時を止める魔道士 作:柱の様な男
一方、
「あんたらいい加減に…しなさいよ…」
「アッタマきた!!!」
「ぬおおおおおおおおおっ!!!」
「困った奴等だ…」
「かかって来いっ!!!」
魔法まで使い始めたカナ、グレイ、エルフマン、ロキ、ナツをはじめとする魔道士達。
これには流石のミラも、ほんの少し焦りの色を見せる。
「これはちょっとまずいわね…」
「魔法!!?」
「・・・・・・」
新人であるが故大いにうろたえるルーシィ。
そんなルーシィを尻目に、DIOは顔色一つ変えずに読書を続ける。
「止めなくていいんですか!!?」
「昼間は調子が悪い…」
と、そんな風に返答するDIO。
どうやら止める気はさらさら無いらしい。
「そんなぁ…」
アタフタと慌てふためくルーシィだが、騒ぎの中で微かに聞こえた地鳴りにより、ピタリと体を硬直させた。
「やめんか、バカタレ!!!!」
地鳴りの正体は天井に頭が届く程の身長を誇る巨人。
巨人は暴れる魔道士達を一喝して黙らせた。
「でかーーーーーーーーっ!!!!」
あまりのでかさに思わず叫び声あげてしまうルーシィ。
「・・・・・」
そしてピタリと静まる魔道士達に…
「だっはっはっはっ!!みんなしてビビりやがって!!この勝負は俺の勝ぴーー」
一人浮かれて踏み潰される
「あら…いたんですか?マスター」
「マスター!!?」
目の前の巨人がフェアリーテイルの総長であるマスターだと知り、驚きを隠せないルーシィ。
「む、新入りかね」
「は…はい…」
ギルドの魔道士全員を一喝できるマスターの迫力と、何よその巨体による恐怖で、パクパク口を開いて立ち尽くすルーシィ。
「ふんぬぅぅぅぅ」
掛け声と共に目の前の巨人はみるみる小さくなっていき、ついには小さな…子どもと同じサイズの老人へと姿を変えた。
「よろしくね」
「ええーーっ!!?」
ついさっきまで巨人だった老人が目の前で陽気に挨拶する姿に、ルーシィは本日何度目かの驚愕の声をあげた。
「とう!」
何を思ってか、かっこ良く連続バク宙を決めて二階にあがろうとするマスター。
しかし着地を失敗し、後頭部を思いきり二階の手すりにぶつけてしまう。
やっとこさ二階の手すりによじ登ったマスターは、どこからか書類の束を取り出した。
「ま〜たやってくれたのう、貴様ら
見よ、評議会から送られてきた文書の量」
マスターは文書を朗読し始めた。
「まずはグレイ、街を素っ裸でふらつき、挙句の果てに干してある下着を盗んで逃走」
「いや…だって裸じゃマズイだろ」
と言っているが、現在もパンツ一丁だ。
「まずは裸になるなよ」とエルフマンが珍しくまっとうな意見を述べる。
「エルフマン!!貴様は要人護衛の任務中に要人に暴行」
「「男は学歴よ」なんて言うからつい…」
二人に呆れてため息を吐くマスター。
次々と文書を読み上げる。
「カナ・アルペローナ、経費と偽って、某酒場で飲むこと酒樽15個。
しかも請求先が評議員…下手すりゃ逮捕されとるぞ」
「ロキ…評議員、レイジ老人の孫娘に手を出す。
某タレント事務所からも請求書が届いておる。どんだけ女に手をだし取るんじゃ貴様は」
「DIO…貴様は人攫い討伐の任務で、無事犯人を倒して攫われた者たちを救出するも、その後犯人と一緒に攫われた娘達までもを吸血」
「腹が減っていたんだ、仕方ないだろう」
全く悪びれる様子の無い顔で返すDIO。
「腹が減ったんなら、トマトジュースでも飲んどれい!!」
「貴様!それで何度トマトジュースで妥協したと思っている!?
このDIOの食事を全てトマトジュースで済まさせるつもりか!」
「ってか吸血ってどういうこと!?」
ルーシィの疑問はもっともである。
マスターは気の疲れでガックリと肩を落す。
「そしてナツ……デボン盗賊一家壊滅するも民家7件も破壊、チューリィ村の歴史ある時計台倒壊、フリージアの教会全焼、ルピナス城一部損壊、ナズナ渓谷観測所崩壊により機能停止、ハルジオンの港半壊。
週刊誌にも取り扱われておるぞ!!」
(見たことあるー!!)
その週刊誌とは、ルーシィもよく読んでいる"週間ソーサラー"略して週ソラのことである。
「アルザック、レビィ、クロフ、リーダス、ウォーレン、ビスカ…etc…」
次々とあげられる魔道士達の名前、この全員がどこかしらで事件を起こしている。
「貴様等ァ…ワシは評議会に怒られてばかりじゃぞぉ……」
怒りでプルプルと震えるマスター。
「・・・・・」
魔道士達は全員、気まずそうな顔で沈黙する。
「だが…」
マスターの手に持っている文書がボウっと燃え上がる。
「評議会などクソくらえじゃ!!!」
マスターは火のついた文書を投げ捨て、それをナツがカエルのようにピョンと飛びつき、パクっとたいらげた。
「よいか、理を超える力はすべて理の中より生まれる。
魔法は奇跡の力なんかではない、我々の内にある"気"の流れと自然界に流れる"気"の波長があわさりはじめて具現化されるのじゃ。
それは精神力と集中力を使う、いや、己おのが魂すべてを注ぎ込む事が魔法なのじゃ。
上から覗いている目ン玉気にしてたら魔導は進めん、評議員のバカ共を怖れるな」
マスターはニッと笑って叫んだ。
「自分の信じた道を進めェい!!それが
評議会すら恐れない、常にギルドの者のため、自分の信じた魔道の道を突き進む。
これが
「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」
DIO以外の魔道士達の歓声の雄叫びがギルドに響き渡る。
そんな光景を見て、ルーシィは静かに、嬉しそうに微笑んだ。
ーーーーーーーーーーーー
先ほどの、マカロフの演説による歓声の熱は未だ冷めず、酒場には魔道士達の賑やかな笑い声で溢れていた。
「ほぉ、つまり火竜の正体はナツ自身、だったというわけか」
「そうみたいよ、確かにナツの魔法にはピッタリだしね」
もの凄い勢いで目の前の大量の料理をがっつくナツの前で、DIOがワインの入ったグラスを片手に、ミラが妖精のマークの入ったスタンプを片手に言った。
「ナツー!見てー!妖精のマーク入れてもらっちゃったぁ」
ルーシィが上機嫌で、妖精マークの入った手の甲をナツに見せる。
「よかったなルイージ」
「ルーシィよ!!」
「そういえば、DIOが昼間に起きてるなんて珍しいわね、どうしたの?」
「気まぐれだ…」
ミラの問いにワインを飲みながら答えるDIO。
「昼間は起きてるのが珍しい…?
さっきもマスターが吸血がどうのって…吸血鬼じゃあるまいし」
「そうよ、DIOは吸血鬼なの」
「ええーーっ!!?」
とんでもないことを笑顔で言い放つミラに驚きながら、ルーシィはDIOから一歩離れた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ、致死量の血は吸わないし、吸われてもゾンビになったりしないから」
「まぁ…やろうと思えばできるがね」
「ヒィーーっ!!」
ミラの言葉で少し安心したところを、DIOの言葉で再び恐怖に突き落とされるルーシィ。
「勝負しろDIO!」
そして何を思いたったか、突然勝負を挑みだしたナツ。
「またか、いつも言ってるだろう。昼間は調子が悪いと」
ナツはフェアリーテイル内でもかなりの戦闘狂だ。強い奴と戦うのが大好きな彼は、何度もDIOを含む他の魔道士達に勝負を挑んでいる。
しかし、対するDIOはうんざりしている、といった顔だ。
「そんなの関係ねぇ!!」
「勝手過ぎ!!」
ナツの自己中心的な行動に思わずツッコミを入れるルーシィ。
「オーケーオーケー、わかった。
無闇に暴れられて、壁が壊れて日光が入れば面倒だ。
相手をしてやる」
「よっしゃああああ!!"火龍の鉄拳"!!」
話を聞くやいなや、ナツは速攻で炎を纏った拳で殴りかかる。
「無駄だ」
対するDIOは一切表情を崩さず、片手で机を持ち上げ、それを盾にしてナツの攻撃を防いだ。
「うおっ!?抜けねぇぇぇ!!」
余りの勢いに、腕がすっぽりと机にはまってしまう。
「フンッ」
それを見たDIOは大きく振りかぶり、ナツごと机を豪快に投げ飛ばした。
ナツを巻き込んで投げ飛ばされた机は、ガシャーンと勢いよく壁と激突し、粉々に破壊された。
「負けるかぁぁぁ!!"火龍の咆哮"!!」
ナツはバラバラになった木片を片手でなぎ払い、負けじと炎のブレスをDIOに向けて放った。
「
眼球内の体液に高圧力をかけ、瞳から発射する吸血鬼であるDIOならでわの技。
それに魔力を加え、貫通力をさらにあげている。
DIOは空裂眼刺驚によりナツの炎を払い除け、炎の中に小さな空洞を作り出す、その僅かな隙間こそが
炎の中から現れたDIOに、ナツは炎の拳で対抗するが、DIOの圧倒的身体能力の前に簡単に躱され…
「ぐはっ」
みぞおちに強力な一撃を叩き込まれてそのままダウンした。
「あのナツを…一撃で…」
ルーシィは偽
だからこそ驚きもでかい。
「ナツはフェアリーテイルの中でもかなり強い方よ。
でも上には上がいるものなの。もちろん、このギルドにはDIOより強い魔道士だっているんだから」
「!!?」
ミラの言葉に、ルーシィは更に驚愕した。
あのナツですら簡単に降すDIO。そしてそれよりも強い魔道士達。
(本当に…すごいギルドなんだなぁ…
しかし今、ルーシィの顔に浮かんでいるのは驚愕の二文字ではなく、そんなすごいギルドの一員に慣れたという、感激の笑顔だ。
「っていうか、大丈夫?ナツ」
「いててっ…くっそー!まだ勝てねぇか…!」
ナツが腹を抑えてゆっくり立ち上がる。
「仕事行くぞ!ハッピー!
早く強くなっていつかDIOもぶっ飛ばしてやる!!」
「あい!」
サラネコマンダーコンビは元気良くリクエストボードへ向かった。
「さっきやられたばかりなのに、すごい体力ね…」
呆れ半分でそう呟くルーシィ。
「どれにする?」
「報酬がいいやつにしようよ」
「おっ、これなんかどうだ?
盗賊退治で16万Jだ!」
「決まりだね!」
早速、意気揚々と仕事に繰り出そうとするナツとハッピー。
だが聞こえてきた一人の少年の声で、その足を止める。
「ねぇ、父ちゃんまだ帰ってこないの?」
「くどいぞロメオ。貴様も魔導士の息子なら親父を信じておとなしく家で待っておれ」
少年が話している相手はマスターマカロフ、どうやら少年の父親が仕事に出かけたきり、まだ帰ってきていないらしい。
「だって…三日で戻るって言ったのに…もう一週間も帰って来ないんだよ!」
「マカオの奴は確か、ハコベ山の仕事じゃったな」
「そんなに遠くないじゃないかっ!!探しに行ってくれよ!心配なんだ!!」
「貴様の親父は魔導士じゃろ!自分のケツも拭けねぇ魔導士なんぞ、このギルドにはおらんのじゃあ!!帰ってミルクでも飲んでおれい!!」
厳しいかもしれないが、マカロフの言葉はもっともである。一人前の魔導師ならば、自分が受けた仕事先で何が起きろうと、その責任は最後まで取らなくてはならない。
成功しようとも、失敗しようともだ。
しかし幼い子どもには、あまりにも辛いことなのかもしれない。
「バカー!!」
「おふ!」
ロメオはマカロフの顔にパンチを食らわせて、目に涙を溜めて走り去っていった。
「厳しいのね」
「ああは言っても、本当はマスターも心配してるのよ」
ドスンッ!!という音がギルド内に響いた。
見るとリクエストボードに拳の後が深く刻まれていて、その中心にたった今ナツが受けようとした仕事の依頼書がへばりついている。
「オオイ!ナツ!リクエストボード壊すな!!」
そんな声も耳に届かないナツは無言のまま、ギルドの外へと行ってしまった。
「マスター。ナツの奴、ちょっとヤベェんじゃねえの?
アイツ…マカオを助けに行くつもりだぜ」
「これだからガキはよぉ……
んな事したって、マカオの自尊心がキズつくだけなのに」
「進むべき道は誰が決めることでもねえ。放っておけぃ」
マカロフをキセルを咥えて、黙ってナツを見送った。
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「ど…どうしちゃったの?あいつ…急に……」
「ナツもロメオ君と同じだからね。
自分とかぶっちゃったのかな…」
ミラが悲しそうな顔でナツの過去を明かす。
「ナツのお父さんも、出ていったきりまだ帰ってこないのよ。
お父さん…って言っても、育ての親なんだけどね。
しかもドラゴン」
ルーシィはあまりの驚きで、椅子から転げ落ちた。
「ドラゴン!!?ナツってドラゴンに育てられたの!!?
そんなの信じられるわけ…」
「ね。小さい時そのドラゴンに森で拾われて、言葉や文化や…魔法なんかを教えてもらったんだって。
でもある日、ナツの前からそのドラゴンは姿を消した。何の前触れもなくね」
ルーシィはナツと出会った時のことを思い出した。
「そっか…それがイグニール……」
「ナツはね…いつかイグニールと再開できる日を楽しみにしてるのよ。
そういうところがかわいいのよねェ」
「ははは…」
ルーシィは思わず苦笑いになる。
「私達は…
キズや、痛みや、悲しみや……私も…」
「え?」
「ううん、なんでもない」
笑顔でそう言うミラだが、彼女が微かに震えていたのを、ルーシィは確かに見た
「・・・・・・」
そんな二人の会話を横で聞いていたDIOは、ゆっくりとその場で立ち上がった。