Fate/zero ~黒の魔王~   作:大嶽

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UAが10000とお気に入りが100件を突破しました!一月弱で当初の目標を達成できるとは……。皆さんに感謝です!

今回の話は当初より長くなりそうなんで二つに分けました。

黒乃の私服描写ですが、作者は服なんてシャツとジーパンさえあれば他は別にいらんって考えの人間なんで組み合わせなんてわかりません。なので各自脳内で似合う服装に変換するか妄想しておいて下さい。

では、どうぞお楽しみください!



第七話  姫と騎士と狂戦士と幼女 前編

黒乃は今、冬木市の街を歩いていた。

 

今後戦場になる可能性がある場所の下調べと食料等の生活物資の補給の為に出歩いていたのだ。

 

黒乃が召喚されてから既に数日が経過している。

 

既に他のサーヴァントも召喚されている可能性がある為、雁夜は自宅からの外出は控える必要がある為こうして黒乃が今後に備え買出し等をしているのだ。

 

但し……。

 

「………高い」

 

肩の上に小さなお供()がくっ付いているが。

 

当初、桜を連れ歩く事に反対はしていた。何時、敵のサーヴァントやマスターに遭遇し戦闘になるか分からないからだ。桜には対抗できる手段が無いので尚更だった。

 

故に二人を説得しようと試みたが、雁夜からは聖杯戦争を含め魔術師達は一般人に魔術が露見される状況を嫌う為、昼間ならば襲撃される事はまずは無い。更に自分とこの家に居るより黒乃と一緒の方が襲撃された時の安全性は高いと言われた。それにこの家に来てからまともに外出をしていない桜に対しての配慮もあったのだろう。

 

桜は前に三人で庭で遊んだ時から懐かれた事もあるのか、黒乃の服を掴みながら上目遣いで「……駄目?」と言われてしまった。後者の方はかなりダメージがでかかったが、初日はそれらを振り切り出かけた。

 

実際に周辺地域を観察し、有事の際の退路や戦闘で有利に戦えそうな場所の選定を行い、帰宅した後に雁夜とこの家の対魔術師用の対策や防備等を聞き取り考えた結果、最終的に戦争が本格的に始まる前までと条件付ではあるが了承した。

 

決して、此方をじっと見つめる桜の視線に根負けした訳では無いので間違えないように。

 

桜を肩に乗せている理由は、最初の外出の時に乗せる機会があったのだが、普段よりも高い目線が余程楽しかったのか事あるごとに黒乃にせがむようになったのだ。向こうでも良くリリィを乗せたりしていたはいたが、彼女と違い自分で浮く事は出来ないので落ちないように注意が必要である。

 

因みに、雁夜には頼まないのか?という黒乃の質問に対し桜は「カリヤおじさんだと無理して体壊しそうだから……」と言われていた。幼女に体の心配をされてしまう雁夜の貧弱ぶりに黒乃は思わず涙を流しそうになった。

 

そうなやり取りを思い出しながら黒乃は桜を連れて歩き出す。その際に近くに不審な人物や青い制服の公務員が居ないか確認をしておく。

 

前者は少し油断すると直ぐに息を荒げながら桜に近寄って来るので危険だし、後者は桜と二人で歩いていると必ずと言っていいほど「すいませんが、少しお話を……」と言いながら交番等に連れて行こうとするので注意が必要だ。

 

現在の黒乃の服装は着ていた悪魔の抱擁(ディアボロス・エンブレス)を脱いでおり、黒いズボンとジャケットに胸元を緩めた白いシャツを合わせた服装であり、桜は普段から着ている紫色のワンピースである。

 

黒乃の服は購入した物だが、その店の店員が黒乃を見た瞬間に「これは掘り出し物ねっ!」と言いながら適当に購入しようとした黒乃を着せ替え人形にした結果「変に着飾るよりシンプルに攻めた方が良いわっ!」と言い、これを進めてきた。

 

特に着るものに頓着していなかったのでそのまま購入したが、雁夜に「なんかヤ○ザかSPに見えるな」と言われてしまった。

 

思わず、その顔に柔らかくした魔弾(バレットアーツ)を打ち込んでしまったが仕方ないだろう。

 

そして、端から見れば良家の御嬢様とその護衛にも見える組み合わせの二人は、街を歩いていた。

 

「………クロノ(クイクイッ)」

 

桜は黒乃の髪を引っ張り何か伝えようとする。

 

「ん?どうした桜?」

 

「あれ……」

 

聞き返した黒乃に対して、桜は指を向けソレを指差した。

 

それは移動販売車だった。横には鯛焼きの文字が書かれた幟が立っている。

 

「食べてみたいのか?」

 

「うん」

 

初めて会った時と比べたら桜は自己主張をするようになっていた。表情こそまだ無表情のままであるがそれでも以前に比べれば感情が豊かになってきている。

 

「じゃあ雁夜の分も買って家で皆で食べようか。何味が食べたい?」

 

「あんことクリーム……」

 

「そうか、じゃあ雁夜にも同じのを買っていこうか。俺は……」

 

そう言ってメニューを見てある文字が目に入った。

 

「カレー味とチーズ味か……美味いのか?」

 

「…………(ブンブンッ)」

 

横で桜が断固拒否という感じで首を振っていた。金は雁夜から多めに預かってはいるが、流石にこれ以上無駄遣いをする訳にはいかないので、今回は諦める事にした。

 

「はい、お待たせしました!」

 

「あぁ、ありがとう」

 

店員から出来上がった鯛焼きを詰めた袋を受け取り桜の手を引きながら歩き始める。

 

“次は食料かな……”

 

そう思いながら商店街へ向けて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワイワイ……ガヤガヤ……。

 

「何時来ても此処は賑わってるなぁ」

 

黒乃は商店街で買い物をしていた。昼を過ぎた時間とは言え人通りはまだまだ多かった。

 

「目当ての物買えるかな?」

 

そう呟きながら歩いていると先程と同じように桜が「クイクイッ」と手を引いてきた。

 

「ん?どうした桜?」

 

「アレ……」

 

「次は何を………」

 

そして桜が指差した方を何気なく見つめると黒乃は固まった。

 

「??」

 

桜が不思議そうに黒乃を見上げる。

 

「そんな……ありえない……」

 

黒乃の顔は驚愕に染まっていた。まるで此処に在る事がありえないとでも言わんばかりの表情だった。

 

その視線の先には………。

 

 

 

金髪碧眼の男装の少女に守られるように店を覗き込んでいる銀髪紅眼の女性が居た……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうですか?アイリスフィール?」

 

「えぇとっても楽しいわセイバー」

 

二人は今冬木の街を散策していた。本来なら本当のマスターである衛宮切嗣の指示で、何処かに拠点を構えそこに移動している手筈だったが、今回の聖杯戦争で聖杯の器であり偽りのマスターとしてセイバーと共に行動しているアイリスフィールがこの街を見て廻りたいと言ったのだ。

 

もし、これを聞いたのが彼女の夫でありセイバーの正式なマスターである切嗣が聞いたのならば却下していただろう。何時敵が襲ってくるか分からない上に自分達も到着したばかりで戦闘の準備もまだなのだから、下手すればアイリスフィールが殺されてしまう可能性が有るからだ。

 

しかしセイバーは違った。もし敵のサーヴァントが奇襲してこようとそれを退け逆に討ち果たす気概でいた。何よりアイリスフィールがこのように外へと出かけた事が無いと言うことに同情を禁じ得なかったからだ。

 

そしてその判断は間違っていなかったと思った。セイバー自身聖杯からこの冬木市の情報は得ている。取り立てて観光が出来る街では無いが目の前でまるで子供の様にはしゃいでいるアイリスフィールを見ているとこちらも楽しくなってくる。

 

セイバーも自分の生きていた時代から様変わりしている光景を見て何も思わない訳は無い。聖杯から現代の知識を受け取っていても知っているだけと実際に見るのとではまったく違うのだから。

 

だが今のセイバーは姫をエスコートする騎士の役割だ。だからこそ周囲への警戒は怠っていない。もしアイリスフィールに危害を加えようとする者がいないか常に探っている。

 

「ではアイリスフィール、そろそろ……」

 

移動しましょうと伝えようとした瞬間、後方から殺気が押し寄せてきた。

 

セイバーは即座に転身し、殺気を放った相手を確認しようとする。

 

“奇襲っ!?こんな人通りが多いところでっ!”

 

まさかこんなにも人目が付くところで襲い掛かって来るとは思わなかった。そして流石にその殺気にアイリスフィールも気付いたのだろう。セイバーと同じように後ろへと振り返る。

 

二人の視線の先には男が立っていた。その視線はセイバーの後ろに居るアイリスフィールへと向けられている。

 

その視線は鋭くまるで彼女が何かの仇であるかのように睨みつけていた。そしてそれに伴うように殺気が彼の体から溢れ出していた。

 

人目見るだけでその体がとても鍛えられたものであることは窺い知れる。その立ち姿は何かの武を極めているようには見えないが、まるで獣のような荒々しさを感じた。

 

只者では無い。そうセイバーは判断した。

 

今の状況では苦戦は免れない。故に後ろに居るアイリスフィールへと声を掛ける。

 

「アイリスフィール……」

 

「分かっているわ、セイバー」

 

もしも敵のサーヴァントが街中で襲い掛かってきた場合、一度撤退し戦闘が可能な場所まで移動する。そう取り決めていた。

 

アイリスフィールの返事を聞いて、セイバーはその手に不可視の剣を握り構える。

 

何時目の前が敵が攻めてくるか分からない上に、人目が多すぎるこの場所では甲冑を纏う訳にはいかない。ならせめて武器だけでも出しておかなければ咄嗟に対応できない。

 

そして目の前の男を睨みつける。自分を信じて後ろに立つアイリスフィールには絶対に手は出させない。そう自身に誓い、例えどんな攻撃が来ようと全て跳ね除ける心算でいた。

 

しかし、その攻撃が何時まで経っても来ない。

 

“???”

 

それを不思議に思い改めて男を観察した。

 

先程と異なり、その目は何処か気まずそうに細められていた。そしてその顔は「やってしまった」と言わんばかりに顰められていた。

 

そして先程は気付かなかったが彼の左手側には幼い少女が居た。彼女は男を見上げながら握っている手を引っ張っていた。

 

殺気は完全に消え去っており敵意も感じられない。

 

セイバーは困惑した。

 

何故奇襲をして来なかったのか。もしこちらが気付く直前のあのタイミングで攻撃されたのならば手傷を負っていたかもしれない。それほど彼の隠行は見事だった。あの距離まで近づかれていた事にセイバーは気付いていなかったのだから。

 

お互いの間に気まずい空気が流れ始める。

 

片や戦闘態勢を整えている女性二人、方や幼女に手を引っ張られる強面の男。

 

どうしても目立ってしまう組み合わせにより周囲の目が徐々に集まり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“どうしようか……”

 

黒乃の思考はそれ一色に染まっていた。

 

不意打ちだった。

 

まさかこんな所でサリエルに似た容姿の女性に会うとは思わなかった。しかも彼女がサリエルのように人離れした美貌と似た髪と目をしていたので反射的に殺気を放ってしまった。

 

幾らある程度の折り合いは付けていたとは言えこのような展開があるとは予想していなかった。

 

それに見た目は正にサリエルをそのまま成長させたような美貌であった。しかし、使徒特有の雰囲気や白色魔力が感じられなかったので本人では無いと判断しても、もしかしたらと思ってしまい、気付いた時にはもう遅かった。

 

そして黒乃が発した殺気に反応したのだろう。隣に居た少女が途轍もない速度で此方へと振り返り戦意を放ち返してきた。

 

その手には何も握られていないように見えるが、微かに空間が揺らいでいるように見える。恐らく何かしらの武器がその手に収められているのだけは分かった。しかし、それが何かまでは分からなかった。

 

恐らく彼女はサーヴァントという奴なのだろう。その立ち振る舞いは黒乃が戦ってきた相手の中でも一級品と言えるほど凛としていた。それにその構えから隙を見つけ出す事は出来なかった。

 

もし戦闘になれば苦戦は必須だろう。更に傍らに桜が居るこの状況での戦闘では敗北してしまう可能性の方が遥かに高いだろう。

 

考えとして最善は誤解を解いて穏便にこの場を別れること、次善として誤解が解けなくてもこの場で別れること、最悪はこの場で戦闘行為を行い全力で撤退すること。

 

さて、どうしようか……。そう思っていると黒乃は先程からずっと手を引っ張っていた桜に漸く気付いた。

 

「??如何したの?」

 

「あっあぁ、大丈夫だ……」

 

どうやら自分が放っていた殺気には気付いていないようだった。かと言ってそれを説明する訳にはいかない。

 

それにどうも目立ちすぎたようだ。周りが騒ぎ始めてきた。

 

美形の女性二人組みと強面と幼女の二人組みが睨み合っている光景なんて珍しい所か何かの撮影でもないかぎり有り得ないだろう。写真まで撮っている輩もいる。

 

これ以上は不味い。そう判断し、意を決して彼女達に話しかける。

 

「あ~済まないが一度場所を移さないか?」

 

「そう易々とそちらの言葉に同意すると思ったか?サーヴァント」

 

駄目だ、完全に敵意剥き出しだ。

 

多分彼女は此方が有利な場所に移動すると考えているのだろう。もし自分ならいきなり殺気を放ってきた相手から場所を移そうなんて言われても無視して叩きのめすだろう。

 

「いや、いきなり殺気を出した事はこっちが悪かった。少し私事だけど事情が有ってね。それも含めて説明と謝罪がしたいから何処か人気の無い場所まで移動したいんだ。ソレに戦うにしてもこんな場所じゃ秘匿も何もあったもんじゃないし、どうだ?」

 

取りあえずこの場からの移動だけでも呑んでもらわないと不味い。もし此処で戦闘なんてしようものなら間違いなく面倒事になる。それだけは避けたい。

 

「……そうか。確かに此処で戦って関係の無い人達を巻き込む事は我々も本意ではない。だが、移動する場所は此方で決める。その条件が呑めるのならば一度剣を収めよう」

 

良かった、理解してくれたようだ。それに条件も無理難題ではないから大丈夫だろう。

 

「あぁそれで良い。只あまり遠くにしないでくれよ。こっちは子供連れだからな」

 

「良いだろう。アイリスフィール、近場に人気の少ない広場等は在りませんか?」

 

金髪の少女が目線を此方へと向けたまま後ろの女性へと声を掛けた。

 

「確か……近くに海浜公園が在った筈よセイバー。だけど詳しい場所までは……」

 

困ったように眉を寄せて言う女性。この街に到着した時に、駅の案内板でそのような名前が有ったのは覚えている。一度行って見たいと思ってはいたが詳しい場所は途中で確認する心算でいたのだ。

 

「其処なら俺が知ってるよ。案内しよう。付いて来てくれ」

 

黒乃はそう言ってからから桜の手を引いて歩き始める。恐らく彼女達が後ろから奇襲してくる事は無いだろうが警戒はしておく。

 

彼女達が敵である事は明白だが、今は流石に状況が悪い。せめて桜がいなければ如何にでもなったのだが……。

 

最悪の場合は桜だけでも逃がそう。そう思いながら黒乃は彼女達が指定した海浜公園へと向けて足を進めた…………。

 




完全に関係ない話ですけど、最近ゴッドイーターがアニメ化したと聞いて見てみました。

感想は「リンドウさんスゲェェェェェ!?」しかありませんな(笑)コンゴウがあんなに簡単にヤられるなんて流石将来アラガミを素手で殴りつける人は違いますなぁ。それにウロヴォロスが海から飛び出した時と空から降ってきた時は「でかっ!?しかもまさかの陸海空仕様!?でもこれ一人で倒すリンドウさんスゲェェェェェ!!」とも思いましたね。上田さんも格好良かったです。



今回は設定改変をしています。本来セイバー達が冬木を観光するのは夕方からですが、この作品では少し早めてます。

そして桜が二人を指差した理由は外国人が珍しかった、それだけです。

感想をいただけると作者のモチベーションが上がるので、良かったら一言罵倒でも良いので書いてください。

では、次回も宜しくお願いします!

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