元野球選手が鎮守府に着任しました。   作:ポンセ

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ようやく・・・ようやく・・・。

ストーリーを進めるのはとても難しいですね。
赤城さんの特徴は後出しになってしまいました。実際、私の作った赤城さんは持っていないわけですしね・・・。
物語は本当に難しいですね。赤城さんは作り直します。



赤と藍の満月(前篇)

シュッ! クククッ! バンッ!

 

「はあ・・はあ・・なんとか、なんとか曲がるようになりました・・。」

「狙って曲げられるようになりましたね・・・けど。」

 

結果的に言えば「質より量」という練習方法でクレッセント・ムーンを習得することができた。しかし・・・

 

「変化量があまりにも頼りないですね・・・。」

「ええ・・。」

 

そう。あまりにも変化が乏しい。

毎球投げられるならばこのくらいの変化量で十分な武器になる。

だが、ウイニングショットとして使用するには落ちるでもない、抜くでもないボールでこの変化量はあまりに心もとない。かといって毎球これを投げられるかと言われれば、スタミナ消費が大きいため現実的ではない。

 

「曲がりそこないの中途半端に速いシンカー・・・否定したくはないのですが、赤城・・。これで強打者を抑え込むのはかなりむずかしく思います。」

「しかし・・・このタチバナの書に書かれている方法はすべて完全に抑えています。これ以上何をすれば完全なクレッセント・ムーンにたどり着けるのでしょうか・・・。」

 

完全な袋小路。正確な手順を踏んだ結果、中途半端に達成できてしまった。

この道はあっていたが正規の道を通ってこの程度。完成したがゆえにこの結果は二人にとってつらいものとなってしまった。

 

「本当にこの程度の変化球なのでしょうか。もしかしたら投げる側に何らかの適性が必要だったのかもしれません。」

 

目を伏せ消沈する赤城。

確かに、クレッセント・ムーンの使い手は左投げのスクリュー使い。

右で投げるならシンカーが該当するというだけでスクリューベースのクレッセント・ムーンと同じ威力が出るとは限らない。そういった意味では確かに右投の赤城には適性がなかったのかもしれない。

 

「もう試合まで残り4日・・・。今から左投げに転向するのは現実的・・・ではありませんね。」

 

そういって赤城は力なく笑う。その表情は何かを悟ったような諦観が見える。

 

「赤城・・・。」

掛ける言葉が見つからない扶桑。

(・・・考えがまとまりません・・。)

疲労が大きい。考えはまとまるそばからバラバラになっていく。

解決策もこの球を有効に使う方法も数日前から考えようとしている。しかし身体的疲労と精神的疲労がそれを許さない。

 

「・・・今日はもう切り上げましょう。扶桑。」

「でも赤城・・・。」

「これ以上は試合に響きます。あなたのリードがなければ私は実力を出し切れませんから・・・ね。」

そういってブルペンを後にする赤城。

「・・・なにか、なにか打開策があるはず。」

なによりも赤城の文字通り血のにじんだ努力がこの程度の結果であっていいはずがない。

 

 

このブルペンも妖精の改造により様々な機能が追加されている。

その中には、ピッチャーを360度の角度から映すことのできるカメラと投げた球を正確に鮮明に映すことのできるカメラがある。

なにかないか。扶桑はあるかもわからないなにかを探すために赤城に関する2つの映像を見ていた。

「握り方、腕の振り方、ボールの回転・・・文献と違うところはなにもない・・ですか。」

タチバナの書を片手に赤城と見比べる扶桑。しかしなにも差異がない。

「適性がなかった・・・本当にそうなのかもしれませんね。」

あらゆる映像媒体をあさり調べようやく見つけた一つの映像。

そのに映るのはクレッセント・ムーンを自在に操る蒼い髪の少女。その変化はまさに文献通りの「魔球」と呼ぶにふさわしいものであった。

「体格も利き腕もタイプも何もかもが違う・・・。」

一口に「スライダー」といってもその変化は投げる人間の数だけ存在する。

指の長さ、腕の長さ、手のひらの厚み、筋力量、器用さ、腕の振り・・・様々な要因が重なって変化球は成り立っている。全く同じ変化をする変化球というのは実際存在するのかも怪しいほど。それだけ変化球は繊細なものである。

 

「・・・」

 

疲労はピーク。

映像も頭に入ってこない。まあ頭に入れずとも数日前から見ているため覚えているから入れなおす必要はないのだが。

 

「・・・」

 

適性がないから再現しきれない・・・。あまりに悲しい結果だ。

 

「・・・」

 

不得手なことはそれ相応の訓練で緩和することができる。

ここまで投げ込んできてこの程度だということはもしかしたら緩和できる限界なのかもしれない。

 

「・・・」

 

ならば「適性が必要」と書いておいてほしかった。

これではまさに骨折り損というものだ。

 

「・・・」

 

・・・

 

「・・・」

 

・・全く同じに再現する必要があるのか?

 

「・・・いえ。そんなことはありません。」

 

クレッセント・ムーンはスクリューをベースに成り立っている変化球だ。

 

「だったら私たちはこのクレッセント・ムーンをベースに新しい変化球を作ればいいじゃないですか・・。」

 

なにも原型にとらわれる必要はない。赤城には赤城のストロングポイントがある。それとクレッセント・ムーンを組み合わせることができれば・・・

 

「それこそが赤城のウイニングショットになる・・・!」

 

バラバラの思考はたちまち纏まっていく。

赤城の長所、短所が即座に頭に浮かぶ。指の長さ、手の形、腕の振り方、下半身の強靭さ、上半身のしなやかさ、球質・・・。

クレッセント・ムーンと組み合わせるにはいったい何が一番合っているのか。

 

「・・・ジャイロ回転。」

赤城の球質、その特徴の一つ。

確信にも似たものがこの回答にある。

このとき扶桑には一片の不安もなかった。しかし悔やむべきことではある。

「もうすこし私がこの考えに至っていれば・・あそこまで赤城を追い詰めることはなかったのに・・。」

 

もう失敗は許されない。取り返す時間も、それだけの体力も残されていないのだから。

「しっかりと考えなければいけませんね。これからの練習法、どうやってジャイロ回転を組み込むのかを。」

いつのまにか疲労は飛んでいた。ノートを開きペンを走らせる。

「必ず・・・!」

 

誠実さこそ信頼の証。

赤城を信頼しているからこそ今の扶桑は今までで一番力を発揮できるのだ。

 

「待っていてください・・赤城!」

 




赤城、作り直し!!
書いているうちに予定とは違った方向に向かっていました!
明日にはこのイベントは完結させるつもりです。
本当につたない文章ですがこれからもよろしくお願いします。
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