時を止める魔道士   作:柱の様な男

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二話いっぺんに更新します


火竜と猿と牛と吸血鬼

クエストに行ったきり帰ってこないロメオの父親、マカオを探すためハコベ山へと馬車で向かったナツ達だが、乗り物に弱いナツにとって、その道中は困難なものであった。

 

「吐きそう…」

顔を真っ青にして苦しそうに床に寝転がるナツ。

 

「ここで吐かないでね」

相棒の無情な発言…いや、扱いに手慣れていると言うのか…

 

「でね!あたし今度ミラさんの家に遊びに行く事になったの~♪」

憧れの魔導師の家に招待されたことに機嫌をよくするルーシィ。

 

「下着とか盗んじゃダメだよ」

 

「盗むかー!!」

 

「ほぉ…いい作りの馬車だな。

窓一つカーテンで覆えば、ほとんどの日光は遮断できる」

DIOはDIOで別のことで上機嫌になっていた。

 

「って言うか…なんでルーシィとDIOが居るの?」

 

「何よ?何か文句あるの?」

 

「そりゃあ…いろいろと…あい」

ハッピーは何か言いたそうな顔でルーシィを見るが、なんとなく口に出さなかった。

 

「だってせっかくだから、何か妖精の尻尾(フェアリーテイル)の役に立つ事したいなぁ〜なんて♪」

 

(株を上げたいんだ!絶対そうだ!)

 

「私はマカオにちと貸しがあるのでな。

返してもらう前に行方不明…なんてのは困る」

 

(貸しって何だろ?)

 

話している間に、四人(ハッピーも含めて)の乗っている馬車がピタリと停車した。

 

「す…すんません…これ以上は馬車じゃ進めませんわ」

馬車の運転手の声だ。

 

ここでルーシィは小さな違和感を感じた。

心なしか運転手の声が震えているような…そんな風に感じたのだ。

 

そして四人が馬車から降りた時、ルーシィはその違和感の正体を知った。

 

「何これ!!?」

辺りは一面、雪に包まれた銀世界。

その上視界が眩むほどの猛吹雪が吹き荒れている。

 

「いくら山の方って言っても今は夏季でしょ!?こんなのおかしいわ!

…ってか寒っ!!」

あまりの寒さに、ルーシィは自分の体を抱いてガタガタと身震いする。

 

「そんな薄着してっからだよ」

 

「あんたらも似たようなもんじゃない!!」

 

ナツはマフラーと裸の上にジャケットを着ただけという、殆ど半裸と変わらない格好だ。

DIOにいたっては、もはや上半身には一切衣服を身につけていない。

 

「まぁ確かに、雪まみれというのはちょっとばかしうっとおしいが…雲や吹雪が日光を遮っているから、私にとっては活動しやすい」

 

「つーかグレイかお前は!

服どこにやったんだよ?」

 

「服ならほら、棺桶の中に入れてある」

そう言ってDIOは自分の名前が書かれている棺桶を、馬車の荷台から引っ張り出す。

 

「そんじゃ、オラは街へ帰りますんで」

 

「ちょっとォ!!帰りはどーすんのよ!!!」

ルーシィがキィーキィーと喚いて抗議するが、馬車のスピードは弱まることなくそのまま去って行った。

 

「あいつ…本当うるさいな」

 

「あい」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

一同は吹雪によって前方すらろくに確認できない山道をただまっすぐ進んでいた。

 

「その毛布貸して…」

 

「ぬお」

 

ルーシィはナツのリュックから毛布を抜き取り、それを自分に纏って精霊の鍵を取り出した。

 

「ひひ…ひ…開け……ととと…時計座の扉“ホロロギウム”!」

時計の針が回る音と、ハト時計のハトが飛び出たような音を出しながら現れたのは、まんま振り子時計に手と顔が付いたような星霊だ。

 

「おお!!」

 

「時計だぁ!!」

 

「ほぉ……これが星霊魔法か…初めて見た…」

 

三人が興味津々な顔で、ホロロギウムという名の星霊に注目する。

 

「時計…ということは、何か時間に関係する魔法を使えるということか?」

 

「いいえ、わたくしにはそんなことは不可能です」

 

「そうか、なら何故呼んだんだ?」

そんなDIOの問いに答えるや否や、ルーシィはせかせかとホロロギウムの中に入っていく。

 

「『あたしここにいる』と申しております」

ホロロギウムがルーシィの言葉を代弁する。

どうやらルーシィがホロロギウムの中にいる間は、中にいるルーシィの声は外には届かないので、こうやってホロロギウムが彼女の代わりに話しているらしい。

 

「何しに来たんだよお前」

 

「『何しに来たと言えば、マカオさんはこんな場所に何の仕事に来たのよ!?』と、申しております」

 

「知らねえでついてきたのか?

凶悪モンスター“バルカン”の討伐だ」

 

「!!!」

ルーシィの額から冷や汗が滝のように流れる。

 

「『あたし帰りたい』と申しております」

 

「はいどうぞと申しております」

 

「あい」

 

「WRY」

 

付き合ってられるかとばかりに、ルーシィをほって再び歩きだす三人。

 

 

「マカオー!!!いるかー!!!

バルカンにやられちまったのかーー!!!」

大声でマカオに呼びかけるナツ。

しかしマカオからの返事は返ってこない。

 

「ふん…奴が猿ごときにやられるとは思わんがな…

…ぬっ!」

DIOが何かに気がつき、早急に身構える。

 

「バルカンだー‼︎」

白い毛に覆われた猿の化け物。

バルカンは崖の上からナツとDIOに襲いかかった。

 

バルカンの存在に早々に気づいていたナツとDIOは、バルカンの攻撃をバックステップで躱す。

 

(この感じ…!)

 

追撃を警戒して構えるナツとDIOだが、バルカンは二人をスルーしてホロロギウム…正しくはその中にいるルーシィを狙った。

 

「人間の女だ♡うほほー♡」

ルーシィがお気に召したのか、バルカンはホロロギウムごとルーシィを攫って行った。

 

「ほう…」

 

「喋れんのか」

 

「『てか、助けなさいよォォォォ!!!!』…と、申しております」

ルーシィは悲鳴をあげながら連れていかれた。

 

 

 

「よし、直ぐ追っかけっか!」

 

「ナツよ」

 

「何だよ!?」

いざ走りだそうとするナツをDIOが呼び止める。

 

「お前も気づいているか?この感じ…」

 

「あぁ…多分一匹だけじゃねぇ」

吸血鬼であるDIOは他人よりも聴力が優れており、滅竜魔導士(ドラゴンズレイヤー)であるナツは嗅覚が優れている。

なので近くに敵がいるかどうかが直ぐにわかるのだ。

 

「一匹じゃない?じゃあバルカンは二体いるってこと?」

 

「少なくともな」

 

「ま、さっきのやつ追いかけとゃそのうち出てくんだろ!」

 

「そうだな…」

 

三人は走って後をおった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

一方、バルカンの住みかへ運ばれたルーシィ。

 

「『何でこんなことに…なってるわけーー!!?』…と、申されましても」

ルーシィの入ったホロロギウムの周りを、ハイテンションで踊り回るバルカン。

ホロロギウムもどうすることもできず、顔を手で覆っている。

 

ルーシィはホロロギウムの中にいるので、ほんの少し少し安心感を持っているのだが…

 

ポゥンという音と共にホロロギウムはルーシィを残して消える。

「ちょ……ちょっとォ!

ホロロギウム‼︎消えないでよ‼︎」

 

「時間です。御機嫌よう」

 

「延長よ!!!延長!!!ねぇっ!!!」

ルーシィは懸命に叫ぶが、今のルーシィの魔力ではこれ以上長い時間星霊をとどめておくことはできなかった。

 

「女♡」

目の前には興奮して鼻息を荒くするバルカンが迫ってくる。

 

ルーシィは背中にゾワッと悪寒を感じた。

 

「うおおおおっ!!!やっと追いついたーっ!!!」

 

「ナツ‼︎」

ルーシィのピンチにさっそうと駆けつけたナツ。

 

「あがっ‼︎ぐおお!ふあっ」

しかし氷に足を滑らせ、豪快に洞窟内を転げ回る。

 

「普通に登場とかできないのかしら…」

あまりの慌てぶりと騒がしさに呆れるルーシィ。

 

「おい!サル!マカオはどこだ⁉︎」

 

「ウホ?」

 

「言葉わかるんだろ?マカオだよ!人間の男だ」

 

「男?」

 

「そーだ!!どこに隠した‼︎?」

 

「うわー!!隠したって決めつけてるし‼︎」

 

バルカンは悪どい笑みを浮かべる。

「ウホホ」

バルカンくいっくいっとナツに手招し…

 

「おおっ通じたっ!

こっちか!!?」

 

ナツを谷底に蹴り落とした。

「ああああああああああああ」

 

「ナツーー!!!」

 

「男…いらん。オデ…女好き♡」

 

「品性のかけらもない猿だな。

まぁ…猿に品性も何もないだろうがな」

ナツよりもゆったり来たのか、遅れて到着するDIO。

 

「DIOさん!ナツが…!」

 

「安心しろよ。ルーシィ…だったか?

奴はああ見えて優秀な魔導士だ、これくらいでは死なん…………多分な」

DIOはナツが突き落とされた崖の深さを見て、最後の言葉を付け加えた。

 

(不安を煽らないでよ!)

 

「男いらん、男いらん!女〜女〜‼︎ウッホホホ〜‼︎」

ナツを突き落としたことでいい気になり踊り回るバルカン。

 

「女!女!ってこのエロザル!

ナツが無事じゃなかったらどうしてくれるのよ‼︎」

ルーシィはホルダーから金の鍵を取り出した。

 

「開け…金牛宮の扉…“タウロス”!!!」

 

「MOーーー!!!」

鍵から現れたのは、巨大な斧を背負った人型の牛。

その体格からしていかにもパワーのありそうな星霊だ。

 

「牛!⁉︎」

 

「次々と…面白いものだな、星霊魔導士というのは」

 

「あたしが契約している星霊の中で一番パワーがあるタウロスが相手よ!エロザル‼︎」

 

「ルーシィさん‼︎相変わらずいい乳してますなぁ、MOーステキです!」

登場して初っ端目をハートにして、オーナーを舐め回すようないやらしい視線で見つめるタウロス。

 

「こいつもエロかった」

結果エロい畜生が二匹になっただけであった。

 

「ウホッ!おでの女とるなッ‼︎」

 

「それはMO聞き捨てなりませんな」

タウロスはバルカンの言葉に顔をしかる。

 

「そうよタウロス‼︎あいつをやっちゃって‼︎」

 

「オレの女ではなく、オレの乳と言ってもらいたい!」

 

「もらいたくないわよっ‼︎」

ルーシィの乳のことしか考えていないタウロスと…

 

(猿と牛…後は雉だったか…そんな話をどこかで聞いたような…)

全く別のことを考えているDIO。

 

(とにかく…このサルを速攻倒して、早くナツを探しにいかなくちゃ…)

ルーシィは手にグッと力を込め、タウロスに指示を出した。

 

「MO準備OK!!!」

 

背負う斧を構え、自慢のパワーで力強く突進するタウロスと、それを迎え撃つバルカン。

二体が衝突しようとしたその瞬間…

 

「よ〜〜く〜〜も、落としてくれたなァ…」

外から謎の影が入り込んでくる。

 

「ナツ!!!よかった!!!」

谷底から舞い戻って来たナツ。

ナツの生存に喜ぶルーシィだが。

 

「なんか怪物増えてるじゃねーか!!!」

自慢の星霊をナツに蹴り飛ばされてしまう。

 

「きゃあああああっ!!!」

 

「MO…ダメっぽいですな」

吹っ飛ばされ、そのまま気絶してしまうタウロス。

 

「人がせっかく心配してあげたっていうのに、何すんのよー!!!

てゆーか、どうやって助かったの!⁉︎」

 

「ハッピーのおかげだ。ありがとな」

ナツは空を飛んでいるハッピーへと視線を移す。

 

「どういたしまして」

 

「そっか…ハッピー羽があったわねそういえば」

 

「あい、能力魔法の一つ、(エーラ)です」

 

「あんた、乗り物はダメなのにハッピーは平気なのね」

 

「何言ってんだお前、ハッピーは乗り物じゃねぇよ、“仲間”だろ?ひくわー」

 

「あぁそう…」

何故かひかれたルーシィ。

 

「羽か……ちとばかし微妙だが…雉は貴様ということにしてやろう」

 

「何の話⁉︎」

突然わけのわからない発言をするDIOに、さすがのハッピーもツッコミを入れる。

 

「ナツよ…“そっち”の猿は貴様に任せる。

私は“こっち”の猿の相手をしよう」

そう言ってDIOは洞窟の奥を睨みつけた。

 

「え…⁉︎」

 

ドォンという音が洞窟に響き渡る。

 

「ウホホホッーーー!!!」

 

その音の直後に現れたのは、現在ナツやDIO達の目の前にいるバルカンとは別個体のバルカンだ。

 

「もう一体出たぁーー!!!」

叫び声をあげたのはルーシィ。

 

「やはりな」

 

「臭いはしてたからな」

もともと二体目のバルカンの存在に気づいていた二人。

まったく気づいていなかったルーシィと違い、一切取り乱していない。

 

「ウホホォッ‼︎」

二体目のバルカンがDIOに襲いかかる。

繰り出されるのは、バルカンの怪力で力いっぱい込めた重たいパンチ。

 

「ふん…」

しかしDIOはそれを何の苦もなく、片手で容易に受け止めた。

 

「いいか?妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーは全員仲間だ」

 

「ウホホォッ‼︎」

一体目のバルカンがナツに迫り来る。

 

「じっちゃんも、ミラも…」

 

「来たわよっ!!」

 

ナツがルーシィに話している間も休みなく突っ込んでくるバルカン。

ルーシィがナツに呼びかけるが、ナツは構わず話を続ける。

 

「うぜぇ奴だが、グレイやエルフマンも…」

 

「ナツ!後ろ!!来てるってばっ!!!」

すでにバルカンとナツの距離は、手を伸ばせば届きそうなほど狭まっていた。

 

「ハッピーもルーシィもDIOも、みんな仲間だ。

だから…!」

 

ドゴォォォン!!!

 

ナツは一瞬にして振り返り、炎を纏った拳をバルカンに食らわせた。

 

「オレはマカオを連れて帰るんだ!!!!」

 

 

蹴り殴り頭突き他、雨のように降り注ぐバルカンの猛攻。

周囲にある石や氷を破壊するほどの威力だが、DIOは魔法も使わず、自らの腕だけで全て防いでいた。

 

「どうした猿、その程度か?」

 

「ムッキーッ!!!」

挑発されて怒ったバルカンはヤケクソ気味にDIOに殴りかかった。

 

「無駄無駄ッ!!

モンキーがこのDIOに勝てるとでも思うかァ!!!」

 

DIOがバルカンの拳を受け止める。

 

「“気化冷凍法”!!!」

 

「ウホッ!!?」

DIOに掴まれたバルカンの腕が、ガチガチと凍りついていく。

 

「気化冷凍法…水というのは蒸発するときの周囲の熱を奪っていく。

このDIOは吸血鬼であり、自分の肉体を自由に支配できる。自分の肉体の水分を蒸発させることによって可能にした技だ。

もっとも…氷の魔法を利用して、更に凍結力をあげているがなァ!」

 

「ウ…ホ…………」

ついにバルカンは体全てを凍らされてしまった。

 

「死の忘却を迎え入れろォッ!!!!」

 

パキィィィン!!!

 

DIOはバルカンを掴む腕にグッと力を込め、吸血鬼の腕力で凍ったバルカンをバラバラに砕いた。

 

「…しまった、ちょいとばかりやり過ぎたか…バラバラにして殺してしまったらマカオの居場所が聞き出せん。

………まぁいい、向こうにも一匹いるからな」

 

「火竜の鉄拳!!!」

DIOが様子を見ると、ちょうどナツの攻撃でバルカンが壁に埋め込まれていた。

 

「おーDIO!!そっちも終わったのか?」

 

「あぁ、バラバラにして始末しておいた。

そこらにある氷と一緒に転がっているだろう」

 

「ねぇ‼︎見てあれ‼︎!」

ルーシィが驚いたように大声をあげて、伸びているバルカンを指差す。

 

「「「「!!?」」」」

四人は一斉に驚いた。

無理もない、バルカンの体から突然光が放たれ、姿を人間へと変えたのだから

 

「サルがマカオになったーーっ‼︎!」

 

「マカオさんっ!?あのエロザルが!!?」

 

「バルカンに接収(テイクオーバー)されてたんだ‼︎」

 

接収(テイクオーバー)⁉︎」

 

「体を乗っ取る魔法だよ」

 

バルカンが埋め込まれた壁は薄かったらしく、埋め込まれた場所に穴が空き、外へと開通していた

そして穴の出入り口に蓋をしていたバルカンの体がマカオに変化したことにより、急激な体格の差によって、マカオは後ろ向きに谷底へと落ちてしまう。

 

「あぶねえ!!!」

万事休すマカオの足を掴んだナツだが、ナツ自身も完全に外へ身を乗り出してしまっている。

このままでは2人が危ない、しかし空を飛べるハッピーでも2人の人間を持ち上げることはできない。

 

仕方なく助けに行こうとしたDIOだが、ここであることに気がつく。

(山の天気は変わりやすいと聞くが、これほどとはな…!

さっきまであれ程吹雪いていたというのに、いつの間にか外には日がさしているッ‼︎

対策はして来た!死にはしない!だが確実にあの光を浴びれば体調は崩れる!たった2人程度を引き上げられないほどになッ‼︎)

 

そうこうしているうちに三人の限界はどんどんと近づいる。

 

「重い…」

ルーシィがハッピーの尻尾を掴むがそれでも足りない。

 

「くっそぉおおお!!!」

 

いよいよ限界が来た、その瞬間…

 

ルーシィの掌の上から、大きな掌ががっしりと掴んだ。

「MO大丈夫ですぞ」

さっきまでナツに伸されていたルーシィの星霊、タウロスだ。

 

「タウロス!!!」

 

「牛ーーー!!!

いい奴だったのかーー」

 

タウロスは自慢のパワーで三人を軽々と引き上げた。

流石は横道十二門、金牛宮のタウロスだ。

エロいだけではなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

接収(テイクオーバー)される前に、相当激しく戦ったみたいだね」

 

「酷いキズだわ…」

 

マカオは身体中傷だらけになり、腹から大量の血が流れている。

 

「マカオ‼︎しっかりしろ!!!」

 

「脇腹の傷が深すぎる……持ってきた応急セットじゃ役に立たないわ」

 

「・・・・・」

 

(てゆーか…これは助からない…)

ルーシィは深すぎるマカオの傷を見て、そう悟った。

 

「私の血を使うか?吸血鬼になるが、この傷も治すことができる」

 

「吸血鬼…!?

………でも、それで命が助かるんなら…やった方がいいのかも…他に方法もないし…」

 

「いや!まだある‼︎」

ナツは掌から炎を出して、マカオの傷口を焼いた。

 

「ぐあああああっ!!!!」

火の熱と傷口の痛みに、身をよじりながら叫喚の声をあげるマカオ。

 

「何してんのよっ!!!」

 

「いまはこれしかしてやれねえ!!!ガマンしろよ!!!マカオ!!!」

 

「あぐあああああーー」

 

(そっか…火傷させて傷口を塞ぐのね‼︎確かに止血にはなるわ…)

 

「死ぬんじゃねえぞ!!!ロメオが待ってんだ!!!」

 

「ふがっあっぐっ!

ハァハァ……くそ……な…情けねえ……ハァハァ…19匹は……倒し…たんだ…」

マカオは息も絶え絶えで、今にも消え入りそうな声で話す。

 

「え?」

 

「うぐぐ…情報…より……一匹多かった…そいつに…背後を取られて……その…隙に接収(テイクオーバー)…され……ぐはっ!」

 

「わかったからもう喋んなっ!!!傷口開くだろ!!!」

 

(うそ…!?あの猿一匹じゃなかったの……⁉︎

そんな仕事を一人で…)

 

「ムカつくぜ…ちくしょお…これ…じゃ……ロメオに…会わす顔が…ね……くそっ」

余程悔しかったのか、マカオは痛みに耐えながら無念を述べ続ける。

 

「黙れっての!!!殴るぞ!!!」

 

(すごいなぁやっぱり…叶わないなぁ……)

目の前に倒れている魔道士は、あの厄介なバルカンを19匹も一人で倒した。

その事実に、ルーシィは自分と妖精の尻尾(フェアリーテイル)との差を実感した。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

日が沈みゆくマグノリアの街。

ロメオはベンチに座り、不安を抱きながら父親の帰りを待っていた。

 

ふと聞こえて来たのは、数人の歩く足音。

音がする方向を振り向いたロメオは、涙を流して駆け出した。

 

ナツがマカオを連れて帰ってきたからだ。

 

ロメオには今までずっと引きずっていたことがあった。

思い出されるのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士を馬鹿にする少年達の言葉。

『なーにが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士だよ!!!あんなの酒ばっか飲んでる奴等じゃんか』

『魔道士は腰抜けだいーい』『魔道士は酒臭いもんねー』

ロメオは悔しかった。見返してやろうと父親であるマカオに、すごい仕事に行って来てよと頼んだ。

それが原因で、今回の結果を生んでしまったのだ。

 

「父ちゃん…ごめん…オレ…」

 

「心配かけたな、スマネェ」

そんなロメオを、マカオは力いっぱい抱きしめた。

 

「いいんだ…オレは魔道士の息子だから」

 

「今度、クソガキ共にからまれたら言ってやれ。

テメェの親父は怪物19匹倒せんのか!?ってな」

 

ロメオはニッと笑った。

 

「ナツ兄ーー!!DIO兄ーー!!ハッピー!!ありがとぉーー!!!」

 

「おー」

 

「あい」

 

「・・・・・」

 

「それと…ルーシィ姉もありがとぉっ!!!」

 

ロメオの声に三人は笑顔で手を振り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでマカオ。

この前賭けで負けた分の、このDIOの棺桶強化費用。

生き残れたのならさっさと払えよな」

 

「うっ…明日払うよ…」

 

(貸しってこれかい!!!

っていうか、さっきまでいい話だったのに何なのよこの落ち!!?)

 

 

 




DIO様。
桃太郎は猿と犬と雉でごさいます。
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