トラウマ-ダークネス-   作:宮下

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新章(ダークネス)


12話

「やっと、見つけた……」

 

 

ふと、声が聞こえた気がして彼は後ろを振り向く。

 

 

「どうかしたのですか?」

 

 

隣を歩く金色の闇が不思議そうな顔をして彼に尋ねるが、彼は気のせいだろうという事にして何でもないと返す。

 

 

「ところで、学生の生活を始めてどうですか?」

 

「なんで今更こんな事をって所かね」

 

 

現在、彼はリトと同じ高校の1年生として過ごしている。

 

 

 

 

 

 

 

事の発端は美柑の一言だった。

 

 

「お兄さんて基本的には物知りですけど、普通の事があまり解ってないですよね」

 

「まぁ、長い間生きてるけど教育なんかは受けてないからね」

 

 

それを聞いたララが一緒に学校へ通うのはどうかと言い出し、モモもそれに同意する。

 

編入には問題が多いのでは、という彼の反論は例の校長のせいで見事に論破された。

 

彼も嫌という訳でなく、学校には興味があった。次いでに、モモや金色の闇と少なからず離れて過ごす事が可能なのではないかという淡い期待に負けて申し出を了承した。

 

結果、金色の闇やデビルーク姉妹まで編入。

 

期待外れかと思ったがそんな事はなく、ナナは友人を作って楽しくやっているし、モモは外面は優等生でいたいのか授業は真面目に受けている。

 

一方で、彼は最初の数日だけ授業を受けると後は図書室で過ごすようになっていた。金色の闇は彼についてきている。

 

昼休みに入った所だった。1人の少女が彼と金色の闇の前に現れる。

 

 

「初めまして。不死鳥さん? にヤミお姉ちゃん」

 

 

「……誰ですか、貴女は」

 

 

先に反応を示したのは金色の闇だった。金色の闇には妹など存在しない、それに少女の纏う雰囲気が平和なこの町に似つかわしくないものである事が目に見えていたからだ。

 

 

「これを見たら解るんじゃないかな」

 

 

そう言って少女は髪の先を鋭い刃に変えてみせる。

 

 

「変身能力……っ!?」

 

 

自信と同じ能力を目の当たりにして、金色の闇は咄嗟に彼と少女の間に入る。

 

 

「私は黒咲芽亜、メアって呼んでね。ヤミお姉ちゃん」

 

 

ニコニコと能面のような笑みを張り付けながらメアは楽しそうに笑う。

 

 

「貴女は何者ですか……。いえ、それよりも目的は」

 

「わたしの目的? んーっと、ひとつは」

 

 

金属同士がぶつかる様な激音が響き渡る。幸いにも今は3人の他に図書室を利用している生徒はいなく、その音に声を上げるものはいない。

 

 

「何を……っ!?」

 

 

メアの攻撃を受け止めた金色の闇だったが、咄嗟に防御したためにメアの次の行動に反応出来なかった。

 

メアは金色の闇の隣をスルリと通り、彼の腕に抱き着きながら宣言する。

 

 

「この不死鳥さんをマスターの所へ連れて行くのがひとつ目の目的。そうしたら、ヤミお姉ちゃんはマスターの下へ来るでしょう?」

 

 

メアはそう言って、彼から離れ後に飛び退く。先程メアがいた場所には金色の闇の髪が突き刺さっていた。

 

 

「面白くない冗談ですね」

 

「あの、ちょっと話が見えないんだけどさ。とりあえず不死鳥は止めてくれ。悪寒が走る」

 

「えー、素敵な二つ名だと思うんだけど。じゃあ何てよべばいいの?」

 

「……それを言われると困るんだよなぁ」

 

「貴方は……」

 

 

彼の言動で張り詰めていた空気が消え、金色の闇は呆れた様にため息を吐く。

 

 

「大丈夫だよ、ヤミお姉ちゃん。今日は挨拶だけだから。えーっと……、お爺ちゃんもまたね!」

 

 

空気が凍った。

 

確かに彼は高齢であるが容姿から『お爺ちゃん』なんて呼ばれた事は1度も無かった。少なくとも対面している相手には。

 

金色の闇も、あまり考えないようにしていたが隣にいる彼が『お爺ちゃん』と呼ばれてもおかしくない存在だと再認識し固まってしまった。

 

固まっている2人を他所に、メアはさっさと退散してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇマスター、ヤミお姉ちゃんはともかくとして、あの人まで誘うの?」

 

 

学校の屋上にはメア以外に人影は無い。しかし、親しい誰かに話し掛けるようにメアは話す。

 

 

『必要だからだ。奴の能力もそうだが、奴がいれば金色の闇も自然とこちらに来るからな』

 

「ふーん。でも、そんなにすごい人には見えなかったけどなぁ……」

 

『ふむ。……1度会ってみた印象はどうだ?』

 

「すぐに壊れちゃいそう。隙だらけだし、敵意の欠片も見せないんだもん。一瞬でやれちゃうよ。なんであのお爺ちゃんとヤミお姉ちゃんが一緒にいるのか全然わからない」

 

『そうか』

 

 

マスターと呼ばれている人物、ネメシスはメアの報告を聞いて少し考える。

 

相手はデビルーク王とも渡り合う等という噂もあったが、ただの噂だったのか。それとも、メアでも分からない様に巧妙に隠しているのか。

 

どちらにせよ、素体としては申し分なく前々から興味はあった。試したい事は山ほどある。

 

 

『拉致るか』

 

「え、もう?」

 

『ダークネス計画は何が鍵になるのかも現状はっきりしていない。分かりやすい方から取り掛かる方がいいだろう?』

 

「うーん、でもヤミお姉ちゃんがいつも一緒にいるしなぁ……」

 

『いいじゃないか。ひとりの男を取り合って姉妹喧嘩というのも』

 

「姉妹喧嘩……、ナナちゃんが言ってたよ。仲の良い姉妹が何度もする事だったよね。姉妹喧嘩……、素敵!」

 

 

少し状況がおかしい気もしたが、メアが乗り気なのでネメシスは適当に同意した。

 

翌日、彼がトイレに入った隙にメアは彼を拉致する事に成功する。

 

 

「昨日ぶりだね、お爺ちゃん」

 

「行動が早くてお爺さんびっくりだよ」

 

 

幸いにも用を足し終えた後に拉致されたため、惨事にはなっていない。

 

 

「んー、でもこの後どうしたらいいのかマスターに聞いてないや」

 

「じゃあ俺は帰るわ」

 

 

彼の事をよく知らないメアはごく一般的な捕縛方法として簀巻きを選んだのだが、彼は当然のように縄抜けをして立ち上がる。

 

 

「……あれ?」

 

 

あまりにも手際が見事だったので、メアは簀巻きにした記憶が確かなものなのか疑った。

 

しかし彼を逃がす程に油断はしていない。髪で彼を縛り上げて動きを封じる。

 

 

「あまり動かれるのも困るから、ちょっと精神の方に……」

 

 

金色の闇の変身能力を元に改良された第2世代であるメアは相手の精神に働きかける能力を有していた。

 

それを使って、彼の精神に介入を試みる。

 

そして、彼を投げ捨て一瞬で距離を取った。

 

瞳は瞳孔が開き、呼吸は荒い。動悸も激しく、とても冷静ではいられない。

 

 

「何っ、貴方……」

 

 

精神に介入する事は成功した。しかし、想像を絶する苦痛が、悲劇が、後悔が。彼の中に蓄積された数え切れない記憶にメアは耐えられずに精神を切り離した。

 

同時に、彼の思考パターンというか、要するに普段何を思い行動しているかまで。彼の想いがメアの中に入る。

 

 

「おかしいよ。あれだけの事をされてもお爺ちゃんは誰も殺さないんだね……」

 

「……参ったな。そういう能力まであるとは思わなかった。金色の闇と同じって訳じゃないのか」

 

一瞬だったが、何をされたのかを悟った彼は頭を抱える。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お爺ちゃんが敵意を向けないのはどうして? 何をされたら相手を殺すの? 何をしたらお爺ちゃんは相手を憎むの?」

 

 

元々、精神的にメアは不安定だった。それが彼の記憶にあてられて更に不安定になり、喚き散らすように彼に問いかけるが、糸が切れたように1度沈黙し、静かに問い掛けた。

 

 

「貴方が死なせてしまったあの女の人が相手ならなにか変わるのかな?」

 

 

そう言って、変身能力で彼の記憶で見たひとりの女性へメアは姿を変える。

 

彼は目を丸くして一瞬だけ表情を強ばらせる。ふらふらとメアへと近寄り、震える手を女性の頬の辺へと近付け、

 

少し強めにその頬をつねってやった。

 

 

「痛、い……?」

 

「あまり人の過去を詮索するのは止めとけ。それとちょっと落ち着け」

 

 

彼は深くため息を吐いて、メアの頭をかるく何度か叩く。

 

 

「アレだよ、俺の記憶はお子様には刺激が強過ぎる映像だ。そんなもの見てないで友人と仲良く遊びなさい」

 

 

随分と適当に話を切り上げた彼はメアから逃走し、彼を追ってきていた金色の闇に捕縛される。

 

一方で、メアはしばらくその場に立ち尽くしていた。

 

 

「……素敵」




・無理矢理の編入
常識知らずお爺ちゃんには若い知り合いが必要(出来るとはいっていない)。

・不死鳥!
消えてくれない二つ名。

・お爺ちゃん
見た目は子供、年齢はお爺ちゃん。ショタジジイ。

・放置されるダークネス計画
どうしたら暴走するかはっきりわかってないから仕方ない。

・姉妹喧嘩
それって三角関係じゃないk(ry。

・お爺ちゃんにちらつく女性の影
お子様には刺激が強過ぎる映像(意味深)。
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