ダークにかつほのぼのなんて難しすぎる……。
という訳で前回のシリアス的な話は頭から消して読んでください。じゃないと違和感バリバリです。自分で書いておきながら作者自身「あれ?何時の間にかギャグっぽくなってる……」と感じてますので。
今回はほのぼの&ギャグ風味です。後原作では出てきてないオリジナルの黒色魔力の使い方も出てますのでご注意を。
原作の雰囲気を守りたい人は読み飛ばしてね!
「ふあぁぁ……」
「随分とでかい欠伸だな。昨晩は寝れなかったのか?」
黒乃が召喚された日の午後。黒乃は間桐邸のリビングに雁夜と二人で居た。
夜が明ける前に解散し就寝している雁夜から大きな欠伸の音が聞こえてきた。
「いやまぁ、昨日は色々あったからなぁ……」
黒乃の召喚。臓硯の死。それ以外にも細々とした出来事はあるが、大きな事であればこの二つである。
今までの環境がガラリと変わったことで、昨晩は中々寝付けなかったのだ。
「そうか。体調のほうは?」
「あぁ、それなら大丈夫だ。むしろ今までより良いくらいだよ。本当に凄いな、その薬は」
雁夜は目の前の机の上に置かれている袋に目を向ける。
それは雁夜が起床した後、黒乃から貰った物であった。中身は粉薬で、体調不良の原因が体内の刻印蟲に由るものだと聞いた黒乃が「傷にも効くしイケルか?」と思いつき渡したものだった。
「けど、本当に良いのか?こんな貴重そうな薬を貰っても……」
「大丈夫だ。実を言うとちゃんと効く保証も無かったしな。ストックもまだ有るから気にするな」
昨晩もう一度
「それなら良いんだが……。それにしてもどんな材料を使えばこんなに効き目のある薬が出来るんだ?これの名前エリクサーとかじゃないよな?」
「残念ながら
雁夜が固まる。冗談半分で口に出した言葉に普通にコメントが返ってきた上に聞き捨てならない言葉が出てきたからだ。
何でそんなに詳しいの?見た事あるの?
しかも妖精?妖精ってあの手のひらに乗るくらいの大きさのアレの事か?性別が女しかいないファンタジーの代名詞的なアレの事か?
「…………見た事あるのか?エリクサーを?しかも妖精って幻想種のアレの事か?それともただの薬の名前なのか?」
「以前に飲んだ事があるが、味はしなかったけど口当たりは酒に似てたな。アルコールが入ってるかどうかは知らないけど。薬の名前については妖精が作った秘薬だからじゃないか?実際俺の仲間の一人は妖精だし」
飲んだ事あるんかい。しかも仲間の一人が妖精ってお前、下手して現代の魔術師が聞いたりしたら血眼で襲い掛かってくるぞ。そんな情報ポンポン口に出すな。
「……それの事は外では言うなよ。他の魔術師共に聞かれたら間違いなく面倒事になるから」
「言うわけないだろ。俺がそんなに常識が無い様に見えるのか?心外だな」
頭の先から足の先までだけじゃなくて中身までファンタジーな存在が何を言うか。
「……他に何かそういうのはあるのか?この際だから今の内に言っておいてくれ」
下手に不干渉でいたら何時の間にか警察の厄介になっているとか俺は御免だぞ。
「……もしかして俺が元々現代の人間だって事忘れてないか?それにそれくらいの分別くらいつく」
「あっ」
「…………おい」
「いやすまん。」
完全に忘れていた。
「……まぁいいさ。そういう風に見られるのは慣れてる」
何処かやさぐれたように呟いていた。その背中には哀愁が漂っているようにも見えた。
「……悪い」
流石に可愛そうに見えたのでそう声を掛けた。黒乃は「大丈夫だ、問題ない」と返した後、立ち上がり近くの窓まで近づいた。
「それよりあの子は大丈夫なのか?かなり辛い目に合っていたらしいが…」
黒乃の視線の先には庭でしゃがみ込んで何かを見ている桜の姿があった。
「……正直分からない。俺も今まで気に掛けてはいたんだ。俺以上に辛い状況だったのだけは理解しているけど、今桜がどう思っているのかまでは分からない。あの子は感情を自分の中に仕舞い込んでしまったから……」
そう言いながら雁夜も窓へと近づく。
「俺は桜の本当の家族じゃない、けど本当の娘みたいに思ってるんだ。だから桜には幸せになってほしい。魔術師の家の娘としてじゃなくて普通の女の子の幸せを……」
少し前まで当たり前に過ごしていた日常を奪われ苦しんできた彼女に幸せな未来が訪れるように。
雁夜はそんな想いを込めながら彼女を見つめる。
「きっと大丈夫さ。こんなに想ってくれている
口元に笑みを浮かべながら黒乃はそう返した。
雁夜に対して色々と想う所はある。だがこの男が悪い男ではない事だけは分かる。今の雁夜の顔は紛れも無い父親としての顔をしていたからだ。
ならば、何時までも怒りを向け続ける事も無いだろう。それよりも聖杯を手に入れる事に協力してもらえるように友好的に接したほうが建設的である。
「おいおい、あんまり恥ずかしい事言うなよ。それに前は一緒に遊んだ事はあるけど、それも一年以上前の話だ。家族としてじゃなくて知り合いのおじさん位にしか思われてないさ」
肩を竦めながら雁夜は言う。書類上桜の家族になったとは言え、今までそれらしい事など何も出来ていないのだ。そんな自分が家族を名乗るのはおこがましい事だろう。
「なら確認しに行くか?」
そう言いながら黒乃はリビングの入り口へと歩き始める。
「おっおいっ。何処に行くんだ」
「何、家族なら庭先で一緒に遊ぶ位当たり前なんだし問題無いだろ?本当に家族と思われていないんだったら避けられるかもしれないけどな」
口元に笑みを浮かべながら雁夜に振り返る。何処かからかっているような雰囲気を出していた。
「……昨日の夜に避けられてたお前に言われてもな」
「それを言うな」
そう言いながら黒乃と雁夜は庭へと向かっていった。雁夜は久しく浮かべる事の無かった自然な笑みをしている事には気付いてなかった。
よく晴れた秋の空。その日差しの下で桜はある物を見ていた。
「何を見てるんだい?」
庭へと出てきた二人は桜の近くまで来ていた。しかし何かを熱心に見ていた彼女は全く気付いていなかった為、何気なく黒乃は声を掛けた。
「………………(ビクッ!!)」
桜はいきなり声を掛けられて驚き、その場で震えた。そして、振り向いた先に居る黒乃を見て、怯えているような雰囲気を出し始めた。
それを見た黒乃はいたいけな少女に怯えられて心にダメージを負った。そんなに怯えなくても良いじゃないか。いくら俺が怖い顔をしてるからって……。
「はははっ、大丈夫だよ桜ちゃん。この人はおじさんの知り合いでね。顔は怖いけど悪い人じゃないから安心しても良いよ」
ナイスアシストだ雁夜。けど顔については余計だ。
「俺の名前は黒乃真央って言うんだ、宜しく。良かったら君の名前も教えてくれるかな?」
「…………間桐桜です」
「そうか、なら桜って呼んでも良いかな?」
「…………(コクッ)」
「………………」
「………………」
か、会話が続かない。子供が初対面の相手に対してする対応としてはおかしくないが、今後暫くこの家に世話になるかもしれないのに、その家の子とあまり仲が良くないのは宜しくない。今まで小さい子供といえばリリィ位しか相手にしたことが無いから、内気な子供に対しての接し方なんて知らないし、どうすればいいんだ?
「あーっ桜ちゃん?さっきは何を見てたんだい?」
見かねた雁夜が助け舟を出した。それに対し黒乃が目で「ナイスだ」と伝えた。
「…………これ」
桜が指差した先にあるのはオレンジ色の花。
「これは……コスモスだったかな?」
コスモスは種類によって違うが秋に咲く花として知られており、また様々な場所で咲いているポピュラーな花である。
「見てて楽しいかい?」
「……あんまり」
確かに熱心に観察はしていたがあまり楽しそうではなかった。
「えっと、じゃあ何でずっと花を見てたんだい?」
「他に遊べるもの無いから……」
「………雁夜」
思わず雁夜を睨む様に見てしまう。それを受けて雁夜は気まずそうに目を逸らす。
「………臓硯は遊具なんて買う男じゃなかったし、俺も買う暇も金も無かったんだよ」
一応事情は聞いてはいたけど不遇すぎる。ならせめて今度何か買ってやれ。今は俺が何とかしよう。
「だったら桜。俺が面白い物を見せてあげるよ」
「??」
不思議そうに首を傾げる桜。黒乃はそれを見ながら右手を彼女に差し出すようにしながら掌に黒色魔力を集める。
「実は俺は魔法使いなんだ。だから……」
まさか黒色魔力の制御訓練でしてたことがこんな形で役に立つとはな……。
黒乃の掌に集まった黒色魔力は徐々に形を成していく。最初は唯の黒い塊だった。それが少しずつ人型に代わっていく。
「こんな事ができるんだ」
そして掌に生まれたのは黒色魔力で出来た妖精を象った人形である。
「……可愛い」
「……凄いなこれは」
雁夜と桜は出来上がった人形に釘付けとなっていた。
あんまり見られると正直恥ずかしい。モデルはリリィではあるが、本人そっくりとまではいかない。姿形はともかく顔なんかは目や鼻がなんとなく分かるくらいであまり出来が良いとは言えない。けどこうして驚いてもらえると中々に嬉しいものである。
「作るだけじゃないぞ。こうして……」
黒乃は掌の上の黒色魔力で出来たリリィ(命名黒リリィ)の人形に指令を送る。それを受けた黒リリィはフワリと浮き上がり桜の目の前に移動する。そしてペコリとお辞儀をした。
「うわぁ」
桜は目を輝かせるように黒リリィを見つめる。御伽噺に出てくる存在が本物ではないとはいえ目の前に存在しているのだ。その時の桜は普通の子供と同じように喜びを露わにしていた。
それを見てさらに黒乃は指令を送る。それを受けた黒リリィは桜の周りをゆっくりと廻り始めた。
「わっわっわっ」
それを見て桜も釣られる様に一緒に廻り始める。まるで一緒に踊っているかのように見える光景は微笑ましいものだった。
「凄いな、あんな事ができるなんて……」
「あれ位が限界さ。戦闘用ならまだしも、子供を楽しませるような使い方なんて今まで考えた事も無いからな」
雁夜が驚きを露わにしたまま黒乃へ近づく。
「いや、十分だよ。俺の知ってる魔術じゃあんな事は出来ないし、何より桜ちゃんがあんなにはしゃいでる所なんて本当に久しぶりに見たよ」
二人は未だに黒リリィと一緒に廻り続けている桜を見つめた。明るい日差しの下、妖精と戯れている光景はまるで絵画のように暖かいものであった。
もし、この絵に名前を付けるとすれば「妖精と戯れる少女」となるであろう。
「そうか、喜んでもらえて何よりだ」
自分の力にこんな使い方があったとは思いも寄らなかったが、目の前で楽しそうに遊んでいる桜を見て黒乃は嬉しかった。
「黒乃、お前本当に魔法使いだったんだな」
「うるさい、そう見えない事くらい自覚してる」
雁夜がしみじみと呟くように失礼な言葉を言ってきた。
確かに筋骨隆々な魔法使いなんて可笑しいのかもしれないが、向こうじゃ見た目可愛い少女が杖に魔法を付与して殴りかかるなんて事もあるんだ。俺みたいに接近戦が得意な魔法使いが居ても良いじゃないか。
そう思いながら黒乃は黒リリィに対して戻るように指令を送る。
そして黒リリィと一緒に桜も此方へと戻ってくる。ずっと動き回っていた所為か息を少し荒げ顔も赤くなっているが、体から楽しかったと言う様な雰囲気を醸し出していた。
「どうだ?凄いだろ?」
「……凄かった」
得意げな顔で黒乃が桜へと問いかけると、桜は素直に答えた。
その顔に表情はあまり出ていない。けど、確かに楽しんでもらえたようだ。
その証拠に昨日見かけた時には光を宿していなかった目に僅かだが輝いていたからである。
「よし、なら次は違うのを見せて上げるよ」
そう言って一度黒リリィを消した。
それを見て桜が「あっ」と残念そうに声を上げる所をみて少し罪悪感が生まれたが、それを堪えて新しく黒色魔力を練り上げる。
次に作るのは見た目は大した事は無いがきっと気に入って貰えるだろう。
そうして出来上がったのは黒い球体状の黒色魔力であった。
「………??」
桜が不思議そうに球体を見つめる。恐らく先ほどと同じように人形を作ると思っていたかだろう。
「触ってごらん」
黒乃は出来上がった球体を桜へと差し出す。
桜がそれを受け取ると……。
プニッ。
「!?」
プニップニッ。
「……………」
プニップニップニップニッ。
何かに取り付かれるように桜が球体を揉み始める。それはまるでダンボールの中にある梱包財をひたすら潰していく様子に酷似していた。
「………何なんだそれ?」
「ほら、雁夜も触ってみな」
黒乃はもう一つ同じように作り上げた球体を差し出す。
それを雁夜が受け取ると……。
プニッ。
「………」
プニップニッ。
「……中々癖になる触感だなこれ」
「だろう?」
昔黒色魔力を使って何か出来ないか試行錯誤していた時に出来たもので、我ながら上手く出来た一品である。
クッションにしても良し。枕にしても良し。ベッドにしても良し。暇つぶしにしても良し。何にでも使えるオールマイティな品である。
欠点は寝たりして意識が途絶えると黒色魔力が霧散してしまう為、寝具にすると背中や後頭部を地面に強打してしまうので、実質このように揉んで楽しむ以外の使い道しか無いことである。
因みに当初のモデルは某竜のクエストに出てくる青いスライムである。決して向こうに居たアメーバみたいなリアルスライムでは無いことだけは確かなので間違えないように。
「まぁこれ以外の使い道なんてボールとして遊ぶかもう少し硬くしてゴム弾みたいにして相手にぶつけるくらいしか思いつかないけどな」
プニプニプニプニプニプニプニッ。
「使い道の一つが物騒なんだが……」
プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニッ。
「いや、本来の使い道は違ったんだけど、怪我とかしないから味方に当てたりとか鎮圧とかするのには使えるんだよ、以外に」
プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニッ。
「鎮圧はともかく味方に当てるとかどんな状況だよ……」
プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニッ。
「撤退命令を出したのに何時までも退かない奴とかにぶつければ嫌でもこっちに注意を向けるからな。そういう時に使うんだ」
プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニッ。
「…………」
「…………」
「大分気に入ったようだな……」
「そうだな……」
雁夜と話をしている最中、ずっと桜は球体を揉み込んでいた。もしかすると先ほどの黒リリィの時よりも熱中しているかもしれない。
どちらかと言うと黒リリィのほうが操作の難易度も高いし、自信があったからこの結果には思うところはあるが、まぁ楽しそうにしているから良しとしよう。
「まぁけど少しは仲良くなれたかな?」
正直雁夜がどう思われてるかの確認と言う名目で桜の所まで来たのは良いが、自分が嫌われているという結果が出てしまったら目も当てられない。
「良かったじゃないか」
雁夜がニヤニヤと笑いながら話しかけてくる。
幾ら自分の中である程度の割り切りはしてあるとは言え、元々雁夜に対し思うところもあるしその顔に苛立ちを感じたので少しやり返すことにしよう。
「………雁夜。これ以上からかうんだったらお前の腹に拳を叩き込むぞ」
「おぉ怖い怖い。黒乃に殴られたら骨が折れちまう」
こっちが本気じゃないと思ってるのかそれでもおどけるけように言うので本気で叩き込みたくなった。
「あいにく俺が殴ると骨どころか胴体に風穴が空いてしまうからな。今でも出来るか試しに受けてみてくれないか?」
「えっ?」
拳を握り締めながら雁夜へとゆっくりと近づく。流石に変だと思ったのか、雁夜は後ずさりながら戸惑いの声を上げる。
「いっいや、冗談だよな?」
「俺が冗談を言っているように見えるか?」
温厚な俺でも我慢の限界と言うものはある。少しやりすぎたな雁夜よ。
「さっ流石に風穴は冗談だよな?な?」
「鉄で出来た鎧くらいなら楽にぶち抜く自信はあるぞ」
「そんな自信は今聞きたくなかったっ!さっ桜ちゃん!!」
大人としての威厳などかなぐり捨てて幼い少女へと助けを求める。
だが…………。
プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニッ。
「桜ちゃーーーーーーーーんっ!!!?」
完全に黒色魔力の虜になっている彼女に雁夜の声など届きはしない。それを見て雁夜は悲痛な叫びを上げる。
「さぁ雁夜……」
「まっ待て、待ってくれ。話せば分かるっ!」
「覚悟を決めろ」
「アッーーーーーーーーー!!」
晴れた日の青空に男の声が響き渡る。
聖杯戦争が始まるまでの短い時間ではあるが、そこには少女と青年が夢見た平和な光景が確かに存在していた。
完全に前回の話が無かった事になってやがる……。シリアスがログアウトしやがった……。
これも全部弄りやすい雁夜がいけないんだ!!ダークファンタジーが「だあくふぁんたじぃ」になっちまったじゃないか!!すいません、作者の所為です。
気を取り直して、次回は漸く原作キャラの某相談室の師匠と腹ペコライオンが登場!もう少しでバトルに入れるぜ!
ついでに黒乃の私服も登場!現在の構想では
グレーのスーツ、ワインレッドのシャツ、白いヘビ柄のエナメル靴
にしようかなと思ってます(ゲス顔)分かる人居るかな?この服装のヤ〇ザの人の名前。
では、次回をお楽しみに!