英雄伝説~精霊の軌跡~   作:叢雲君

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朝食と実技テストと特別実習

 窓から差し込んでくる日差しとドアから入ってくるわずかな食べ物の匂いでエレナとフィーは目を覚ました。

 「ん~……よく寝た。」ベットから上半身だけを起こしてその場で大きな伸びをする。時計を見ると午前6時を指しており普段よりも30分ほど早く起きていることに気付く。普段ならここで二度寝するためにもう一度布団を頭から布団をかぶるのだが今日は何故かわからないが二度寝する気になれない。仕方ないと思い顔を洗うためベットから出ようとする。そこで第一の悲劇がエレナを襲う。

 

 「へぶぁ!……うぅ痛ぃ……」

 

 ベットから出ようとしたところ運悪く床に垂れ下がっていたシーツを踏んでしまい顔面から盛大な着地(?)をしてしまう。悲劇はそれだけに止まらず勢いそのままに少し話しておいてある箪笥へと顔面をぶつけてしまい挙句頭上から置時計が降ってきて脳天に直撃するという悲劇の3コンボを受ける。その衝撃でその場で目を回して倒れていると下からドタドタと足音が響いてきたかと思うと自室の扉が勢いよく開け放たれた。

 

「ちょっと!この部屋の住人二人!どっちか知らないけどあんたらうるさく……ってやっぱりエレナか……あんたもう少し落ち着きを持って行動することができないの!?」部屋に入ってきた黒金コンビ基リィンとアリサは今では入学当初の中の悪さは微塵も感じなくなってきていた。

 

「まぁまぁアリサ、それくらいにしてやれ。別にエレナも悪気があってやったわけじゃないだろうしさ」今にも掴みかかりそうになっているアリサを諌めていまだ目を回しているエレナに手を差し出してくる。

 

「きゅぅ~~」だがそれでも気絶したエレナは目を覚まさない。そこで今度はアリサが頬を軽くぺチぺチ叩く。そこで「うぅ~」と唸るがまだ目を覚ますまではいかない。そこで今度はリィンとアリサがエレナの両頬を左右から思いっきり引っ張る。両頬が思いっきり引き伸ばされることでエレナの顔自体が横に伸びて某カレーが詰まったパンの戦士のようになる。

 

――――パシィン!

 

そして限界まで伸びた両頬を同時に離すことでゴムのように急激にエレナの顔に頬が戻り大きな音を立てる。

 

「痛いッ!ちょっとアリサとリィン何するの!」両頬を真っ赤に腫れている。

 

「何するのってあんたが朝から暴れたおかげで下の階が大変なことになってんのよ!早く来なさい!」エレナの言うことなど聞く耳持たず。有無を言わせずエレナの耳を引っ張りながら下の階へと引っ張っていく。

 

「痛い!アリサさん!痛いから、耳が千切れるから!カ○メ製のトマトケチャップが耳から飛び出るから!真っ赤な梨○ブッシャーってなるから!後で掃除大変だから!リィン様!助けてください!!」カゴ○製のトマトケチャップやら○汁ブッシャーと意味が分からないことを叫んでいるエレナがとある一室の前を引きずられているときまた悲劇が起きた。

 

部屋の中から足音がしたと思った瞬間扉が勢いよく開いた

 

「「あっ……」」黒金コンビの声が見事に重なる。

 

アリサは自分の手が巻き込まれたにもかかわらずまるで痛みなど感じていないのか背後を油の切れた人形のように――――ギギィと言う効果音と共にゆっくり振り返る。するとそこには両目が潰れ顔面から大量に出血してその場に血溜りを作っているエレナの姿

 

「なわけあるか!」はあるわけもなく、先ほどまで目を回していたエレナが今の不穏な考えのおかげで一瞬で目を覚ましていた。

 

「なんであんた私の心の内がわかるのよ。」当のアリサは口に出していないはずなのにエレナに悟られたことに冷や汗を垂らしながら文句を言う。

 

「まぁまぁ……とにかく下に行こうよ。ここだとなんだしさ。」リィンが何故か不穏な空気を撒き散らしている二人を宥めて下の階へと促す。二人の姿が見えなくなったところで部屋の扉を開けたはいいが目の前で起きた事態に理解が追い付いていないエマへと向かう。

 

「えぇっと……まあ委員長は気にせずに寝といていいよ……今のはエレナのせいでアリサの作った朝食の上に特大の埃の塊がいくつも降ってきたからアリサがほんのちょっと(・・・・・・・)文句を言いに(八つ当たりをしに)行っただけだから。」青ざめた顔で辺りを見回しながら小声でエマに耳打ちをする。何を気にしているのかと考えているとリィンの後ろにアリサの姿が見えた。

 

「リィンさん?アリサさんが来てますよ。ほら後ろ。」エマに悪気はなかったのだろう。だがタイミングが悪かった。

 

「ひぃっ」ビクンッとその場で飛び跳ねながら背後を素早く振り向くと共にガタガタと小刻みに震えだすリィンを見てエマは自分は何か悪いことをしたのかもしれないとその場でオドオドしだす。

 

「あぁ、委員長は気にしなくていいのよ。そのまま寝ててくれればいいから。」何も詮索するな。お前はそのまま部屋に入って時間まで寝ていろ。という意味の込められていることをエマは悟り素早く扉を閉める。

 

「それでよし……さぁてリィン、何を話していたのかな?アリサさん怒らないから正直に言いなさい。」それはそれはとてもいい笑顔で詰め寄ってくるアリサにリィンは「ゴメンナサイゴメンナサイ」と連呼するしかなかった。

 

 

~~☆~☆~~

 

「みんな。これからエレナには料理をさせないようにしようと思うんだけどそれでいいか?」7時30分一階の大机の上に並べられた≪謎の物体X≫を見てリィンは一同に語りかける。

 

「ああ、エレナには失礼かもしれないがこれは料理からほど遠いのではないか?」ラウラの言葉を皮切りに次々と苦情が出てくる。

 

「そうだな。最初は料理を吐きだして倒れたレーグニッツに文句の一つでも言ってやろうかと思ったがこれは俺もレーグニッツに同情するぞ。」青い顔をしたユーシスが

 

「帝国の料理はみんなこんな料理なのか……」机に倒れ伏しているガイウスが

 

「エレナ君。君はⅦ組を殺害したいのか……」メガネが爆散したマキアスが

 

「ガイウス……それは絶対に違うよ。まだ料理が少し焦げるとか少しショッパイならわかるけどガラス製のもの以外全部解けるのはどう考ええても料理じゃないから……あぁ……もう僕だめかも。前が見えないや」ハイライトが消えた目をしてもはや虫の息のエリオットが

 

「エレナちゃん。これは何か儀式に使うものですか?」メガネ全体がひび割れているエマが

 

「はぁ……なんだかもう味を感じなくなってきたわ……シャロンの料理が恋しい……」何もない場所をひたすら掴む動作をしている何かがヤバいアリサが

 

「今日のレナのは一段とひどいね……私でも無理かも……」普段はあちこちに跳ねている髪がすべてペッタリとなっているフィーが

 

「ヤバい……故郷の風景が……」普段は殺しても死にそうにないほど元気が有り余っているサラが

 

 

 

 

まさに死屍累々の地獄絵図となった第三学生寮がそこにはあった。

 

なぜこうなったか、理由は単純である。朝食を台無しにされたアリサがエレナに料理を手伝えと言ってしまったのが原因であった。

 

最初の方こそ少し調味料の分量を間違える程度で済んでいたが何時しか寸胴が融解したかと思うとフライパン自体から炎が上がりさらにはオーブンが爆発するというとても料理とは思えない事態へとなって行った。

 

~~☆~☆~~

 

 

「それじゃあ……実技テスト始める……わよ……」朝食べたエレナの料理の後遺症で今でも苦しんでいるⅦ組一同の前でサラが元気なく死にそうな顔で告げる

 

フィーとエレナを除いたⅦ組の一同が己の得物を杖代わりにしてかろうじて立っている状態でサラが何とか指を鳴らすと虚空から銀色の謎の飛行物体が現れてすでに0に近かったⅦ組の精神力を削っていく。

 

ちなみに料理を作ったエレナは免疫があるためケロッとしておりフィーは己の得物が短いためエレナにもたれかかって何とか立っている。

 

謎の飛行物体に一同が驚愕しているといつの間にか現れたベアトリクス教官の≪特性万能薬≫によって元気を取り返したサラが説明を始めた

 

「とある筋から押し付けられたんだけど結構使い勝手がいいからこれからのあんたらの実技テストの相手はこいつら(・・・・)になるわよ。」そういってもう一度指を鳴らす、そうすると虚空から同じ飛行物体が2体現れた。

 

~~☆~☆~~

 

最初に行われたリィン、エリオット、ガイウスはどうやら自由行動日に旧校舎の地下に探索に行っていたらしくそこまで苦戦することもなく謎の飛行物体A・B・Cを各個撃破していた。

 

二つ目のラウラ、アリサ、エマ、ユーシス、マキアスも最初こそマキアスとユーシスの中の悪さで苦戦するのではないかと予想されたが朝食のおかげで何か絆が芽生えたらしく開始寸前まで舌戦を繰り広げていたが戦闘が始まってからは少し文句を言い合う程度でそこまで苦戦することもなくこちらもA・B・Cを撃破していた。

 

「ふぅん……二つ目の班は苦戦するかと思ったけどそうでもなかったわねぇ……朝食のおかげかしら……まあそれでもこの二人の方が連携は取れてるわね。エレナ、フィー前に来なさい!」朝食という単語を発した時若干顔色を悪くしたがそんなことは気にせずに二人は前に出る

 

「あんたたち、これが本当の連携よ。しっかり見ておきなさい。それと二人からはARCUSは没収ね」二人の手からARCUSを取り上げてリィンに投げ渡す。

 

その暴挙を見てラウラが何やら言っているが3人は気にしない。

 

「それじゃあ実技テスト開始!」リィン達の輪の中に入りサラは二人の観察を開始する

 

「サラ教官!いくらなんでも無茶すぎではありませんか!?」ラウラがここぞとばかりに畳み掛けてくるがサラは気にせずに一言

 

「よそ見せずにしっかり目に焼き付けときなさい」とだけ言って以降は何を言われようが無視し続けた。

 

 

~~☆~☆~~

 

「「はぁ……めんどくさすぎる」」珍しく二人の言葉がハモッタ。

 

「まぁ過ぎたことは何言っても仕方ないしそろそろ始めようか」自分の得物を抜きフィーの隣に立つ。

 

「だね……あとでサラには文句を言わないと」口では文句を言ってやるなど言っているがどこか嬉しそうにしていることをフィーに指摘すると「それはレナも」とフィーは言いそれに対してエレナも「そうだね。」と笑顔で答える。だがそれも一瞬、次の瞬間には二人は意識を目の前の謎の飛行物体A・B・Cへと向ける。

 

「それじゃあまずは様子見かな。」エレナが銃口を敵に向け、普通なら心臓がある場所へと引き金を引く。そしてそれが合図となって戦闘が開始された。

 

弾丸が着弾した飛行物体はその衝撃で一瞬だけ動きが止まってしまう。そしてその一瞬が命取りとなった。

 

フィーが持ち前の機動力と得物の特性を活かして多方位から弾幕を張る。そして後方にしか回避ルートが残されていない飛行物体は当然そちらに逃げようとするがそれは背後に回り込んだエレナによって阻止される。さらにエレナに切り飛ばされ弾丸の雨を浴びる。そのうち何発かが重要な機関に直撃しその動きを止める。そしてそこにエレナが自分の得物を突き立て、戦闘不能にする。

その間わずか数秒、ほかの飛行物体は仲間が蹂躙されているうちに二人を取り囲むように動こうとする。だがそれはすでに次の相手へとターゲットを変更したフィーによって阻まれることになった。

 

「さぁってまず一体!」そんな掛け声とともにフィーが行動を妨害している飛行物体にむかって銃を乱射する。常にフィーと対角線上に立つことで味方の背後に近寄ろうとする敵の行動を妨害しながら目の前の敵に攻撃をする。

 

「フィーそいつのとどめよろしく!私こっちの相手しとくから!」相手の上半身と下半身の境目のような場所を切りつけ切断し行動不能にする。

 

「めんどいけど……Ja」しぶしぶといった表情でもはや虫の息の敵を切り刻む。

 

「バレットレイ!」エレナは残ったいったい接近しながら弾丸を一転に乱射する。そしてできた僅かな穴に刀身を刺すと棒高跳びの要領で飛行物体の背後にまわりこむ。そしてその瞬間フィーの、クリアランス、によって全身に弾丸を浴びる。そしてそれがとどめとなって飛行物体は戦闘不能となった。

 

「相変わらずあんたらすごいわねぇ……ちなみにタイムは35秒27。男子組のタイムが3分54秒だからだいぶ早いわね。さてリィン今の二人の戦闘を見て自分たちの戦闘との決定的な違いは?」エレナたちのクリアタイムを公表した後いきなりリィンに話を振る。突然話を振られたリィンは少し考えた後自分の考えを述べる。

 

「常に相手の援護をしつつ目の前の敵への攻撃の手を緩めない、そして相手にダメージを与える攻撃だけでなく相手の行動を制限する攻撃をしているのが違いだと思います。」

 

「それも確かに違いね。て言うかそれで正解なんだけどもう一つあるのよ。それがARCUSを使っていない(・・・・・・・・・・・・)ってことね。」言われて改めて一同は感じた。自分たちはARCUSを使っても3分以上かかっている、それに対してエレナとフィーはARCUSを使わずに1分かからずになしている。そして気づいた。それが自分達とエレナとフィーのペアとの圧倒的な実力差を表していることに。

 

「さて、全員が実力差に気付いたところで今日はおしまい。最後にこれを渡しておくわ。」そういってサラが取り出したのは3日後の≪特別実習≫の班分けの紙だった

 

【4月 特別実習】

 

 

 

A班:リィン、アリサ、ラウラ、エリオット、エレナ

(実習地:交易地ケルディック)

 

 

B班:エマ、マキアス、ユーシス、フィー、ガイウス

(実習地:紡績町パルム)

 

 

 

 

「「「「「B班ご愁傷様!!」」」」」

 

紙を渡された瞬間A班の5人が声をそろえて言う。

 

「ねぇレナ、班代わって」フィーがエレナに頼み込むがエレナは聞こえていないのかそれとも聞きたくないのか無視してリィンの所へと駆け足で寄って行く。

 

「むぅ……レナのケチ……」頬を膨らませエレナを睨みつけるがエレナは無視してA班の面々と会話をする。

 

「ま、まぁフィーちゃん。二人の仲もそこまで悪くないことですし……」エマがフィーの手を握ってB班の面々が集まっているところへと連れて行く。

 

B班の問題はもちろんマキアスとユーシスである、だが今日の実技テストでその仲の悪さも改善されたはずだった。そうはずだった。

 

 

B班の面々が特別実習から帰ってきたときにゲッソリと痩せていたのはまた別のお話

 

 




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