ガメラ〈4〉 ~再誕する神~   作:ジュンチェ

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旧京都 前編

「君の父上、兜賢造氏は地球エネルギー学においてもかつては日陰的で研究者が少ない『マナ』についての研究者だった……これは無論、息子の君も知っているだろう?」

 

「…」

 

兜と倉田は旧京都へ続く山道の道中を一昔前なレトロチックな車で走り抜けていた…。運転は勿論、倉田で黒に光る愛車は彼のお気に入りらしく、よく手入れが行き届いている。その運転手は助手席に座る偉人の息子に毒々しく陽気に話しかけていた。

 

「なら、何故…父上が、いや『マナ』という存在が注目されるようになったかわかるかい?」

 

「…あれっすよね。ギャオスが増えるのに関係があるとか無いとか……」

 

「40点!君のその答はアバウトすぎる!」

 

こんなやりとりが先から続き、精神が普通なら磨耗していきそうだが綾奈が何かを自分に隠そうとしているなら気になることこの上ない。ましてや、世界を今や揺るがすギャオスとガメラと関わるなら尚のこと……

多少のことは我慢せねば……

 

「ギャオスは単体の個体でも、自力で生殖して繁殖できる。だが、いくら環境が整ったからって普通はネズミやゴキブリ以上の繁殖をあの巨体でそうそう易々と出来はしな~い。それくらいは君には言うまでもないか……」

 

 

ギャオスの生態…特に人類にとって脅威とされるのが繁殖力だ。現存するギャオスの個体は全てがメスだが繁殖期になれば単体で卵を産み繁殖が可能なのである。一方で地球の環境バランスが悪化したために、大発生したとされこれも自然の力の象徴である『マナ』が減ったからだとか……父が言っていたの追憶する兜。

 

「要はね、ギャオスの弱点は地球のエネルギー…マナってことだ。だから、ギャオスは長い間…卵のままで眠り続けた。これを解明した君のお父さんは限定的だが、マナの流れをコントロールする装置『ガメラの遺産』を造り上げたのさ!」

 

「…ガメラの遺産?どういうことっすか?」

 

「ガメラはマナの塊……そして、それをエネルギーに変えるまさに自然の『神』。その血肉はマナを操るには最適な物質なんだよ。そして、これを君のお父さんは科学と組み合わせてギャオスの撃退装置を造り上げたのさ。ほら、あそこにも見えるだろう?」

 

促されて視線を横にずらせば黒い杭のような搭が見えた。兜はちゃんと見たことは今までないが、あれが素晴らしい父の産み出した努力と栄誉の結晶なのだろう。

 

「ギャオスはマナの流れが集中する所を嫌う。この性質を利用した装置。あれのおかげで君のお父さんは名声を手にし……ガメラは死しても尚、人類のために戦わさせられることになった。クク……」

 

「…」

 

この黒い巨搭は確かに多くの人を救ってきただろう。実際、家庭にあるような虫よけの薬のように効果はあり、この付近はギャオスの縄張りに近いこともあってか…設置されたとみて間違いない。ただ、兜からしてみれば人を守る砦の壁ではなく皮肉的に父が自分を見下しているようにしか見えなかった。

 

 

……その時、不意に倉田はハンドルをきる。ハッと我にかえる兜は運転手が旧京都の道から逸れていることに気がついた。

 

「ちょっと!?何処いくつもりですか!?」

 

「…すまないね、少し寄りたい所がある。」

 

相変わらず倉田の真意ははかりかねないが、理由がないことはまずしなそう…そう、思いたい。とにかく、この男と長くいると自分の寿命が吸い上げられそうな気分になる兜であった。

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

 

「……旧京都?」

 

「なんだ、私はてっきり君の助手か何かかと……」

 

青白い蛍光灯が光る研究室にて賢造により、兜が旧京都に向かったと知る綾奈。父はてっきり彼女が関連する事柄かと思いこんでおり、教師からしてみれば何の話かとわけがわからない。

 

しかも、よりにもよって何故に旧京都に……?

 

「私は何もきいていません。彼も、今日は体調が悪いとしか……」

 

「全く、奴め。帰ったら事情を問いただします……。どうせ、ろくなことじゃない。」

 

賢造は多分、兜が羽目を外して愚かな行為をしているのかと考えている。決めつけとは本来、科学者にとってはあってはならない行為だろうが今回は父親の立場としてだろう…だから、綾奈は本来するべき話をすることにした。

 

「まず今はそこは置いておきましょう。まず、例のギャオスの新種についての話ですが……」

 

 

 

新種ギャオス……この場においては龍種《ドラゴ》のことである。翼が前肢のように特化し、そこいらの個体よりも何倍も高い戦闘能力を持つ謎の存在。先の刻にガメラのDNAを何故か持つことがわかったが、理由もまた謎。だが、情報を得て吟味した結果…それを賢造に報告するに至ったのだ。

 

「ガメラのDNAを持つ…ということは先日お話した通りです。他にも写真等の資料と重ねた結果…ガメラの特性を取り込んだ種と見ても良いと思います。」

 

「…まさか。確かにガメラはギャオスに喰い殺されたと言われているがギャオスの細胞の性質上、マナを直接エネルギーに変換するガメラの細胞は……」

 

「マナの満ちるガメラの細胞はギャオスにとって毒といっても他言ではない。それは10年前に兜博士…貴方が証明したことです。ですが、10年です……10年もあればあの繁殖力を誇るギャオスならば……」

 

「…まさか。」

 

賢造は彼女の言い回しからある予想をした。彼には生物に関しての知識も山程、頭の中に入っている。その中で彼はゴキブリといった存在を思い出した…。あの家庭の害虫王はギャオスとは違い有性生殖…要は雌雄の遺伝子の交配によって子を残すのだが、爆発的な繁殖力はギャオスと肩を並べられるだろう。そして、遺された子は親の世代では死に至る殺虫剤などに耐性を持つ個体が産まれることもある。

 

それが、もし……ギャオスの場合だとしたら?

 

 

「……世代交代を経た個体が、マナへの耐性と同時にガメラの能力を体得したというのか!?」

 

彼女は黙って頷いた。なんということだ……つまりは『マナ=ギャオスの弱点』という方程式が崩れることに他ならない。ある程度、マナをほんのちょっぴりだけ扱う術を古代の遺産《ガメラ》から手にして10年もの間…見えざるバリケードを創ったのに。マナの壁はもう通じない……

………不可視なる人のゆりかごたる防壁は崩れさったも同然であった。

 

「…くそっ。何故だ…何故、気がつかなかった!!私としたことが…!」

 

「落ち着いて下さい博士。これから私たちの為すべきことは手遅れになる前に……マナに耐性を持つなら本能的にドラゴは……」

 

 

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

 

 

 

その綾奈の危惧と同じ頃……人気の無い山林を暗闇の夜空を引き裂くように飛翔する影。ドラゴは血ばしる眼光をマナの集まる黒い巨搭に向けていた。感じるのは『仇敵』の気配……

それを巨搭から感じたドラゴは口を開いて超音波メスを発射。

 

 

「ギャァォォ!!!!!!」

 

キィィィン!!!!

 

 

直後、防壁の役割を果たしていた巨搭は両断されて爆発。見えざる壁と共に炎の中へ崩れ落ちていく……

 

「ギャオ!ギャオ!!!!」

 

その上を嬉しそうに笑うドラゴは1度、弧を描くと遠目に煌めくビル群を確認し…弾丸のように飛翔する。

その背後を既に、遅れた有り様で戦闘機2機が飛来して後を追う。

 

「くそっ!ゲートがやられた!?ちぃ……このままだと街が!!」

 

「…オスカー2、迎撃するぞ。」

 

 

 

このまま、ドラゴの侵攻を許すわけにはいかない。どんな種といえど、ギャオス……人の集まる街にいけば凄まじい数の犠牲が出るだろう。新種だろうとなんだろうと構うものかと、パイロットたちは機銃に火を噴かせる。

 

「グルルル……」

 

それに、気がついたドラゴはかすめる弾丸を背後に空高く舞い上がった。戦闘機もそれを追い、機首を上に向けてジェットを燃やす!

 

「ギャァオ!!!!!」

 

やがて、戦闘機が鬱陶しくなったのかドラゴはある程度の高度になると、雲の中へと姿を消す。すぐに、パイロットたちはレーダーやオペレーションを確認するが…怪鳥の反応を捉えることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、すっかり暗くなりましたけど……まだ着かないんすか、旧京都?」

 

また時を同じくして、山道付近の山小屋のような売店で停車する兜と倉田。かれこれ数時間、車の中に揺られていたわけだが…かつて、ガメラとギャオスの激闘が繰り広げられた場所だけに道路が寸断されていたり、ギャオスの縄張り付近や自衛隊の巡視を避けたりと思いっきり遠回りに遠回りを重ねていた。

そんな道中にねぐら代わりにと立ち寄った売店を物色する倉田に兜は文句を垂れた…。まあ、倉田は聞いちゃいないが……

 

「さて、少し下に降りよう。彼女も多分そこだ。」

 

「…彼女?」

 

相変わらず、マイペースで正直うんざりなところだが着いてきてしまったのが運のツキ。今度は人探しをはじめたらしい変人に渋々ついていく。進むのは荒れ果てた…多分、観光客とかが徒歩で歩くために造られたであろう下り坂の小道。木々が密集して熊かそれに準ずる獣が飛び出してきそうなルートだが、生憎…ギャオスに追いかけられた兜からしてみれば皮肉にも危機感とか恐怖といった対象にはならなかった。

 

ただ、気になるといえば屋久島の原生林さながらになっている景色に奇妙な小山ぐらいの隆起しているような地形が散見できるくらいか……

「君と歳は同じくらいのはずだ。ある種の吸い気な人間だよ。」

 

つまり、お前と同類というわけかと喉から出かけたが兜は無理やり腹の底に呑み込んだ。なんせ、かつては人がいた道であろうと足場が土やら植物のツタやらで地味に体力と精神力をすり減らしてくる。山登りの装備も経験も無い兜からしてみればしっかりと前に進むために変人畜生に傾けるそれらすら惜しかった。

 

「……さて、ここらへんかな。」

 

それから、暫くして道なき道から丸石が転がる川辺に降りてきた倉田。兜も背中にナニカもぞもぞとする感覚を覚えつつも、彼に続くと驚いた。

 

「…コイツは」

 

川原に無造作だが大きく転がっていたソレ。穴が空き、長い年月のために腐敗がみられるも間違いない……

 

「……ギャオスの…頭?」

 

おぞましかった頃の面影は今尚、生きるが朽ちかけたこれは間違いなく白骨化したギャオスの頭蓋。人など一呑みに出来たであろうこれに目を見開く兜に倉田は笑う。

 

「ここはガメラとギャオス…人類が死闘を繰り広げた部分のはしっこだからね。ここから先では珍しく無いよ。」

 

「…」

 

ここで、ありありと実感させられる…文字だけでは伝わらない感触。10年前…日本で最大の災禍が繰り広げられ、人とガメラが抗った場所なのだと…

そして、目の前の残骸は戦いの中で命を失い…その肉身は無くなり残った骨からは苔が生え、またこの世から形を無くそうとしていた。

 

「悪魔《ギャオス》でも………自然に還るのか。」

 

兜はふと……そう呟いていた。これが今、人の種を脅かす悪魔の成れの果てなのである。ただ、悪魔もまたこの地球という星の中で産まれた『命』であり、死をもって土へと還っていく。

この時、はじめて兜はギャオスの命というものを意識したのかもしれない。

 

「…」

 

でも、ここで感傷に浸る暇は無い。倉田も川原を進んでいき、丁度近くに剥き出しとなっていた地層に手をかける。急いで合流しなくては取り残されてしまいそうだ……

 

 

…そう、足の向きを変えた時……

 

 

「…が!?」

 

 

突然、兜は背後から突き飛ばされる衝撃を覚えた。同時に砂利だらけの地面に投げ出されたと共に、何者かがズシリと馬乗りにされるような感覚を覚えた。

 

直後……背中にいる何者かを認識しようとした彼の視界の端に捉えたのは自らに向かって走る凶刃であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく…

 

 




倉田さん書くの難しすぎるw w

やはり、ガメラ二次は書いていくのは難しい…
そして、ガメラが出ない。ギャオスばかりでガメラが出ない(笑)

更新は作者の就活や他作品更新もありましてガメラだけに亀ですが、お付き合いよろしくお願いいたします。
感想お待ちしてます。

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