元々この話は短くても入れるつもりでした。
シリアスっぽい何かな出来な上に、他の話と比べると半分くらいの短さですが読んでみてください。
「やっぱり向こうと比べると全然違うんだな……」
俺は今、間桐邸の屋根の上で周囲の景色を見ていた。
雁夜との会話の後、部屋へと案内されて解散したが、とても休む気分ではなかったので外へと出てきたのだ。
今、俺の目の前に広がっているのは少し前なら当たり前だった風景。
所々にある街灯の灯り。
コンクリートで作られた道路や建物。
排気ガス等の影響で星の光が少なくなった夜空。
どれも今では遠い昔の事だったように感じる物ばかりだった。
向こうの世界に飛ばされた当時、渇望した光景。
もし、十字教の施設から抜け出した直後に帰還しこの景色を見ていたのなら、俺は感激のあまり涙を流していただろう。
「俺は……」
だが……。
「俺は今帰ってくる事なんて望んでなかったっ………!」
そう。俺は確かに日本への帰還を望んでいた時はあった。けどそれは今じゃない。
もしこれがリリィやフィオナ達に出会ったばかりの時ならば、心配をしつつもこちらの世界で過ごしていたかもしれない。
スパーダで過ごし始めた時ならば、一人平和な世界に居る事に後悔しながらも此処で暮らしていたかもしれない。
全てIFでしかない。もしその時にそういう状況になったら、今考えている事とは別の行動をしている事だって十分にありえる。
もし、諦めていた故郷への帰還が実現し、その後でまた向こうの世界に戻りたいかと聞かれると、もしかすると否定していたかもしれない。
逆に、最初の時点で故郷に帰還する事を拒否し、一生を向こうの世界で過ごすことを望んでいたかもしれない。
全て想像でしかない以上、明確に「この時ならこうしていた」と断言して答える事は出来ない。
だが、今は違う。今この場所に帰って来る事は望んでいなかった。
今自分が居るべき場所はココでは無く、見るべき景色はコレではない。本来ならばサリエルが逃亡した場所へといる筈だったし、目の前にはあいつの死体がある筈だった。
今居る場所は黒乃が望んだ状況とは正反対と言うべきであった。こんな事になってしまった原因の人物に対して何度怨みをぶつけようかと思ったことか。
ようやく復讐を遂げられる所だったのに。
ようやく仲間達の仇をとることが出来る所だったのに。
そう思うと緩く握り締められていた拳は皮膚を引き裂かんばかりに握りこまれ、口からは砕けてしまうのではないかというほどの歯の軋む音が聞こえてくる。
何故今なんだ。何故あのタイミングでこんな事が起きるんだ。
まるで運命がサリエルを殺す事は許さないとでも言っているかのような状況だった。
正直、雁夜から話を聞いてる最中、暴れまわりたい気分であった。
雁夜が俺を召喚したのは、全くの偶然であり事故。彼に落ち度は無い。出なければ話し始めた段階で、怒りのあまりに彼の顔に拳を叩き込んでいただろう。
それでも、落ち度が無いと分かっていても、雁夜に対して怒りが込み上げてきた。見当違いなのは分かっているがそれでも抑えきれない。
雁夜と話してる間は何とか平静を装い誤魔化していた。
だが、こうして今一人きりの状況になってからはとてもでは無いが感情を押し殺したままでいる事は出来なかった。
だから、頭を冷やす事と心の整理を兼ねて間桐邸の屋根の上まで無断ではあるが来ており、少しでも落ち着くためにも嘗て見慣れていた町並みを眺めていた。
昔の自分ならこの夜景を見てもあまり遠くまで観察するのは難しかっただろう。
しかし、望まぬ事とは言え、向こうの世界で身体能力が常人とは比べ物にならない程上昇した今なら、目に映る景色の細部まで認識できる程鮮明に映し出されていた。
その景色を見ながら黒乃は呟く。
「万能の願望器……」
聖杯と呼ばれるこの世界の魔術師と呼ばれる存在が作り出したどんな願いも叶えると言われている物。正直疑わしいものであった。
確かに、普通ならば実現できない事象もこの聖杯とやらを使えば叶えることが出来るかもしれない。だが、黒乃は知っている。例え神であろうと叶える事が不可能に等しい事を。
死者の蘇生。
此方の世界の神話や伝承では度々見かけているが、あれはあくまで物語の中の出来事。本当に出来たのかと問われると誰も答える事は出来ないだろう。
向こうの世界は実際に神が人に対し己の加護を与える事が出来るほど此方に比べると身近な存在であるが、それでも死者の蘇生が出来る程の力は持ち合わせていない。
長い歴史の中でも成功した例は唯の一度。黒乃に加護を与えた黒き神「魔王 ミア・エルロード」に対して行われた時のみである。
ただし、それも彼女(?)の仲間である当時最高レベルの治癒術師が己の命を代価に成功させたと言われている。後に神と呼ばれ、神格化した存在が自身の全てを捧げて漸く成功する可能性が出てくる事象を、高々人間の魔術師が作り上げた程度の代物で出来るとは到底思えない。そんな代物をわざわざ「万能」とまで謳っている時点で
だが、異世界への転移だけに関してならどうだろうか。
世界の壁を越えて別の世界へと跳ぶ。
それならば、相応の準備をすれば人の手でも行えるだろう。
現に十字教の連中も黒乃も含め、何十人という日本人を召喚し、実験体にしていた。それに、迷い込む形で向こうの世界に跳んでいた人間も多数いる。
唯一の懸念は時間である。向こうと此方の世界の時間軸が異なる事は以前確認している。
だから此処で何日か過ごしてから戻れば、向こうでは何十年・何百年と時が流れているかもしれない。もしそうなれば、パンドラ大陸は十字教に支配され、仲間達や知り合った人々は殺されているかもしれない。
そんな未来など黒乃は望んでいない。それに抗う為に今まで戦ってきたのだから。
だが、もし聖杯の力が本当にあるとすれば時間の逆行も可能かもしれない。いや出来てもらわなければ困る。
あの時、サリエルとの戦いの時に戻れたのならば。その時は必ず仕留めると断言できる。
だからこそ、この聖杯戦争とやらを勝ち抜き聖杯を手に入れよう。黒乃はそう自分に誓った。
考えに浸っているうちに何時の間にか空が明るくなっていた。思ったよりも時間が経過していたようだ。
黒乃が視線を向けた先には太陽が半分以上顔を出していた。それを見て思い出すのは二人の仲間の姿。
輝く光を纏った妖精 リリィ。太陽のように輝く瞳を持った少女 フィオナ。
「リリィ、フィオナ。俺は必ず二人の所へ帰るよ。だから少しだけ待っていてくれ」
改めて黒乃は誓う。必ず二人の下へと帰還することを。
そして……。
「そして次こそは必ず……。サリエル。お前を殺す」
仇敵の必殺を成し遂げる。
朝日に照らし出された町並みを目にしながら黒乃は己の想いを口にした。
短い上にかなり駆け足で進んでいる気がする……。クオリティも低いし……。
やっぱり私にはシリアスは無理なのかな……。ギャグなら幾らでも書ける気がする(断言)
後ほどですが、活動報告にてこの作品の裏設定的なものと現時点までの解説を上げます。何で「クロノ」表記ではないのか?とかを書きますので良かったら読んでみて下さい。
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