元野球選手が鎮守府に着任しました。   作:ポンセ

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赤い月(3)

資料室を出た二人は間宮で少し休んだ後ブルペンへと向かった。

ブルペンの前まで来るとなにやら音が響いてくる。これは・・・

「誰かが投球練習をしていますね。」

これは少しまずい。これから二人が行うのはウイニングショットの開発であり、これから対戦するであろう相手に開発段階から秘密兵器を見せるというのは良くない。

 

「どうしますか、赤城。」

「どっちにしろ今日取り組むのはベースになるシンカーの習得です。その過程くらいなら見られてもあまり痛手にはなりません。」

むしろただのシンカーだと認識してくれれば好都合である。

そんなやり取りをしながらブルペンへと向かう二人。近づくにつれ響いてくる音も正確に聞き取れるようになる。

 

「ナイスボール!」

ブルペンの外にまで響き渡る凛とした声。

「この声は・・・とするとピッチャーのほうは・・」扶桑が赤城に目配せをする。

「ええ。おそらくは彼女でしょうね。」

赤城はその投手のことをよく知っている。先ほどまでは今回の練習は見られても真意にはたどり着かれないだろうと踏んでいたが彼女が相手ならばそうもいかない。

しかしブルペンの前まで来てしまったのだ。ここまで来て悩むのもばかばかしい。2人はブルペンへの扉をくぐった。そこに見えたものは・・・

 

パンッ!! 

「いいぞ!ナイスボールだ!」

 

いわゆる彼女は「強打のキャッチャー」と言われる存在。

精悍な顔つきから放たれる声はその顔つきにふさわしい凛とした声。いくつもの困難を乗り越えてきた彼女の雰囲気はドッシリと、投げ込むピッチャーからすれば安心感に満ち満ちている。

「ダイハード打線」数あるチームの歴代史上最強打線のなかでも年間チーム打率.297という破格の成績を残した福岡の最強打線。

そんな強打の打線の中でも捕手でありながら堂々の5番を務めあげた佐世保が誇る英雄をほうふつとさせる。彼女の名は・・・

 

「長門型 1番艦 長門」

 

 

シュッ!

その投手のワインドアップは非常に美しい。

伸びあがる腕、トップの位置まで行っていったん停止。そこから足を上げまた小休止。その後相手打者に向けて投げ込む。この一連の動作に魅せられた者も多いのではないだろうか。フォークとチェンジアップを駆使し、遅咲きながら虎のエースまで上り詰めたポーカーフェイスの左ピッチャー。そんな彼の姿をほうふつとさせるピッチングフォームを操る彼女の名は・・・

 

「加賀型 1番艦 加賀」

 

 

赤城と扶桑がブルペンに入ってくる。

・・・何かあったのだろうか。前よりも二人の距離が近くなったと違和感を覚える加賀。

「じゃあ扶桑、さっそく練習にとりかかりましょう。」

「わかったわ赤城。まずはキャッチボールからね。」

(お互いを呼び捨て・・・!?)

加賀はポーカーフェイスだ。しかしポーカーフェイスなだけで彼女の感情起伏は割と大きい。

(な、なにが!いったい何が二人の間に・・・!?)

頭の中がぐるぐると回る。起き抜けで目をつぶれば思わず立っていられなくなるような感覚に襲われる加賀。

(そうだ、今は投球練習中で、長門はSFFを要求していたんだった。)

サインが頭から飛ぶほどの衝撃。そんな状態のまま加賀は長門へ向けてSFFを投げ込む。

 

シュッ!ポスッ

 

心の乱れは失投を生む。それは加賀も例外ではなかったようだ。投げたボールは要求された変化をせず、要求されたコースへは行かずど真ん中へ。

客観的に見ればど真ん中へ置きに行ったストレートになった。

要求したものとはなにもかも違う球が来て受ける長門には疑問しか生まれない。

・・・どこか調子が悪いのだろうか。

「加賀。全く違うものが来たのだがどこか調子が悪いのか。」

「い、いえ!特に問題はないわ。練習を続けましょう。」

口ではそう言うが激しい動揺、心の乱れはそう簡単には収まらない。

その日の加賀は寝るまでずっと上の空だったそうな。

 

思ったよりも早く練習を切り上げた加賀と長門。赤城たちにとっては好都合な誤算だった。何しろ今からウイニングボールの開発をするのだ。実戦で披露するまで秘密にしておかねばならない。

誰もいないことを確認するとまずはキャッチボールから開始した。




加賀さんは別に同性愛というわけではありませんよ。少し気になってしまう性格なだけです。
お盆で予定も少ないので一気に試合まで行きたいですね。
これからもよろしくお願いします。
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