東方病愛録   作:kokohm

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※言うほど青娥は出てないです、タイトル詐欺かもしれません。そもそもジャンルが良くわからない感じに……。



霍青娥の愛

「……あら? あらら?」

 

 今思えば、

 

「貴方、面白いわね」

 

 あの時が全ての始まりだったのだろう。

 

「ふふっ、いいわ」

 

 彼女にさえ会わなければ、

 

「また、お会いしましょう。ふふふ……」

 

 俺は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ取って」

「ああ」

 

 彼女の料理の手伝いをしていると妙な充足感を覚える。外にいたころには感じたことのなかったものだ。

 

「ん、どう?」

「……いいんじゃないか? 少なくとも俺は好みだ」

「そ、じゃあこれで行きましょう」

 

 元居た場所、外の世界とやらから突然やってきた俺に対して、彼女は親身に面倒をみてくれた。博麗の巫女として当然だとか、責任がどうとかと言っていたが何にせよ受けいれてくれたということがありがたかった。

 

「んー、そろそろ買い足さないといけないかもねえ」

「じゃあ俺が買ってこよう、後でメモでも書いておいてくれると助かる」

「貴方一人で人里まで行ける? 妖怪に襲われたらひとたまりもないわよ」

「まあ大丈夫だろ」

「だといいけど……」

 

 いつかは自分の稼ぎで生活したい、そう思うものの中々この居候生活から抜け出す気になれない。今の生活が温か過ぎるからだろう、このぬくもりを手放す気にはなれなかった。

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

「お帰りなさい、大丈夫だった?」

「それはどっちを指しているんだ?」

「当然食材よ、……なんてね」

 

 彼女が俺のことをどう思っているのか、俺がここにいることをどう思っているのか、それは全く分からない。いや、こうかもしれないという思いはあるのだが、それが俺の希望的感情でないとは言い切れなかった。

 

「……ああ、そう言えば変な女性に会ったよ」

「……女性ねえ。どんな奴だったの?」

「笑っているんだけど笑ってない女性」

「はあ? 何それ」

「そう感じたんだよ、何となく」

「ふーん……」

 

 一度面と向かって聞いてみればいい、そう思いはしても実行に移せなかったのは怖かったからだろうな。全ては俺の勝手な妄想だったのだと、その可能性が俺を躊躇わせ続けた。

 

「まあいいわ、それよりも手伝って頂戴」

「宴会か、よくもまあ何度も騒げるもんだ」

「そのうち貴方も染まるわよ、勘だけどね」

「君の勘は当たるからなあ……」

 

 ……ああ、聞いておけばよかった。一度でいいから勇気を振り絞ってみればよかったんだ。そうすれば…………そうすれば? 変わったというのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結果は、貴方も知っているはずよ」

「……そう、だな……」

 

 今俺がここにいて、今目の前にいるのは……。それが結果で、これが答えだ。

 

「……なあ、何処からだ?」

「そうねえ……。貴方は何処からだと思う?」

「…………」

 

 何処か、か。それは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初に首を傾げたのは、おそらくあの時だったはずだ。

 

「……ねえ」

「ん?」

「貴方、人里で誰かに会った?」

「誰か……? 八百屋の店主とかとは話したが……、それが?」

「……ううん、別にいいわ」

 

 普段俺の細かい行動など気にしてない彼女が突然そのようなことを訊いてきた。その不自然さにもう少し踏み込んでいれば、と思うのは些か遅すぎたようだ。

 

「ただいま」

「…………」

「……? いないのか……? ……っと」

「……何だ、帰っていたのね」

「そっちこそ居たのか、てっきり出かけているのかと思ったぞ」

「ふん、勝手に勘違いしないでよね。…………じゃ、私は用があるから」

「ん、ああ。…………何だったんだ?」

 

 少しずつ、ほんの少しずつ。何というほどではないのだが、何か致命的なものがずれていっているように感じる事があった。互いに感情のある人間で、結局は他人同士だ。そういう事もあるだろうと放っておいた……違うな、放っておかざるをえなかった。それが間違いだと知っていれば、俺はここで追及しただろうか。

 

 

 そんなことが続き、俺たちの仲は確実に悪くなっていった。あるいは元から仲などよくなくて、俺がようやく現実を見始めただけなのかもしれない。どっちにしても、あの日が来た時点で終わりだったのだ。

 

「誰がそんなことを頼んだの! 勝手なことをしないで!」

「!? 何を言っているんだ、これは君が昨日」

「いいから、勝手なことをしないでって言っているの!!」

「落ち着け、急にどうしたんだ」

「落ち着け? 落ち着けですって!?」

「いいから、一体何に怒っているんだ? 落ち着いて最初から」

「私は、貴方に、怒っているのよ!!」

 

 突然のことだった、彼女が怒りを露にしたのは。……いや、違うか。俺が気付けるほどの怒りを見せたのは、といったほうが正しいのだろう。その彼女の怒りに俺はうろたえることしかできず、それ故に彼女はさらに怒りを募らせたのかもしれない。

 

「待て、だから」

「最初から? ええいいわよ、最初から!! 貴方も最初からそうだったんでしょう?! 最初から、最初から私じゃなくて、私じゃ!!」

「頼むから、俺に分かるように言ってくれ。何だ? 俺が何かしたのか?」

「ええそうよ! 貴方が! 貴方が私を、私を!!」

 

 そう叫ぶ彼女の顔は怒っているようで、泣いているようで、そして絶望しているようにも見えた。そんな彼女の姿に俺は何か声をかけなければと思ったのに、何も言葉が出てこなくて。それでなんだろうな、彼女がその言葉を口にしたのは。

 

「……出て行って」

「……!」

「早くここから出て行きなさい、何処へだって行けばいいのよ!!」

「……ああ、分かった」

 

 それ以上見ていられなかった、そんな顔でいさせたくなかった。だからそれに従うことにした。

 

「……さよなら、…………」

 

 最後に呟いた言葉に返事がなかったのは、当然のことだったんだろう。

 

 

 

 

「……」

 

 月明かりの元木々の間を歩いていると、自分はこんな奴だったのかと不快な気分になっていった。どれだけ怒られていようと、どれだけ拒絶されようと、彼女を泣かせたまま出てきてよかったのかと自分で自分がなさけなくなってくる。

 

 いや、今から帰って話を聞いてみよう。少しは彼女も話してくれるようになったかもしれない。そう思って足を止め、振り向いた。

 

 

 

「ふふっ、ようやく見つけたわ」

「……アンタは……」

 

 その時まで全く忘れていた、顔を見てようやく思い出した。そこにはあの時に会った女ともう一人知らない少女がいて、女は何故か腕をまっすぐと伸ばしている少女の頭を撫でながら、俺に声をかけてきた。

 

「ごきげんよう、霊夢とは喧嘩でもしたのかしら?」

「……! お前が、もしやお前が何かしたのか!?」

 

 理由など分からない、おそらく直感の類だと思う。俺は目の前にいる女が彼女に何かしたのだろうと、そう思った。この、見た目とは違う何かを秘めていると感じた女に、そのことを口にしたところ、女はとても愉快そうに笑った。

 

「ふふふふ、流石。何かあると直感したのは間違いなかったということね」

「答えろ! お前は一体何を」

「答え合わせは後で、ね? 芳香、やりなさい」

 

 その瞬間、少女は俺に迫ってきた。何だと俺が構えるよりも早く、彼女は俺の腕に噛み付いた。

 

「ぐっ!?」

 

 次の瞬間、俺の左腕に激痛が走り、あるべきものがなくなった感覚とその味わったことのない痛みに、俺の意識は闇へと消えていった……

 

 

 

 

 ――そして俺は、笑う女に言った。

 

「……全部、アンタの所為だったんだろう?」

「ええ、そうよ」

 

 答え合わせとやらの結果、分かったのは女が俺を手に入れるためにああだこうだと裏で色々とやっていたらしい。どうして、どうやって、聞きたいことはあったが女はまともに答えようとしなかった。分かったことといえば、女の名前が霍青娥、少女の名前が宮古芳香。それぞれが仙人でキョンシーだということぐらいだ。

 

 今俺は青娥の屋敷とやらにいるらしい。大抵のものはあるようだが、唯一外に出る手段だけはないようだ。もっとも青娥か芳香が常に傍にいる以上何が出来るわけでもないようだが。この状況に思うところはあったはずなのだが最近どうにも頭が回らない。案外薬でも盛られているのかもしれない、そう思うほどに頭に霧がかかっている気がする。もしくは俺も芳香のように腐っていっているのかもしれない。何せ芳香に腕を噛まれ、食いちぎられているのだ。腕そのものは青娥が何か死体の腕を取り付けたようなのだが、ここから身体が腐っていっているような錯覚に陥りそうにならないこともない。

 

 薬か、芳香の歯か、つながれた腕か。何にしても、俺の思考が常にぼんやりとしているのには変わりない。本を読もうとして少しめくり、閉じて、疲れたようにぐったりとするのを繰り返しているような、繰り返していないような気もする。まるで俺の思考や心が削られていっているような気もする、最終的に俺は俺以外の何かになるのかもしれない。それが青娥の目的なのかどうなのか、俺が青娥に敵意を持てなくなっていることを踏まえれば分かるような気もする。

 

「……」

 

 唇は動いている気がするが言葉が出てこない。体は覚えているのに、俺の心がその名前を思い出せない。とても大事な人だったのに、どうしても彼女の名前が出てこない。いつかその思い出も忘れてしまうのか、あるいは青娥が彼女に取って代わるのか。今の俺には何も分からない、分かろうとする事が出来ない。

 

 …………ああ、せめて、せめてもう一度。彼女に会って、話をしたい。青娥への感情が代わっていっているのを自覚しながら、俺はぼんやりとそう思った。

 




 はい、何故か青娥回です。えーっと、書いた理由は何となく、です? ぶっちゃけこういうシチュを思い浮かんだ後青娥を当てはめたので色々変かも知れないというか、そもそも青娥の出番が少ないというか。何時ぞやの文の回を思い出しますね、ついでに華扇の話も。何でこう仙人達は監禁したがるんだ、まあ私の所為だけども。

 んで、ここからが本題。実はこの話の後日談と言うか、紅白巫女さん側の話を思い浮かんでいます。と言うかそっちを思い浮かんだからこっちも書いたと言ってもいいかもしれない。ともかく、その話が上手く文章化出来そうであれば書こうかなあとか思っているのですが、そうなると彼女の話を書くのが二度目、いや、三度目? になるんですよね。一部キャラの二週目とか、これまで書いた奴の別視点とか、リク含め書いてないキャラが多いのに書いてもいいのかとか思うところもあるのですが、どうでしょうね? まあ上手くいけばとりあえず書きます、否定意見が多ければ考え直しますが。ではまた。
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