「雷・電!!野球をしましょ!!!」
部屋に戻って開口一番、暁の誘いは響き渡る。
いきなりの宣言に顔を見合す電と雷だったがなんとなーく、2人も同じような考えをしていたのだろう。
「ええ、いいじゃない!やりましょ!。」
「私も賛成なのです。」
そうと決まれば善は急げよっ!と。
姉妹2人の手を引き暁は部屋をでる。向かう先はどこなのか。
この鎮守府において、野球といえばまず真っ先に思い浮かぶ人物。
俊足巧打の凄いやつ。
「提督っ!!野球がやりたいわ!!!」
□□□
バンッ!!
と、大きな物音と共に入り口のドアが開く。
それとほぼ同時に暁の声が部屋中に響いた。
「提督っ!!野球がやりたいわ!!!」・・と。
びっくりした。
ああ、めちゃくちゃびっくりしたよ。
隣で雑務をこなしている叢雲もきっとびっくりしているだろうと視線を向ける。
表情はいつもの通り涼しいまま、特に気にすることもなく仕事を捌き続けている。
・・・微塵もびっくりしてないな。
やっぱ艦娘は大きい音なんかは戦場で慣れきってるんだろうか。
「艦娘でも大きい音、苦手な子は居るわよ。」
「・・・俺の考えてること、よくわかったな。」
付き合いが長いからか?
彼女は偶に俺の思考を読んで会話をすることがある。
初期艦はどこの鎮守府もこんな感じなのか・・?
「私の勘が鋭いんじゃない?」
「逆に俺が叢雲に思念でも送ってるのか?これ。」
手元の資料から目を離すことなく、ごく自然に会話?を続ける彼女に若干の恐怖を抱きつつ、ようやく来訪者に目を向ける。
少し配慮に欠ける登場だったからな。そこは注意しなくちゃな。
「もう少しドアは静かに開けるんだ、暁。あと部屋に入る前はノック、返事があってから部屋に入るように。そんなんじゃ一人前のレディは遠いぞ。」
「え、あ、はい、あのっ、ごめんなさい・・。」
・・・きつく言い過ぎたか。
暁があっという間に縮こまってしまう。
しまったな、怒ったつもりはないんだが。
「顔が怖いのよ、顔が。もっと表情に気をつけなさい。」
「当然のように俺の心と会話をするな。」
怖いよ、いや本当に。
・・まあいい、今は暁だ。誤解を解かなければ。
「あーいや、怒ってるわけじゃないんだ。今度から気をつけてくれればそれでいい。だからそう落ち込む必要はないよ。」
「え、ええ。ごめんなさい。今度からは気をつけるわ。」
若干持ち直したな。よかったよかった。
しかし表情か・・。最近は作戦行動以外の会話も増えてきてるし、今度から気をつけるか。
「分かればいいのよ、分かれば。」
おい。
「分かった、分かったわよ。考え読むのはやめるわ。」
「やめてないだろ、というかなんだその能力聞いてないぞ。」
なんなんだ、この艦娘は。
改二改装は読心術がおまけで付いてくるのか。
・・・まあいい。
「いいの?」
「よくないわ!けどこのままじゃ話が進まないんだよ!」
「カッカしないの、もう若くないんだから。」
クスクスと笑いながら軽くあしらう。
なんてことだ・・。上官に対する態度じゃない・・・!
・・っふぅ。
いかん、このままじゃほんとに前に進まない。
目の前に視線を移すと案の定、第六駆逐隊は困惑している。
まあ、傍から見ればこの会話は分かないよな。
気を取り直して目の前に向き直る。
とりあえず本題へ入ろう。
「すまない。それでなんだったか・・。そうだ、野球がしたいんだってな。」
「そ、そう。野球がしたいの、司令官!」
そういって胸を張る暁。
ふむ、野球か・・・。
「また突然どうしたんだ。」
「鳳翔さんに貸してもらったDVDを見たの。司令官が出てる試合のやつ。・・っていうか司令官野球選手だったの!?いきなり出てきてびっくりしたわよ!」
「びっくりしたのです。」「なんで言わなかったのよー。」「Это предательство адмирала」
やいのやいの・・・。
一斉にしゃべりだすと途端に賑やかになるな。
あと響はロシア語をやめてほしい、さっぱり分からん。
「ああ、経歴に関しては申し訳ない。着任当初は色々勝手がわからなくてな、それどころじゃなかったんだ。」
「まあいいけど・・・。そう、それでね。提督の出てる試合見て私たちも野球した言って思ったの。」
なるほど、またこのパターンか。
鳳翔さんは一体何を考えているのか・・。
彼女が着艦してからというもの野球人口は爆発的に増加している。
今では4.5チームくらいできる人数がいるんじゃないか。
うーん、わからん。
少し考えたが答えは出そうにない。
とりあえずは目の前の暁に答えを出そう。
「いいんじゃないか、野球。」
「いいの?」
「ああ、幸い設備も道具も困らないだろうし。俺も少しなら力になってやれるしな。」
やったー、と。
わいのわいの盛り上がる第六駆逐隊。
ふと、横に目をやると叢雲もどことなくうれしそうで。
「どうした叢雲。嬉しそうじゃないか。」
「・・・思考盗聴したわね?」
「お前が言うかそれ。」
自分を棚に上げて何を言っているんだか。
でもやっぱり嬉しいんだな。
「やっぱり同じ趣味持ちが増えるとうれしいもんか。」
「ええ、話も弾むし。そもそも話す機会も増えるじゃない?私は話すの好きだから、それもあいまって嬉しいわね。」
仲良いことはいいことだ。
一見クールでも中身は外見年齢相応なんだろうな。なんか安心したよ。
・・・ん?にしては俺との会話は少ないような。
「執務中だからといって私語厳禁なわけじゃない。俺にも色々聞いてくれていいんだぞ?」
「・・・司令官の話は分かりにくいからねー。」
うーん、聞かなきゃよかったな。
・・・今度からはもう少し考えて話そうかな。