金剛さんは無気力   作:郡山さん

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長期間の更新途絶誠に申し訳ありません!
もし宜しければ読んでいただければと思います!

今回も重いです。


金剛さんは悔悟

俺は海にたっていた。

何も無いただ広いだけの海。

平和な海。

ふと、何処からか声が聞こえた。

 

あ―の―せ―よ

 

その声は徐々に俺の方へと近づいてくる。

 

あな―のせーよ

 

気づけば"皆"に囲まれていた。

その顔は一様に暗く、その目は皆違いなく俺を睨んでいた、その口は一斉に言葉を吐いた。

 

あなたのせいよ

あなたのせいで

しんだ

 

途端胸が苦しくなり、空気を取り入れようと大きく息を吸った。

閃光が視界を埋めた。

しばらくしてその閃光が朝の陽の光だということに気が付いた。

荒れた呼吸を整えるように深呼吸する。

朝の新鮮な空気が肺の隅々まで行き渡り目を覚まさせる。

着ていた服は汗で濡れ、肌にまとわりつく。

長い髪が首すじに張り付きベタく。

 

「……ごめんなさい。…ごめん…なさい…」

 

5年前、あの時に戻れるなら戻りたい。

過去の自分を殴ってやりたい。

そして過去の自分を殺したい。

それが出来たらどんなに幸せなことだろうか。

 

◇

 

 

「うっしゃ!やりぃ!!残り1匹!!」

 

その時の俺は調子に乗っていたとしか言いようがない。

初めての大軍(おおいくさ)で、敵を何体も葬って調子に乗らない方が可笑しいのだが。

しかし、その時の俺は思考を放棄する程に乗りすぎていたのだ。

接敵した艦隊も善戦により沈め、残り1隻となった頃。

その1隻がいきなり逃亡を始めた。

有頂天になっていた俺は何の疑いもなくその後を追った。

 

「待ちなさい!金剛!罠の可能性があるわ!!」

 

扶桑さんの静止の声も聞かずに突っ走った。

何をそんなに警戒する必要がある。

敵は残り1匹。余裕じゃないか。

そんな考えが頭を占め、端から扶桑さんのいう事など聞く気すら無かった。

 

「仕方ありません…金剛を援護に行きますわ。皆さん付いてきてください」

 

あの時扶桑さんの言う事を聞いていれば…。

そう思った頃にはもう遅かった。

後悔先に立たず。その言葉をこれほど憎んだ事は後にも先にもないだろう。

海中から現れた深海棲艦に一瞬のうち包囲され、四方八方からの無数の砲撃を受けた。

次々に死んでいく仲間の姿、こちらに手を伸ばし助けを乞う姿。

手足がちぎれ、終いには胴体だけになってしまった仲間。

虚ろな目をした仲間の骸。

海面を漂う小さな手がこちらに助けを求めていた。

そのどれもが脳に焼き付き、今でも鮮明に思い出すことが出来る。

呆然と立ち尽くす俺には、何が何だか分からなかった。

数分前まで元気だった仲間が一瞬にして、死んでゆく様をただ何かの映画のワンシーンのように、ただただ愕然と見つめるだけしかなかった。

 

その後、どうやって俺が助かったのかは分からない。

気が付いたら鎮守府のボロボロになったドッグの中に浮かんでいた。

ただ何も感じず、何も考えずにただただ浮かんでいた。

悲しさも憎しみも痛みも何も感じずに。

 

◆

 

それからどのくらい経っただろうか、何時ものようにただ何も考えず、感じずにただじっと何もせずに何かを待つように過ごしていたあの日、懐かしい声が長いこと使われなかった鼓膜を揺らした。

りんと高い元気な幼げな声。

それだけが耳の奥深くに入り込んだ。

声の正体が知りたくて、重くて暗い木の扉を開けた。

途端に目に刺激が走った。

ここ暫く目にすることのなかった日の陽射しに目が警告を出す。

目をしばらくつぶり、また開ける。それを繰り返すと目が周りの景色を捉えれるようになった。

俺が出てきたことに驚いたのか新しく着た提督が駆けつけて、俺の肩を支える。

赤城や龍田も驚いた顔でこちらを見ていた。

支えられながら前に視線をやると、そこには懐かしい姿があった。

途端に視界が滲み、何かが胸の奥からこみ上げてきた。

思わず彼女に抱きついた。

彼女はジタバタと暴れたけど、ぎゅっと強く抱きしめると大人しくなった。

俺の知っている、俺を知っている彼女じゃ無かったが、声や匂い、クセは確かに彼女だった。

俺は泣いた。大きな声を上げて泣いた。

久しぶりに使われた声帯は上手く発音してくれなくて嗄れた声になったが、それでも良かった。

疲れるまで泣いて。疲れて眠った。

それから"皆"と接していく内に、俺の心は徐々に少しずつ溶けていった。

 

◇

 

墓に線香を添える。

線香の煙は一筋になり空へと登る。

いつも皆が食べていたお手製のクッキーを人数分皿に載せる。

みんなが好きだったジュースも。

 

目を閉じ、手を合わせる。

涼しい風が髪を舞い上げた。

 

赦してもらえなくてもいい。

いや、赦さなくていい。

赦されない事だけのことをしてしまったのだから。

何で俺が生き延びて、皆が死んだんだろう…。

この世に神様というものがいるのならば、実に嫌な神様だろうか。

いいや、如何に神を憎もうとも恨もうとも、俺が人殺しである事に変わりはない。

俺は皆を殺し、そして生き延びてる。

俺は絶対に何があってもみんなを忘れない。

それが皆に対する俺の罪滅ぼしだから。

でもごめん。

何時かそっちに、絶対にそっちに行くから、今は、今だけは、もう少しだけ此処にいさせて欲しい。

本当にごめん…。

ワガママでごめんなさい…。

 

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