元野球選手が鎮守府に着任しました。   作:ポンセ

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金剛の打撃について

「ああ。だがその身体能力もあってか打撃面に関しては他のショートを抑えてトップを誇っている」
と前回書いてありましたが、他チームの夕立・神通・羽黒と比べてみると打撃力ではむしろ一番劣るくらいでした。

正確には「長打力に関しては他のショートを抑えてトップを誇っている。」になります。



岬ビックナインズ VS  鶴翼ウィングス 第一回戦 (15)

「さあ!1アウトランナーは1・3塁!ウィングスはこの絶好のチャンスで4番金剛を迎えます!ウィングスからしてみればここは是非にでもタイムリーないしホームランがほしいですねぇ!」

 

「ああ。4番が打てばそれだけチームにも勢いがつく。ビックナインズが初回のチャンスを逃している以上ここは得点したいところだ。」

 

そういって目線を打席の金剛に向ける。長門と違い彼女の表情に緊張の色や力感はあまり感じない。

 

「どうやら金剛は落ち着いて打席に入れているみたいだな。この場面はゲッツーがほしい。野球を知っていれば誰もがいきつく結論だ。バッテリー側ももちろんほしいがそれは金剛も確実に頭にある。慎重にコースを考えなければ、安易にゲッツー狙いのリードは痛打をくらう。」

 

今度は長門に目を向ける。

 

「焦りは禁物だ。頭を切り替え、じっくりと考えて勝負に臨む必要がある。」

 

出なければこの試合・・・。

 

(ここで決まってしまうかもしれないぞ。長門・・・。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・。)

 

ロージンを弄りながらマウンドの上で加賀は考える。

 

(球が甘く入っている?・・・いいえ、さっきのスライダーはいいところに決まったはず。だとしたらキレが悪い・・?・・・いいえ、それも違う。絶好調ではないにしても調子が悪いわけでもない。事実、響にたいしてのスライダーは完全に空振りを奪うキレだった。)

 

愛宕の時のスライダーはコース・キレともに及第点だったはず。しかし結果はライト前へのクリーンヒット。だとしたら・・・

 

(・・・ある程度予測を立てられていた。外角低めは・・・まあ投球のセオリーだからいつでも頭には入れているはず。だとしたら当てられたのはスライダー。)

 

(予想されたからといって簡単にヒットにされるのは少々情けないことですが今はそこではない・・・。)

 

2番の叢雲は初球打ち。そして3番の愛宕も初球打ち。

 

(・・・長門のリードが読まれている?チーム単位でか、個人単位でか、そこはまだわからないけれど・・・。)

 

マウンドか長門に目を送る。その表情は険しく、眉間にはひどく深い皺が刻まれている。何シーズンもともに戦ってきた相棒を疑いたくはないが・・・。

 

(・・・。サインに対して首を振るべきでしょうか・・。)

 

彼女の考えが読まれている以上、彼女一人で考えたリードは読まれる危険が高い。しかし・・・。

 

(・・・いいえ。これまでわたしが戦ってこれたのは長門のおかげ・・。ここで私が彼女を信じないのはあまりに軽薄。・・・考えを改めなおして・・、彼女を信じて投げ込みましょう。)

 

そう言い聞かせ長門のサインにうなずく加賀。今まで幾度となく窮地を乗り越えてきた2人。

 

(そう・・・今度も必ず乗り越えられるはず。)

 

思いを胸に、加賀は左腕を振り切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「打った―!!大きなあたりでしたがわずかに左に切れてファール!」

 

「今のは仕留めておきたい球だったな。しかし、スイングは余計な力感がなく非常にスムーズだった。この後も十分期待できるだろう。」

 

問題は・・・。

 

「対して加賀の投じた一球は・・・、この場面で投げるような球ではなかったな。長門は外角にストレートを要求していたようだが真ん中の高めに入ってきた。ここにきて失投気味なのは予想以上に追い詰められているのかもしれないな。」

 

ここは気が抜ける場面じゃないだろうに・・・

 

(・・・長門の緊張が加賀に伝播したのか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(Shit!!ベリースイートな球だったノニ!!仕留めそこないマシタ!!)

 

バットを見つめ打席の金剛は歯噛みする。

 

(ン~・・。今みたいな球は流石にもうこない・・・デショウネー。次はストレートかスライダーか・・・SFFにシュート、ツーシームもありマスネー。)

 

豊富な球種を使いこなすため考え込めばこむほど迷いが生じる。

 

(叢雲に打たれたのはストレート。今の甘く入った一球もストレート。・・・長門は今ストレートにいい印象を持っているのでショウカ?)

 

愛宕が一球目をスライダーと予測したのは・・・。

 

(直前、叢雲に打たれているから・・。打たれた球を使うのはこの場面では避けたいというのが長門の考え・・・。だとすれば私の今のあたりも相当怖かったはず・・ストレートは外して考えてもいいかもしれませんネー。)

 

(となるとさっき愛宕に打たれたスライダーもちょっと使いにくいと思っている・・・?これも外すと残りは3つ・・・。)

 

(ストレートを走っていないと判断したのならそれの類似であるツーシームも長門は信用できない・・・デスカネ?)

 

(とすると、残りはSFFとシュート。大胆に内側からシュートを入れてくる?それとも外へ逃がす?)

 

(・・・NO。キレがいいとはいえ加賀のシュートは決めにいけるほどのものじゃないネー。加えて長門はなぜかピッチャー不利のカウントをかたくなに拒むようにも見えマース。相当切羽詰っているのでショウカ?)

 

(ここまで響以外は3人ともすべてがクリーンな当たりな上、積極的にバットを振り切ってマース。そんな中で生半可な変化球は要求しづらい。だったらここは・・・)

 

(SFF。ピッチャー不利なカウントを嫌がる以上見送ってもストライク・・。つまりゾーンに入れてくるはず・・。)

 

完全に狙い球を絞った金剛。その顔には不敵な笑みが浮かぶ。

 

(ンッフフ~♪なんか抑えられる気がしませんネー♪)

 

解説ブースのほうに目をやる金剛。

 

(テートクも見ている以上、ここはバシッと打ってしっかりアピールするネー!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・今の一球は危なかった。初回にいきなりスリーランはシャレにならない。)

 

(加賀は・・・叢雲に投じたストレートと今のストレート。ここまで痛打されているということは・・・そこまで球が走っていない・・・。)

 

(いや、決めつけるのは早いか・・・。たまたま二球いいところに入ってしまっただけかもしれない。)

 

(だが、この場面でもう一回ストレートは要求できない。少なくともこの金剛の打席では要求しづらい。)

 

(今のストレートはかなり気持ちよくスイングしたはずだ。そのイメージが残っているうちにツーシームで凡打を誘うことはできないか・・・?)

 

(いや、ストレートが効いてない以上ツーシームはあまり使いたくない。万が一を考えればここはそれ以外で臨むべきだ。)

 

(スライダー・・・しかしさっき愛宕に初球を振りぬかれている。私の考えが読まれているのならより打率の高い金剛もスライダーは頭に入れて臨んでいるはず。あいつはああみえて頭が切れるタイプだ。)

 

(・・・ここは意表を突くべきか?いつもの私ならスライダーだったかもしれないが思い切ってシュートを要求する・・・。ダメだ、響から今の金剛まで全員スイングに迷いがない。加賀の中で一番精度の低いシュートは危険に思えてしょうがない。)

 

(ここは一球外して・・・。それならシュートも使える。別の球種を見せて金剛を考え込ませれば・・・。いや、次のストライクで追い込む形になる。ここまでいいようにやられている以上、この場面は有利に持ち込みたい。)

 

(・・・シュートをストライクゾーンに入れるのは怖い。)

 

(・・・ここはSFFか。この球ならキレも十分、ゾーン内でも十分に勝負できる。)

 

加賀にサインを送る長門。

 

(さあ、こい加賀!この一球で追い込んで次で金剛を仕留めるぞ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・ビンゴッ!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「打った―!真ん中低めのSFFを美しいセンター返し!!4番金剛、さっきとはうって変わってコンパクトなスイングでタイムリーヒット!!ウィングス先制!!なおもランナー1・2塁!!」

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