(ッシャア!三振!二者連続三振っ!!一番いいストレート行ったし、最高の形で夕立に向かえるわ!!)
思わずガッツポーズをする瑞鶴。ストレートが売りの瑞鶴にとって「高めのストレート」を振らせるのは自分の強みを生かせた最高の結果ではないだろうか。
(二者連続・・・大した球数もかけずに次に臨めることはとてもいいこと・・・)
意外に翔鶴のテンションは低い。
野球とはいかにして27人の打者を抑えるかというもの。いい結果とはいえそれに胡坐をかいて次に臨めば痛い目を見るかもしれない。
(まだ試合は始まったばかり・・・。気を引き締めて次に臨みましょう。)
「キャッチャー」としてあくまで冷静に試合を組み立てる。初試合とはいえしっかりと役割を翔鶴は理解していた。
(しかし問題は・・・)
(ここまでノってても「次」は怖いんだよねー・・・)
(・・・)
片手で足りるくらいの球数。まっとうな打撃では貢献が難しいと自覚している彼女。
それ故にこの凡退の仕方はとても役割を果たしたとは言えない。
ベンチへ帰る足取りが重い。
真剣に勝負をしたため悔しさも大きい。
「・・・っ」思わず電の目に涙がにじむ。
そんな電の頭に「ポンッ」と手が置かれる。
「?」
「そんなに思いつめてうつむかなくてもいいっぽい。」
電よりも高い身長、彼女を見つめる目は攻撃的な「赤」だが印象に反して視線はとても優しい。
「夕立ちゃん・・・」
「たった一打席、誰でも三振はあるっぽい。」
夕立に攻めるつもりは毛頭ない。所詮打撃は水物。10回中3回、つまり「3割」打てれば「一流」と扱われるのが野球の世界である。
ならばたった1打席の凡退なんてとるに足らないものである。
「電の良さは分かってるから、胸を張ってベンチに帰るといいっぽい。」
「夕立ちゃん・・・ありがとうなのです。」
力強く優しい言葉に電も元気を取り戻す。
「どういたしましてっぽい!」
無邪気な笑顔を見せ、夕立は打席へ向かう。
「・・・」
ゆっくりと打席に向かう夕立。その視線は鋭いものへと変わり、真っ直ぐに瑞鶴を見据えている。
今までのシミュレーションにはなかった「ホップする剛速球」。その威力の前に時雨も電も手も足も出ずに凡退を喫した。
「・・・」
なのにもかかわらず、夕立の中に渦巻くものは不安、恐怖といったものではない。
「・・・」
自然と口角が吊り上る。視界が今よりもいっそう鮮明になっていく。
耳に入る周囲の音はいつの間にか聞こえなくなっている。
「ッフー・・・」
軽い深呼吸をすませ高鳴る鼓動を落ち着かせる。
普段とは違う、しかし慣れ親しんだ感覚。思い起こすは硝煙香る決死の戦場。
(シミュレーションの時も高ぶることはあったけど・・・実際に体験してみると全くの別物ね・・・。)
早く、早く、と自分の中の本能が急かすのを感じる。
瑞鶴は愛すべき友である。しかし今は打倒すべき敵でもある。
(あぁ・・・。)
改二になった自分の姿を見て心配したものがいた。
どことなく深海棲艦を思わせる雰囲気があったのだろう。
「心配しなくていい」その時は笑って流したが・・・。
(もしかしたらちょっとそっち側によってたのかもっぽい。)
スポーツだと頭でわかっていてもあふれ出る、戦いのときと同質の闘争心を感じながら夕立は思う。
自分にとっては深海棲艦との戦いも野球の試合も同じ「戦い」という括りなのだと。
(時雨、電の敵討ちもある。)
見据える先には瑞鶴の姿がある。
気を引き締め、しかし自信に満ち溢れた表情の彼女がいる。
(恨みはない。憎くもない。仲もいい。だけど・・。)
口元に笑みがこぼれる。我慢していたがもうやめた。
親しき友に、とも戦った仲間に、この表情を見せるのも背筋が震えてなんだかいいものだ。
(私は今、私の打棒であなたの自信を粉砕したい。)
今、この試合中だからこそ合法的に許される。
「親しきものを完膚なきまでに砕く」
(これが「背徳感」って言うのかな。だったらなかなか癖になるっぽい。)
一つ大人の階段を上ったっぽい。暁に今度教えてあげようと、関係ないことを思いながら打席に入る。考えられるほどに今の夕立は余裕を持っている。
赤く染まった目を持つ狂犬は牙をむく。標的は目の前にいる一羽の鶴。
(さぁ。最高にステキな悪夢を見せてあげる!)
夕立、ようやく打席に入る。
どうにかかっこよく表現できないかと頑張りましたが私にはこれが限界のようです。力量不足で非常にクサい文章になりました。
他の方々見たくスタイリッシュな表現をしたいものですね・・・。
多分夕立の打席以降は結構スピーディに進むと思います。とはいえ全員きちんと紹介はするつもりですので場合によっては今回のような「打席に入るだけ」もあるかもしれません。
より一層読みやすく、テンポのいい文章を書けるように尽力いたしますのでこれからもよろしくお願いします。