書きにくかったわけではあり・・・ませ・・ん。
きわどい打球には逆シングルでのキャッチ。追い付けるのなら正面でのキャッチ。どの捕球体勢からでも帰ってくるのは相手の胸元めがけてのストライク送球。安心してみれ、かつダイナミックな守備も見せてくれる、とても安定した守備だ。
「うまいな・・・」プロの守備と比較してもそん色ない非常に完成度の高い守備動作だ。
「ぽい」私の言葉に呼応するように夕立も言葉を発する。おそらく響の守備に感銘を受けたのだろう。これで少しはこの子の守備軽視が改善されるといいのだが・・・。
「ぽい」うなずき時には目をつむりつぶやく夕立。きっと響きの動きを頭の中で反復しているのだろう。これは本格的に守備に対する見方が変わったと見える。彼女が守る「ショート」というポジションは内野守備の要であり、メジャーでは一番才能のある選手をこのポジションに置くという。そんなポジションの選手がだらしない守備をしていてはほかの守備も、ひいては試合自体も締まらないというものだ。自分が内野の要であるという自覚を持って守備に取り組むことができれば、彼女はもう一段上のステージに上がることが「・・ぽい」・・・できるだろう。これを機に考え直して「ぽい・・・」・・くれれば一層野球にも打ち込めるというものだ。
さらなる成長を「ぽい・・・zzz」
・・・どうやらまだまだ成長は見込めないらしい。
そんなことを思っているとノックマシンの動きが止まった。どうやら規定打球数を打ち終わったらしい。4人が満足げにベンチへ帰ってくる。
「守備はたるい」「速く打ちたい」という者がいるのだが、基本的に試合中長いのは打席に立っている時間ではなく守備に就いている時間だ。守備を楽しむことができれば野球もたのしめるようになり、守備も自然と上達するため、打てない時でも試合への貢献もできるようになるなどいいことばかりだ。今回のノックで守備を楽しく思ってもらえたなら今日はそれだけで十分な成果になる。
「次はバッティングね!」
帰ってきて第一声、暁が期待のこもった声で私に話しかけてくる。
「あぁ・・・まあそうなのだが・・・」
「?どうしたんだい司令官。妙に歯切れが悪いけど。」
「あー・・テンションの上がっているところ悪いんだがそろそろ夕食の時間なんだ。」
「いつのまにそんな時間に・・・」「時間の流れがはやいのです。」
それほど熱中していたんだろう。各ポジションを実際に守ったりしていたためそれなりに時間がかかったのだがどうやら本人たちは時間をあまり感じなかったようだ。
まあ見ているこちらも時間の長さをあまり感じなかった。彼女たちの上達速度は人間のそれとはまさに別次元にあり、一球ノックを受けるたびにその動きは洗練されていき、練習通りの動きが出せるのなら試合に出しても問題ないくらいにまで達していた。
「でもここはナイター設備もついてるんでしょ!」
「よく知ってるな雷。」
「休憩中に妖精さんに聞いておいたからね!」
どうやら彼女はかなりの長丁場を予想していたらしい。しかし・・・
「まあ今日はこのくらいにしておこう。初めての練習だ、自分ではわからない疲れもあるだろうからな。」
疲れというのは怪我にもつながる。少ない疲労でも油断するものではない。
「プロ選手だった司令官がこのくらいにしたほうがいいと言っているんだ。今日はもう切り上げよう。」
「ま、まあ今日だけしか野球ができないわけじゃないしね!」
どうやら納得してくれたらしい。聞き分けがよくて助かる。
「よし。じゃあ今日はこれで切り上げよう。帰ったらしっかり食べてゆっくり休むように。」
「「「「はい!」」」」
引退した後に母校の高校から監督の話が来たが、もし自分がその話を受けていたらこんな感じなのだろうか。そんなことを考えながら私は帰路についた。
ーその日の夜ー
執務室を目指して複数人の足音が鳴る。どの顔も期待に満ちた、ようやくかなうなどの高揚感が隠れきれていない顔であり、はたから見れば若干怖い集団にも見える。
「4人・・・。夕立によれば4人とも捕手・投手以外のポジションに適性があり、本人たちもそちらに興味があるらしい。」
「ようやくそろう。野球はやはり試合をしなければ真に楽しむことができませんから。・・・もっと欲を言えば順位もほしいですしね。」
「・・・流石に気分が高揚します。」
「まだ認められるかはわからないけれど・・・あんなに青い空のもとで試合ができるのならそれはまぎれもなく幸せ・・・ですね。」
歴戦を感じさせる、威圧感のある集団は執務室を目指しながら闊歩する。
これから始まる長い戦い。その口火を切るのが自分だとは、この時の提督はまだ知らなかった。
第六によるチュートリアルは一応終了です。(まだバッティング残ってるけど)
仕事をしながらの投稿はちょっと大変ですね。これからも精進します。