※今回は、普通の恋愛です、よ。よー。
突然彼の前に現れた閻魔様、彼女は彼にクドクドと説教をしていた。
「それが貴方の積める善行です」
「分かりました、努力してみます」
説教を真面目に聞き、最後も素直に頷く彼に彼女は満足そうな顔をする。
「よろしい、また来た時に確認させてもらいます」
「精進しておきます」
彼は敬意をこめて、彼女のことを呼んだ。
「閻魔様」
とある日の博麗神社、霊夢は一応訪問客である紫と茶を飲んでいた。その最中、ふと紫が口を開く。
「ねえ、霊夢」
「何よ、紫」
「地獄の閻魔様の能力って知っている?」
突然の問いに霊夢は戸惑う、しかし紫はこういう奴だったと、とりあえず会話に乗ってみることにする。
「え? 確か白黒はっきりつける程度の能力だったかしら」
「そう、それが彼女の能力よ」
彼が畑仕事に励んでいると、彼女がふらりと現れた。
「おや、今日も来られたのですね」
「ええ、貴方がきちんと善行を積んでいるかどうかの監視です」
「信用がありませんね」
「期待をしているということです」
肩をすくめる彼に対し、彼女は真面目な顔で言う。
「それはそれは、だったら全力を尽くさないといけませんね」
「分かっているのならよろしい」
軽く何度も頷く彼女を見て、ついで時計を見た後に彼は手に持っていた鍬を置く。
「……さて、良い時間ですし休憩しようかと思いますが、貴女もどうですか?」
「む、ではお言葉に甘えさせてもらいます」
「では、こちらにどうぞ」
恭しく家に案内しながら、彼は彼女の名を呼んだ。
「四季様」
正解と指を突きつける彼女に、霊夢は頬杖を突きながら口を開く。
「で、それが一体どうしたのよ?」
「あれってどういう能力だか分かる?」
「どういうって、白黒つけるんでしょ?」
あからさまに真面目に聞く気の無い霊夢に紫は軽く頭を振る。
「それがどういう意味かと聞いているのよ、もう」
「はいはい、分かっているわよ」
「……ふう」
一仕事を終え彼は休んでいる、映姫はそんな彼に気付かれぬように近づいてから声をかける。
「疲れているようですね」
「ああ、来ていたのですね。まあなかなか大変です、しかしやると決めた以上はね」
人から受け継いだ畑ではなく最初から自分で作る畑、言うほど容易くは無いその作業に笑って見せる彼に対し、映姫はうんうんと何度も深く頷く。
「良い心がけです、実に良い」
「そう言ってもらえると努力する気になれますね、さてもう一踏ん張り」
そう言って立ち上がろうとする彼を映姫はとどめる、空いた手にはなにやら小包が見受けられる。
「待ちなさい、根を詰めすぎても逆に非効率です。ここに来る途中でお団子を買ってきたので一緒に食べませんか?」
「ああ、それは助かります。では俺の家で食べましょうか」
手の汚れを払い家のほうに向かって歩く、その途中で彼は振り向いて彼女の名前を呼ぶ。
「映姫様」
本当に分かっているのかと問いたくなる態度のまま、霊夢は手をひらひらさせながら答える。
「要は判断するんでしょ? 正しいか正しくないか、罪があるか罪が無いか」
「まあ、そんなところね」
そう言って紫は頷くが霊夢にはよく分からない、紫が何を言いたいのかというのがどうにも見えてこない。
「それがどうしたの?」
「何故、白黒つける能力、なのだと思う? 何故、白黒判断する能力、じゃないのだと思う?」
そんな紫の問いに霊夢は眉をひそめる、ますます意味が分からなくなってきた。
「はあ? そんなもの映姫の勝手でしょうに、大体その二つがどう違うのよ?」
元気に汗をかいている彼に、映姫は和やかに声をかける。
「こんにちは、元気にやっていますか?」
「ん? ああ、来たのか」
「来たのか、とは随分淡白な挨拶ですね」
言葉こそそっけないが実際は親しいからこその言葉、そのことを理解しつつも映姫は一応苦言を呈する。
「今更だろう、何を言っているんだが」
「やれやれ、親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らないのですか?」
「他人行儀とどっちが良い?」
「上手くバランスを取りなさい、それが貴方の積める善行よ」
仲が良いからこその掛け合いと、久々に聞いた彼女の決め台詞に彼は軽く笑みをこぼす。
「はいはいだよ、ともかくお茶を入れてくるから待っていてくれ」
彼女に軽く微笑みながら、彼は優しくその名を呼んだ。
「映姫さん」
予想通りの霊夢の答え、そのことに紫は苦笑いをした後真面目な顔で話し出す。
「判断する、つまりは既に決まっている事象を見極める。それに対してつけるということ、それは何かがそうだと決めるということよ」
「……もう少し分かりやすく言いなさいよ」
「これは失礼。要は、前者は白を白としか言えないけれど、後者は白を黒だと決めることが出来るということです。もし彼女が犬に対してこれは猫だと言えば、それはもはや猫になってしまうのですよ」
おどけた後で言われた例文、それを聞いた霊夢の目が若干鋭くなる。
「……それって大丈夫なの? 何だかその説明だと、映姫は世界を改変できるって言うふうに聞こえるけど」
「大丈夫でしょう、彼女の白黒の判断は己の中の絶対の基準に寄りますから。それが狂うことは、それこそ絶対にありません」
「だったら問題ないじゃない、結局何が言いたいのよ?」
朝、リズム良く発せられる音に彼はぼんやりとだが目を覚ます。
「……んん」
「起きましたか?」
「……ああ、起きた。……んー」
ゆっくりと起き上がり軽く身体を伸ばす、しかしその目は未だにぼんやりとしている。
「背伸びをしていないで顔を洗ってきなさい、もうすぐ朝食も出来上がりますよ」
「分かっている……、ああ……」
割烹着を身につけた映姫の言葉に彼は立ち上がる、しかし何処となく身体が揺れている気がする。
「やれやれ、早く目を覚ましてきてくださいね」
「……そうだな」
未だにぼんやりとした意識のまま、彼はいつものように彼女の名前を呼ぶ。
「映姫」
今までの会話は何だったのか、そう言って呆れかえる霊夢に紫は話を締める。
「もし、もし彼女がその基準に寄らずに白黒つけたらどうなるでしょうねという話ですよ」
「……はあ、時間の無駄だったわ。やっぱりアンタの話を真面目に聞くのは馬鹿らしいわ」
その纏めに興味をなくしてそっぽを向いてお茶をすする霊夢を見て、紫は扇子で口元を隠す。
「あらあら、これは手痛い言葉ですわ。……そういえば、例の彼とはどうなりました?」
「例の彼? 誰のこと?」
一体誰のことを言っているのか、全く検討のつかない霊夢に紫はため息をつきながら説明する。
「ほら、一年ほど前に幻想入りしてきた彼のことですよ」
「……ああ、アイツね。どうってどうもしないわよ、別にそこまで親交があったでもなし」
「そうですか。…………本当に、そうでしたか?」
ぼそりと呟かれた紫の言葉、聞き取れなかった霊夢は聞き返す。
「何か言った?」
「いいえ、何も」
そう言ってお茶菓子を口にする紫に、霊夢も深く追求せずに新しくお茶を入れに行った。
とある日のこと、彼は突然首を傾げる。
「……あれ?」
「どうしました?」
「いや、俺たちってどういう風に親しくなったんだっけ?」
「何ですか、急に」
怪訝そうな顔をしている映姫に彼は手をぶらぶらとさせながら答える。
「何となく気になっただけだよ」
「さて、何がきっかけだったでしょうね。何にせよ、大事なのは今でしょう?」
その言葉に彼は一瞬考え込んだ後、急に興味をなくしたように思考を止める。
「……それもそうか、大事なのは今か」
「そうですよ」
おかしなことを言い出すんだから、そう言いたげに笑みを浮かべた彼女は愛を込めて彼を呼んだ。
「あなた」
はい、映姫回です。不帰録の方を書こうとしていたのですがまったく筆が進まなかったのでこっちを書きました、結果として七月最後の投稿がこれに。今回はまともな恋愛ですよ、……ええ。普通に書くと華扇と被るのでこんな風にしてみました、まあたまにはこんなのもいいでしょう。能力については某動画サイトの大百科を見ながら書いたものなので実際のそれとは多分違います、あまり深く考えないようにお願いします。
さて、次回は小町回でしたね。多分ヤンデレじゃなくなるような気がします、もうその辺は開き直ります、はい。その後は確か妖夢と椛だったかな、少なくとも妖夢はヤンデレにしようか、椛には…首輪でもつけさせようかな。まだ決定はしていないのでぼんやりと適当に考えることにします。ではまた。