「ビックナインズの3番はショート夕立!彼女はどういうバッターなんですか?」
「一言でいうなら・・・天才だな。」
「天才・・・ですか。これはまた大仰な言葉が出てきましたねぇ。」
「あぁ。しかし彼女はその言葉に値するくらいの成績を出している。
.343 11本 73打点 高いアベレージ、ホームランは少ないが打点が多い。チャンスに強くビハインド時の打率も高い。また、エースクラスにも対峙できる打棒を誇っている。」
弾道が上がりにくいためホームランは少な目ではあるが2塁打が多いため長打にも事欠かない。
「打撃に関して難があるとするなら、調子が安定しないことくらいじゃないか。」
個人的な意見だが、ビックナインズの中で最も警戒するべき打撃を持つ打者は「夕立」だと考えている。もちろん、後に控える長門・大井・山城も含めてだ。
「相当な高評価ですねぇ提督?」
「.343という数字はそれだけ価値のあるものなんだ。」
バッテリーが向かえた最初の山場。
「どう立ち向かっていくのか・・・。楽しみな勝負だな。」
(夕立ちゃん・・・。打率、打点共に申し分ない成績。間違いなく最初の山場。ランナーがいない時に迎えられたのは行幸・・・。だったらここで抑えて苦手意識を植え付ける!締まっていくわよ、瑞鶴!)
(ビリビリビリビリ・・・とんでもない圧、かましてくれるじゃないの。この際難しいことは翔鶴姉に任して、私は全力で夕立を抑え込む!!)
さっきまでとは明らかに違う緊張感。しかし二人は百戦錬磨の猛者。気圧されることはなく、不安に駆られることもない。さらなる闘志を持って目の前の敵に立ち向かう。
(・・・)
真っ赤な瞳は一直線にマウンド上の瑞鶴を射抜く。
(浮き上がるストレート。時雨も電もそれに抑え込まれた。)
いまだ攻略の手掛かりがつかめない正体不明のストレート。しかし夕立は・・・
(楽しみっぽい!!)
それが瑞鶴のウイニングショットなら必ず一球は投げてくるはず。それがストレートならば瑞鶴の性質上中心に組み込まなくてはならない球種である。ならばなおのことストレートの割合は増えてくる。
(決め球を打ち抜いて・・・。)
赤い瞳に一層の闘志がこもる。
(一気に叩く・・・っぽい!)
「一球目は内角低めにスラーブ、大きく外れてボール!」
「外れすぎたな。今のコースでは変化球を意識させるには少し足りない。・・・やはり夕立の威圧感は中々のものなのかもしれないな。」
(っ!投げづらい!なんつー威圧感よ夕立。なんだか深海棲艦の気持ちがわかった気がするわ・・・。)
変わらずこちらを射抜く視線。押されてはいないが影響は確かにある。
(・・・変化球を意識させるのに今のコースでは少し外れすぎているでしょうね。)
ストライク・・・せめてもう少しゾーンによっていれば夕立に変化球の存在も意識させられたのかもしれないが・・・
(夕立ちゃんの見逃し方を見ていると・・・おそらく効果は薄いか・・全くないように見えますね。)
動じず悠然と見送った夕立。
(一球だけですが・・なんだか攻めにくい。雰囲気でしょうか。)
(ストライクゾーンが狭く感じる・・・。)
(スラーブ・・・気にする必要はないっぽい。)
コースは大きく外れている。
(それに・・・大した変化球でもないっぽい。)
あくまで狙うは決め球。
(・・・早くストレートを投げるっぽい!)
期待が膨らむ。抑えられる可能性など微塵も夕立の頭の中にはなかった。
「瑞鶴、第二球は外角低めにストレート、外れてボール!」
「力が入っているのか、指にかかったストレートだったな。」
実戦で強打者と対戦するのはこれが初めて。
(緊張は動作を鈍らせるという・・・。)
「一呼吸おいて、臨んでほしいな。」
「?」
(・・・汗。手汗が・・・)
ジワリと湿ってきた手のひら。それに加え
(なんだか息も切れてきた気がする・・・。)
スタミナには自信がある。鎮守府一といってもいい。たった一回、疲れなんてありえない。
そして本当にスタミナ切れではない。だとしたら・・・
(夕立に当てられて・・・。)
体に変化が現れるほどの、それほどの「圧」
(っ!!私はビビッてんの!?いくらいいバッターだからって夕立に!?この私が!?)
自分自身に憤りを覚える瑞鶴。
(そんなことない!・・・いや。)
思うだけでは足りない。
(いいきかせても無駄か。・・・だったら行動で自分に叩き込む・・!)
恐怖はその対象を乗り越えることで解消される。無論、危険な方法ではあるが。
(さぁっ!迎え撃つわよ強敵を!!)
(瑞鶴・・・焦っている?それとも当てられて思い通りに投げれていない?)
マウンドに向かうのも一つの手だが・・・。
(こんな早い回にマウンドに向かっても・・・。それに瑞鶴のプライドも。)
とはいえ相手は強打者。翔鶴は考えるが・・・。
(ここはマウンドに行かない。必ず抑え切りましょう!)
(今のが例の・・・確かに浮き上がったっぽい。)
驚いている。しかし・・・
(面白いわ!すごい球、絶対に打つっぽい!!)
脅威だと感じている。しかしそれ以上にこれを打ち崩すのが楽しみでたまらない。
(ノッてきたっぽい!!必ずこれを打つ!!)
脅威を恐れない胆力。夕立は生まれながらに「強打者」としての気質を備えていた。
夕立の打席・・・終わらず。
先の展開はすでに用意しているのですが・・・。
タイピングが遅いのも原因の一端でしょうね。
なんとか、なんとか次の回でチェンジまで持っていきます。
これからもよろしくお願いします。