは兄妹のすることなのだろうか。」
「ちょっと違うと思いますけど……でも、恭次さんとならいいかな///」
フェイトも先ほどの光景を、自分と恭次に置き換えて考えていたようである。
次は自分に聞かれると、心待ちにしているはやて。
だが空気を読めない恭次は
「ところでお前たちは講堂に行かなくていいのか?」
とはやての心を切り裂いたのであった。
ゆっくり恭次の方へ向き直り、文句を言おうと口を開きかけた時、
「そうだった!フェイトちゃん、はやてちゃん行こう。」
今度はなのはに口を挟まれ、文句を言う事が出来なかった。
そう、なのはたちは成績優秀者として早めに講堂に来るように連絡を受けていたのである。
なのはの言葉に二人は駆け足で講堂に向かうのであった。
「お兄ちゃん、またあとでね!」
「恭次さん、待っていてくださいね!」
「恭次さん、覚えとき!!」
三人とも笑顔なのに、なぜはやてだけが二人と違う言葉を口にした。
なぜそんな事になったのか分からない恭次であった。
「……家に戻るのも面倒だな。校内を見て回るか。」
そう呟いて校内を回る事にした恭次であった。
-校内散策中-
「ねぇあの子も、ウィードじゃない?」
「こんなに早く来ても意味ないのに……補欠が張り切っちゃって」
「所詮スペアなのにね」
「でも、かっこ良くない?」
「……まあそうだけど。」
女子たちの口から発せられた言葉、「ウィード」、学園側は禁止用語としているが、生徒の間では普通に使われている言葉。
第一高校は入試の結果で、一科生と二科生に割り振られる。
その区別は制服にエンブレムがあるか、無いかで分かる。
そして一科生を紋付の花冠「ブルーム」、二科生を雑草「ウィード」と呼び蔑んでいるのが現状だ。
この学園では、入学した瞬間に優等生と劣等生のレッテルが貼られるのだ。
恭次は紋無しの二科生だが「ウィード」と蔑まれても気にはしていない。
元々勉学が苦手なのだ。
入学出来ただけでも奇跡と言っていいのだから。
校内を散策していると、桜並木を見つめ奥に進んでいく。
今日はとても清々しい天気で、風が穏やかに流れていく。
そんなのんびりした雰囲気に恭次は
「少し休んでいくか。」
と桜の樹のそばで昼寝を始めるのであった。
どれくらい経っただろうか。
すると校門から駆けてくる足音に気づき、目を覚ます恭次であった。
「ほのか、急がないと入学式に送れる。」
「雫~、ちょっと待ってよ~。」
どうやら新入生の女子生徒のようである。
制服にはエンブレムが刺繍されているので、一科生のようだ。
「そもそも、ほのかが遅れたのが悪い。」
「だから謝ったじゃない。別に好きで遅れたわけじゃ……。」
「あとで何か奢って。」
「……うん。」
そんな仲の良さが伺えるやり取りであった。
すると雫と呼ばれていた少女が、恭次に気づいた。
「ハァハァ…。雫どうしたの?」
ほのかは息を整えるのに、時間をかけていた。
「……こんなところで何やってるの?早くしないと入学式始まるよ。」
雫は恭次に声を掛けてきた。
「あの、もうそんな時間ですか?」
「うん。」
「そうですか……。ところで1つお伺いしたいのですが。」
「なに?」
「講堂はどちらに?」
「……知らないの?」
「……恥ずかしながら。入学案内などを読まずに来たものでして。」
そうなのである。
恭次は入学案内などを全く見ていない。
初めはなのはたちと一緒に行けばいいだろうと考えていたのだが、成績優秀者が早めに集まる事が決まった時、
一緒に行くという事は頭から抜けたのだ。
人が集まり出した時にそれに付いていけば良いと考えていたのだが、のどかな陽気と睡魔にはさすがの恭次も勝てなかったのである。
そして今の状態である……。
「……一緒に行く?」
「そうして頂けると、とても助かります。」
「うん。行こう。」
「ありがとうございます。」
恭次が軽く微笑んで、お礼を言うと普段あまり表情を変えない雫が若干顔を赤らめたのだ。
「どういたしまして。」
その光景にほのかはとても驚いていた。
"あの雫が初対面の人にあんな楽しそうに話しをしてるなんて。"
そうなのである。
雫は初対面の人に心を開くことはあまりない。
だが恭次は初めてあったにも関わらず、かなり気を許しているようなのだ。
「自己紹介していませんでしたね。二科生の高町恭次です。よろしくお願いします。」
普通の一科生と二科生ならあまりよろしくしないが、この二人はそういう事は気にしないだろうと思ったのだ。
「一科生の北山雫。雫でいいよ。あと敬語も使わなくていいから。」
「私は雫の幼馴染で光井ほのかって言います。私もほのかでいいですよ。」
「……分かった。それなら俺も恭次と呼んでくれ。あと俺の妹と友人も一科に入学するんだ、よかったら仲良くしてやってくれ。」
「恭次さんの妹……恭次さん良い人みたいだからきっと妹さんも良い人だと思う。楽しみ。」
「そうか?俺が良い人かどうかは分からんが、まあ確かに楽しい妹ではあるな。」
「それはちょっと雫と言ってることが違うような気がしますよ(^^;」
「とりあえず、急ごう。そろそろ始まるよ?」
そんな他愛ない話をしながらも、講堂へ急ぐ三人。
こうして恭次は入学早々新たな友人を得るのであった。
如何でしたでしょうか?
ちょっとというかかなりご都合主義かと思いますが(^^;
次回もよろしくお願いします。