元野球選手が鎮守府に着任しました。   作:ポンセ

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読み返してみると細かい日数や設定に噛み違いが多いですね・・・。
ちょっとずつ直していきます。


赤い月(5)

「フッ!」

ククッ!パンッ!

 

(・・・もう一週間がたつのに・・・)

 

扶桑は今焦りを感じている。

クレッセント・ムーンの練習はうまくいっていたはずだ。ベースの球種であるシンカーはもはや実践レベルといっても過言ではない。

初日以降はずっとブルペンでクレッセント・ムーンのみに注力してきた。人間よりもはるかに練習量をこなせる彼女たちが一つのことに集中し、その結果・・・

 

(クレッセント・ムーンの軌道を描く気配すらないなんて・・・)

 

正直オリジナルの変化球を甘く見ていた。どこかで心のゆるみがあったのかもしれない。

「最悪でもシンカーが手に入るから・・・」「目に見えなくとも前に進んでいるはず」

現状は決して悪いものではない。これまでは無理に理由を作りだしてそう思い込み前を向いてきたが・・・

 

(一週間が経過してこの惨状では目をそらせなくなってきました。)

 

明らかに壁にぶつかっている。「タチバナの書」のとおりに握り、腕を振り、投球を繰り返しているがそれでも一向に前身の兆しがない。

 

(・・・すがるものがない中でのこの停滞・・・。私でもここまで焦りを感じているのだから、赤城の焦りはさらに・・)

 

上げて上げてここにきて落とされた赤城。変化がないというのは期限が迫っている中ではつらい状態である。

 

「はあ・・はあ・・」

明らかに疲労が見える赤城。息を切らしながら自分の手のひらを見つめている。

今日も午前中までに約500球投げ込んでいる。そしてその500球すべてがただのシンカーでしかない。

(クレッセント・ムーンに近づかない・・。これはさすがにこたえますね・・。)

この一週間、かなりの球数を投げた。それだけ投げれば当然肩や肘にも悪影響は出てくるというもの。大なり小なりで負った怪我は10を超える。その中には靱帯断裂のような大けがも含まれていて、そのたびに高速修復剤を使用している。また純粋な疲労がたまった場合にも修復剤を使用し疲労を抜いている。

身体面では特に問題はない。しかし、これだけのリスクを負いながらなお進まない変化球開発。募っていく心の疲労は修復剤では抜くことができない。

(なにが、なにが違うのでしょうか・・・。)

「見方を変える」や「奇をてらう」といった策はもう講じてきた。

その結果、今では「量をこなす」といった強硬策しか思いつかなくなっていた。

 

「まだ・・まだ投げ込みが足りないのかもしれません・・!」

自分に言い聞かせるようにつぶやく赤城。目には闘志が灯る・・・しかし、その闘志も半ばやけくそのようなものでありあまりいい状態とは言えない。

 

 

 

 

 

 

 

「フッ!」

ククッ バンッ! ブチッ!!

「ぐっ!」

「赤城!」

表情をゆがませ肩を抑える赤城。おそらくは肩の故障だろう。

急いで駆け寄る扶桑。

「大丈夫ですか。今すぐ修復剤を持ってきます。」

「ありがとう。お願いします。」

 

今日はいつも以上に故障が多い。焦りからか投げる際に変な力み方をしているのかもしれない。

扶桑の持ってきた修復剤で肩のけがを治す。

「・・・」

「・・・」

すぐに練習を再開するのは少し危険なため休憩をはさむバッテリー。

「まだ、投げ込みが足りませんね。」

「いえ、そんなことはないわ。十分以上に赤城は投げ込んでいます。これ以上は修復剤があっても・・・」

前のような気力の欠けた赤城ではない。しかし今の赤城は自暴自棄、完全に玉砕覚悟の姿勢でいる。

「さて・・。練習を再開しましょう!扶桑!」

「ええ・・・。」

不安が募る。心の疲れは積み重なったまま変わらず赤城の中にそびえたっているのだろう。そして、赤城のそれには及ばないものの扶桑の中にも疲労は存在している。

焦りや疲れは思考を鈍らせる。

考えは及ばないまま、バッテリーは再び投げ込みを開始した。




なんとかこの土日で書ききるつもりです!
これからもよろしくお願いします。
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