ダイヤモンドメイカー、ラフ、ラフ、ラフィン。   作:囲村すき

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13作目です。夕焼けを見つめるみんなの話。


夕日

 

 

 

 

 あなたを理解したい。

 

 あなたの気持ちを知りたい。

 

 あなたは知られたくないと思っていたとしても。

 

 それが正しいとか間違っているとか、そんなのは抜きにして。

 

 

 

 あの時、あの瞬間、私はあなたを理解したかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕日が差し込むオレンジの教室、男子生徒が一人、窓際の席に頬杖をついて座っていた。

 

 男子生徒は長身でスタイルが良く、柔らかな金髪の下には端正な顔がのぞく。

 

 廊下から半ば偶然に目撃したあたしは、戸をあけて声をかけようとして止める。

 

 誰にも聴こえないように息を呑んだ。

 

 一枚の風景画のように、葉山隼人は夕焼けの中に座っていた。

 

 壊してはいけない。

 

 完結している。

 

 ふと、そんな思いが胸に忍び寄る。

 

 同時に酷い無力感を感じた。でもあたしは無理矢理それを押しのけて、勢いよく戸を開けた。だってそんなはずないから。隼人は、隼人はいつだって――――

 

 

 

 

 

「隼人、ひとりでなにしてんの?」

 

「…ん、優美子。うん、ちょっとね」

 

 

 

 

 

 部長会議があってさ。ちょっと遅くなったけどこれから部活なんだ。

 

 隼人はいつもの笑顔をふわっと浮かべて、そう言った。

 

「ああ…うん、そうなんだ」

 

「…え、どうした優美子。なんかあった?」

 

「え?え、ううん、べつになにも?」

 

 隼人の気遣わしげな視線に、あたしはなんだか急に緊張して声が上ずった。

 

 今は姫菜も戸部もいない。あたしと隼人、二人きりだ。

 

 心臓の音が聴こえる気がする。

 

 髪、変じゃないかな。

 

 メイク、さっき直したから大丈夫だよね。

 

 うん、よし。

 

 あたしは息を吸い込んで―――

 

「はやと――――」

 

「じゃあな、優美子。部員が待ってる」

 

「―――っ、うん…」

 

 荷物を持って隼人は立ち上がった。夕日を背に受け爽やかな笑みを浮かべた隼人は、軽く手を挙げるとあたしの横をすり抜けた。

 

 扉の前でもう一度にっこり微笑み、隼人は一度も振り返らずに廊下に出て行った。

 

 行き場を失ったあたしの言葉は胸のあたりに戻っていき、そこで静かに溶けていった。

 

 溶けて、蒸発して、消えていった。

 

 その残り香だけを吸って、あたしは少し咳き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――え、どうした優美子。なんかあった?

 

 

「隼人こそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けた。

 

 ずっと同じ体勢を取っていた上半身を起こした。軋む。

 

「あたた…」

 

 なんだか肩の凝りがひどくなったような気がする。冷えたかな。

 

 目の前の食卓にはファッション雑誌が広げられ、傍らにはコーヒーカップとチョコレート菓子。一息つこうと思ってそのまま寝てしまったようだった。

 

 ゆっくり肩を回しながら立ち上がって、見慣れた部屋の様子を見渡す。完全にあたしの好みでコーディネートしたリビング。将来を見据えて思い切って2年前に引っ越した、築2年、3LDKのマンションの一室だった。子供が大きくなればだんだん窮屈になっていくのかな、なんて想像している。

 

 真尋(まひろ)はフローリングの床に寝転がって、スケッチブックにクレヨンで何か絵を描いていた。一生懸命にクレヨンを使っている姿が微笑ましい。

 

「おはよう、真尋」

 

「えー、おはようじゃないよ、こんにちはだよ」

 

「お母さんはおはようなんだって」

 

「へんなの」

 

 真尋はスケッチブックに夢中でこちらを向こうとしない。あたしは真尋の傍に座り込む。

 

「何それ、花火?」

 

「ちがうよ。太陽だよ」

 

 え、とスケッチブックを覗き込む。5歳の真尋が描いた太陽は、あたしの想像する形とは程遠かった。画用紙の中央から全方向に複数の黄色、橙、赤の線が引かれている。

 

「太陽ってこんなんじゃないの?」

 

 あたしは赤色のクレヨンを取り上げて、別の画用紙に円を描いてその周りにトゲトゲを描く。赤色のウニみたいな形だ。

 

 見ると、真尋は口をとがらせて不満げな様子だった。

 

「だって、ぼくこんなの見たことないもん」

 

「…あー、うん、まあ、確かに」

 

 そう言えばなんでみんなこう描くんだっけか。

 

「お空見ても、どこにもないよ、こんなの」

 

 我が子ながら鋭い、と思った。同時に、我が子ながら何故そんな細かいことを、とも思った。

 

「真尋は賢いなァ」

 

 さらさらした髪をくしゃくしゃすると、真尋はくすぐったそうに笑った。

 

「つか、真尋、にーちゃんは?」

 

「つか、ってなあに?」

 

「つか―――みどころのない奴め、の略。で、にーちゃんはどこいった」

 

「…???…にーちゃんはお外に行ったよ」

 

「外?公園?どこ行ったし…」

 

 真尋のあいまいな表現に少し不安を覚える。大方公園だとは思うけれど…買い物に行きがてら、公園を覗いてみるか。壁に掛けられた時計を見る。まもなく午後4時と言ったところ。もう少しすれば日は落ちてしまうはずだ。休日出勤の夫が帰ってくる前に食事の用意をしなくては。

 

 あたしは立ち上がって、いつも買い物に使っているマイバッグを取って来て財布と携帯を入れた。

 

「したらお母さん買い物行ってくるね。真尋も行く?」

 

「ぼく、今はお絵描きのキブン」

 

「……あ、そ」

 

 真尋は園児のくせにたまにこういった可愛くないというか妙にマセたところを見せる。

 

 誰に似たのだろう?あたしではないのは確かだった。兄の方も弟の方も、あたしにはあまり似ていない。あたしの要素はこの子らのどこにあるのだろう?…顔?

 

「じゃ、いってきます。ちゃんとお留守番してなよ。誰か来ても鍵開けちゃだめだかんね」

 

「わかってるよ。いってらっしゃい」

 

 真尋は返事をしつつも、目は画用紙のまま、黄、赤、橙、それから白の線を描き続けていた。

 

 あたしはつっかけを履いて外に出て、鍵を閉めた。なんとなく太陽の位置を探すと、一応、確認はできた。あの西の空に見える白い強烈な光が太陽だ、と思う。確証はないけれど。

 

 少し自信がなくなってきた。

 

 眺めるには眩しすぎて、太陽の形を確かめることはできない。

 

 太陽は、見えないもの、なのか、見えるもの、なのか。

 

 今まで思い出すこともなかったのに、妙な話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マンションから子供の足でも五分足らずの場所に、噴水のある大きな公園があった。遊具も豊富で屋根つきの休憩所もあり、この辺の小さな子供および奥様たちが集まる憩いの場所だった。

 

 犬の散歩をするおじいさん、ジョギングをする若者。くたびれた様子のサラリーマン。そして小学生くらいの男の子と女の子の集まりが二つほど。

 

 一つは遊具の周りで鬼ごっこをしているグループ、もう一つは、テーブルベンチに集まって携帯ゲームをして遊んでいるようだった。鬼ごっこはともかくもう一つのグループは健全なんだか何だかわからない。

 

 あたしの探していた男の子は、どちらにも属さず離れたところのベンチに座っていた。隣にはあたしと同年代くらいの女性が座っている。二人は何か話しているようだった。

 

 状況が読めなくて、あたしは近づいて行った。

 

千尋(ちひろ)

 

「あ、お母さん」

 

「外出るときはちゃんとどこ行くか言ってから行きなさいよ。お母さんは寝てたけど」

 

 言いつつ、あたしは千尋の目が少し赤いことに気づいた。泣いていた?

 

「ご、ごめんなさい…」 

 

 真尋(まひろ)の二つ上の兄千尋(ちひろ)は少し気弱なところがあって、今もおどおどと隣の女性とあたしとの間で視線を行ったり来たりさせていた。自然、あたしの目もその女性に向く。

 

 座っていた女性もあたしをじっと見つめていた。目が合うとにっこり笑いかけてくる。どこかで見覚えがあるような顔だ。

 

「こんにちは」

 

「…こんにちは。この子の母で…す」

 

 喋りながら気づく。

 

「偶然ってあるものですねえ」

 

 女性の顔のほころびが増す。記憶の中にあるものよりもいくらか大人びた笑顔。あたしも思わず笑った、でも多分苦笑いだったと思う。

 

「…ほんと、ね」

 

 ゆったりとした白のワンピースを着たこの女性はかつての後輩――――

 

 一色いろは、その人に間違いなかった。

 

「お母さんと、お友達?」

 

 千尋が尋ねる。友達では、ないかも。ま、いいか、友達で。

 

 

 

 

 

 

「いやーちょっと、すごくないですか?運命感じちゃいましたー」

 

「運命って…」

 

「三浦先輩、あ、もう三浦じゃないですね…優美子さんはここら辺に住んでるんですか?」

 

「…あー、あたしら最近引っ越してきたばっか。ちょっといったところのマンションなんだけど」

 

「そうなんですかあ。ご近所さんですね」

 

 一色、いや、もう一色ではないけれど、彼女は嬉しそうに笑った。なんとなく恥ずかしくてあたしは曖昧に笑った。名前が変わるっていうのはこうしてみれば不思議なものだ。

 

「公園が家の近くにあるっていうのは凄く良いですよね。キャッチボールができます」

 

 キャッチボール?なんでそこでキャッチボールが出てくるんだ、と思う。よくするのだろうか?

 

「いっし…いろははここではなにしてたの」

 

「散歩ですよ。夫と二人で」

 

「ああ、なるほど。じゃあその夫は?」

 

「ちょっと疲れちゃったって言ったらわたしをここに置いてどっか行っちゃいました。多分飲み物とか買ってきてくれるんじゃないですかね」

 

「え、自販機あっちの方にあるけど」

 

「あの人は最近よく慌てるんですよねえ」

 

 そう言ういろはの視線の先には、鬼ごっこをして遊んでいる小学生のグループだ。千尋もその中に入っていって遊んでいる。そっちに行って良かった、うん。

 

 でも千尋の目が赤かったのは少し気になった。もともと千尋は泣き虫ではあるけれど、最近特に沈みがちだったのは確かだ。鬼ごっこの様子からして、仲間外れにされていると言うわけでもなさそうだけれど。

 

「…あの、さ。あの子、千尋っていうんだけど」

 

「へえ、ちひろくんですか。凄く可愛いですね」

 

「あのー、何か言ってた?実は最近ちょっと落ち込み気味っていうかさ…」

 

「うーん、まあ、少し。というか、ほとんどわたしが一方的に喋ってましたねー」

 

「え、そうなん」

 

「でも良い子ですね、とっても。人の気持ちの分かる優しい子です」

 

 いろはの優しいまなざしは、走り回る子供たちに注がれたままだ。

 

「…そっかな。ちょっと気が弱くて泣き虫なとことかあるんだけどね」

 

 あたしの言葉を聞いたいろはは向き直って目を見開き、それからふきだした。

 

「あはは、じゃあまるきりお母さん似なんですね、ちひろくんは」

 

「…え…えー、そ、そっかなぁ…明らか旦那似だと思うけどなぁ。あの人も弱っちいし」

 

「いやいや、三浦先輩そのまんまですよー。泣き虫なとこも。え、照れ隠しですか?」

 

「は、はぁ?あーし別に泣き虫じゃないし!何言ってんの!?」

 

 心の奥がむずむずして、あったかくて、これはなんだろう。恥ずかしいのか、嬉しいのか、ちょっと判断がつかない。

 

 一色があんまりおかしそうに笑っているものだから、あたしもつられてふきだしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 色合いが変わる。

 

 徐々に、茜色へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、帰ってきた。たんぽぽ」

 

 いろはの声に顔を上げると、公園の入り口の方から男が走ってくるのが見えた。手にコンビニ袋のようなものをぶら下げている。

 

「たんぽぽ?」

 

「たんぽぽみたいじゃないですか?あの人」

 

「意味わかんないんだけど…」

 

「職業は宇宙飛行士です」

 

「いや、ほんと、意味わかんないんだけど」

 

 いろははくすくす笑いながら男に向かって手を振った。それからよいしょ、と力を入れてゆっくり立ち上がろうとする。あたしはさっと立ち上がって手を貸した。

 

「ほら」

 

「あ、すみません。ありがとうございます」

 

 走ってきた男がいろはの前で止まり、荒い息を整えようと膝に手をつく。

 

「どこまで行ってたんですか、もう」

 

「わ、わるい、ちょっと色々ありすぎて…妙な話ばっかりだ。いや、あとで話すよ。これ、お茶。具合、どうだ?気持ち悪くないか?ちゃんといろいろ準備してから行くべきだったな」

 

「大丈夫ですって。いろいろお話してました」

 

「お話?」

 

 男は顔を上げてあたしを見た。はて、と首を傾げ、かけていた眼鏡をくいっと上げる。そしてそれからびくりと体を強張らせた。なんでビビったし、今。

 

「えっ、三浦か?あ、もう三浦じゃないか…ゆ、優美子さっ、さん?」

 

「…ひさしぶり。べつに無理して名前呼びしなくていいけど」

 

「お、おう…いや、偶然ってあるもんだな。この辺に住んでるのか?」

 

「うん、まあ」

 

 どうしたらいいか分からなくてそっけなく答える。男があからさまに挙動不審なのが少し笑える。

 

「そ、そうか。まああれだ、公園が近くにあるってのは良いよな」

 

「キャッチボールができるから?」

 

「…え、なんで分かったの」

 

 きょとんとした顔を向けられる。なんでも何もないっての、まったく。

 

 いろはと同じで、この男も記憶より大分違って見えた。ちょっとカッコよくなったと思ったけれど、口には出さないでおく。それにいろはと同じでちょっとどう呼んだら良いか分からなくて困る。どう呼んでいたっけ、あの頃は。

 

「じゃあ行きましょうか。優美子さん、今度またゆっくり会いましょうよ」

 

「そうだね。あんたとは色々思い出もあるしね」

 

「あははっ、そうですね。あ、そういえば前にこの人、葉山先輩と仕事したらしいんですよ。二人で飲みに行ったって」

 

 それを聞いて、何故か自然と顔がほころんだ。

 

 …笑えるってことは、良い思い出だったってことだろうか?

 

「へえ、そう。今どうしてるのかな」

 

「さあ。どうでしょうね。千葉にいるらしいですけど」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

 顔を見合わせて、少女のようにくすりと笑い合う。隣の男が居心地悪そうにしているのがなんだかおかしかった。

 

「それじゃあ、また」

 

「うん」

 

 いろはが笑みを浮かべて手を振る。その隣で男はぺこりと頭を下げた。

 

「あっ、いろは」

 

「はい?」

 

「…何か月?」

 

 いろはは隣の男の顔を見て、それからあたしに笑いかける。

 

「6か月ですよー」

 

 その手は、優しく、優しくお腹を撫でている。大切なものが。

 

「そっか。あのさ、なんか分かんないこととかあったら…何でも言って。ほら、あたし、二回も経験してるし」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 茜に染まる中、二人はあたしに背を向け歩き出した。

 

 つながれた二人ともう一人の影は、間違いなく家族の形のシルエットだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千尋と手をつないで、近所のスーパーへと向かう。恥ずかしいよ、と千尋は手をつなぐのを嫌がったけれど、あたしは半ば強引に千尋の手を握った。ちょっと羨ましくなったんだ。

 

「今日のご飯、何が良い?」

 

「えーと、カレー」

 

「ぶぶー、今日は肉じゃがでした」

 

「え、クイズだったの?あれ?」

 

 首を傾げる千尋がおかしくて、あたしは微笑んだ。

 

 あなたを理解したい。

 

 あなたの気持ちを知りたい。

 

 あなたは知られたくないと思っていたとしても。

 

 それが正しいとか間違っているとか、そんなのは抜きにして。

 

 過去でもなく、未来でもなく、

 

 この時、この瞬間、私はあなたを理解したいと思うんだよ。

 

「あのねえ、千尋。お母さんは一生あんたの味方なんだから、何でも話しな?」

 

「…えー、うん」

 

 照れたように笑う千尋。そんな息子の頭をくしゃくしゃ撫でた。

 

 子供に物事を教えるにはあたしはまだ子供過ぎるかも、なんて未だに思うけれど。

 

 言葉遣いとか、まだまだ至らないところはたくさんあるけれど。

 

 でも、右手から伝わるこの暖かさは、何にも代えられない大切な宝物だと思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 太陽はその色を変えながら、ゆっくりと遠くに沈んでいく。

 

「夕焼け、きれいだねー」

 

 目をきらきらさせて、千尋は言った。ずっとそのままでいてほしい、と願わずにはいられない。限りあるN回目、何回重ねてもそのままでいてほしい。

 

「…うん、そうだね」

 

 あなたもどこかでこの夕日を。

 

 みんな、どこかで誰かと、この夕日を見ているのだろう。

 

 赤色、黄色、橙色、白色、茜色、バラ色、紫色。

 

 眺めるには眩しすぎて、太陽の形を確かめることはできない。

 

 太陽は、見えないもの、なのか、見えるもの、なのか。

 

 でも。

 

 どこまでも照らし続ける眩しい強烈な白い光も太陽で、

 

 寂しさと共に静かに色を消していく茜の夕焼けも太陽だ。

 

 そして、

 

 少女だったあたしは、どんな色の太陽でも好きだった。大好きだった。

 

 それだけは、ずっと変わらない思い出だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの、すみません。隣に座っても良いですか?

 

 ありがとう。少し疲れてしまって。ええ、ご心配なく。

 

 冷たいベンチって、二人で座れば気にならないんですよ。

 

 おやおや、どうしましたか。

 

 どうもしない?そうですか。ならいいんですけど。あっ、あんまりこすっちゃいけませんよ。ハンカチをどうぞ。いえいえ。

 

 ハンカチと手鏡は持ち歩くようにしているんですよ。

 

 

 

 誰かを待っているんでしょう、本当は。

 

 分かりますよ。でも大丈夫ですよ。みんなそうなんですから。わたしも、きみも。

 

 大丈夫です。

 

 

 助けてもらっただなんてあの人は考えているんですけどね。実はその逆なんですよ。おかしな話ですけどね。

 

 これからもずっと、なんて思うんです。

 

 あ、すみません、わたしばかり喋ってしまって。構いませんか?優しいですね。

 

 そうだ、お話をしても良いですか?小さな男の子のお話です。きみと同じくらいかな。

 

 きみと同じくらい優しい男の子のお話ですよ。

 

 他には、そうですね。ライオンのお話とか。

 

 雨のお話とか、鉄棒のお話とか、プラネタリウムのお話も。妙な話ばっかりですけどね。

 

 聞きたい?そうですか。分かりました。なら話しますね。

 

 ええと、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ええと、うん。

 というわけで、ママさんあーしさんの妙な話を「真っ赤な空を見ただろうか」と、「プレゼント」でお送りいたしました。いかがでしたでしょうか。感想をぜひ共有したいです。あーしさんは最強のお母さんです。

 家族っていいな。考えたらBUMPって目を空に向けることが多いなァ。

 多分囲村が一番好きなのは後にも先にもグリーフウォーカー・ラフメイカーです。ですので短編集の最初と最後に「ラフメイカー」と「プレゼント」をそれぞれ持ってきたかったという…

 そして、今作を持って最終話とさせていただきます。今までお付き合いいただきありがとうございました。





 …と、思っていたのですが、また少しだけ書くことにしました。優柔不断に定評のある囲村です。でも時系列的には今作がしんがりになりそうです。

 というわけでまだちょっとだけ続きますごめんなさい!!


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