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「はぁ……あんなこと言ったけど本当に私やっていけるのかなぁ……」トリスタの街全体が寝静まった深夜、第三学生寮の中で唯一起きていたエレナは気弱な一言を誰に向けたわけでもなく発していた。
――――――「エレナ・クラウゼル、Ⅶ組に参加させてもらえます。えぇっと……まぁ、Ⅶ組のみんなになじめるよう頑張ります。」サラから全員に特科クラスⅦ組に参加するかどうかを聞かれたとき最後に大きな啖呵を切ったためエレナは夜になって心配になり眠れずにいた。
そんなことを考えていたエレナは隣のベットで寝ているフィーを起こさないようにそっと、自分のベットを抜けると持ってきたトランクの中から古びたハーモニカを取り出すと誰も起こさぬよう静かに第三学生寮から出た。
第三学生寮を出てトリスタの街を歩いていたエレナは第三学生寮からそれほど離れていない場所にある空き地へとやってきた。空き地にあるベンチに座ったエレナは第三学生寮から出るときに持ってきたハーモニカを吹きだした。
♪~♫~
風に乗ったその音色はトリスタの街全域に響き渡っていく。柔らかな音色が街全体に響き渡っていく。そうして一曲を吹き終わるとどこからともなく拍手が響いてきた。
「誰ですか?私のハーモニカで起こしてしまったのならすみません。」こんな真夜中に起きている人は普通はいないだろう。起きているとすれば自分のハーモニカが一番可能性として考えられる。だからエレナは拍手をしてきた人物に謝罪をした。だが拍手をした人物が自分の知っている人物だとわかると一転若干顔を赤面させた。
「どうしたの?エレナ、僕だよ。ハーモニカ上手だね。その曲、【星の在り処】でしょ?」空き地に現れたのは昼の特別オリエンテーリングで知り合ったエリオットであった。
「ありがとうございます、ってなぁんだ、エリオット君かぁ。どうしたの?もしかして起こしちゃった?」褒めてくれたエリオットに礼を言った後、ごめんねぇ、と言う。
「べ、別にエレナの所為じゃあないよ。僕、これから自分がどうなるのか心配でなかなか眠れなかったんだ。そしたらハーモニカの音が聞こえたから誰が吹いてるんだろう。と思って聞こえてきた場所に来たんだ。そしたらエレナが吹いてたからその……ちょっと驚いちゃって。」自分と同じ理由を口にするエリオットに、なぁんだ。と言い自分も同じような理由だ。と言う。
「エレナ、ちょっとハーモニカ貸してくれない?」エレナがエリオットにハーモニカを渡すとそれをエリオットは両手で丁寧に受け取り口につけ吹く。
♪~♫
エリオットもエレナと同じ【星の在り処】を吹く。エレナよりもさらに深い音色が辺りに響く
「それにしても、エレナはハーモニカの演奏が上手だね。なんでそんな上手なの?」流れるように演奏していたエレナに対して素朴な疑問を口にする。
「えぇっと……昔近所に住んでいたゼノっていうお兄さんに教えてもらったんだ。でそのお兄さんはとても優しかったんだ。」少し言葉に詰まった後、嘘を口にする。
「でね、そのお兄さんが教えてくれた言葉があるんだ。その言葉がね、仲間が危険にさらされたら助けるのは当然、って言葉をね……」どこか遠い目をしながら呟くエレナには何とも言えない悲壮感が漂っていた。
「……あぁ、そうそう、エリオット君、お昼はありがとうね」空気を変えるべく昼に助けてもらったお礼を言っていなかったことを思い出し礼を述べる。
「べっ別に、エレナも言ってたじゃん。仲間が危険にさらされたら助けるのは当然、でしょ?」自分が昼に行ったことをエリオットに言われてしまいまた赤面してしまう。
「それでもエリオット君、ありがとうね。何かお礼したいんだけど……何がほしい?」助けてもらったお礼をしたいのだろう、エリオットの傍によって何かない?と若干上目使いになりつつ尋ねる。
「うぅん……今は特にないなぁ。うぅん……それなら、これでエレナに対する借りを0にするってことじゃダメ?」ひとまず昼に貸しを作ったから、その貸しを0にするため0にしてくれ、と頼む。
「えぇ~それだけぇ~、私がほしぃとか言ってくれないの~」邪悪な笑みを浮かべ、エリオットに擦り寄っていく。
「え、えぇ?!ちょっと、エレナ何言ってるの!?」エレナに言われた一言で動揺したエリオットは、顔を真っ赤にしてオロオロする。
「あはは、冗談だよ冗談……うん冗談だよ……」とても残念そうにして涙目でエリオットから離れていくエレナは尻尾を垂らしている子犬のように見える。
「ねぇ……エリオット君、その……これからよろしくね」ションボリしたままとしたままエリオットに、よろしく、と言ってから空き地を出ようとする。トボトボと悲しそうに空き地を出る少女の姿はエリオットの目はとても、申し訳なさそうになっている。
「はぁ……」その一言がエリオットの胸に突き刺さった。
「えぇっと……え、エレナがほしぃ……」語尾は風の音にかき消されたが肝心の部分ははっきりと、聞こえた。
「え!?ほんとに!やったぁ~」その場でピョンピョン飛び跳ねているエレナは先ほどの悲しそうな子犬ではなく、主人に餌をもらって喜んでいる子犬のように見える。エリオットがオドオドしているうちにエレナがエリオットの傍に寄ってくる。エリオットよりも身長が低いため、どうしても上目遣いになってしまう。
「あぁ、えぇっと……」エレナに高速で寄ってこられたためさらにエリオットは動揺してしまう
「あはは、なぁんてね。冗談だよ冗談。私がそんなこと言う人間に見える?」小悪魔的な笑みを浮かべてエリオットの鼻を小突く。
「はぁ……。僕エレナにいじられてたの?」額に手を当て深いため息をつく。
「あはは、そうだよ~。まぁ、もしも私が頼れると思えばエリオット君を好きになるかもだけどね。」エリオットの傍らから離れながらボソリと言う。
「えっ?!も、もう一回言って?!」なんていているのかいまいち何を言っているのかわからずもう一度行ってくれるように頼む。
――だが、エレナがそこでもう一度言い直すほど優しくはなかった
「えぇ!や、やだよ……恥ずかしい……そ、それよりも、もう時間も遅いし学生寮に戻らない!?」頬を若干赤らめながらモジモジしながら言う。さらに恥ずかしかったのか自室に戻ろう、とエリオットに促す。
「う、うん。それじゃあ戻ろうか……」エレナの切り替えの早さに戸惑いながらも了解する。
「よぉし、しゅっぱぁーつ」右手を頭上に高く掲げエリオットの手を取ってから学生寮に走り出す。
「ちょ、え、エレナぁ!は、早い!足が痛いよ!」エレナの足の速さのせいで石畳で躓き涙目になる。
「あはは!」そんなことはつゆ知らず全力疾走する。
その後夜のトリスタの街に響いた少女の笑い声が、トリスタ七不思議として巷で噂になったのはその翌日のことだった。
この話が、一番字数が多いとは……