時を止める魔道士 作:柱の様な男
妖精女王《ティターニア》
いつも通り、相変わらず今日も
「ふむ…」
机に突っ伏したまま腕を組み、何か考え事をしているDIO。
「どうしたんだ?何か悩み?」
そんなDIOに、酒樽を抱えたカナが話しかけた。
「いやなに…この間の仕事先で、精神具現化魔法…スタンドの使い手と戦ってな」
「へぇ…スタンド…珍しい魔法だね」
酒樽ごと、ゴクゴクと酒を飲みながらDIOの話を聞くカナ。
「コンビで戦う魔道士だったのだが、そいつらの持つスタンドの名が確か…
実はと言うと私もスタンドを使うことができてな、この二つのように名前をつけようと思うのだが…あまりいい名前が思いつかん」
「そいつは初耳だね。ちょっと一回見せてよ」
DIOは無言で腕のスタンドをだし、酒の入ったグラスを掴み取った。
「これがスタンドかぁ…初めて見た。
…それにしても皇帝に吊られた男か…どっちもタロットカードを暗示しているね」
「タロットカードか…」
「ここはそいつらに習って、私がタロットで占ってやるよ」
そう言ってカードを取り出すカナ。
「あぁ、頼む」
DIOもここは素直にお願いした。
「このタロットの束から無造作に一枚引き抜く、それがスタンドの名前………よし、これだ!」
カナはタロットの中からカードを一枚抜き取り、それをDIOに見せた。
「引いたのは世界!ザ・ワールドのカード。
決まったよ!あんたのスタンドの名前は
「
DIOは再び腕の
「フフフ、やはり名前があった方が、スタンドの
そう言ってDIOは上機嫌のまま、スタンドの腕でとった酒を飲み干した。
一方、受付にてルーシィは、ミラに
少し省略するが大雑把に言うと。
魔法界で一番偉いのは、政府とも繋がりのある評議院の10人。魔法界の秩序を護るための機関であり、犯罪を犯した魔道士を裁くこともできる。
その下にいるのがギルドマスター連盟、各地方のギルド同士の
そしてこれらのギルド連盟に属さない無法のギルド、闇ギルドと呼ばれる存在だ。
「知らなかったなぁー、ギルド同士の繋がりがあるなんて」
感心して聞きいるルーシィ。
「ギルド同士の連携は大切なのよ。
これをお粗末にしてると、闇ギルドに狙われたり、自分達が闇ギルドになっちゃうことだってあるんだから」
「あいつら法律無視だからおっかねーんだ」
「あい」
「じゃあ、いつかあんたにもスカウト来そうね」
物を壊すとか…物を壊すとか、仕事の先々で法に触れるような行動をするナツをルーシィが皮肉った。
「つーか早く仕事選べよ」
「前はオイラたち勝手に決めちゃったからね。今度はルーシィの番」
「冗談!!!チームなんて解消よ」
ぷいっとそっぽを向くルーシィ。
「何で?」
「あい」
「だいたい、金髪の女だったら誰でもよかったんでしょ‼︎」
「何言ってんだ…その通りだ」
「ホラーー!!!」
何一つ言い訳することなく素直に答えるナツに、ルーシィがツッコミを入れる。
「でも、ルーシィを選んだんだ。いいやつだから」
二カッと満面の笑みでそう言うナツ。
そんなナツを、ルーシィは嬉しいのかどこか腑に落ちないのか…微妙な表情で見た。
「なーに、無理にチームなんか決める事ァねえ」
テーブルに着いて、話を聞いていたグレイとロキがルーシィに話しかけた。
「聞いたぜ、大活躍だってな。きっとイヤってほど誘いがくる」
「ルーシィ…僕と愛のチームを結成しないかい?今夜二人で」
「イヤ」
キラキラとした笑顔を振りまくロキの誘いを、ルーシィは拒否の言葉で即答する。
そしてそんなロキを見て、ルーシィに「な?」と相槌を送るグレイ。
「傭兵ギルド、南の狼の二人とゴリラみてーな女やっつけたんだろ? すげーや実際」
話を続けるグレイが、先の仕事についてルーシィに賞賛の言葉を送った。
「そ…それ全部ナツ」
「テメェかこのヤロォ!!!」
「文句あっか! おぉ!!?」
そして睨みあうナツとグレイ。
「グレイ…服」
「ああああっ!! また忘れたぁっ!!」
ミラの言葉で、自分が服を着ていないことに気づき、大声で慌てるグレイ。
「うぜぇ」
そんなグレイ見て、ナツが悪態をついた。
「今うぜぇつったか!!? クソ炎!!」
「超うぜぇよ変態野郎!!!」
睨み合いは殴り合いのケンカにまで発展する。
しかしこれはいつも通りの光景、周りは一切反応しない。
二人の殴り合いを他所に、ロキがルーシィを口説き始める。
「君って本当にきれいだよね。サングラスを通してもその美しさだ…肉眼で見たらきっと眼が潰れちゃうな……ははっ」
「潰せば」
ロキの口説きにルーシィは冷たい一言で返す。
ここでふとロキの目に、ルーシィの腰に付けている星霊の鍵が写った。
その瞬間、ロキは体をビクリと震わせてルーシィから飛び退いた。
「うおおっ!! き…君、星霊魔導士!?」
あまりのロキの急変ぶりに、ルーシィは?と首を傾げる。
「ごめん! 僕たち、ここまでにしよう!!!」
「何か始まってたのかしら……」
そのまま全速力で逃げていったロキに、ルーシィは一人ぼやいた。
「ロキは星霊魔導士が苦手なの」
「はぁ?」
「たぶん昔、女の子絡みで何かあったのよ」
「また騒がしくなってきたな…
面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ、今は昼間だし、寝ているとするか」
今までのやりとりを眺めていたDIOはそうぼやき、自分の棺桶を引っ張りだして就寝の準備に取り掛かった。
そんなDIOを邪魔するかのように、大慌てで帰ってきたロキが、大声で叫んだ。
「ナツ! グレイ! マズイぞっ!!!エルザが帰ってきた!!!!」
「あ"!!!?」
それを聞いたナツとグレイは、殴り合いをピタリとやめ、身体から尋常ではない量の汗を流した。
ナツとグレイだけではない、他の者達も似たような反応を示していた。
ズシィィン…という地響きが、ギルドの中に響き渡る。
まるで巨大な怪獣が歩いているかのようだ。
地響きは段々、ギルドの外から近づいてくる。
いったいどんな化け物が近づいてきているのだろうか…と、不安になってくるルーシィ。
しかし入り口から入ってきたのは、鎧を身に纏い、赤い長髪にきりりとした目をした綺麗な女性であった。
しかしその背後には、彼女自身の体長の倍以上はある巨大な物が背負われている。
「今戻った。マスターはおられるか?」
担いでいた角をその場において尋ねるエルザ。
「おかえり、マスターは定例会よ」
周りの魔道士達とは対象的に、いつものような笑顔を浮かべるミラがそう言った。
「そうか…」
「え…エルザさん…そ、そのバカでかいの何ですかい?」
一人の魔道士がエルザの持ち帰ってきた巨大な物について尋ねる。
「ん?これか…
討伐した魔物の角に、地元の者が飾りをほどこしてくれてな…綺麗だったのでここへの土産にしようと思ってな……迷惑か?」
「い…いえ、滅相もない!!!」
エルザの問いに慌てて手を振る一人の魔道士。
人間の何倍もの大きさを誇る角、エルザが討伐した魔物がどれだけ強大だったかが、その角だけでうかがえる。
「それよりお前たち。また問題ばかり起こしているようだな。マスターが許しても私は許さんぞ」
エルザがジロリと辺りを見回す。
「な…なにこの人…」
「エルザ!! とっても強いんだ」
ルーシィの質問にハッピーが答えた。
「カナ…なんという格好で飲んでいる」
「う…」
カナがギクリと体を震わせ、気まずそうな顔をする。
「ビジター、踊りなら外でやれ。
ワカバ、吸殻が落ちているぞ。
ナブ…相変わらずリクエストボードの前をウロウロしているのか? 仕事をしろ」
魔道士達に次々とダメだししていくエルザ。
ビジターは踊りをやめ、ワカバは急いで机を拭き、ナブはしょんぼりとしている。
「それとDIO、寝るならもう少し別の場所にしたらどうだ?」
「・・・・・」
DIOは無言で、不機嫌そうに顔をしかめる。
「まったく……世話がやけるな。今日のところは何も言わずにおいてやろう」
(随分いろいろ言ってたような…
っていうか、DIOにまでダメだしする人なんか初めてみた)
ルーシィは心の中で風紀員が思い浮かんだ。
「ところで、ナツとグレイはいるか?」
エルザがそう言うと、汗を滝のように流し、カクカクとした動きでがっしりと肩を組んでいるナツとグレイが現れた。
「や…やあエルザ…オ…オレたち今日も、仲よし…よく…や…やってるぜぃ」
「あ"い」
「ナツがハッピーみたいになった!!!」
二人は明らかに挙動不審である。
「そうか…親友なら時には喧嘩もするだろう……しかし私はそうやって仲良くしているところを見るのが好きだぞ」
「あ…いや、いつも言ってっけど…親友ってわけじゃ……」
「あい」
「こんなナツ見たことないわっ!!!」
普段見ないナツの姿にルーシィは愕然とする。
「ナツとグレイは昔、エルザにボコボコにされてちゃったからね。
二人はエルザが怖いのよ」
「ええっ!!!?」
おそらく
その両方に恐れられるエルザの実力…ルーシィには想像もできなかった。
「因みにロキも、エルザを口説こうとして半殺しにされたわ」
「・・・・・」
そこはなぜか驚けなかった。
「実は二人に頼みたいことがある」
そんなルーシィをよそに話を続けるエルザ。
「仕事先で少々やっかいな話を耳にしてしまった。
本来ならマスターの判断をあおぐトコなんだが、早期解決がのぞましいと私は判断した。三人の力を貸してほしい、ついてきてくれるな」
「え!?」
「はい!?」
エルザの唐突な申し出にナツとグレイが凍りつく。
周りの者たちも「あのエルザが!?」と、ことの大きさにざわついていた。
「出発は明日だ、準備をしておけ」
「あ…いや…ちょっ…」
「行くなんて言ったかよ!!!」
二人の言い分も無視して、エルザはDIOの方を向いた。
「DIO、お前もついてきてくれないか?」
その呼びかけに対し、DIOは少しの間沈黙し…
「…内容によるな」
と、だけ答えた。
それを聞いたエルザはフッと笑い
「詳しくは移動中に話す。DIOには今夜話しておこう」
ギルドの外へと去っていった。
「エルザと…ナツと…グレイ……そしてDIO…
今まで想像したこともなかったけど……」
ミラが若干興奮気味に震えながら呟く。
「これって、
「!!!」
今回は前回が長かった分、短めです。
ちょっとDIOの登場が少なかったですね。
短い分次回のタイトルだけを明かします。
次回は『傍に立つ者(Stand by me)』です。
お楽しみに