とりあえず試合を始めます。
リーグ戦についても次回以降に・・・
第一試合はデイゲーム。照りつける日航は容赦なく投手の体力を奪っていく。太陽の位置を確認し頭に入れておかないと内外やともにフライを見失ってしまうことがある。
「まあ、とりあえず以上が元プロ野球選手からの注意事項だ。」
「ありがとうございます。提督。」
私が今いる場所は球場のアナウンス室。試合をしていない2チームから「ラジオでいいから実況とプロ視点での解説がほしい。」との要望があったためアナウンス室からラジオを通じて球場にいる艦娘たちに解説をすることになった。
ちなみに、私の横にはもう一人今後の試合の実況を担当する艦娘が座っている。それが・・・
「こんにちは!実況の青葉です!」
少しやかましいが私一人ではそれもまた放送事故になりかねない。そのため、舌が回り話がうまい彼女が実況の役割を担うことになった。
「解説は元ドライアンツの提督さんでお送りいたします。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「では早速、提督さんにお話を聞いてみましょう。まずはこの試合の両先発、加賀さんと瑞鶴さんの特徴と簡単な攻略法を提督なりに解説していただけないでしょうか。」
「心得た。ではまずは加賀からいこう。」
一応練習ではあるが私も加賀との対戦経験が何度かある。その少ない経験から自分なりの「ピッチャー加賀」の考察を述べてみる。
「加賀は球速、制球力、スタミナ、変化球とどれをとっても高水準にあるピッチャーだ。おそらくこの鎮守府にいるピッチャーの中で最もレベルの高いピッチャーだろう。中でも彼女のウイニングショットである「スライダー」は変化量、キレ共に私が見てきた中でも最高レベルのスライダーだ。」
昔、燕には恐ろしい切れを持ち、まるで真横に曲がっているように見えるスライダーを投げる投手がいたと聞く。加賀のスライダーもそれに比肩しうるものなのだろう。
「また、スライダー以外にもSFF、シュートと質の高い変化球がそろっている。ストレートもいいものを持っているからな、それらを打ち崩すのは簡単じゃあないだろうな。」
「なるほど。普段の印象通り隙が少ないということですね。」
「まあ、そうなるな。」
どの球種も高レベルでまとまっていてどれでも空振りが取れる。非常にキレのいいスライダーを持っているためそれに意識が回りほかの球種に的を絞りきれないのではないだろうか。
「聞いている限り打てそうにありませんねぇ。攻略法・・・というのは提督さんの中でいくらか出来上がっているんですか?」
攻略法・・・一見つけ入るすきのない加賀だが、何度か対戦しているうちになんとなく見えてきたものがある。
「加賀は確かに良い制球力を持っている。ただ・・・」
「ただ?」
「制球ミスや浮いた変化球なんかがやたら真ん中に入ってくる印象がある。ここを打ち損じなければ活路を見いだせるはずだ。」
声に出しては言わないがもう一つ加えると加賀はおそらく短気だ。ポーカーフェイスを作ってはいるが痛打を食らうと明らかに雰囲気が変わる。その時甘く入ってきた球を捕らえられれば割とあっさりと崩れるかもしれない。
「なるほど。加賀さんの攻略法は「甘い球を見逃すな!」ですね!」
「ああ。もちろん単発ではいけない。畳み掛けられるようにチーム全体が集中する必要があるがな。」
「なるほど。では次に瑞鶴さんについて解説してもらいましょう。いいですか?提督。」
「了解した。瑞鶴は鎮守府内のピッチャーの中でも一番球速、馬力のあるピッチャーだ。「投げる球がなくなったらとりあえずストレート。」という選択が取れる。ストレートの最高球速は155キロ、キレのいいスライダーをはじめ合計で4種類の変化球を持っている。」
「155キロのストレートに加え4種類の変化球ですか・・・。かなり的が絞りにくそうですねぇ。」
「まぁ、スライダー以外はカウントを取る程度の変化球で常に空振りをとれるような球種ではない。私の感覚から言わせてもらえば狙っていれば打ち損じをするようなものではない。そのため気を付けるのはストレートとスライダーだな。」
「困ったときのストレート」これができる投手は大成する投手だと私は思っている。狙っても打てないストレートというものはそれだけ扱いやすく打たれにくいのだ。
「なるほど。瑞鶴さんは力押しのタイプなんですね。正面切って押してくるピッチャーはなかなか攻略法がないような気がしますが提督さんはなにか見えているんですか?」
「瑞鶴に欠点は制球力だ。それに加え乱調気味で四球癖がある。また彼女の球質は軽い。待球作戦でフォアボールを誘いランナーをためてから主軸に一発を任せるというのは割と現実的な攻略法だと思うぞ。」
もう一つ、瑞鶴もまた短気だ。
先日、私と一打席勝負をした際ためしに15球ほど粘ってみたら目に見えてイライラしていた。その際ボールが甘く入ってくるため一度崩れると修正がきかないかもしれない。
「なるほど!瑞鶴さんの攻略法は「待って待ってボコボコに!」ということですね!」
「まあ、そんなところだな。」
実際の試合前の実況と解説のような会話。もうすでに私は達成感を得てしまった。やはり青葉は話がうまいな・・・。
そんなことを思っていると「ヴー」試合開始を知らせるブザーが球場に鳴り響く。
「始まりますねぇ。提督。」
青葉は声を弾ませながら球場のアナウンススイッチを入れる青葉。試合には出なくとも報道陣として彼女もカ・リーグを楽しみにしていたのだとか。
『それでは只今より「岬ビックナインズ」対「鶴翼ウィングス」の第一回戦を開始いたします。』
初試合にふさわしい試合を期待し、私は各選手の解説に向けて手元の資料に目を向けた。
やっと試合が始まりました。
週一更新・・・できれば週二更新を目指して頑張ります。
これからもよろしくお願いいたします。