「シリアスなのが読みたいんだよ!」という人はIFルートはネタが皆無な内容なので、そちらをどうぞ。
「全く騒々しいのぅ小僧。少しは落ち着いておれんのか?」
「お前にだけは言われたくないわ!!」
目の前の光景を俺はどう認識すれば良いのだろう。漫才の掛け合いにしか見えないそのやり取りに肩の力が抜けていく。
とりあえず直ぐに戦闘になる様子は無さそうだ。なら、さっきの言葉の意味も知りたいし一度話してかけてみるか。
そう考え、声を掛けてみる。
「……じゃれ合いはそれくらいで良いか?」
「ひぃっ!?しゃっ喋った!?」
喋って悪いか?ああん?と言ってしまいそうになったがなんとか堪えた。そういえば普通に喋っていたが、今の自分はバーサーカーだという事を忘れていた。前からそうだろうという突っ込みは受け付けない。
だからといってバーサーカーらしい喋り方なんて知らな……。
『ふんぶるぐいぁああぇえあおおっ!!』
……………………………………。
『ぶぅうぇえええええええええいっ!』
バーサーカーらしい喋り方なんて知らないし、俺は俺らしく行こう。
「俺が喋ることに何か問題でもあるか?」
「いえ!ありません!」
まるで子羊のようにプルプル震えながら返事をしてくる少年を見ていると、心の中に何か得体の知れない感情が芽生えてくる。それを振り払うように言葉を続ける。
「なら良いが……。で、さっきのはどういう意味なんだ?」
「うむ、先程のお主の戦いぶりを見て、是非とも我が配下として手に入れたくなったのだ」
一時的な同盟相手としての勧誘ならまだしも、バトルロイヤル形式の殺し合いの中での部下の勧誘は成功しないと思うんだが……。
「……そうか、かの有名な英雄イスカンダルに勧誘されるとは光栄だ」
「おぉ!では余の配下になるか?」
「断る」
改めての問いかけに対して即座に切り捨てると、一瞬ビシッと固まった。だが、直ぐに不満そうな顔をしながら更に言葉を続ける。
「何が不満なのだ?待遇なら要相談だが受け付けるぞ?」
「別に待遇の問題じゃない。ただ、俺とあんたでは絶対に相容れることは無い。それだけの話だ」
もしこれが高校生としての俺だったのならば深く考えずに受けていたかもしれない。何せ相手は歴史に詳しくない人でも知っているほどの有名な偉人だ。
イスカンダルの別名はアレクサンドロス三世。世界で一番多くの領土を征服によって勝ち取り大帝国を作り上げた英雄である。
その武勇と栄誉、そして中世ヨーロッパにおいて騎士道を体現する偉大な英雄として信じられている九偉人の一人に選ばれている。
これを聞けばそんな英雄からの誘いを断るなんて頭がおかしいと言われるかもしれない。だが、俺が彼と同じ道を歩く事は出来ないと断言できる。
何故ならば、彼の行く道は
その所業は何処か十字軍の連中を彷彿とさせる。あいつらのように異教徒は皆殺しというふざけた考えは持っていないだろうが、それでも今の俺にはそれを受け入れる事は出来ない。
「うぅむ。お主なら余の世界を征服するというこの大望に賛同してくると思ったのだが……」
「悪いが、俺には世界の征服なんて興味が無い。諦めてくれ」
「仕方あるまい。こうなればお主らに我が覇道を見せ付け、自ら我が軍門に下らせてくれるわ!」
諦めてないんかい。まぁ英雄といっても元は人間なんだから我侭も言うのだろうけど、これはしつこく言われそうだ。何で俺なんかに目を付けたんだろう。
「まぁ俺は無理だから他の人に期待してくれ」
「そこの二人にも聞いてみたのだが、断られてしまってのぅ。なぁやっぱり駄目か?
「さっきも答えたが答えは変わらないぞ、征服王。俺が忠義を捧げる主はただ一人のみ」
「当たり前だ。何故私が貴様の配下にならねばならないのだ」
どうやら俺より先に他の二人にも勧誘していたようだ。今ももう一回聞いてみているが、素気無く断られていた。
名前は分からないけど騎士王とランサーも英雄の一人だ。いきなりあんな事言われて了承するほうが驚く。
ん?騎士王とランサー?
…………騎士王?
「ん?どうしたバーサーカー。俺の顔に何か付いてるか?」
この無駄にイケメンの方は装備からして明らかにランサーだ。無駄に良い声だし、手に二つの槍を持っている。ならこっちは違うだろう。イケメンは爆発しろ。
だったら…………。
「何ですか?クロノ。こっちを見ていますが」
「おい騎士王!お主バーサーカーの名を知っているのか!?」
ライダーの発言で確定した。セイバーが騎士王だった。
いやいや待て待て。えっ?セイバーが騎士王?あのアーサー王?明らかに女じゃん。いや確かに中性的な見た目だけど男って言うのは無理があるだろ。
「あぁ、ここに来る前に一度会っている。その時に彼の名を聞いた」
「何と!?いや、まだ分からんぞ騎士王!あやつの答えは未だ保留。どちらが先にあの男を手に入れるか勝負と行こうではないか!」
歴史では男で書かれてるのに、実際は女ですって何処のラノベの設定だよ。幾らなんでも無理があるだろ。これじゃあ他の円卓の騎士も実は女だったり変態だったりとか色々可笑しくなってそうだわ……。ていうか、何であんな女性らしい格好なのに男と間違えるとかそっちのほうが難しいわ。
「それは流石に当人の意思を無視して決める事ではないだろ、征服王」
「ランサーよ、この国には事後承諾という良い言葉があるではないか」
いや、待てよ。別に其処までおかしくはないか?なんせ異世界には見た目完全に美少女なのに実は付いてるリアル男の娘もいるくらいなんだから、別に男装をした美少女王がいてもそこまで変では無い。うん、変じゃない。
「いや、待てライダー。それは王たる者が使う言葉では無い」
「うん?しかしこの間のTVとやらで見たときは現代のこの国では王や側近たちはこのやり方で国を治めていたぞ?」
「止めろ、それ以上その話題に触れるな」
そこに触れられると日本人として辛い部分がある。確かに民衆から集めた血税を知らないところで無駄に消費したりしているが、今はそっとしておいて欲しい。
「……で、この後どうするんだ?戦うのか?」
この会話の御蔭で僅かだが魔力も回復した。この三人は協力し合っている訳では無いようだから、囲まれて一方的に攻撃される可能性は減った。ならこの場で戦うのも吝かでは無いが……。
「いや、今日のところはこれで解散としようではないか」
「うぉいこらぁ!!何勝手に決めてんだよ!!」
「何だ坊主。もう怯えるのは良いのか?」
「だっ誰が怯えてるっていうんだよ!ていうか何でここで帰るんだ!?」
今まで隠れていたライダーのマスターが戦車の御者台の中から顔をひょっこりと出しながら文句を言っている。
そしてその言葉にライダーがしたり顔で答える。
「簡単な事よ、今のバーサーカーはあの金ピカとの戦いで少なからず消耗しておる。そんな状態で仕留めるなんぞ余の矜持が許さんからよ」
「そんなこと関係ぴぎゃっ!」
「もうお主はだまっとれ」
本日三回目のデコピンが叩き込まれ、とうとう沈んでしまった。完全に主従関係が逆転している。
「では、我らはこれで退かせてもらうが、お主らはどうする?」
「俺も退かせて貰おう。我が主からもそう指示が来たのでな」
ライダーに続いてランサーも撤退の意思を示した。そしてランサーがセイバーに顔を向け不適な笑みを浮かべながら言い放つ。
「セイバー、お前は必ずこの俺が討ち取ってくれる。それまで俺以外にその首取られるなよ」
「何時でも来るがいい。返り討ちにしてみせよう」
セイバーも同じような面持ちで答える。それを見ていたライダーがおもむろに戦車を引いている牛に向かって鞭を入れた。
「では、さらば!!」
「また戦場で会おう、セイバー」
ライダーは登場した時のように轟雷を響かせながら空を駆け去っていった。ランサーも霊体化してその姿を消した。
今この場に残っているのサーヴァントはセイバーと俺の二人のみだった。
「クロノ、貴方はどうするのですか?」
セイバーが俺の方を向きながら話しかけてくる。口調こそ他の二人に比べ柔らかめだが、その目は戦意しか感じられなかった。例え負傷していてもそれを微塵も感じさせないその振る舞いに誇り高い気高さを感じる。
「いや、俺も今日は退かせてもらおう。どうしても戦いたいのなら追って来ても良いがな」
「そうですか……」
「そうだ、一つ頼みがある」
ふと思いついた事だが是非頼みたかった。その言葉に意表を付かれたのかキョトンと目を丸くしていたが、直ぐに凛々しい眼差しに戻しながら問いかけてきた。
「……とりあえず聞いておきます。頼みとは?」
「あぁ簡単な事だ」
「握手をしてくれないか?」
「……えっ?」
「いや、俺君のファンなんだ。だから是非握手してくれ」
他人からしたらお前戦場で何やってんだよと言われるだろうけど、これは譲れない。
分かりやすくいうならば大好きなアイドルや有名人が目の前に居る状況なんだぞ。しかも相手はあの世界でもトップクラスに有名なアーサー王。
文芸部員としてこれが興奮せずにいられるか!?いや、無い!!
「はぁ……まぁそれくらいでしたら……」
彼女からしたら予想外過ぎる言葉だったのだろう。先ほどまでのキリッとした表情が消え普段ならしないであろう表情をしながら手を差し出してくる。
いや、駄目元で頼んでみるもんだな。
「ありがとう、本当に嬉しいよ」
「そう……ですか……」
差し出された手に自分の手を重ね握手をする。まさかあのアーサー王と握手出来るなんて思わなかった。今までこれほど興奮した事があっただろうか。
握手をしている間、セイバーは微妙な表情をしていたので、あまり長くしているのも失礼かと思い手を離した。
「これで良かったのですか?」
「あぁ、ありがとう。良い思い出になった」
思わず口元が緩んでしまいそうになるのを堪えながら答える。
セイバーが差し出していた手を気にしている様子だったが、流石に握手は不味かったか?
少し気まずく感じたので早々に退散しよう。
「じゃあ俺はこれで失礼する。次が何時になるか分からんが、その時は全力で戦わせてもらう」
「それはこちらの台詞です、クロノ」
何処までも真っ直ぐだな。
そんな感想を思いながら足に力を込めて飛び上がり、近くのコンテナの上に着地し駆け抜ける。
今回の戦いは色々と勉強になった。真正面からの戦闘で彼らに勝つのは厳しい。だからこそ彼らの伝承を調べ上げ弱点を付く戦い方が必要になってくる。
まさかこんな所で昔調べて蓄えた知識が役に立つとは思わなかった。自分の中の何かが削られる気がするが、勝つためだ。仕方ない。
「それにしても……」
あの場では気にしないようにしていたが……。
「あの二人似てなかったな……」
イスカンダルの子孫に当たるアーサー王。祖先と子孫が同時に存在するという奇跡の光景。それに対して俺が思ったのはそんなことだった。
英雄との殺し合いの後とは思えない事を呟きながら俺は雁夜と桜が待つ家へと戻っていった。
力量不足でネタに走ってしまい申し訳ありません。
ウェイバーが震えているシーンで、
ミア「ぷるぷる、僕は悪い
とコスプレしたミアちゃんを思い浮かべた私はギルティされるべきでしょうか?