「さあ、一回の裏ウィングスの攻撃は一番セカンド響!提督、普段の練習やシミュレーションの成績から響ちゃんはどんな選手なのでしょうか。」
「そうだな。.326 12本 52打点 29盗塁。一番という打順以外で考えても安定感のある優れたバッターだ。守備の面でもメインポジションのセカンドをはじめ、ショート・サードをこなすことができる優れた選手だな。」
攻守ともに高い安定感を誇る響。おそらく第六駆逐隊のなかでは随一の野球センスだろう。
「多彩な技術を駆使して打席に臨んでいる印象があるが、甘く入ってきた球には積極的にホームランを狙うスイングを見せている。その証拠にホームラン数は「12本」と意外にも多い。パワーがないからと言って直球系で押していくと痛い目にあうかもしれないな。」
「なるほど。バッテリー側は決して油断ができない相手だということですね。」
「まあ、そうなるな。」
とはいえ相手ピッチャーはあの加賀だ。そう簡単にヒットを打てるとは到底思えない。
バッターボックスには響。
(加賀さん・・・相手にとって不足はない。いや・・・むしろ少し荷が重いかな。)
高水準のピッチング、そして脅威の切れ味を誇る伝家の宝刀「スライダー」
(加賀さんの防御率は2.41。これは1シーズンの成績ではない。あの人がこなしてきた「8シーズン」分の成績。その通算が2.41・・・。)
シミュレーションは過去、現在のプロ野球選手のデータが搭載されている。つまり・・・。
(8年間でのプロ通算防御率と銘打ってもおかしくない成績・・・。)
8年間で通算2.41・・・。この数字はまごうことなき
(超一流・・・!)
(響・・・。最近野球を始めたばかりの子・・・。)
加賀は終戦後早い段階で野球を始めた、この鎮守府では最古参の選手である。
(・・・。)
この短い期間でこれほどまでの成長を遂げた彼女の才能は疑うまでもない。しかし・・・。
(簡単に打たれるのはカッコがつかないし・・・だったら・・・。)
自分もまた才能がある。おごり高ぶるに値する成績を残してきた。
(ここは譲れません。)
ゆっくりと振りかぶる加賀。たとえ経験が浅かろうと慢心する理由にはならない。
「現在のカウントは2ストライク2ボールの平衡カウント。提督、ここまでの勝負はどうみますか?」
「この段階ではまだ判断できないな。加賀はまだスライダーを使っていないし響も追い込まれるまでは様子見のように感じる。とはいえ次の一球は双方動きがあるだろうな。」
「追い込んでますからねえ。提督は次の一球、バッテリー側はどんな配給をすると予想しますか?」
「コースは分からない。しかし球種は決まっている間違いなくスライダーだ。」
「ほう。提督にしては珍しく断定してきましたねえ。なにか確信があるんですか?」
「ああ。受けるキャッチャーの長門。彼女のリードならここは必ずスライダーだ。」
「長門さんのリード・・・。なんか読まれちゃってますけどそんなに短絡的なリードをするんですねえ。」
「わかりやすい。という意味では確かに短絡的だ。配球表でも見れば一目瞭然だが彼女は決めるところで必ず決め球を使う傾向にある。」
加賀であれば「スライダー」瑞鶴であれば「ストレート」蒼龍であれば「フォーク」という具合に彼女は決め球を決め球として使い続ける傾向にある。それがたとえ読まれていても。
「響ちゃんももちろん頭に入っていると。だとしたら響ちゃんはもちろんスライダーを狙いに行きますよね。3割以上に打率を残している彼女なら球種が分かっていれば確実にとらえられるのではないでしょうか?」
「その考えは正しいな。高打率を残すには「甘い球を打ち損じないこと」と「相手の配球を読み切ること」の二つが肝になってくる。響が3割を残しているということはこの二つがしっかりとこなせているということだろうな。」
だが・・・。
「プロクラスのピッチャーにはたとえわかっていても打つことが難しい変化球を持つ者がいる。私も加賀と対戦したことがあるが彼女のスライダーはくるとわかっていても捉えきることが難しい。初めて打席に立って対戦するならなおさらだろうな。」
「それほどのピッチャーなんですか・・・。流石は通算2点代前半の選手ですね。」
「ああ。・・・それとその成績なんだがな。」
「?」
「実際に使ってみないとシミュレーションマシンの設定は分からないか・・。あれには「バッテリーモード」というモードがあってな。」
「はい。」
「加賀の通算成績は「長門とバッテリーを組んで挑んだ8シーズン」の成績なんだ。」
「・・・それって。」
「ああ。あのマシンは学習機能も搭載している。当然長門の配球の癖も学習・対策されるのだが・・・それも踏まえたうえで加賀の通算防御率は2.41なんだ。」
「・・・知りませんでした。」
「取材不足だな。以後気を付けるように。」
冗談めかして青葉をあおる私。
「すみません・・。以後気を付けます!」
以前はこんなことは言わなかったのだが・・・年を取ると洒落の1つでも言いたくなるのかもしれない。
(球種はスライダー。コースは・・・左対左を考えると十中八九「外角低め」。長門さんは「セオリー」重視だ。悪くいってしまえば状況に応じた配球ができていない「機転の利かないリード」。)
追い込まれた響。しかし焦りはみじんもない。なぜなら・・・。
(外角のスライダーを初見で、しかも加賀さんのとなるとヒットにするのはかなり難しい。だったら・・・だったら「見逃す」。コントロールがいいとはいえ外角低めに変化球を投げるのはそう簡単ではない。ましてやまだ一球「ボール」カウントが使えるなら外に「抜けていく」スライダーで三振を誘うはず。無理に入れようと甘くなるより外に外れる方がリスクもない。・・仮に外角低めいっぱいに決まったら・・・「しょーがない」!諦めて三振しよう!!)
「しょーがない」響は非常に割り切れる性格である。そのため打席での失敗を反省はすれど引きずりはしない。失敗を恐れない以上、行動に迷いがないのが彼女の強みだろう。
(さあこい。必ず打つ!)
普段の表情とは裏腹に意外に熱い内面を彼女は持っていた。
(スライダーだ。加賀。)
長門は変わらない。たとえ自分の手の内が把握されていようと変わることはない。
(強者に小細工は必要ない。正道こそが王道。)
絶対強者である。しかしそれは自分のことではない。
彼女はマウンドを見つめる。その先には振りかぶる加賀の姿が映る。
(真っ向から叩き潰す。他の者にはできなくても加賀にはできる。)
ミットは真ん中から「動かない」。
(初めの対戦で相手に刻む。そのためのリードだ。)
キャッチャーとはピッチャーを支える影の役割。目立つことはせずただただ・・・。
(徹すればいい。彼女の威力を相手に分からせることに。)
(っスライダー!だけど・・・このコースはど真ん中!)
入ってきた絶好球。
(このコースならホームランも狙える!!!)
ビュンッ!バーンッ!
(・・・・!?)
振り切った響。しかしそのバットは・・・。
空を切った。
お久しぶりです・・・。
テンポを気にしましたがやっぱりなんか・・・。
文字数を増やすしかないのか・・・。スポットライトを当てすぎかもしれませんね。