細々と書いていきますので気が向いたらご覧ください。
「打順は先頭にかえって1番“時雨”」
「シミュレーションの通算成績では得点圏打率が.389と非常に高い数値を出しています。ここはタイムリーも期待できるのではないでしょうか!」
「通算で4割近いのは信頼できる数値だな。」
「加えて彼女はクレバーな選手だ。漠然と何が来るのか待つのではなく、しっかりと狙い球を絞ってこの打席に臨んでくるはずだ。不用意に甘い球を投げると一発で打たれる危険も高いだろうな。」
「バッテリー側はただ投げるのではなく一球一球意味のある投球をしてほしい。」
6回の表、ワンアウト2塁で1番からの上位打線。ビックナインズはここで少なくとも同点に、ウィングスは加賀の出来を見る限り追加点はあてにしないほうがいい。何とか0に抑えて逃げ切りたいところだが・・・
「なんにせよ、ここからの攻防はこの試合の山場だ。ここで流れを持っていかれるとそう簡単には引き戻せないだろうな。」
「この試合の分水嶺ってことですね!」
「そうだな。」
(バッターは時雨ちゃん・・。)
マスクを被る翔鶴は時雨を打ちとる考えを巡らす。
シミュレーションのデータももちろん確認済みだ。その結果翔鶴の考えは・・・
(厄介ね。)
初見だったということもありZライジングはビックナインズ相手にここまで猛威を振るってきた。
初回のピンチもZライジングで押して行けたからこその無失点だ。
しかしさっきの対戦で時雨はZライジングに対応を見せた。今回もごり押しが通用するかといわれると
自信をもってイエスとは言えない。
(この場面でZライジング以外で武器になる球種は・・・スライダーくらいよね。)
他にも球種はあるが、瑞鶴はそもそもコントロールがそこまでよくない。加えてスライダー以外の球種は加賀のようにキレがあるわけではない。
そのため考えられるのは大きく外れてカウントを悪くするか、甘く入って痛打を食らうか。
そのどちらかの可能性が高い。
(かといってZライジングとスライダーだけでは抑えきれるとは思えない。)
つまりどこかで得意の球種以外も混ぜていかなければならないということになる。
(使うタイミングは大事になってくる。)
(時雨ちゃんの考えをある程度読んだうえで狙われない場面を見極める必要がある。)
ここが分岐点になることは翔鶴も十分理解している。
初回こそ先制をしたがそれ以降は加賀に抑え込まれている。
試合の流れ自体は決して良いとは思えない。
(ここでタイムリーは流れがイーブンになるのではなくビックナインズ側に持っていかれる)
特にここで時雨に出塁を許せばその先に待っているのは夕立だ。
2打席とも当たりがいいためランナーをためた場面で迎えるのは避けたい。
(・・・様子見はなしよ瑞鶴。最初からトップギアで抑えにいく!)
打席に入る時雨はあまり緊張していなかった。
確かに、自分の結果次第でこの試合の流れが左右されるのはわかっている。
(この場面はビックナインズのチャンスでウィングのピンチだ。そこを忘れちゃいけないよね。)
そう。あくまでこの場面は時雨から見れば膠着した試合を自分たちの側へ持ってくるチャンス。決してピンチではない。「もし自分が凡退したら」なんてマイナスは考えなくてもいい。
(何を狙えばタイムリーになるのかな。)
(Zライジングは正直まだ難しい。)
瑞鶴の球種はある程度把握できている。コントロールも織り込み済みだ。
それを踏まえた瑞鶴の印象は・・
(Zライジングとスライダー以外はゾーンにくればミートできる。)
(スライダーも狙えば打てないことはない。)
(だったら狙うはスライダーかな。)
この打席ももちろんZライジング中心の組み立てだろう。
だがそれだけで打ち取れるとは翔鶴も考えていない。
「そんなに時雨は甘いバッターではない」というのが翔鶴の持つ時雨への評価だ。
(だけどZライジングをあからさまに狙わないとグイグイ来られるかもしれない)
(それは正直困るなぁ)
しかし、実際のところ翔鶴が思うよりも時雨はZライジングに対し攻略法を見出してはいない。
仮に打席で翔鶴に見抜かれることがあれば、そこからはZライジングのごり押しが待っているだろう。
(・・・この場面で手を抜いてくるとは思えない。)
(多分瑞鶴の持つ最大手でくるはず。)
(・・・ハッタリかますのも大事だよね。)
「時雨、初球を思いっきり引っ張り痛烈な打球!しかし大きく切れてファール!!」
「今のはZライジングでしょうか?」
「ああ。この場面で思い切ったスイングだった。」
「大きく切れたが打球自体は強い。時雨は初球にZライジングを狙っていたな。」
(っ!初球のZライジングを狙ってきた。やっぱり時雨ちゃんはだいぶ対応してきている。)
そう思う程度には芯で捉えられた当たりだった。
打球の勢いが今までとは違う。
(このままごり押しは難しい。)
(Zライジングとスライダーを軸に組み立てないと・・。)
マウンドの瑞鶴は一つ息を吐いた。
(いい打球だったけど・・・所詮はファールだし。)
(フェアゾーンにいい当たりは飛ばされてない。)
(疲れは出てきたけどZライジングの切れも衰えてないし。)
(Zライジングはまだまだ時雨に通用する!)
強い当たりを打たれようと、どれだけ芯に当てられようとファールならば気にする必要はない。
攻略されているのならフェアゾーンに飛ぶはずだ。
(・・あんまり連続で痛打されるとファールでも怖いけど。)
(それでもここはZライジング中心で押せるはず・・!)
切りが悪い終わり方になってしまいましたね。
※若干修正しました。