最初気付いたときは49位だったのに、何時の間にか恐ろしいくらい跳ね上がりやがった…………。(ブルブル)
これも皆さんの御蔭です。ありがとうございました!
記念のifルート短編でも書いたほうが良いのかなぁ?
後感想で指摘されましたので、今回は少し書き方や改行を変えてみました。前の方が良かったらその時は後で直します。
では本編をどうぞ!長いのは許してね(笑)
「さてと……、此処まで来れば大丈夫か」
冬木市海浜公園。
夏などの暑い季節には涼んだり浜辺で遊ぶ市民で賑わっているが、今は秋である上に夕方近くと言う事で人の姿はほとんど無かった。時折歩いている人は見かけるが、それも直ぐに歩き去り見えなくなる。
此処でならもし万が一戦闘になっても大丈夫だろう。
そして、話し合いの場に桜を連れ添ったまま行く訳にはいかない。
「桜……。少し浜辺で遊んでてくれないか?俺はあの人達と少し話があるんだ」
「…………分かった」
桜はこんな時期に水辺で遊ぶのはあまり気乗りしない様子だったが、意を汲んでくれたのか浜辺へと向かっていった。
これで良い。この立ち位置なら不意打ちをされても対応できる。
今の黒乃の位置は彼女ら二人と桜の間に立っている。桜を背後に隠すようにして彼女達と向かい合っているのだ。
傍に居た方が咄嗟の対応は早いが、事情を知らない桜をあまり巻き込む訳にはいかない。自分と一緒にいる所を見られているので手遅れかもしれないが、少しでも危険から遠ざける努力は怠るべきでは無い。
「済まない、待たせてしまったな」
そう言いながら彼女達に近づく。
「気にしないで、別段待っていたと言うほど時間は掛かってないから」
柔らかく微笑みながら銀髪の女性が答える。サリエルにそっくりと言ってもいい顔で言われると複雑な気分だ。
「では、構えるがいい。まさか無手で戦うと言う訳ではあるまい」
金髪の女性、確かセイバーと呼ばれていた彼女が構えをとる。恐らくその手には先程の見えない武器が握られているのだろう。
だが、今戦いに応じる訳には行かない。一人の時ならば問題ないが今は桜を連れているのだ。出来れば避けたい。
「いや、先に俺の話を聞いてくれないか?戦うのはそれからでも遅くないだろう?」
両手を上に上げながら二人にそう伝えた。
彼女達に応じる必要も義務も無い。正直自分だったら無視して相手を仕留めるだろう。
だから、これは賭けだ。もし彼女達が此方に襲い掛かってくるのであれば、加護も含めた全力で此処から離脱する。秘匿も何もかも無視して、利用できるもの全てを利用して逃げる。
さぁどう出る……。
些細な挙動も見逃さないと言わんばかりに観察を続ける。
「えぇ別に構わないわよ」
「アイリスフィールッ!?」
驚いた。まさか了承されるとは……。自分で言っておきながら提案が受け入れられるとは思わなかった。
セイバーと呼ばれた女性も驚いていた。恐らく彼女のマスターなのだろうが、敵の提案をこうもあっさりと呑むなんて貴族の箱入り娘並みに危ないぞ。
「本当に良いのか?」
思わず問い返してしまった。
「本当よ。それに貴方がどうして私をあんなに睨んでいたのか気になるもの」
そう言ってこちらをじっと見つめてくる。
思わずその紅い目から逃れるように目を逸らしてしまいそうになった。
けど、逃げる訳にはいかない。
彼女はサリエルに似ている、だがそれだけだ。自分の感情のみを理由にして、今のこの状況を悪化させるのは得策ではない。せめて桜を雁夜の所へと帰すまでは、維持すべきである。
故に言葉は慎重に選ばないといけない。
「ありがとう、感謝する。先ず俺の名前だけど黒乃真央だ、宜しく頼む」
「えっ!?」
「なっ!?」
あれ、何か間違えたか?二人とも凄く驚いてるんだが……。名前を伝えたくらいで何もおかしい所なんて無い筈だけど……。
「あの~御主人様?」
頭の中にヒツギの声が響く。今は忙しいから後にして欲しい。
「いや、今の御主人様ってサーヴァントとか言うのになってるんですよね?確かそれって名前とか隠しておくのが当たり前で普通はクラス名で呼び合うってカリヤとか言う人が言ってませんでしたっけ?」
……………………………やらかしてしまった。
いや、だけど名前を教えるのに「私の名前はバーサーカーです」なんていう奴はいないだろ。
「嫌だなぁ御主人様ったら。御主人様前に「
ヒツギ、後でオシオキだ。覚悟しとけ。
頭の中で「ひぃ~御主人様の鬼畜~」という声と半泣きの少女の姿が現れるが無視する。
今はこっちの対応が先だ。
「ええっと……。実はあまりクラス名で呼ばれたくなくないんだ。だから俺の事は名前で呼んでくれ」
「そう……。私の名前はアイリスフィール・フォン・アインツベルンよ。宜しくね、マオさん」
「…………なんで下の名前で呼ぶんだ?」
「??だって貴方が名前で呼んでって言ったでしょう?」
天然か。普通は名前で良いと言われても最初は苗字で呼ぶのが当たり前だろう。女だからまだ許されるが、男がやったら間違いなく「はぁ?何馴れ馴れしく名前で呼んでんの?キモッ」って言われるのが落ちだ。
「…………済まん、言い方が悪かった。名前は呼ばれ慣れてないから苗字で呼んでくれ」
「そう、じゃあクロノさんね。改めて宜しくね」
「あぁこちらこそ宜しく、アインツベルンさん。それと呼び捨てで構わない」
「私の事は名前で呼んでも良いのよ?わたしも敬称は要らないわ」
「分かった。じゃあアイリスフィールと呼ばさせて貰うよ」
さて、次はもう一人の方と……。
そう思って視線を向けると何故か彼女は……。
「……………………ぐぬぬぬぬぬぬっ」
唸っていた。とてつもなく唸っていた。
時折「名乗られたのなら騎士として………」「だが今は聖杯戦争中………」とか呟いているのが聞こえる。
もしかして俺が名前で名乗ったから自分も本名を言わなければいけないとでも思っているのだろうか?どうやら彼女は生真面目な性格のようだ。
「あぁ~君の名前はセイバーで良かったかな?」
「…………あぁそうだ」
助け舟のつもりで此方から名前を聞くと、少し迷った後肯定した。
「別に名前の事は気にしなくて良い。どちらかと言えば本名を出した俺のほうが間違ってるんだし、聖杯戦争では本来クラス名で呼び合うのが本来なんだろう?」
「ならば何故、そうも簡単に我々に己が真名を明かす。答えろ」
そう言って睨みつけてくるセイバーだが、それについては大した理由は無い。
「単純に隠すメリットが無いからだ。俺は他のサーヴァントと違って英雄なんて存在じゃないからな。俺の名前を知られても情報が漏れる事は絶対に有り得ない」
端的に言ってしまえばそういう事だ。こっちの世界で俺の力を知っているのは雁夜と桜の二人のみ。その二人にしたって、桜は黒魔法だけで雁夜はそれに『
それに魔術師は電子機器を苦手としている者が多いらしい。まぁ電話くらいなら使えるだろうが、それで俺の情報を調べるのは難しいだろう。
例え、機械を扱える魔術師が居ても問題は無い。何せ日本には
故に、名乗る事に何一つデメリットは無い。別にバーサーカーと呼ばれるのが嫌だというわけでは無い。断じてそんな事は思っていない。
「御主人様~?そんなの今更じゃないですか~?」
うるさい、ナチュラルに心を読むな。オシオキ二倍だ。
「ひぃ~っ!?酷いですっ!人権侵害ですっ!待遇改善を求めますっ!」
いや、今のお前そもそも人じゃないだろ。という訳で却下だ。
頭の中で「我々は権力に屈しないっ!!」と書かれた旗を振っているヒツギの姿が現れるが無視する。
「…………良いだろう、今は貴様の言い分を信じよう」
何処か渋々といった感じでセイバーが引き下がる。
仕方ないだろう、今此処で俺の情報を直ぐに確認する術は無い。後で調べられるかもしれないが、それはそれで特に問題は無い。
「助かるよ、セイバー。じゃあ何で俺がアイリスフィールに向けて殺気を向けたか説明しても良いか?」
「えぇ、大丈夫よ」
アイリスフィールがそう返事をした。
俺は一度深く深呼吸をした。本来ならば、今後戦う予定の相手にこんな話をするのは間違いなのだろう。
それでも、話しておきたかった。別に誰かに聞いて欲しかったなんて気持ちで話すわけでは無い。彼女達に入らぬ誤解を与えたからだ。
もしこれが、相手が勝手に誤解していたのならば別に話す必要なんか無かった。特に気にする必要も無いのだからそのまま切り捨てるだけで良い。しかし今回は自分がいきなり彼女に殺気を放った事が原因なのだ。
流石に自分の失敗で与えてしまった誤解をそのままにしておくのは、人としても自分の心情的にも色々不味い。
俺は確かに
「まず改めて謝らせてくれ。いきなり殺気を放って済まなかった」
そう言って頭を下げる。
顔が下向いてるので二人の表情は見えなかった。だが息を呑み驚いている様子が伝わってきた。
だが俺はそれに構うことなくそのまま言葉を続ける。
「俺があんな事をしてしまったのは、本当に個人的な事情なんだ……」
「アイリスフィール、貴女は俺の復讐の相手ととても似ている。似すぎていると言っても良い位に」
そう、とても似ている。大きな違いは年恰好位で、それ以外はほとんど一緒である。強いて言うならば髪色が微かに違う位だ。
言い訳になるかもしれないが、もしアイリスフィールと出会ったのが向こうの世界で戦争が始まる前だったのならばもう少し対応は違ったと思う。容姿が似てるだけならば、思うところがあっても殺気までは出していなかった筈だ。
だが、今は少し前にサリエルと死闘を繰り広げた上に取り逃がしてしまったという事で俺の心境は最悪と言える状況。
「勿論貴女はあいつと違う事は理解している。けどまさかこんな所であいつに似た人を見るとは思わなくて、反射的にやってしまったんだ。本当に申し訳ない」
「…………そんなに私はその人に似ているの?」
「容姿の特徴はほとんど一致している。違いは貴女のほうが年上だという事くらいだ」
「…………そう」
そう言ってアイリスフィールは沈黙する。
彼女からしたら完全に人違いで殺気を向けられたのだ。これで罵倒を浴びせられたとしても甘んじて受け止めよう。
「それなら仕方ないわね。良いわ、許してあげる」
「はっ?」
思わずそんな声を出してしまった俺を誰が責められようか。少なくとも多少の悪感情を向けられるのは当たり前だと思っていたのに、簡単に許されたのだから。
目の前の彼女は理由が分かってスッキリしたと言わんばかりに晴れやかな表情をしている。
「……いや、それだけなのか?もっと言う事があるだろう?」
「私が知りたかったのはどうして貴方が私にあんな目を向けたのか?それだけなの。だからそれ以上に思うところは無いわ」
そう言って微笑むアイリスフィールを見て思った事は只一つ。
この人良い人過ぎるぞ…………。
というか人の悪意を知らないんじゃないかと心配になってしまいそうな位だ。隣にいるセイバーも額に手を当てて溜息をついてる。
まぁ聖杯戦争に参加している以上、そんな甘い人物では無いだろうが、こうも簡単に相手の言葉を信じるなんてお人好しでも限度があるだろうに。
「そういう訳みたいだから良いわよね?セイバー?」
「……その件について当事者である貴女が許すと言うのならば、私から言う事は何も有りません」
何処か呆れた風に言うセイバー。
「それじゃあもう良いかしらっ?」
そう言ってアイリスフィールは履いていたブーツを脱ぎ始めた。
っていきなり何してるんだこの人は?
「アッアイリスフィール?一体何を……」
「だって始めて海に来たんですもの。折角だし、足だけでも良いから入って見たいのよ」
おいおい、俺が敵なの忘れてないかこの人。
流石にその行動は見過ごせなかったので声を掛ける。
「……アイリスフィール、流石にそれは軽率すぎるぞ。俺が敵なのを忘れていないか?」
「そうです、アイリスフィール。これから戦闘になるのにそんな悠長な事をしている暇はありません」
俺の言葉に続いて発言したセイバーがこちらを睨みつける。
「あら、大丈夫よセイバー。だって彼最初から戦う気なんて無いもの」
「…………アイリスフィール、それはそうでしょうが…………」
「そうでしょう?クロノ」
アイリスフィールは確信が有るかのように此方へと問いかけてくる。セイバーも半ば感づいていたのか表情を歪めながらも同じように視線を寄こす。
まさか此処で戦う気が無い事に気付かれていたのか?
「どうしてそう思うんだ?俺は話を聞いて欲しいとは言ったが、戦いたくないとは一言も言ってないぞ」
「………ウフフッ」
「何が可笑しい」
笑われるような事なんて何も言ってないぞ。
アイリスフィールに釣られる様に隣にいるセイバーも苦笑を浮かべていた。
「だって貴方最初からあの女の子を隠しながら話してるじゃない?」
「付け加えるならば、貴方の重心が後ろに寄っている。もし私が切りかかれば即座に後退し、彼女を抱えて逃げる心算だったのでしょう?」
「…………ご明察だ」
完全に読まれていた。いや、これは俺の油断か。
見目麗しい女性とは言えど、流石英霊を使役できるだけの実力を持った魔術師と言ったところか。
セイバーの洞察力も驚愕と言えるが、これに関しては俺の未熟が原因だろう。正式に武術を習った訳では無く、ずっと我流で戦い続けてきたのだ。敵を殺すだけなら簡単だが、駆け引きに関しては
「それに出来ればあんな小さい子供を巻き込んで戦うなんてしたくないの。だから今はお互い停戦といきましょう?」
「その申し出、有り難く受けさせてもらうよ」
図らずも望んだ状況になった。だがこれは彼女達が桜を気に掛けるだけの優しさがあったからであり、今後このような事は起きないようにしないといけないな。
「じゃあもう良いかしら?」
アイリスフィールは何時の間にかブーツだけでなくタイツも脱いで素足になっていた。
どんだけ海に入りたいんだこの人は?
「……別に構わないが、出来れば彼女から……」
「分かってるわ、あの子から離れた位置に行くからそれなら大丈夫でしょ?それじゃセイバー、後はお願いね」
そう言ってアイリスフィールは海辺へと歩いていった。
何というか自由な人だな。
そしてセイバーが俺の隣に並ぶように立っていた。
「念の為言っておきますが、私は貴方の事を信用していません。もし不審な動きをすれば即座に斬り捨てますので」
「寧ろそれが普通の対応だろ?アイリスフィールは少し危機感が足りないんじゃないか?」
アイリスフィールは海に足を浸け歩いていた。その顔には満面の笑みが浮かんでいた。
とても絵になる光景ではあるが、敵である俺の前でそんな無防備にはしゃぐのは可笑しい事だろう。
「…………アイリスフィールは今まで外出をした事がありません。今日が始めてで、とても楽しみにしていました」
「……………………」
「クロノ、貴方と会った時アイリスフィールは戦う覚悟を決めていました。しかし、貴方の人柄とあの子供を気遣う様子を見て、今は戦う必要は無いと思ったのでしょう。それに私も幼い子供を戦いに巻き込むのは本意ではありません」
「…………セイバー、感謝する」
「勘違いしないで頂きたい。見逃すのは今回だけです。次に相見える時は必ず貴方を討ち果たします」
「それはこっちの台詞だ。覚悟しておけセイバー、俺は手強いぞ?」
「望む所です」
まったく生真面目な上に勇ましいとは、何処の世界でも女性が強いのは共通事項なのかね……。
どうやら本当にこの場は見逃してくれるようだった。ならば必要以上に警戒することもないだろう。
気を張っていた所為か少し疲れと小腹を感じたので、脇に置いていた袋から先程買った鯛焼きを取り出した。
「…………何ですかそれは?」
隣に居るセイバーが変な物を見るようにこっちを見ている。
「何って……鯛焼きだが?」
「タイヤキ?見たところ魚の様に見えますが…………」
鯛焼きを知らないのか?いや、彼女は西洋圏の人のようだから知らなくても可笑しくは無い。
「これは鯛焼きって言ってお菓子の一種なんだ。良かったらセイバーも食べてみるか?」
そう言って袋からもう一つ取り出し、セイバーに差し出した。
けどセイバーは受け取ろうとしなかった。
「申し訳ありませんが、ソレを受け取るわけには……」
そうは言っても視線がちらちらと鯛焼きに向いているぞ。あと一押しすれば落ちそうな雰囲気だし。
「だったら、今見逃してくれるお礼代わりとして受け取ってくれないか?」
「しかし…………」
「別にこれで懐柔しようなんて思ってないし、君なら気が反れるなんてヘマはしないだろう?受け取るだけ受け取って貰えないか?」
お礼と言うには些かお粗末ではあるが、今手元に有る物で渡せそうなのがこれしか無いので仕方が無い。
それに次に会う時は間違いなく戦場になると言うのに、その時に「この間のお礼です」なんて言って菓子折りを渡してから戦える人なんていないだろう。
「…………そこまで言うのでしたら頂きましょう」
どうやら受け取ってくれるようだ。
袋の中に一緒に入っていた紙に鯛焼きを包んでセイバーに手渡した。中身は無難に餡子にしておいた。因みに俺も同じである。
「(モグモグ)うん、やっぱり美味いな」
自分でアイスキャンディーを作ったりした事があるけど、やっぱり本職には敵わない。
セイバーも俺の様子を見て食べ方を理解したのか恐る恐るといった感じで口へと運んだ。
「(パクッ)………………………………」
あれ?何か動きが止まってるぞ?もしかして口に合わなかったのか?
「……………………(パクパクパクパクッ)」
…………どうやらお口に召したようだ。再起動した瞬間に凄い勢いで食べ始めてる。
「…………中々美味でした」
「そうか、なら良かったらもう少し分けようか?」
見てて気持ち良いくらいの食べっぷりだった。鯛焼きは多めに買っていたから少し位渡しても問題ない。
「いえ、それは流石に頂けません」
そうは言っても目線は鯛焼きの入った袋に向いてるぞ。
「それじゃあアイリスフィールの分も含めて渡すから、彼女と二人で食べてくれ」
それなら生真面目なセイバーでも受け取ってくれるだろう。そう思って自分達の分を別の袋に分けて、元々入っていた袋をセイバーに差し出した。
「…………そういう事でしたら有り難く」
表面上は無表情でいるが俺には分かる。結構喜んでるぞコイツ。
「喜んで貰えて何よりだ」
「むっ私が食べ物を貰って喜んでいると?訂正しなさい」
「それは済まない。俺の勘違いだったみたいだ」
軽く肩を竦めて答える。どうやらセイバーには冗談は通じないみたいだ。注意しておこう。
俺は浜辺で遊んでいた桜の方へと歩き始める。
「何処へ行く」
「もう日が暮れてきたから、一度拠点まで戻るんだよ」
セイバーも隣に付いて歩いていた。彼女は自分のマスターであるアイリスフィールの方へと近づいていた。
桜とアイリスフィールは数メートル程度しか離れていないが、この距離ならばもし万が一の事態が発生しても対処できる。セイバーも同じ考えなのか特に口出しはしていなかった
「桜、そろそろ帰ろう」
「…………うん」
桜は手に付いた砂を払いながら立ち上がって俺の近くに歩いてきた。それを見たアイリスフィールもセイバーの下へと近づく。
「俺達はこれで失礼する事にする」
「えぇ、気をつけてね」
アイリスフィールが笑みを浮かべながら返答してきた。思わず苦笑してしまう。
「それは敵に言う台詞じゃないだろうに……。セイバーいずれまた会うだろうがその時は容赦はしない。全力で戦わせて貰う」
「こちらとしても望むところだ。その時は尋常に果たし合うとしよう」
セイバーは獰猛な笑みを浮かべながら黒乃へと返答する。
「それじゃあ失礼する」
桜と手を繋ぎ二人に背を向けて歩き出す。
念の為、警戒だけはしているが二人とも先程の位置から動いていなかった。
「ねぇクロノ?」
「どうした?桜」
「あの人達と何を話してたの?」
桜が見上げながら問いかけてきた。
「あぁ彼女達が俺の知ってる奴と良く似てたんだ。だからさっき会った時思わず凝視してたら少し勘違いされてね。それで少し説明してたんだ」
「そんなに似てるの?」
「…………あぁとてもな」
「そうなんだ」
その答えで満足したのか、桜は視線を前に向けて歩き始めた。余り詳しく聞かれたくなかったので助かった。
俺は歩きながらあの二人の事を考える。
アイリスフィールは、近接戦闘は体捌きから不向きである事が伺えるが、魔術師であるならば何か切り札を持っているかもしれない。それにあの性格ならば危機に直面したとしても、狼狽えて動けなくなるなんて醜態は晒さないだろう。
セイバーは、ぞの実力こそ未知数だが確実にサリエル並みの技量を兼ね備えている。戦えば苦戦は免れないだろう。パーティーで挑むのならば勝ち目はあるが、一人でならば負けてしまう可能性が高い。
あの二人は間違いなく今回の聖杯戦争の参加者の中でも屈指の実力者だ。相手の戦力は多少上に見たほうがもしもの時に慌てずに済む。
「仕方ないか…………」
桜に聞こえないように小さく呟く。
あれ程の強敵に一人で挑む。そんな戦いはイスキア古城でグリードゴアと戦った時以来だ。
しかし、あの時と違い今回は回りに味方も救援もいない。状況としては最悪に近い。
ならば手段を選ぶ余裕などない。例えどれだけ非道な手段でも行使して勝利する。
そして必ず聖杯を手に入れて向こうの世界へと帰る。
そう改めて心に誓い、桜の手を引きながら間桐邸へと戻るべく足を進める。
周囲はまるで自身の心中を表すかのように暗くなり、闇に染まっていった…………。
「------行きましたね」
「そうね、セイバー」
セイバーとアイリスフィールは未だ海浜公園に留まっていた。
「それでどうでしたか?アイリスフィール」
セイバーが己の仮のマスターであるアイリスフィールへと問いかける。
「そうね……。もしかしたらあの子マスターじゃないかもしれないわ」
「そうなのですか?」
「もしマスターだったらクロノから聖杯戦争について説明されている筈でしょう?なのに私が近くに居ても最初に少し警戒した位で、その後は気にもしてなかったわ。セイバーを見ても余り反応してなかったようだし」
「成る程…………」
「令呪は見当たらなかったけど、服で隠してたのなら分からないから、断言は出来ないけどね」
そう言ってアイリスフィールは足元の海水を蹴るようにして戯れていた。そして次はアイリスフィールからセイバーに質問をした。
「それでセイバーは彼について何か分かった?」
「……手強い戦士である事だけは間違いありません」
セイバーの脳裏に浮かぶ黒乃の姿。その体は間違いなく己に使えていた円卓の騎士達に劣らないと判断できるほど鍛え上げられていた。
「剣の腕前に限れば私の方が上でしょうが、それ以外は未知数です。戦闘の際は最初から全力で戦い早期に決着をつけたほうが良いでしょう」
「そんなに手強い相手なの?」
アイリスフィールは驚いた。セイバーは数多に存在する英霊の中でもトップクラスの知名度と実力を持っている。そのセイバーに手強いと言わせる程の相手だと思ってもいなかった。
「安心して下さいアイリスフィール。確かに手強い相手でしょうが、負けるつもりはありません。戦闘の際には必ず私が勝利しましょう」
そう言ってセイバーは安心させるように笑みを浮かべながら答える。その目は強敵と戦えることに対しての高揚を示すかのように輝いていた。
「いいえ、セイバー。私は貴女が負けるだなんて思ってないわ。貴女は必ずこの聖杯戦争を勝ち抜き私たちに勝利を導いてくれる。そうでしょう?」
そう、この常勝の王と謳われる彼女ならば聖杯を必ず手にいれ、私たちにもたらしてくれる。そう確信していた。
「はい、アイリスフィール。我が剣に誓って聖杯を手に入れる事を約束しましょう」
「頼りにしてるわ、セイバー」
聖杯を手に入れる。そして望みを叶える為にこの地までやって来たのだから。
そして、その夜………………。
遂に聖杯戦争が開幕を告げる。
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
少女に対し絶大な効力を発揮する宝具。対象が金髪であった場合、その効果は高まりほぼ確実に好意を示すようになるという。別名TAIYAKI。極稀にデパートや屋台で手に入れられるという情報もある。
原作キャラのしゃべり方がよく分からない。ちゃんと表現出来てますかね?
感想お待ちしております。