Fate/zero ~黒の魔王~   作:大嶽

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 いや、漸くバトルシーン入るなって思われてた皆さんには申し訳ありませんが、今回は第八話終了後の黒乃の視点からスタートします。本格的なバトルは次回必ず書きますので……。時間稼ぎなんてカンガエテマセンヨ?



 


第十話  開戦 ~黒乃視点~

海浜公園でセイバーとアイリスフィールと別れた後、桜を連れて帰宅した俺は、夕食を取り終えたばかりの雁夜を呼び出した。

 

 

「どうしたんだ?黒乃」

 

 

 雁夜が不思議そうに聞いてくる。普段から、情報交換などで会話をしているが、内容は必要になりそうな物資の補給や装備の入手を話し合うくらいで、いつも簡単に終わらせていた。

 

 だが、今回は悠長に話していられない。

 

 

「今日買出しに出かけているときに、敵のサーヴァントとマスターに遭遇した」

 

「なっ!?大丈夫だったのか!?」

 

 

 驚愕した様子を隠そうともせずに、雁夜が聞き返してくる。

 

 

「あぁ、相手の陣営も公衆の面前で戦うつもりは無かったらしくて、今回は見逃して貰えた」

 

「そ……そうだったのか…………」

 

 

 安心したように肩を下げているが、今回の件は運が良かったとしか言えない。

 

 もし、相手が一般人の目の前でも気にせず襲い掛かってきていたら。連れていた桜を狙われていたら。かなりの苦戦を強いられていただろう。

 

 

「それでだ、雁夜。暫くの間、桜に外出は控えるように言っておいてくれ」

 

「分かった。間違いなく言っておく」

 

 

 敵のサーヴァントが姿を現したという事は、聖杯戦争が本格的に始まる事を意味する。これ以上桜を連れて外を出歩く事は出来ない。

 

 雁夜が頷いているのを見て、更に言葉を続ける。

 

 

「俺も暫くは外で動き回る事になる。雁夜もこれからは周辺の警戒を怠らないようにしてくれ」

 

「大丈夫だ。それよりも黒乃の方こそ気をつけろよ」

 

 

 その台詞に思わず笑ってしまいそうになる。聖杯戦争で戦う為に呼び出した相手に対して、言う言葉では無いだろうと思った。

 

 だが、不思議と不快には感じなかった。召喚されてからの五日間の間で、俺は雁夜と桜に大分情が湧いてしまったようだ。少なくとも二人を死なせたくないと思う程度には。

 

 果たして、自分はここまで甘い男だっただろうか。そんな自問を心の中でしながら話を続ける。

 

 

「出来る限り努力はしてみるさ。戦闘になれば保証できないけどな」

 

「戦闘になったら俺も出来る限りのバックアップはするよ。最近は黒乃から貰った薬の御蔭で凄く調子が良いんだ」

 

 

 雁夜は拳を目の前まで上げ、握り締める動作をしている。

 

 体内の刻印虫の所為で、左半身の麻痺と消化器系の内臓などの不調が酷く、病人にしか見えなかったが、最近は妖精の秘薬の御蔭か、依然とは見違えるほどに回復していた。

 

 土気色だった肌は赤みを取り戻し、体の麻痺も少しずつではあるが依然のように動かせるようになってきていた。食事も流動食ならば受け付けるようになっている。

 

 

「無理はするなよ。普段ならまだしも戦闘に入れば雁夜を気遣う余裕は無くなる。もし、その所為で体の刻印虫が暴れだしたら……」

 

「それこそ心配いらないさ。確かに黒乃が俺の魔力を吸い出そうとしたら刻印虫が暴れだすかもしれないけど、前に試した時はそんなに酷くなかったから問題ないさ。それに、もしもの時は薬を使わせてもらうしな」

 

 

 この五日間で、雁夜と色々と実験を地下の蟲蔵で行ってきた。サーヴァントに付加されているスキルや霊体化や念話の確認。これらについては、スキルはあまり目ぼしいものは無く、霊体化はそもそも死んでいないからか、幾ら試しても出来なかった。念話も同じく使用できなかった。

 

 そして、現状の装備の確認も改めて行った。その際は雁夜は席を外してもらった。理由は、もし呪いの装備に雁夜が触れてしまったら危険な為そうしてもらった。

 

 あと、違う世界という事で黒色魔力が回復するか心配だったが、問題無く回復してくれた。

 

 

「何かあれば直ぐに使ってくれ。それと頼んでおいた物は届いてるか?」

 

「ああ、剣や斧とかの武器は届いてる。ただ、他の物についてはもう少し時間が掛かりそうだ」

 

 

 雁夜には魔 剣(ソードアーツ)用の武器や現代でしか手に入らない代物の仕入れを頼んでいた。海外の色々な場所を渡り歩いた時にできたツテを使って、本来なら日本で手に入れられない武器や道具を買い込んでもらった。

 

 その資金は雁夜が負担してくれた。申し訳なく思ったが、雁夜は「これくらいなら問題ないさ。それに俺の金じゃなくてあの爺が溜め込んでた金だからな」と言っていたので、これ幸いと色々頼んでしまった。その時に銃器も頼んでしまった俺は悪くない。

 

 

「それはありがたい、出発の前に置いてある場所に案内してくれ。早速だが使いたい」

 

「場所は倉庫に纏めて置いてある。桜が間違って触らないように箱に仕舞ったままだけど、見れば直ぐに分かる筈だ」

 

「分かった、受け取ったら直ぐに出る。もしかしたら今夜の内に戦闘になるかもしれない。その時は一度連絡する」

 

「それなら、蟲を一匹付けておく。コイツを通して伝えて貰えばこっちにも聞こえるから、もしもの時はこれを使ってくれ」

 

 

 雁夜の後ろから一匹の蟲が飛んでくる。確か視蟲(しちゅう)という偵察用の蟲らしいが、普通の虫よりでかい上に見た目がかなりキモい。さっきからヒツギが「ひぃぃぃぃっ!?」と悲鳴を上げている。

 

 

「……了解した。じゃあもう出発するよ」

 

「ああ、気をつけてな」

 

 

 その言葉を背に受けながら、歩き始める。

 

 まず向かう場所は何処にすべきか、その事を考えている時にふと思い出した。セイバー達と話した海浜公園の近くに人気の少なそうな倉庫街があった事を。

 

 

「まずは其処に行ってみるか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして海浜公園の隣にある倉庫街に到着したのだが……。

 

 

「あれが英霊の戦いか……」

 

 

 倉庫街が見える岸壁の上から二人のサーヴァントが戦っている様子を見ていた。

 

 片方は先程会ったセイバー。その姿は先程のダークスーツと異なり白銀の鎧と紺碧の衣装に包まれていた。

 

 もう一方は槍を振るっている事からランサーだと思われる。ただし、通常と異なり二本の槍を変幻自在に操っていた。

 

 どちらも一歩も譲らない激しい打ち合い。その余波だけで周囲の地形が変わっていく。

 

 

「まるでランク5冒険者同士の戦いだな……」

 

 

 あれで、制限された能力だというのだから恐れ入る。もし、制限が無かったらそれこそ使徒並みの強敵だったかもしれない。

 

 だが今の制限された状況なら勝機は残っている。簡単に勝てる相手では無いだろうが、今の自分なら少なくとも一方的にやられることは無いだろう。

 

 それに相手の真名が分かれば、その正体によっては勝率は上がる。英雄の伝承にはその死因が載っていることが多いので、その通りにすればもしかしたら楽に倒せるかもしれない。

 

 そう思いながら観察を続けていると……。

 

 

「動いたか」

 

 

 遂に戦況が動き始めた。どうやらランサーが攻撃を当てたらしく、ここからでもセイバーの脇腹が斬られたのが伺える。

 

 そしてセイバーの体から鎧が消え、ランサーに向けて猛烈な勢いで突撃したが、途中で自ら体制を崩し互いの腕に傷をつける形に終わった。

 

 ランサーは既に斬られた腕を動かしているが、セイバーはダラリとぶら下げたまま。もしかすると想像以上に深手を負ったか、あの槍の効果で動かないのかもしれない。

 

 ならば今こそが好機。奇襲するならこのタイミングで狙うのが一番だろう。問題があるとすれば……。

 

 

「どっちを先に仕留めるか……」

 

 

 手傷を負ったセイバーか、それとも厄介そうな槍を持ったランサーか。

 

 少々の時間思考した末に、まずはセイバーを狙う事にした。手負いの今なら奇襲すれば一撃で仕留められるかもしれないし、彼女の技量を考えると今ここで倒せれば後々楽になる。

 

 ランサーについては、最初は遠距離からの攻撃に徹する。あの素早さは危険であるし、武装があの二本の槍だけならば近づかれなければ問題ない筈。もし他の攻撃手段が出てきたらその時に対応しよう。

 

 そこまで考えて傍らで浮かんでいた視蟲(しちゅう)に対し、これから戦闘に入る旨を伝えたようとした時に視界の端に光が入った。

 

 何かと思いそちらに視線を移した時、思わず呟いてしまった。

 

 

「……なんでさ」

 

 

  光の発生源はセイバーとランサーの後方の空の上。其処に二頭の牛に引かれた戦車(チャリオット)が周りに雷を撒き散らしながら駆けていた。

 

 

「いやいや、幾らなんでも可笑しいだろ」

 

 

 俺自身、火竜(サラマンダー)天馬(ペガサス)等のファンタジーな生物を何度も見てきたし、色々な魔法も見たが、あんな代物は見たことがない。

 

 というか何で戦車が空を飛べるんだ?しかも引いてるの馬じゃなくて牛だし。それに雷まで出てる……。

 

 

「英雄さんってすごいんですね~」

 

「…………そうだな」

 

 

 否定したいが無理だった。あれが本当に昔に実在していたのなら、現代映画で戦車が出てくるシーンは全て作り直しになるだろう。

 

 地上で歩兵がぶつかり合うその上で戦車が空を飛びながら突撃している光景はさぞシュールなシーンになるに違いない。

 

 そんな現実逃避をしていると、戦車がセイバーとランサーの間に着陸し乗っていた赤髪の大男が両腕を上に広げながら叫んだ。

 

 

『双方、武器を納めよ。王の御前である!』

 

「凄い声だな……」

 

 

 登場が派手なら声まで凄い。離れたこの位置まで届いている。

 

 乗り物に乗っている事から恐らくライダーだと思うが、あのサーヴァントの登場の所為で状況が一変してしまった。これでは奇襲しようにも出来ない。

 

 ライダーらしき男がセイバーとランサーに何か話かけている。どうやら二人に対し交渉をしているようだったが失敗したらしい。落ち込むように下を向いていたが、どうやらあの戦車に同乗していたらしい少年がライダーに掴みかかって抗議している。何とも哀れというべきな光景だった。

 

 先程までの殺伐とした空気が完全に吹き飛んでしまっている。こちらの戦意も萎えてしまいそうだった。

 

 だが、それも直ぐに終わった。辺りにランサーのマスターらしき男の声が響き渡りそれに対しライダーが大声でその言葉を捻じ伏せていた。

 

 そして周囲を見渡しながら先程以上の大きさで吼える。

 

 

『聖杯に招かれし英霊は、今!ここに集うがいい。なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!!』

 

「…………そんな見え透いた挑発にのる奴なんていないだろ」

 

 

 侮蔑・嘲笑大いに結構。寧ろしてくれた方がありがたい。その分付け入る隙が出来るし、倒すべき相手に弱者だと思われたほうが実際に戦った時に動揺を誘いやすい。だから存分に慢心してくれ。

 

 と思っていたのは俺だけの様だった。

 

 

「…………俺が間違ってるのかな」

 

 

 倉庫街に立っている街灯の上に光が集まっていく。英雄とまで呼ばれる存在がここまで沸点が低いのはどうかと思うのだが……。

 

 そして三人のサーヴァントと対峙するように街灯の上に金色の鎧を纏ったサーヴァントが現れる。既に四つのクラスは埋まっているため残りはアーチャーとキャスターとアサシンのみ。

 

 アサシンはあんな目立つ装備はしないだろうから除外。またキャスターも同じくあんな重そうな鎧は着けないだろうから除外。ならばアーチャーに違いない。

 

 あくまで想像に過ぎないが、間違っていないだろう。しかもこれは好機だ。

 

 まだクラスこそ完全に判明していないが、恐らく遠距離を得意とするであろうクラスのサーヴァントが前線に出てきて無防備に姿を晒している。これを狙わずにして何を狙うか。

 

 すかさず視蟲(しちゅう)に合図を送り、影空間(シャドウゲート)から『絶怨鉈「首断」(ぜつおんなた くびたち)』と『暴食牙剣「極悪食」(ぼうしょくがけん ごくあくじき)』を取り出す。

 

 首断からは魔力が吹き上がり、極悪食もギチギチと唸りを上げている。両方とも戦意は十分なようだ。

 

 

「ふっふっふっ~、今宵のナタ先輩とワンちゃんは血に餓えているのです~」

 

 

 間違ってはいないが間違ってる。余計な知識ばかり覚えやがって。テレビなんか見せなければ良かった。

 

 若干文明の利器に汚染されてしまったヒツギを放置して、岸壁から飛び降りる。そして着地の瞬間に足の裏に黒色魔力を形成して衝撃と音を吸収する。

 

 奇襲をするのにザ・グリードを使わないのは単純にこの場での使用に向かないからである。機 関 銃 形 態(モード・ガトリングゴア)では遠距離からの狙撃には不向きであるし、雷 砲 形 態(モード・ブラスターギル)では雷魔力のチャージ光で気付かれてしまう恐れがある。それに『荷 電 粒 子 砲(プラズマブラスター)』の威力だとこの位置からでは、下手をすると近くの橋や市街地に届いてしまう可能性もある。少々位置取りが悪かったのだ。

 

 他の武装では一撃で仕留められるか分からない。そう判断して、接近してからの攻撃を選択したのだ。

 

 音を立てないように静かに、それでいて迅速にあの金色のサーヴァントの後方に向かい駆ける。

 

 そして、素早くコンテナの上に陣取ると、影空間(シャドウゲート)から二本の黒化剣を取り出す。出発前に雁夜から受け取った物なので黒化しか施していないが、牽制が目的なのでこれで十分。

 

 「魔 剣(ソードアーツ)

 

 黒化剣を敵の左右から同時に襲い掛かるように動かしながら、自身もすかさず動き出す。

 

 狙うは上空からの一撃。黒化剣に気を取られている隙に初撃で討ち取る!

 

 そして、狙い通りに黒化剣が金色のサーヴァントに襲い掛かりるが、左右に浮いていた剣と槍に打ち落とされてしまう。

 

 何となく俺の魔 剣(ソードアーツ)と似ているな、とそんな感想を抱きながらも跳躍し真下に敵を捕らえる。

 

 

「おのれっ!何者だっ!!この我の言葉を遮る不埒者がっ!!」

 

 

 どうやら、かなりご立腹のようだ。だが、戦場で悠長に話している方が悪いのだ。

 

 

「黒凪」

 

 

 必殺の思いを込めて渾身の一撃を未だにこちらに気付いていないだろう相手に振り下ろそうとした瞬間。

 

 真紅の輝きを灯した瞳がこちらを捉えた。

 

 「くっ!」

 

 もう少しで当たるという所で新たに剣と槍が交差するように出現し黒凪を受け止めた。只の武器ならば、諸共両断出来る威力があるのに槍の柄と剣の刀身の半ばまで食い込むだけで終わってしまった。

 

 更に次々と新たな宝具が出現し、こちらへと轟音と共に射出される。

 

 それをかわす為に、首断が食い込んでいた剣と槍を足場に後ろへと跳躍する。そして追い縋るように飛んで来る剣や槍、斧を両手の首断と極悪食で弾き落とす。

 

 何とか地面に着地し、改めて敵のサーヴァントの姿を見据える。その眼差しは怒りの色に染まっており、何となく狂 化(バサーク)状態を思い出させる。

 

 

「貴様…………」

 

 

 ゆらり、とこちらに体を向けるとおもむろに両手を左右に広げ、今まで以上の激情を発した。

 

 

「この我に対し、無礼な振る舞いをした上に、我が宝物を傷つけ足蹴にするとは!!余程死にたいようだなっ!!狂戦士!!!」

 

 

 その怒号と共に後方に大量の宝具が姿を現す。ざっと見積もっても三十は下らないだろう。その種類も様々で一つとして同じ意匠の物は存在しない。そして途轍もない魔力を秘めているのがひしひしと感じられる。

 

 

「……不味いな」

 

 

 奇襲が失敗した上に相手の逆鱗に触れてしまったようだ。それにあの数の宝具が一斉に襲い掛かってくるなど考えたくもない。

 

 いや、恐れるな。ここで臆するようでは使徒を相手に勝つ事なんか出来ない。これは言わば向こうに戻った時の為の前哨戦。

 

 

「さあ、魂の一片も残さずに消え去るがいいっ!!」

 

 

 俺は必ず勝ち残ってリリィとフィオナの下に戻る!

 

 両手の首断と極悪食を握りしめている手に更に力を込め、猛然と襲い掛かる宝具の群れに立ち向かった。




 黒乃の 戦いは これからだっ!!

 いや、終わりませんけどね。一度言ってみたかっただけです。

 さて、いきなりマジギレモードの英雄王。原作以上に激しい攻撃に黒乃はどう対応するのか!?

 次回「激闘」お楽しみに!


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