しかもほぼ原作どおりの内容と展開です。不評だったら、書き直すくらいの出来です。
それでも、良ければお進みください。
冬木市海浜公園に隣接する形で存在している倉庫街。
夜になれば人通りも絶え、空虚な景観を晒すこの場所は今、魔術師によって隠蔽の結界が張られ周囲から隔絶した空間と化していた。
そしてその内部では二人の
「………………凄まじいな」
倉庫街の幅広な道路で常軌を逸した戦闘を行っているサーヴァントは
切嗣はその手に持つ狙撃銃ワルサーWA2000に取り付けられた熱感知スコープを覗き込み、現在の戦況を見通していた。
道路の中央で互いの武器を交し合い、神話の体現とでも言うべき激しい戦闘を行っている二人のサーヴァント。
槍の一薙ぎが大地を抉り取り、剣の一振りが周囲の障害物を切り裂き、打ち合えばその度に大気が悲鳴を上げるように金切り声を響かせている。
そんな死地においてただ一人その光景を間近で目撃しているのは、此度の聖杯戦争で表向きのセイバーのマスターとして振舞うように指示した、己の妻であるアイリスフィールだけであった。
ランサーのマスターらしき熱源は近くに見当たらなかった。しかしこの戦場の何処かに潜んでいる、そう確信していた。
これが通常の戦争ならば指揮をする者が前線に出てくるのは愚の骨頂。後方の安全な場所で待機するのが自然である。
だが、この聖杯戦争は戦争の名を掲げた魔術師達の決闘のようなものである。だからこそ裏で隠れる事を徹底せず、ノコノコと姿を晒すという愚かな行為を平然と実行する。
そしてその考えに漏れず…………。
「…………見つけた」
アイリスフィール達からやや離れた倉庫の屋根の上。其処に身を潜めるように蹲っている熱源を熱感知スコープが捕らえた。
切嗣は心中でほくそ笑んだ。この状況は想定していた中でも最良の展開であった。
恐らくランサーのマスターは、幻惑や気配遮断等の魔術的な迷彩を行使して自身の位置を隠蔽していたのだろうが、それだけで事足りると判断し機械類に対する配慮を怠ったのであろう。
正に今まで切嗣が仕留めてきた魔術師と同じミスを犯している。この機会を見過ごす手は無いと判断した切嗣は、素早く口元にあるインコムで、戦場の反対側に陣取っている舞弥へと呼びかける。
「舞弥、セイバー達の北東方向、倉庫の屋根の上にランサーのマスターらしき熱源がある。そっちから確認できるか?」
『…………いいえ、私の位置からでは死角のようです』
現在あのランサーのマスターを狙撃できるポジションに居るのは切嗣だけであった。できれば舞弥との十字砲火で万全を期したかったが、単独でも問題は無いと判断し、狙撃体勢へと入ろうとした。
「…………舞弥」
『はい、こちらでも今視認しました』
二人が同時に目撃していたのは、倉庫街に聳えるように設置されているデリッククレーンの上部に陣取っている人影だった。
ここは、この倉庫街の中でも一際高い位置に操縦席が存在している為、戦闘を観察するのにうってつけの場所であった。
故に、切嗣はあえてこの場所を見逃し、ノコノコとやってきた監視者を逆に狙撃して仕留める手筈でいた。
だが、今互いのスコープに移っている熱源は明らかに魔術師と異なっていた。
切嗣は熱感知スコープのアイピースから隣に取り付けてある暗視スコープへと視点を移動させた。
その機能により暗闇に潜む監視者の姿が鮮明に浮かび上がる。
その出で立ちは全身を覆う漆黒のローブと顔に填められた髑髏の仮面。
それは昨晩遠坂邸でアーチャーによって仕留められ消滅したはずのアサシンだった。
「くそっ」
アサシンの登場は切嗣の作戦を根底から覆した。今、ランサーのマスターを狙撃すれば確実にアサシンにこちらの存在に気付かれる。
サーヴァントに現代兵器は通用しない。今の切嗣では到底太刀打ちできない相手だった。
頭の中で様々な情報が駆け巡る。
把握している周囲の人物の位置。狙撃した際のリスク。自分の持ち札。
その全てを加味して切嗣は狙撃を中止して静観することを選んだ。
「舞弥、君はアサシンの監視をしてくれ。僕はランサーたちを観察する」
『了解』
静かに溜息を吐くと暗視スコープを覗き込み、戦場を見つめる。
現状、策を巡らす余地は無くなった。ならばこれ以上の戦闘は無意味であり、速やかな撤退が上策であるが、あのどこまでも誇りを重視する騎士ではそれを期待するのは無理だろう。
せめて宝具の使用だけでも控えて、キリの良い所で引き上げてくれる事を願うしかない。
そして、セイバーがどれだけの実力を持っているか。それが把握出来れば今後の策を練るのに役立つと判断し、戦場を静かに見つめる。
「……では、お手並み拝見だ。可愛い騎士王さん」
「つくづく、すんなり勝たせてはくれんのか。セイバー」
セイバーは自分が判断を誤った事を悔いた。ランサーが宝具を一つだけだと早合点してしまい、視野を狭めてしまった。
ランサーのマスターが宝具の使用を許可した時、ランサーは手に持っていた二つの槍の一本を足元に落とした。それだけでその槍が宝具では無いと思い込んでしまった。
その所為で、手痛い反撃を食らってしまった。幸いなのは、直前で直感が働き胸への直撃だけは避けたが、その代価に左腕の腱を切られてしまい、親指が動かなくなっていた。
しかも、ランサーの宝具の効果なのか、先程からアイリスフィールが懸命に治癒を施してくれているが、一向に直る気配が無い。
ランサーはセイバーが動かないのを見て、右手に赤の長槍を、左手に黄色の短槍を握り悠々と構える。
「鎧を捨てたのは早計だったな、セイバー。もし、鎧を捨てていなければ、我が
ランサーは手に持つ槍を、まるで翼を広げるかのように大きく掲げながら悽愴の笑みでセイバーを見据える。
「…………もっと早く気付くべきだった」
魔を絶つ赤槍、呪いの黄槍、そして右目に存在する乙女を惑わす泣き黒子。
この特徴を持つ英霊は只一人。ケルト神話の英雄譚に名を綴られるその名は……。
「フィオナ騎士団随一の戦士、輝く貌のディルムッド。まさか手合わせの栄に与るとは思いませんでした」
アーサー王伝説と類縁に当たる伝承の人物。セイバーが気付けなかったのが不思議であるくらいの英雄だった。
「それがこの聖杯戦争の妙であろうな。……だがな、セイバー。誉れ高いのは俺の方だ」
真名を看破されながらも意に介さず、むしろ清々しいと言える面持ちで答える。
「英霊の座に招かれた者ならば、その黄金の宝剣を見間違えぬ。……かの名高き騎士王と鍔迫り合って、一矢報いるまでに到ったとは……。この俺も捨てたものではないらしい」
先程の戦闘の際に、ランサーの
ランサーはその剣を見て、セイバーの真名を看破していた。
「さて、互いの名も知れた所で、漸く騎士として尋常なる勝負を挑めるわけだが…………、片腕を奪われた後では不満かな?セイバー」
「戯言を。この程度の手傷に気兼ねされたのでは、むしろ侮辱だ」
セイバーは表面上毅然と言い放つが内心では歯噛みをせずにいられなかった。
本来ならば、気にする必要も無い程度の傷だった。だが、ランサーの宝具、
恐らく、槍本体を破壊すれば解呪されるかもしれないが、確証は無い。そして、セイバーの宝具である
しかし、そんな窮地に立たされていてもセイバーの戦意は萎えない。寧ろ先程よりも昂っていた。
「来るがいい、ランサー。先の一撃で仕留め切れなかったことを後悔させよう」
左手が使えない事など微塵も感じさせないその闘気に、ランサーは答える様に笑みを浮かべながら戦意を高める。
「覚悟しろ、セイバー。次こそは獲る」
「それは私に獲られなかった時の話だぞ、ランサー」
互いの闘気が高まり、まさに一触即発の状態。
その状況を破るように両者が足に力を込めた瞬間。
「
雷鳴と共に新たなサーヴァントが現れ戦場を蹂躙した。
「それは本当か?綺礼」
『はい、間違いありません』
戦場となっている倉庫街から、遠く離れた位置に存在する自らの工房で、弟子であり同盟相手である言峰綺礼からの報告に、遠坂時臣は頭を抱えたくなった。
『セイバーとランサーの戦いに新たなサーヴァントが乱入し戦闘を中断させ、その場で自らの真名を明かし、自分に聖杯を譲り、その上で自身の軍門に下るように勧誘しておりました』
乱入までは理解できる。漁夫の利を狙い、横から攻撃を仕掛けるのは、戦いにおいて古くから使われてきた手立てだ。
しかし、それが目的ならば、戦闘を中断させる理由は無い。それどころか聖杯戦争において最も秘匿せねばならない真名を自ら明かした上に、聖杯を譲るように言った上で、配下につけと言われて了承する英霊が存在していると思っているのだろうか。
「征服王イスカンダル…………。一体何処まで破天荒な英霊なのだ…………」
遠坂家に伝わる以前の聖杯戦争とは、全く異なる状況が連続して訪れている。その事に、時臣は溜息をつきたくなった。
だが、まだ修正できる範囲の出来事である。そう判断し更なる情報を求め、綺礼に対し問いかける。
「綺礼、他に何か情報はあるか?」
『…………不味いことになりました』
正直これ以上の奇天烈な情報は欲しくなかった。しかし、聞かないという選択肢は存在しない。
「……何があった」
『ライダーがこう言い放ちました。「顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ」と…………』
今度こそ時臣は頭を抱えた。あることを知っていたからだ。
この類の挑発を絶対に見逃さない英霊こそがが己のサーヴァントであることを。
倉庫街に集った三人の英霊の傍に佇立する街灯の頂上に、黄金に輝く甲冑を纏った英霊、アーチャーが現界した。
「我を差し置いて王を自称する不埒者が、一夜のうちに二匹も湧くとはな」
現界した途端、不愉快そうに口元を歪めながら、眼下の三人のサーヴァントを侮蔑の視線で見下す。
「難癖をつけられたところでなぁ……。イスカンダルたる余は、世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが」
「たわけ」
ライダーの言葉を一刀両断に斬り捨てる。
「真の王たる英雄は、天上天下に我ただ独り。あとは有象無象の雑種に過ぎん」
侮辱と言うには度が過ぎる発言にセイバーは色めき立つが、ライダーはそれを受け流し、溜息をつきながら、問いかける。
「ならば、まずは名乗りを上げたらどうだ?貴様も王たる者ならば、己の威名を憚りはすまい?」
「ほう…………」
ライダーの問いにアーチャーは目を細め、睨みつける。
「問いを投げるか?雑種風情がこの我に?」
瞬間、アーチャーから怒気が吹き上がる。その勢いは足下の街灯のガラスを触れずに砕き、思わず三人のサーヴァントが身構える程のものであった。
「我が拝謁の栄に浴してなお、この面貌を見知らぬと申すなら、そんな蒙昧は生かしておく価値すら無い」
その言葉に反応するように、アーチャーの左右の空間が、ゆらりと歪み始め、その歪みの中から剣と槍が姿を現す。
「っ!?」
その光景に誰もが言葉を失う。今、出現した武器は只の剣や槍ではない。
明らかに通常の武器とは違う猛烈な魔力を放っていた。間違いなく宝具であると判別できた。
「光栄に思え。我の手に……」
そして、アーチャーがその宝具を射出して、殲滅を始めようとした瞬間。
左右から同時に黒剣がアーチャーに襲い掛かる。
「何っ!?」
アーチャーは即座に反応し、剣と槍を射出して二本の剣を打ち落とす。
「おのれっ!何者だっ!!この我の言葉を遮る不埒者がっ!!」
周囲を見渡し、自分に愚かにも襲い掛かった存在を探し出そうとした時。
「黒凪」
Q、ほぼ原作どおり?
A、嘘は言っていない。だって、原作バーサーカーみたいに素直に登場するシーンが想像できなかったんだよ……。
因みに、フィオナ騎士団にフィオナ・ソレイユは所属していませんので、間違えないように。