時を止める魔道士   作:柱の様な男

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投稿に少し時間がかかりかましたが、今回は少し多いです。


最低の駄作と最高の傑作

地面に流れる赤い鮮血。

この血はナツを狙った弾丸によるものだ。

 

しかし、ナツは無事だった。

 

なぜなら…

 

「ほぉ…これが皇帝(エンペラー)の弾丸か、凄まじい威力だな。

私の左手を貫通し、右腕にまで弾丸が食い込むとは」

DIOがナツの前に立ちふさがり、腕を交差させて弾丸を受け止めていた。

 

常人の体なら簡単に貫通するほどの威力の弾丸だが、DIOは吸血鬼である体を利用し、その強靭な筋肉を圧縮することによって、弾丸を押さえ込んだのだ。

 

「仲間をかばったか、だけどそのせいで腕が使えなくなっちまったなぁ」

ヒヒヒッと、笑いながら話すホル・ホース。

 

「心配には及ばん」

DIOは突然、弾丸が食い込んだ腕に指を突っ込み始めた。

 

「!!!?」

 

「なんだあいつ…!ママもぶったまげるぜ」

 

狂人(クレイジー)だ…」

 

突然のDIOの奇行に、見慣れているナツ以外の全員がドン引きした顔で唖然とする。

 

構わずDIOは、グチュリグチュリと嫌な音を立てながら、指で自分の傷口を弄くっていく。

 

「取れた…」

手に握られているのは、皇帝(エンペラー)の放った弾丸。

そして傷口は一瞬にして塞がっていった。

 

「こいつぁたまげたぜ…まさか聞いた通り、本当に吸血鬼だったとはよぉ」

帽子を深く被って動揺を隠すホル・ホース。

 

「助かったー!サンキュー、DI…」

 

「確かに弾丸自体もスタンドのようだな」

 

「って、きいてねえ」

素直に感謝を述べるナツ。

しかしDIOは感謝の言葉を一切聞かず、弾丸を観察している。

どうやらDIOにとって、ナツを庇ったことはついでのようなもののようだ。

 

「それ、返すぞ」

DIOは弾丸を指で、ホル・ホースに向けて弾いた。

ただし指の力は吸血鬼の怪力、弾丸は銃で撃たれたかのようなスピードで飛んでいく。

 

「うおっ!!?」

飛んできた自分の弾丸が頭を貫く瞬間、ホル・ホースは自身の意思で弾丸を消した。

 

「弾丸もスタンド…自由自在に操ることもできれば、引っ込めることも然り…というわけか。

しかしまぁ、ずいぶんマヌケな反応だったな、ホル・ホース」

DIOはホル・ホースを見つめてニヤリと笑った。

 

自分で弾丸を消すことができるにもかかわらず、大声をだして体を仰け反らせるという、無様な行動を晒してしまったホル・ホース。

 

そんな彼の今の心情に、DIOの挑発はまさに効果覿面であった。

 

「て…テメー…」

ワナワナと震えて怒りを表すホルホース。

 

「ぶっ殺すッ!」

ホル・ホースは怒りのままに皇帝(エンペラー)をDIOに向けた。

 

それを見たDIOはニヤリとした顔のまま、ナツにこう言った。

「やつはこのDIOがやる。

キサマにはそこの二人をくれてやろう」

 

「まてよ!あいつには撃たれそうになった借りがあるんだ!オレがぶっ飛ばす‼︎」

 

個人的理由で抗議するナツだが、DIOは聞く耳を持たず、怒号をあげるホル・ホースと共に走り去ってしまった。

 

「また無視かこの野郎‼︎」

 

「しめた!あの大男がホル・ホースがこの場を離れたぞっ!」

 

「あのガキ一人なら楽に勝てるぜ兄ちゃん‼︎」

 

バニッシュブラザーズ弟の言葉に、ナツがピクリと反応する。

「楽…だぁ…!?」

 

「その通りだ!魔法とは知力と精神力を鍛錬せねば身につかぬもの。

結果…魔法を得るには肉体の鍛錬は不足する!」

 

「つまり、日々体を鍛えてるオレたちには!力もスピードも及ばないってことだよっ‼︎」

バニッシュブラザーズ弟がナツに殴りかかる。

 

「よっと!」

 

「ごはっ」

だがナツは飛んできた拳を受け流し、逆に相手に拳を叩き込んだ。

 

「そうでもねえみたいだな」

ニッと笑って余裕の表情を見せるナツ。

 

「しかし…貴様(ユー)やあのDIOという男には、その常識は当てはまらないみたいだな」

 

「だが兄ちゃん、今のでわかった。

あの技ならよけられねえ」

バニッシュブラザーズ弟がジャンプして、兄と武器のフライパンの上に乗った。

 

「余裕こいてられるのも今のうちだぜ小僧‼︎

オレたちがなぜ《バニッシュブラザーズ》と呼ばれているか教えてやる‼︎」

 

「ゆくぞ‼︎“天地消滅殺法”!!!!」

バニッシュブラザーズ兄は、そのままフライパンを上へと振り上げ、弟を天高く打ち上げた。

 

敵の内の一人が宙を舞っているため、自然と視線が上に向くナツ。

 

(うえ)を向いたら、(した)にいる!!!」

 

「ごあっ」

だが上に注目している間に、バニッシュブラザーズ兄によって攻撃され

 

(した)向いたら、(うえ)にいる!!!」

 

「ぶほっ」

そして攻撃してきた兄の方に注目していれば、上からバニッシュブラザーズ弟の強烈な攻撃が降ってくる。

 

「これぞバニッシュブラザーズ合体技、“天地消滅殺法”!!!!」

 

「これをくらって生きていたやつはーー」

 

「生きていたやつは…何?」

決めポーズで断言しようとしたバニッシュブラザーズ。

しかしナツは、彼らの合体技を受けてもケロリと立ち上がった。

 

「バ…バカな!!!」

 

「こいつ…本当に魔道士なのか!!?」

 

「もういいや、これで吹っ飛べ!!!」

ナツは両腕に炎を纏い全速力でバニッシュブラザーズに接近する。

 

「おぼっ」

 

「ふぐっ」

そしてそれぞれの手で相手の顔面を掴み…思い切り相手を吹き飛ばした。

 

「“火竜の翼撃”!!!!」

 

ドゴオオオオオオ

 

「な…なんだ…この魔導士は…」

 

「ママぁ…妖精さんが見えるよ」

 

「しっかりしろ」

 

「「ぶべ」」

バニッシュブラザーズはそのまま地面に激突し、撃沈した。

 

「あの銃野郎はDIOに取られちまったし、ルーシィ探しに行くか」

ナツはため息を吐き、のんびりとルーシィの元へと向かう。

 

 

ナツのすぐ近くで気絶していた、バルゴという巨大メイドが目を覚ましたことも知らずに…

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

一方、ホル・ホースと共に別の場所に移動したDIO。

 

「俺をまんまと誘い込んだと思ってるんだろうが、俺と俺の皇帝(エンペラー)を甘く見過ぎなんじゃあねーか?」

 

「とんでもない、貴様は評価に値する魔導士と言っていい。

ナツを殺そうとする一瞬…汗もかいていないし呼吸も乱れていなかった…冷静だ…

認めてやろう。殺しという分野において、貴様は正に一流と呼べる」

 

DIOは「だが…」と付け加え、まっすぐとホル・ホースの目を見た。

 

「このDIOには勝てん!」

圧倒的な自信が見て取れるDIOの顔。

そして同時に放たれるは、強大で禍々しい魔力。

 

「‼︎」

DIOのあまりの威圧感に、ホル・ホースは気脅され、汗を滝のように流して足を一歩後退させた。

 

(何だこりゃ…ちくしょう…こいつの前に立つだけで、まるで背中に氷を詰められた気分になる…

こんなおぞまじい魔力は初めてだ…!)

 

「恐怖しているな?ホル・ホース」

DIOの目が、全てを見透かしているかのようにギラリと光る。

 

「うっ‼︎」

DIOの不敵な表情に押され、ホル・ホースは更に後退した。

 

(お…落ち着け…!

俺にはまだ秘策があるッ!

それに奴は噂通りの吸血鬼、なら弱点も聞いた通り…あそこを狙えばいいはずッ!

気を落ち着かせば勝てるはず…そう!ホームグランドで試合をする時のような安心感を持って挑めば勝てるッ‼︎)

ホル・ホースは後ろへ伸ばした足を地面に踏みしめ、自分のスタンドである皇帝(エンペラー)を構えた。

 

「こないのならこちらからいこう」

しびれを切らしたDIOがホル・ホースへ向けて、目から魔力を込めた圧縮弾を放った。

 

「ぬおっ‼︎」

ホル・ホースは飛んできた圧縮弾を横に転がって躱し、すかさず弾丸を発射した。

 

「ふん…弾丸の軌道が変わるということを理解していれば、簡単に避けられる攻撃よ!」

DIOは足を少し動かす、ただそれだけでホル・ホースの縦横無尽に飛び回る弾丸を、全て擦りもせずに躱した。

 

(これも吸血鬼の身体能力と動体視力の賜物ってわけかい…ッ!

なら今度は連射だァァッ‼︎)

今度は4〜5発の弾丸が四方八方からDIOに襲いかかる。

 

「ほう…これは避けきれんな」

そう言ってDIOは少し構え、顔面に向け左右から襲いかかる弾丸を、筋肉を収縮させることによって両腕で受け止めた。

 

「しかしだ…避けなくても防ぐ術はいくらでもある」

 

それを見たホル・ホースは驚愕した顔で冷や汗を垂らす。

(正直言ってこいつは参ったぜ…まだ魔法すらろくに使ってねぇってのにこの強さとは…

こうなりゃ…秘策を使わせてもらうぜェッ‼︎)

ホル・ホースは更に二、三発の弾丸を放った。

しかしその弾丸はDIOを捉えることなく、すぐそばを通過して、DIOの背後にある鏡を割っただけであった。

 

「どこを狙っている?」

DIOは弾丸が割った鏡の破片を眺めながら言った。

 

「…根本から勘違いしてることがあるぜ。テメーはよォ!」

 

「?」

DIOは何のことだ、と言いたげに首を傾げた。

 

「俺がいつ…一人で行動してると言った?」

ニヤリと笑って銃口を向けるホル・ホース。

 

DIOはホル・ホースの言葉で、あることを思い出した。

『我々にはまだ味方がいる。そいつを足せば四対ニか…』バニッシュブラザーズ兄の言葉だ。

(奴は自分達兄弟を含めて四人と言っていた…!

後の二人の内の一人は、今目の前にいるホル・ホースッ‼︎

ならばもう一人はいったいーー)

 

「J・ガイルの旦那ァ‼︎出番だぜーーッ!!!」

DIOが思考を巡らせている最中、ホル・ホースは何者かに向けて合図を送った。

 

「ウグッ!!?」

ホル・ホースが叫んだ瞬間、突然DIOの足が刃で切られ、地面に血が飛び散った!

周りには誰もいない、何かが飛んできたわけでもない、全くの謎の攻撃。

 

「……ッ⁉︎」

しかしDIOは、攻撃された僅かな一瞬、その正体を見た!

 

鏡の中だッ‼︎

敵は鏡の中にいた!全身に包帯を巻いた、ミイラのような男が鏡の中でDIOの足を突き刺したのだ!

 

「そいつはJ・ガイルの旦那のスタンド、吊るされた男(ハングドマン)だッ‼︎」

 

「ぐうぅぅぅぅ…ッ!!!」

DIOは片足に必死に力を入れ、立ち上がった。

しかし片足でバランスもうまく取れない状態だ。そして同時にそれは、ホル・ホースの弾丸を躱すことができないということを示している。

 

「蜂の巣になりやがれッ!」

撃てる限りの弾丸を乱射するホル・ホース。

それらの弾丸は何度も曲を描き、何度もDIOの体を貫通した。

 

「ぬぐぅ…」

幾度も皇帝(エンペラー)の弾丸を浴びたDIO。

その体は己の血で真っ赤に染まり、今にも倒れそうにフラフラと、かろうじて立っていた。

 

「これだけやれば吸血鬼といえただじゃあ済まねぇはずだぜ」

 

『おい…ホル・ホース、さっさと撃て…このアホをとどめるとしよう!』

鏡の中にいるハングドマンがホル・ホースに話しかける。

 

「アイ!アイ!サー」

皇帝(エンペラー)が頭に、ハングドマンが首にそれぞれ狙いを定めた。

 

「じゃあな、脳みそぶちまけやがれ!DIOさんよーッ‼︎」

ホル・ホースの放った弾丸はまっすぐDIOの額めがけて飛んでいく。

 

そしてDIOは、血飛沫をあげて、その場に倒れこんだ。

 

「んっんー…やっぱり俺達は無敵のコンビだぜ。なぁ、J・ガイルの旦那」

ホル・ホースが一仕事終えた後のように、さっぱりとした気分でハングドマンに話しかけた。

 

『聞いた話によれば吸血鬼の弱点は頭だ、そこをブチ抜いちまえばこいつも死ぬ。

口の割りには随分とあっけなかったな』

 

「ま、これで一人目だ。早く残りの奴も片付けちまおうぜ」

そう言ってホル・ホースは、DIOに背を向けてその場を去って行った。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

エバルー公爵邸地下、下水道。

 

ルーシィは誰にも邪魔されないように一人、“風読みの眼鏡”という、通常の何倍もの速度で本を読むことができる魔法アイテムをようい、日の出(デイ・ブレイク)を読破していた。

 

「ま…まさか、こんな秘密があった……なんて……

この本は……燃やせないわ……」

ルーシィは風読みの眼鏡をポケットにしまい、本をカービィ・メロンの元へ届けるため立ち上がった。

 

「ボヨヨヨ…風読みの眼鏡を持ち歩いてるとは……主もなかなか読書家よのう」

壁しかないというのに、突然背後から聞こえてきたエバルーの声。

ルーシィは振り返る間も無く、壁の中から生えてきたエバルーの腕に捉えられる。

 

「痛っ…!!!」

両腕を掴まれ、身動きが取れないルーシィ。

 

「さぁ言え、何を見つけた?その本の秘密とはなんだかんだ?」

今度は壁の中から、エバルーの顔が現れた。

 

「あ…あんたなんかサイテーよ…文学の敵だわ…」

腕を後ろに捻じられる痛みに耐えながら、ルーシィはエバルーに軽蔑の視線を向けた。

 

「文学の敵だと!!?我輩のような偉〜〜〜〜〜くて教養のある人間に対して」

 

「変なメイド連れて喜んでる奴のどこが教養よ!」

 

「我輩の美女メイドを愚弄するでないわっ‼︎」

 

「痛っ………いろんな意味で」

メイドを馬鹿にされたことに腹をたてたエバルーは、怒りのままにルーシィの腕を更にきつく捻じった。

 

「宝の地図か!?財産の隠し場所か⁉︎その本の中にどんな秘密がある?

言え‼︎言わんと腕をへし折るぞ!!!」

 

「べーーー」

エバルーの尋問の答えの代わりに、ルーシィは舌を出した。

 

「調子にのるでないぞ!!!小娘がぁあ!!!その本は我輩の物だ!!!本の秘密だって我輩こ物なのじゃあっ!!!!」

ルーシィの挑発で完全に頭に血を登らせたエバルー公爵は、前言通り腕をへし折らんばかりに力を込めた。

 

「あぐっ」

腕の痛みに耐えかね、ルーシィは喘ぎ声を漏らした。

 

なおも力を入れ続けるエバルー。

捻じ曲げられ、ギシギシと嫌な音をたてる腕。

 

そしてついに…ボキッという音が聞こえてきた。

 

「ぎやあぁあぁあぁあっ!!!!」

しかし次の瞬間、聞こえてきた悲鳴はルーシィの物ではない。

この悲鳴は、腕を捻じ曲げていたはずのエバルーの物だ。

 

「ハッピー!!!」

腕をへし折られる寸前だったルーシィ、しかし高速で飛んできたハッピーの蹴りによって、エバルーは逆に腕をへし折れたのだ。

 

腕の痛みに悶えるエバルーの腕から逃れたルーシィは、落とした鍵を拾ってエバルーから距離をとった。

 

「ナイス、かっこいー♡」

 

ルーシィの感謝に満面の笑みで答えたハッピーは、そのまま(エーラ)を解き、水の中に華麗(?)に着地した。

 

「おのれ…何だこの猫は‼︎」

腕をかばいながら忌々しげに叫ぶエバルー。

 

「バッビィべぶる」

 

「『ハッピーです』だってさ

…てか、あんたあがってきなさいよ」

何故か水に浸かったまま会話するハッピーに、それを通訳するルーシィ。

 

「びぶ…びぼびいべぶる(水…気持ちいいです)」

 

「下水よ」

実に汚い。

 

「形勢逆転ね。この本をあたしにくれるなら許してやってもいいわよ。

一発は殴りたいけど…」

ルーシィは鍵をエバルーに向け、得意気に笑った。

 

対するエバルーも落ち着きを取り戻し、余裕な顔でこう言った。

「ほぉう…星霊魔法か、ボヨヨヨ。

だが文学少女のくせに言葉の使い方を間違えておる。形勢逆転とは勢力の優劣状態が逆になることだ。

猫が一匹増えたくらいで、我輩の魔法、土潜(ダイバー)はやぶれんぞ‼︎」

エバルーはまるで、水の中に潜るかのよのように、土の中に潜って行った。

 

「これ…魔法だったのかぁ」

これで何度もエバルーが地面の中から現れたり、潜ったりしていた謎が解けた。

 

 

地面の中から飛び出してきたエバルーの攻撃を、ルーシィはヒラリと交わしてこう言った。

「この本に書いてあったわ。内容はエバルーが主人公のひっどい冒険小説だったの」

 

「なんだそれ!!?」

 

「我輩が主人公なのは素晴らしい、しかし内容はクソだ。

ケム・ザレオンのくせにこんな駄作を書きおって‼︎けしからんわぁっ!!!」

 

地面の中から仕掛けられる攻撃を次々と回避しながら、ルーシィはエバルーに対して怒鳴り声をあげた。

「無理やり…脅迫して書かせたくせに、なんて偉そうなの!!?」

 

「脅迫?」

 

エバルーの頭突きが飛んでくる。

以外にも強力なその頭突きは、ルーシィの背後にあった柵を壁から剥がし、捻じ曲げた。

 

「偉そう?我輩は偉いのじゃ!!!

そんな我輩が書けと言ったのだ、書かぬと言う方が悪いに決まっている」

 

「なにそれ…」

そんなエバルーの物言いに、怒りを通り越して呆れるルーシィ。

 

「偉ーーーいこの我輩を主人公に本を書かせてやると言ったのに、あのバカ断りおった。

だから言ってやったんだ。書かぬと言うなら奴の“親族全員の市民権を剥奪する”とな」

エバルーが再び地面の中にダイブした。

 

「市民権剥奪って…そんなのとされたら商業ギルドや職人ギルドに加入できないじゃないか、こいつそんな権限あるの!?」

エバルーが自称ではなく、実際に巨大な権力を持っていることに驚くハッピー。

 

「封建主義の土地はまだ残ってるのよ、こんな奴でもこの辺りじゃ絶対的な権力をふるってるって訳」

 

「結局やつは書いた!!!」

エバルーは地面から腕を出し、ルーシィの足をがっしりと掴んだ。

 

「‼︎」

 

「しかし一度断った事はムカついたから、独房で書かせてやったよ!!ボヨヨヨヨヨ!!!

やれ作家だ文豪だ…と、ふんぞり返っている奴の自尊心を砕いてやった!!!」

 

「自分の欲望のためにそこまでするってどうなのよ!!!

独房に監禁されてた3年間!!!彼はどんな想いでいたかわかる!!?」

 

「いてっいたた」

ルーシィは煮えたぎる怒りのままに、自分の足を掴んでいるエバルーの腕を踏みつけた。

 

「3年も…!!?」

あまりのことに口を抑えるハッピー。

 

「我輩の偉大さに気づいたのだ!!!」

ルーシィの足を離し、地上に現れたエバルーはなおも傲慢に笑っている。

 

「違う!!!自分のプライドとの戦いだった!!!書かなければ家族の身が危ない!!!

だけどあんたみたいな大バカを主人公にした本なんて…作家としての誇りが許さない!!!」

ルーシィは怒り叫んだ。

尊敬する作家が、目の前いる自分が最低だと思う男に無下にされたことへの怒りなのか…

それとも他の感情も合間っての怒りなのか…

 

「貴様…なぜ、それほど詳しく知っておる?」

エバルーは目の前の少女が、自分とケム・ザレオンとの間にどういう取り引きがあったのか…この本がどういう経緯で作られたのかを、なぜか寸分違わずに知っていることに疑問を抱いた。

このことはケム・ザレオンの家族も知らないことだからだ。

 

「全部、この本に書いてあるわ」

そう言ってルーシィは、日の出(デイ・ブレイク)をエバルーに突きつけた。

 

「はぁ?それなら我輩も読んだ。ケム・ザレオンなど登場せんぞ」

 

「もちろん普通に読めば、ファンもがっかりの駄作よ。

でもあんただって知ってるでしょ?ケム・ザレオンは元々は魔道士」

 

「な…!!!まさか!!!」

 

「そう…彼は最後の力を振り絞って…この本に魔法をかけた」

 

「魔法を解けば、我輩への怨みを綴った文書が現れる仕組みだったのか!!?

け…けしからんっ!!!」

 

「発想が貧困ね…確かにこの本が完成するまでの経緯は書かれいたわ。

だけどケム・ザレオンが残したかった言葉はそんなことじゃない。“本当の秘密”は別にあるんだから」

 

「!!」

 

「な…っ!!!なんだと!!!?」

ルーシィの言葉にハッピーとエバルーが驚愕する。

 

「だからこの本はアンタには渡さない!! てゆーかアンタには持つ資格なし!!」

そう言ってルーシィは金色の鍵を取り出し、星霊を召喚した。

 

「開け!! 巨蟹宮の扉……“キャンサー”!!!」

 

現れたのは、髪をカットするハサミを持った、蟹のハサミのような形の髪と、背中から生えているカニの足のような物が特徴的な、サングラスをかけた男性だ。

 

「蟹キターーーー!!!」

以前から食いついていたカニの登場に感激の声をあげるハッピー。

 

「絶対語尾に『~カニ』つけるよ!! 間違いないよね!! カニだもんね!! オイラ知ってるよ〝お約束〟って言うんだ!!」

 

「集中したいの…黙んないと肉球つねるわよ」

興奮するハッピーにルーシィが冷たく言い放つ。

 

「ルーシィ……今日はどんな髪型にする“エビ”?」

キャンサーが口を開く、そしてその語尾はまさかの…エビであった。

 

「空気読んでくれるかしら!!?」

 

「エビーーーー!!!?」

予想の斜め上の語尾に、ハッピーが驚愕の声をあげる。

 

「戦闘よ!!!あのヒゲオヤジやっつけちゃって!!!」

 

「OKエビ」

 

「まさにストレートかと思ったらフックをくらった感じだね。

うん‼︎もう帰らせていいよ」

 

「あんたが帰れば」

 

そんな二人のやり取りを眺めるエバルー。

いや、正確に言えば眺めてなどいない、エバルーは別のことに不安を抱いていたので、それどころではなかったのだ。

(ひ…秘密じゃと!!?ま…まさか、我輩の事業の数々の裏側でも書きおったか!⁉︎

まずいぞ!!!もしそれが評議院の“検証魔道士”に渡ったら…我輩は終わりじゃないかっ!!!)

 

そうはさせるかと言わんばかりに、エバルーは叫び声をあげた。

「ぬぅおぉおぉっ!!!!」

 

そしてルーシィと同じく、金色の鍵を構えた。

「開け!!!処女宮の扉!!!“バルゴ”!!!」

 

「え!!?」

 

「ルーシィと同じ魔法!!?」

驚愕する二人。

 

そして現れたのは…

「お呼びでしょうか?ご主人様」

先ほどナツが蹴り倒した巨大メイドだ。

 

「バルゴ!!!その本を奪えっ!!!!」

 

「こいつ…星霊だったの!!?」

あまりのことに口を開けて呆然とするルーシィ。

 

しかしバルゴと共に現れた人型に、その場にいる全員が更に大きな驚きをみせた。

 

「あっ!!!」

 

「あ!!!!」

 

「あ!!!!?」

 

「ナツ!!!!」

なんとナツがバルゴとともにこの場に召喚されたのだ。

 

「なぜ貴様がバルゴと!!!」

 

「こいつが急に動き出したから後をつけてたら…何でこんなとこにいるんだ!!?」

ナツの手はがっしりとバルゴを掴んでいる。

 

「まさか…人間が星霊界を通過してきたって言うの!!?

そんな……ありえない!!!」

 

「ルーシィ!! オレは何をすりゃいい!?」

 

その言葉にハッと我に帰ったルーシィは、ナツに向かってこう叫んだ。

「そいつをどかして!!!」

 

「おう!!! どりゃあっ!!!!」

ルーシィの言葉に元気良く返事し、ナツは炎の拳でバルゴを撃沈した。

 

「何ぃ!!?」

 

「次はあんたの番よ‼︎」

ルーシィがキャンサーを従え、エバルーを睨みつける。

 

「ぐぬぬぬぬぅ…」

 

「まぁ、ちょっと待てよ嬢ちゃん」

カウボーイ風の男が一同の前に現れる。

 

「なっ!?テメーはさっきの銃野郎‼︎

つーかテメーはDIOと戦ってたはずだぞ‼︎」

 

「そいつはもう死んじまったよ、この皇帝(エンペラー)にかかってな」

煙草を吹かしながら淡々と答えるホル・ホース。

 

「「「!!!?」」」

ホル・ホースのその言葉に、フェアリーテイルの三人は唖然とする。

 

「ボヨヨヨヨ‼︎よくやったぞホル・ホース‼︎さすが我輩が雇った傭兵の中でも、一番の魔道士だ!!!」

フェアリーテイルとは対象的に、敵の一人を倒したことに喜ぶエバルー。

 

「デタラメ言ってんじゃねーぞテメー!!!お前なんかにDIOがやられるわけがねえだろうがっ!!!!」

怒りを込めて叫ぶナツ。

ナツは仲間として、DIOの実力をよく知っているつもりだ。

仲間を殺したなどと宣うことに対しての怒りももちろんあったが、ナツの怒りにはそれ以外の感情もあった。

 

「そうは言っても、やっちまったもんは…事実は変えられんからないんでな」

やれやれと、わざとらしく首を横に振るホル・ホース。

 

「テメー…!」

顔に怒りを浮かべ、ホル・ホースを睨みつけるナツ。

その拳はギュッと、硬く握られている。

 

「お、くるかい?カモーン」

怒るナツをホル・ホース指をクイクイっと動かし挑発する。

 

「…‼︎」

挑発に乗ってしまったナツは、拳から炎を吹き出してホル・ホースに殴りかかる。

 

対するホル・ホースはすぐさま皇帝(エンペラー)を出し、4発の弾丸をナツに向けて放った。

「縦横無尽に飛び回る4発の弾丸だ‼︎こいつを避けきれるか〜〜!!?」

 

「弾丸があんな動きをするなんて‼︎」

 

グニャリグニャリと曲がりながらナツに襲いかかる皇帝(エンペラー)の弾丸。

 

しかし弾丸の軌道は曲がる、ということを理解したナツに油断はない。

右から飛んできた弾丸を炎の拳で撃ち落とし、したから飛んできた弾丸を炎の足で蹴り砕き、上から飛んできた弾丸を炎のブレスで焼き払う。

 

「3発防いだか…だが弾丸はもう一発残ってるぜぇ!?」

 

最後に残った4発目の弾丸が、ナツの顔面にめがけてまっすぐ飛んでくる。

3発の弾丸を撃ち落としたと言えど、必ず何処かに隙は生まれる。

その隙を見計らって飛んできた4発目の弾丸を防御する時間は、ナツにはない。

 

「…っ!!?」

目の前の光景に思わず目を塞ぐルーシィ。

 

弾丸はそのまま、何の障害物に当たることもなく、ナツの顔面に直撃した。

 

しかし…

 

顔面に弾丸が直撃したというのに、ナツの顔からは、ガキンッという音が鳴っただけで、一滴の血も流れていなかった。

 

「………な…っ!!?」

ホル・ホースは驚愕して、目を見開いたまま加えていた煙草を、地面にポロリと落とした。

 

直撃したというのは誤りだ。

ナツは自分の顔面に飛んできた弾丸を…歯で挟んでキャッチしていたのだ。

 

「無事だったのね‼︎」

 

「ナツが弾丸なんかで死ぬわけないよ」

 

「いってーーっ!!!歯が取れるかと思った‼︎」

ナツはぺっと弾丸を吐き出し、痛みで手で口を抑えた。

当然だ、壁を抉る程の威力を持つ皇帝(エンペラー)の弾丸を歯で止めたのだから、常人なら歯が砕けるだけではすまない、むしろ痛いで済む方が異常なのだ。

 

(化け物だらけかよ…フェアリーテイルってのは。

しかし奴はJ・ガイルの旦那のスタンドを知らないはず…ハングドマンの攻撃なら、あのガキだって防ぎようがない‼︎)

ホル・ホースは手持ち鏡を放り投げ、皇帝(エンペラー)でそれを撃ち抜いた。

 

「何だ?」

 

「突然鏡を破壊したりして…いったい何のつもりなんだ?」

キラキラと、ナツの周りで光を反射させながら舞い落ちる鏡の破片を見ながら、ハッピーが呟いた。

 

「頼むぜ旦那ァァ!!!」

J・ガイルに攻撃の合図を送るホル・ホース。

 

「なにっ!?もしかして仲間がいるの!!?」

明らかに何者かの存在を証明しているホル・ホースの声に、ルーシィは警戒を強めた。

 

しかし…

 

シーーン

 

何も起こらない。

 

「どうしたJ・ガイルの旦那!!!何故動かない!!?」

ホル・ホースは叫ぶが、ナツには一向に変化が見当たらない。

 

「誰と話してんだお前?」

ナツはあたりをキョロキョロと見回す。

 

「な…なぜ…!?」

 

「その男なら、私が始末した」

動揺するホル・ホースの背後から聞こえるのは、始末したはずの男の声…

 

ドドドドドドドドドドドドドド

 

「「「DIO!!!!」」」

無事に姿を現したDIOに、喜びの声をあげる一同。

 

「な…!!?なぜテメーが生きている…!?確かにあの時‼︎皇帝(エンペラー)の弾丸を頭に撃ち込んだはず!!?」

 

「確かに…このDIOの弱点は頭だ。そこを知っていたことはほめてやろう。

だが…一瞬でもこのDIOを殺せたなどと、その考え自体が笑いものだな」

 

「俺はなぜ生きているのかを聞いてるんだっ‼︎さっさと答えやがれっ!!!」

 

「落ち着けよホル・ホース、そう興奮しなくてもいいじゃあないか。

なに…簡単な話だ、弾丸が直撃する瞬間、この腕で弾丸を掴み取った…それだけだ」

そう言って、DIOは腕の(ヴィジョン)を出現させた。

 

「ま…まさかそいつは…スタンド!!?」

驚愕するホル・ホースに、突然の展開について行けず、呆然とする一同。

特にスタンドという言葉自体、三人には聞き覚えの無い言葉(ナツに関しては、話をほとんど聞いておらず、忘れているから)である。

 

「ギルドでも数人の者しか、私がこれを使えることは知らんがな。

あ〜…ちなみに貴様の相方だが、奴のスタンドは厄介なので屋敷の外に放り投げておいた。生死の確認はしていないから生きてるかどうかはわからんが…骨を何本か折っておいたから、重傷なのは間違い無いだろうな。

しかし両手とも右手とは…奇妙な男もいたものだ…」

 

「この俺にハッタリは通じねぇ‼︎デタラメ言ってんじゃあねぇぜ!」

 

「本当に…そう思うか?」

DIOは無表情のままそう切り替えした。

言葉では表せないが…その顔にはそれを信じさせる…“凄み”があった。

 

「…ッ!!!」

ホル・ホースは本能でわかった。「こいつは嘘をついていない!」と。

そしてホル・ホースは無意識の内に、皇帝(エンペラー)を構えていた。

 

「無駄だ…無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」

DIOは一瞬にして、大量のナイフを取り出した。

 

「換装!?それだけの数のナイフを一瞬にして換装しただと!⁉︎」

 

「今度はこのDIOが攻撃する番だ!

これから貴様は…ただこちらの攻撃を一方的に防ぐだけ!それだけしかできんッ‼︎」

 

「ぐおおぉぉ!!!皇帝(エンペラー)!!!」

 

そこからの攻防は…DIOの言った通り、一方的なものであった。

スタンドを含めたDIOの、4本の腕から放たれる怒涛のナイフ攻撃を、ホル・ホースはただただ皇帝(エンペラー)で撃ち落とすだけ。

 

しかしエンペラーの弾丸はせいぜい5〜6発が限度、いくら自由自在に操れる弾丸といえど、換装により絶え間無く飛んでくるナイフの雨を防ぐのには、限界があった。

 

「ぐあああああぁぁぁぁっ!!!!」

 

「限界がきたようだな…

どれ…ダメ押しにもう一発ッ‼︎」

最後に飛ばされた一本のナイフを幕切れに、ホル・ホースにナイフの雨が降り注いだ。

 

ホル・ホースの体に何本ものナイフが突き刺さり、ホル・ホースは血を流しながらその場に倒れた。

 

「これで終わった。残りは勝手にやっておいてくれ」

DIOはそう言って、エバルーの方をチラリと見た。

 

「バカなっ…‼︎ホル・ホースがやられるなど…!」

最強の傭兵が倒されたことに焦りを見せるエバルー。

そんなエバルーの首に、鞭が巻きついた。

 

「んぷっ」

 

「ありがとうDIO‼︎

そして次はあんたの番よ‼︎これでもう地面には逃げられない!!!」

ルーシィは鞭を思い切り引き、エバルーの体を宙に浮かせた。

宙に浮いたエバルーを迎え撃つは、両手にハサミを構えたキャンサー。

 

「あんたなんか…ワキ役で十分なのよっ!!!!」

 

「ボギョオ」

一瞬のキャンサーのハサミ技に、エバルーは眉毛も髭も髪の毛も全てカットされ、ツルツル頭になって気絶した。

 

「お客様…こんな感じでいかがでしょう?エビ」

 

「ははっ、派手にやったなぁルーシィ。

さっすが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士だ」

 

「あい」

 

戦いに勝利したルーシィは、安心したようにホッとため息をついて、日の出(デイ・ブレイク)を胸にだいた。

 

 

「・・・・・」

そんな中、ふとホル・ホースの方を見るDIO。

 

しかしホル・ホースが倒れていたはずの場所には血の後しか残っておらず、ホル・ホース自信は姿を消している。

(抜け目の無いやつだ、致命傷になりうる攻撃だけは全て撃ち落とし、隙をついてボロボロの体で命からがら逃げ出すとは…

まぁいい、別に追う必要もないからな)

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

カービィの屋敷に戻って来た一同は、盗ってきた本をカービィに差し出した。

ちなみにDIOは「昼間暴れたので眠い」との理由で、自信のマイ棺桶の中で就寝中である。

 

「こ、これは一体……どういうことですかな? 私は確か、破棄して欲しいと依頼したはずです」

依頼した内容と別の行動をとったルーシィに、困惑した顔で尋ねるカービィ。

 

「破棄するのは簡単です。カービィさんにだってできる」

 

「だ…だったら私が焼却します。こんな本…見たくもない!!!」

カービィは怒りでわずかに顔を歪ませ、ルーシィから本を乱暴に受け取る

 

「貴方がなぜ、この本の存在が許せないのかわかりました」

 

「‼︎……」

全てを見透かしたようなルーシィの目。

その目と言葉に、カービィは驚きを隠せずにいた。

 

「父の誇りを護る為です。あなたはケム・ザレオンの息子ですね」

 

言い当てられたカービィは明らかに動揺を見せる。

 

「うおっ!!!」

 

「パパーーーー!!?」

それを聞いたナツとハッピーも驚きの声をあげた。

 

「な…なぜ…それを…」

 

「この本を読んだことは?」

 

「いえ…父から聞いただけで読んだことは…しかし読むまでもありません。駄作だ…父が言っていた……」

 

「だから燃やすって?」

 

「そうです」

それを聞いたナツは怒りの形相でカービィに詰め寄よった。

 

「つまんねぇから燃やすって、そりゃああんまりじゃねーのか!!? 父ちゃんが書いた本だろ!!!」

 

「ナツ…言ったでしょ!!誇りを護る為だって!!!」

急いで仲裁に入るルーシィ。

 

ナツには親がいない。ただ一人の親であったイグニールも、数年前に突然姿を消した。

そんなナツだからこそ、何か思う所があったのかもしれない。

 

「父はこの本を書いたことを恥じていました」

真剣な表情で話すカービィにルーシィとナツは言葉を止めた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

あれは31年前………三年間家を空けていた父が突然帰ってきました。

理由はもちろん…この本を執筆していた為です。

帰って来た父はとても深刻な顔をして、「作家ややめる」と言い、利き腕を斧で切り落としました。あまりにも突然のことで、私には止めることはできませんでした。

 

それから父は入院しました。

私はその頃、三年間も家を空けて、くだらない本を書いていた父を恨んでいました。

その恨み怒りのまま…若い私は父にこう言いました。

「あんたは作家の誇りと一緒に家族を捨てたんだ!!!」

「作家をやめて正解だったよ、誇りのないやつにはつとまらない…父親もね」と。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「そんな弱いとこもふくめてだろうね…死んだ後も、私はずっと父を憎んでいました…

しかし、年月が経つにつれ、憎しみは後悔へと変わっていった。私があんなことを言わなければ父は死ななかったかもしれない…と」

父との過去を語るカービィ。その言葉は微かに震えていた。

 

「だからね…せめてもの償いに父の遺作となったこの駄作を…父の名誉のためこの世から消し去りたいと思ったんです」

そう言ってポケットからマッチを取り出し、日を付けて燃やそうと本に近づけた。

 

「まって!!!」

ルーシィが慌てて止めに入った瞬間、突然本が輝いた。

 

「な…何だこれは…!!!」

突然のことに慌てて本から手を離すカービィ。

しかし本は落下せず、そのまま宙に浮いていた。

 

輝きを放ち続ける本からは、タイトルであるDAY BREAKの文字が浮かび上がる。

 

「ケム・ザレオン…いいえ、本名はゼクア・メロン。

彼はこの本に魔法をかけました」

 

「ま…魔法?」

 

文字は順序を変えて本に戻っていき…やがてタイトルは…

DEAR KABY(ディア・カービィ)というものに変わった。

 

「そう…彼のかけた魔法は文字が入れ替わる魔法です」

ルーシィがそう説明すると、今度は本がパラパラと開き、中に書かれていた文字がドッと広がった。

 

「すげェ!!!」

 

「文字が踊ってるよ!!!」

 

光を放ちながら空中を駆け回る文字の数々。

部屋にいる一同は、幻想的な光景に心を奪われていた。

 

「彼が作家を辞めた理由は…最低の本を書いてしまったことの他に……最高の本を書いてしまった事かもしれません。カービィさんへの手紙と言う最高の本を」

 

ルーシィの言葉で、カービィは父の言葉を思い出した。

『いつも、お前の事を思っていたよ』

 

 

やがて全ての文字は本へと戻っていき、カービィの手に舞い落ちた。

 

「それが、ケム・ザレオンが本当に残したかった本です」

 

「私は…父を…理解していなかったようだ…」

カービィは涙を流して本をめくった。

本にかけられた魔法への感動…父を恨んでいたことへの後悔…そして何より、父の偉大さ。

混ざり合う感情の中、カービィの心情はその涙が物語っていた。

 

「ありがとう。この本は燃やせませんね」

 

「じゃあ、オレたちも報酬いらねーな」

 

「だね」

 

「え?」

 

「はい?」

ナツとハッピーの言葉に、カービィとルーシィは呆然とする。

 

「依頼は『本の破棄』だ。達成してねーし」

 

「い、いや…しかし……そう言う訳には…」

 

「えぇ」

申し訳なさそうに首を振るカービィと、カービィの妻。

 

「いらねーもんはいらねーよ」

そんなカービィ達の言葉を笑い飛ばすナツ。

 

「いるーーー!あたしほしいーー!」

 

「うわっ、ルーシィがめつー‼︎」

 

「かーえろっ。メロンも早く帰れよ、“じぶん家”」

笑顔のまま手を振って屋敷を出るナツ。

 

そしてナツの言葉に、カービィ夫妻は驚愕し、ルーシィは首を傾げた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

200万の報酬をチャラにしたナツ達に文句を言いながら、ルーシィはため息を吐いていた。

 

「はぁー…あの人達お金持ちじゃなかったのかぁ…

あの家も見栄を張るために友人に借りたって言ってたし…そんなことしなくても依頼引き受けてあげたのにね」

 

「どうかな?」

 

「引き受けたわよっ!!!

…たぶんね」

 

「あの小説家…実はスゲェ魔導士だよな」

 

「あい…30年も昔の魔法が消えないなんて相当な魔力だよ」

 

「若い頃には魔導士ギルドに居たみたいだからね、そしてそこで冒険の数々を小説にしたの。

憧れちゃうなぁ〜」

 

「やっぱりなぁ~…」

ナツが意地の悪そうな笑みを浮かべる。

 

「前…ルーシィが隠したアレ…自分で書いた小説だろ」

アレとは…ナツがルーシィの家に遊びに来た時、大慌てで隠した紙のことである。

 

「やたら本のことに詳しいわけだぁ~!!」

 

図星をつかれ、ルーシィの顔が赤くなる。

「ぜ…絶対他の人には言わないでよ!!」

 

「なんで?」

 

「ま、まだヘタクソなの!! 読まれたら恥ずかしいでしょ!!」

 

「いや、誰も読まねーから」

 

「それはそれでちょっぴり悲しいわっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、DIOに報酬の事を知られ、ナツはスタンドパンチを食らうことになる。

 

 

 




文字数15000越え、何時ものペースなら三話分くらいの長さです。
こんなに多くなってしまうとは自分でも思いませんでしたね。
やっぱりDIOVSホルホースを入れたのが原因でしょうか…しかしまぁ、それがなかったら殆どフェアリーテイルの台詞丸写しになってしまうんで、どっちかというと追加の方が大事なんですけどね。

ではまた次回。
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