元野球選手が鎮守府に着任しました。   作:ポンセ

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幕間 『島風ちゃんとフルスイング』 ⑤

こんにちわ。島風だよ。上機嫌な島風だよ。

 

ん?なんで上機嫌かって?そりゃぁもう、ね。

あの皆川選手にバッティングを教えてもらえるんだから。

上機嫌にならないわけにはいかないよ。

 

 

ん?叫んだ後どうなったって?

そりゃぁもう、ね。めっちゃ怒られたよ。すんごい怒られた。

昨日司令官に怒られたよね。あれの10倍は怒られたね。うん。

司令官にはいいけどお客さん、しかも初対面の人に向かって指差しながら叫ぶのは失礼だって。

そこに関しては私も悪いと思ってるよ。

でも司令官も最初に言っておいてほしいよね。

最初から知ってれば30分前には玄関で待機してたよ。間違いなくね。

 

 

 

ん?今は何してるって?

今まさにグラウンドへ向かってるところだよ。

今日ならバッティング見る時間取れるんだって。上々、上々の上だね。

 

 

司令官のオタンコナス(レディ'sジョークだよ。)とは違って本物のホームランバッターだからね。

きっと私の抱えてる問題も解決してくれる。うん、してくれるね。

フフン♪次のシーズンは何本打てるかな~♪

 

足取りが軽い。今なら音速も超えられるよ。

それだけ嬉しいってこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「フッ!」

 

バットを最速で振りぬく。

バッティングケージの横には憧れの野球選手が。

私のバッティングを見ている。

 

 

なんだか照れくさいね。

意気揚々とバッティングに乗り出したものの結構淡々と進んでるからかな。

どうなんだろ。結構良い打球飛ばせてると思うんだけどな。

 

日本屈指のスラッガーから見たら大した事ないのかな。

まあ比べちゃったらないか。

 

一抹の不安は打球に乗せて弾き飛ばす。

今はただ出来る事を全力でやりきるだけだよ。

不意に、後ろから声が飛んできた。

 

「よしっ。じゃあ次は変化球も混ぜていくよ。いいかい?」

 

 

うっ・・。

私も自分の弱点はよく把握している。変化球、苦手なんだよね。

でも大丈夫。スイングはしっかり出来てる。

 

変化球も頭に入れて構えなおす。

マシンの表示は「左投手 平均ストレート速度:148km 使用変化球:スライダー・フォーク・チャンジアップ」へ変わる。

む・・。結構えぐい組み合わせ。

左打席の私から見て逃げていく軌道を描くスライダー。

中々早いストレートに落ちる球種が2種類。

 

 

「緊張感を持たせよう。アウトになったら一打席終わり。これを10打席分、いまからやってみようか。」

 

「はいっ。」

 

 

つまり、皆川さんは私をアウトにするための配球をしてくるということ。

来た球を打ち返すだけじゃヒットは打てない。

一球ごとに考えないと。

 

 

 

島風は気を引き締める。

マシン相手とはいえ配球を考えるのは皆川本人。

絶対に打つ。小さくつぶやくとゆっくりと息を吐く。

 

 

(勝負事なら負けるわけにはいかないからね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「フッ!」

 

 

振りぬいたバットはボールを捉える。

飛んだ打球は痛烈な勢いを保ちライトの前へ落ちた。

 

 

現在5打席目まで終了している。

今のところは2安打。滑り出しとしては上々。

 

 

 

 

 

 

 

ストレートを狙った甲斐があったよね。

ライト前へ落ちる打球を見て息をつく。

これで5打数2安打。打率は単純に計算して.400

 

その前の一本は1打席目の真ん中低めストレートを右中間に。

大体2ベース、私だったら3ベースもいけるかなって感じ。

そして今のもストレート。インコース真ん中目に入ってきたかな。

 

良い結果なんだけどね。

なんだか不気味なんだ。

多分この5打席は私がどこまで打てるか確認してたんだと思う。

 

特に1.2打席目はそんな感じがしたな。

後もう一個、なんか違和感あったんだけど今のでわかったかも。

 

いやね。マシンって操作する人の指定したコースにしっかり投げきってくるんだ。

だから基本的に厳しいコースを指定するとガッツリ厳しいのがくるの。

 

だけどこの5打席は甘い球もそこそこ来てる。

多分、皆川さんは本気でアウトにしてやろうとは思ってないんだと思う。

じゃあ何を思ってるのかって言われると分からないんだけど。

 

イメージ的には球団のエース格じゃなくてどこにでもいる4番手くらいのピッチャー。

甘く入ってドカンッ!っていかれるピッチャーって感じがするね。

 

 

「6打席目、いくよー。」

 

「はいっ」

 

 

甘く入ってくるならやりようはある。

追い込まれるまでは難しい球には極力手を出さず、甘い球を一撃に仕留めるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2-2の平行カウント。

1球目のスライダーは外角低めにばっちり決まってストライク。

2球目は同じコースのストレートを打って1塁線ギリギリのファール。

3.4球目のチャンジアップはベースの前でバウンドして連続ボール。

5球目に外に外れていくスライダー、なんとかカットできたよ。

 

そして次が6球目。

多分ストレートはこない。少なくとも次はね。

チェンジアップもないと思う。私の考えが正しければこの試合のピッチャーはチェンジアップがコントロールできてない。

っていう設定なんだと思う。

よりリアルな対戦を。それが皆川さんのコンセプト。

 

2球連続で大きく外れたボールをこのカウントで要求するキャッチャーは中々いないよ。

そして私はストレートをしっかりと捉えてる。

2球目の打球ももう少しでヒットだったし。

 

なら残るはスライダーかフォークか。

フォークは前の5打席でも見てる。若干高めに浮いてたかな。

唯一しっかりコントロールできてるのがスライダー。

これだけは外角低めにしっかり投げ込まれてるし。

 

う~ん。やっぱりスライダーを念頭に置くべきか。

次点でフォーク、チャンジアップは頭から外してもいいかな。

 

 

 

考えをまとめてバットを構える。

 

 

「・・・。」

 

 

その姿を見て皆川はマシンを操作する。

(ホームランをたくさん打ちたいならこれが出来ないとね。)

 

 

そしてマシンは唸りを上げる。

6球目が投じられた。

 

 

球種はスライダー。

コースは外角低め、ではなく。

 

 

(っ!!肩口から真ん中に入ってくる!!)

 

 

 

 

絵に描いたような失投だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「フッ!」

 

 

最速でバットを振り切る。

狙っていたスライダーがここで甘く入ってきたのだ。

島風としては願ってもない球だった。しかし・・。

 

 

(しまったな~。)

 

 

絶好の機会ではあったがその分大きな打球を打とうと欲も出たのだろう。

スイングに余計な力が入ってしまう。

結果、バットの上っ面で擦るような形に。打球は力なく上がりショートのほぼ守備位置に落ちる。

ショートへのポップフライだ。

 

 

 

 

 

 

 

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甘かったな~。

今のは甘かったよ~。

 

悔しい、バットを素直に出せれば簡単に芯で捉えられたボールだったよね。

今のは正直ホームランボールだった。

 

 

 

チラッと。皆川さんのほうを振り返ってみる。

 

 

「・・・。」

 

 

う~ん。雰囲気は変わってない。結構ポーカーフェイスな人なんだね。

まあ、あと4打席あるし。次は絶対逃さないよ!!

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