東方病愛録   作:kokohm

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少名針妙丸の愛

 

 ――視線を感じる。

 

 そう、彼が思ったのは、そろそろ床に就こうか、という頃合いだった。具体的には九時か、十時かというくらいだっただろうか。外の世界の基準では早いが、幻想郷の人里の基準ではそうでもない、という時間である。じい、と誰かから長く見られているような気配があった。

 

 はて、と彼は軽く周囲を見る。幻想入りしてしばし、仕方なしとばかりに見慣れてきた、さして広くもない木造の一室だ。箪笥の隙間などはあるが、当然ながらそこに人が入るはずもない。では窓か、と今度はそちらに注意を向ける。ガラスは嵌まっておらず、単に格子が付いただけの簡素なものである。

 

 しかし、これまた特に気配はない。腕が通るか、という幅の格子から左右の外を見てみるが、相応に暗いというのもあり、人影らしいものは見受けられない。物音、というのもなかったから、逃げたということもないはずだ。にもかかわらず、不思議と、薄いがまだ見られているような感じがある。

 

 しかし、そうでありつつも、気のせいだろうという結論を彼は出した。証拠が見受けられない以上、それが一番妥当だからだ。見つけられなかっただけかもしれないが、それ以上探しようがないのはしょうがあるまい。神経質なのだろう、という反論を抑える理屈が見つからなかったのである。

 

 加えて、他にも理由があった。これまでにも何度か、同じようなことがあったのである。

 

 どれくらい前からは不明だが、数日か、あるいは十数日に一度、同じように視線を感じたような気がすることがあったのだ。どれも一瞬で、あれ、と思った程度のものだ。それこそ、気のせい、で十分に済む範疇であったので、これまではそれほど気に留めてはいなかった。周囲を見渡しても感じる、というほど長いのは今回が初めてだが、そういう体験を考えると、これもまた神経質なだけだろう、と思うのが自然なことであった。

 

 故に――首を傾げつつも――彼はいつも通りに、布団に身を預けることにした。そのころにはもう、視線は感じられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――物音がした。

 

 そう、彼が思ったのは、それから二日後の、また夜のことである。土間、そして玄関のある方から、ゴトリと音がしたような気がした。その瞬間に思ったのは、泥棒が来たのではないか、という危惧である。少なくとも、友人が夜遅くに尋ねてきた、とは思わなかった。

 

 警戒心を胸に、彼は近くにあった棒を手に取った。薪を割る際に出来た一本で、割れ方がちょうどよかったため孫の手代わりに置いておいたものだ。

 

 じりじり、と少しずつ足を動かしながら、ゆっくりと部屋の戸に向かう。正直、暴力沙汰には自信がない。むしろ気のせいであってほしい、と思いながら、彼はそろそろと部屋の戸に手をかけ――思い切り開く。

 

 誰もいない、と土間を見渡し、彼はすぐにそう理解した。玄関は締まっており、鍵もしっかりとかかっている。誰かが隠れている気配もないし、そもそも人が身を隠せるような隙間はない。泥棒はいない、と見てまず間違いないだろう。

 

 気のせいか、と彼は安堵の息を吐いた。直後に思い浮かべたのは、また、の二文字だ。二日前のことを思い出したからである。それ以前もそうだったが、特に強かったのは二日前の長い視線のことだ。勘じみたそれに、少し気にはなったものの、どちらも既に結論が出た事象である。やはり、疲れから神経質になっているのだろう。そう判断し、二日前と同じように眠りにつくことにした。

 

 

 

 

 

 

「――話が変わったのは、それからさらに三日後の、昨夜のことでした」

 

 そう、彼は真剣な面持ちで言った。今度は昼、人里から離れて佇む、博麗神社のお茶の間でのことである。これに、博麗霊夢は興味無げに頬杖をついた体勢で、ふうんと軽い調子の声を漏らす。普段は凛とした、時に聞きほれるような声を出す彼女だが、次に放ったのはなんとも気の抜けた声だった。

 

「今のところ、気のせいか、あるいは自意識過剰って感じだけどー……」

「とはいえ、それならこいつもこんなところには来ないだろ。もうちょっと真面目に聞いてやろうぜ」

 

 どうでも良さそうな霊夢を宥めたのは、苦笑を混じった、高いが切れの良い声だった。その主は、たまたま神社に遊びに来ていた霧雨魔理沙だ。相方とも言える霊夢がやる気がない分、相対的に真面目さが引き出されているようだった。不安もあるが、少なくとも一人は話を聞いてくれる気がある。そのことにホッとしつつ、彼はこう続けた。

 

「昨夜、僕はまた視線を感じました。例によって、ちょうど寝る前のことです。それまでのこともありましたから、また気のせいだろう、と僕はその違和感を無視することにしました」

「で、無視できたのか?」

「いえ、気にしないように努めはしたのですが、やはり、どうにも背をじっと見られているような感じがありまして。特に、窓から覗かれているような気がしたのもあって、これは本当に覗かれているのではないか、と考えました」

「――まあ、自然な流れだね」

 

 突如として、声が割り込まれた。幼さと凛とした感じが混ざる、不思議な声音である。

 

 どきり、とその第四の声に対して、彼は思わず肩を震わせた。驚きと、そして期待を覚えたからであった。特に後者を胸に抱きつつ、しかし努めて平静そうな態度で、彼はゆっくりと振り向く。

 

 ――いない。

 

 しかし、振り向いた先に、人の姿は存在していなかった。そのことに対して、彼の中に驚きはなかった。代わりに思ったのは、残念だ、という落胆の想いだ。そしてさらに思ったのは、そんなことを考えた自分に対する嫌悪感だった。浅ましい、と自身を叱責しながら、彼はついと視線を下げる。

 

「お久しぶりです。いらしていたんですね、針妙丸さん」

「そりゃ、私はここの居候みたいなもんだし」

 

 そう返したのは、二十、あるいは三十センチほどの背丈をした少女であった。少名針妙丸、というのが彼女の名前である。この博麗神社における、居候のような立場をした妖怪少女であった。

 

「それで、窓を覗いてみた?」

「ええ、まあ」

 

 尋ねながら、よいしょ、と針妙丸はちゃぶ台に乗る。その際、足掛かりとして男の膝が使われた。割と慣れていることなので、くすぐったい、以上の感想が浮かぶことはなかった。いや、あえてそれ以外の感想が浮かばないように、自分の心を抑えたという方が正しいだろう。

 

 実のところ――彼は、この小人の少女に好意を抱いている。あるいは、抱いて『いた』のかもしれない。過去形とも、現在形とも分からぬのは、彼女との出会いにあった。彼が彼女と会った時、その背丈はもっと大きかったのである。容姿と矛盾ないくらいの、霊夢や魔理沙と大差ないくらいの身長を、その時の彼女は誇っていたのだ。

 

 種族的に言えば、その時の姿はイレギュラーで、今の小さな体躯こそが彼女の自然体であるらしい。ただ、そのイレギュラーな方に、その時の彼は一目惚れにも近い感情を抱いた。そして――その後に小さくなった彼女には、そういう感情をぶつけられなくなった。

 

 子供に対して、大人が欲情してはいけない、というような理屈であった。普段は可能な限り紳士然としているが、彼もまた立派な成人男性である。性欲はあるし、その手の感情も持っている。当然、それはあくまで等身大の女性に対するものである。人形やフィギュアの類に対してぶつけるものではない。少なくとも『直接的』にはそうであるだろう。故に、この小人の少女に対しても、そういう風になった。背丈の変わる相手に対して、その度にそういう浅ましい欲望を抱くのは、と思ったし、そういうことを考えずにはいられないことに自己嫌悪を覚えた、というのもある。

 

 しかし、そんな彼の胸の内に反して、この少名針妙丸という少女はスキンシップが多い。台にする程度はまだともかく、時には膝の上や股の間に腰を据えられることもあるのだ。何を気に入られたか知らないが、彼としては複雑な気分であった。まるで幼女か何かに性的興奮を覚えているようで、彼女に対する嫌悪はないのに、自分に対してはそれを感じてしまう。どうしたものか、という話であった。

 

 それはともかく、と彼は自分の中に渦巻くものを無視しながら、改めて話を始める。

 

「それで、可能な限り気にしていないふりをしつつ、ここだ、というタイミングで一気に振り返りました。そうすると――格子の間に目が見えたのです」

「あら、本当にいたの?」

 

 意外そうに、霊夢が言葉を漏らした。あまりに予想外だったのか、話を聞く気が湧いたようだった。そんな彼女に対し、彼は無言で頷いた。

 

「その目はすぐに、暗闇の中に消えました。目を閉じたか何かしたのではないか、と思います。ですので、すぐさまに窓に飛びつき、かじりつくように外を探りました」

「見つかったのか?」

「――いえ、見る限り、そこには誰もいませんでした」

 

 彼は首を横に振った。あれは本当に、奇怪な事象だった。間違いなく見たというのに、その対象がどこにもいなかったのだ。困惑もしたし、当然恐怖も覚えた。

 

「とはいえ流石に、気のせいで片付く領分は超えていました。気づかない場所に、誰かしらがいる。あるいは」

「……妖怪の類、と」

「はい」

 

 そう考えた、と針妙丸の言に対し、彼は同意する。それを聞いて、なるほど、と魔理沙が頷いた。

 

「それで、霊夢に会いに来たってわけか。確かに妖怪退治ならここに来るのが一番早い。もっとも、私の方を選ばなかったのは減点対象だが」

「それはどうか、御勘弁を。来るのが容易いここと違い、魔理沙さんの家は真人間には道中がつらいのです」

「それに、魔理沙は良く家を空けているしね。まあ、とりあえず事情は分かったわ。大事ってわけでもないけど、アンタとの仲ってことで、今から行って確かめましょうか」

「待ってください」

 

 と、立ち上がりかけた霊夢を彼が止めた。その反応に、霊夢や魔理沙は怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「どうしたのよ」

「話にはまだ、続きがあるのです。ここまでで前座、と言ってもいいかもしれません」

 

 そう答えると、霊夢は片眉を上げた後、上げかけていた腰を下ろした。そのまま、視線で続きを促した彼女に、彼はまた口を開く。

 

「誰もいない、と見た後のことです。妖怪の類か、あるいは身を隠すのが得意な人間の仕業か。どちらにせよ、何かがいると考えるのであれば、流石に身を休めるわけにもいきません。朝になるまで寝ずの番をしよう、と考えました」

 

 徹夜はあまり得意ではないが、身の危険と比べれば致しかたない。最低限まで明かりを落とし、手近の棒を持って、部屋の真ん中に座り込んだ。入ってくるにせよ、逃げていくにせよ、どちらにでも対応できるようにしよう、という姿勢だった。

 

「そうして待ち始めて、一時間は、あるいはもう少し位は経ったでしょうか。カタリ、と微かに物音が聞こえました。何処から、というのは分かりませんでしたが、これは、と警戒を強めました」

 

 その直後、のことであった。

 

「また、同じような音が聞こえました。今度も音源が何処かは分かりません。一体どこからかなのだろう、と一旦見渡すのは止めて、耳を澄ませてみることにしました。目を閉じ、ただ耳の神経だけを研ぎ澄ませたのです」

 

 そのようにして、はたしてどのくらいのことだっただろうか。ふと、また音が聞こえたのである。

 

「何かが聞こえた、と思いました。先の二つとは違う、別の音です。そのまま集中していると、またそれが聞こえました。単発のものではなく、今度は連続したもののようで、長く、とめどなく聞こえ続けたのです。そうしてずっと聞いていると、それが物音ではなく、人の声であると気づきました」

「声?」

「はい、何事かをぶつぶつと呟いているのだ、と分かったのです。最初は、何を言っているのか分からなかったのですが、段々と声量が上がっていき、ようやく音の一つがはっきりしました」

 

『――ぃて』

 

 と、いう音で締められている、ということに気づいた。全体としてはまだ、はっきりとはしておらず、ただ、最後の音だけが分かったのだ。

 

「それで、一体何を言っているのかというのが気になりました。この時は、誰がとか、何処から、とかよりも、何を言っているのか、ということに意識が向いていたと思います。そうして、すっと耳を澄ませていると、こう言っているのではないか、と思われました」

 

『――見て』

 

 そう、聞こえた。そのことを説明すると、魔理沙が怪訝な表情を浮かべた。

 

「見て? 見られているのはお前の方なのに、そりゃ変だろ」

「はい。ですので、聞き間違いではないか、と思わず身を乗り出し、より詳しく聞こうとしました。そのころには随分と声量も上がっていましたし、これで分かるだろうと、反射的に。目を閉じたままの体勢でしたが、そうすると、確かにこう聞こえたのです――」

 

 

 

 

『見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て見て――――――』

 

 

 

 

 

「――と。聞き覚えがあるような、ないような、不思議で不気味な声音でした」

 

 そう、聞いたうちの半分もない言葉を再現すると、霊夢は鼻白み、魔理沙は嫌そうな顔をしていた。胆力という意味では妖怪や怪奇現象を恐れないだろう彼女らも、これには気色が悪い、というような感想を抱いたようであった。勿論、これは当時の彼も同じだった。むしろ、今ですらまだ鳥肌が立っているような状況である。男のくせに、と言われようと、無理なものは無理である。目の前の二人と違い、彼はそれほど、特筆するような修羅場をくぐっているわけではないのだから。

 

 ふと、針妙丸の姿が目に入った。これまではどちらかと言うと、人間二人を視界に収めて話だったので、それほど視線を向けてはいなかったのだが、今見ると、彼女は妙に平然とした様子をしていた。そう言えば、ここまでの説明の中でも、彼女は一言か二言くらいしか発していない。やはり、生粋の妖怪となると嫌悪や恐怖の基準も違うのだろうか。そう思いつつ、彼は重い口を開く。

 

「こうなると、流石に目も閉じていられません。何かを考えるよりも先に、恐怖から目を開けました。すると――そこにも目があったのです」

 

 二つの、小さな目が、宙に浮いていた。遠くから、こちらをじっと見つめていたのである。

 

「奇妙であったのは、そうと――目が合った、と自覚した瞬間、息遣いのようなものを感じたことです。目は遠くにあるのに、息遣いはいやに至近でした。それこそ、目の前にあるのではないか、というくらいでした。そしてまた、今度は大きな声で、聞こえたのです」

 

 

 

『――見て!!』

 

 

 

 びくん、と魔理沙たちが身体を浮かした。思わず力の入った彼の大声に、驚いたようであった。これも、また針妙丸の反応は、不自然なほどになかった。それを視界に収めつつ、彼は大きくため息をついた。

 

「それを最後に、情けないですが気を失いました。気づいたのは朝も過ぎた頃で、周囲にはそれらしい気配もありませんでした。そうして、おっとり刀でこちらに参ったのです」

 

 以上である――と彼が語り終えると、返ってきたのは無言であった。しばしして、ようやくと魔理沙が口を開いた。

 

「なるほど、それは立派な怪奇事件だ。私らが動くだけの理由があるな、霊夢」

「……まあ、ね」

 

 やや間を開けて、霊夢が頷いた。芳しくなさそうな反応に、彼は肩を縮める。

 

「気が乗らない、でしょうか。結果はどうあれ、謝礼はご用意させてもらうつもりなのですが」

「別にそういうのじゃないけれど……」

 

 ねえ、と考え込むようなそぶりを挟み、霊夢が問うた。

 

「アンタ、当分暇?」

「はい? ええ、まあ少なくともあくせく働かないといけない、というほどではありませんが」

「だったら、落ち着くまでここに住みなさい。アンタとの仲だし、それが一番手っ取り早いわ」

 

 霊夢の提案に、彼は眉を上げた。魔理沙も、そして針妙丸もまた、同じような反応だった。そうなる程度には、彼女の提案は驚きであった。

 

「いや……よろしいので?」

「家事手伝いか家賃をもらうけど、ね。どっちにしろ、アンタならどうにでもなるでしょ」

「まあ、どうせなら両方負担しても構いませんが……」

「お前がそういうことを言うのは珍しいな?」

「これが一番早いしね……そいつが家についているのか、こいつについているのか、見極められるから。どちらのパターンにしても、まさかこの博麗神社に乗り込んではしないでしょうし」

 

 ははあ、と魔理沙と彼が頷く。是非はともかく、確かに理屈としては正しく思えたからだ。まだ――いろいろな意味で――遠慮したいところがないでもないが、こうと言われると、流石に断れないものがある。怖い、というのも当然あるので、ここは乗るべきなのだろう、と彼は冷静に判断することにした。

 

「とりあえず魔理沙、アンタは今からコイツと一緒に荷物を持ってくるのを手伝いなさい。ついでにざっと現場を見ておいて」

「ああ、分かった。ほら、行くぞ」

「お世話になります」

 

 魔理沙に連れられ、彼は博麗神社の茶の間から出ていく。これで解決に向かうだろうか、と安堵しながら外に出ようとしたところで、おや、と彼は首を傾げた。それは『見えた』からである。

 

 

 

 

 ――満面の笑みを浮かべた、針妙丸の姿を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それにしても、良かったの?」

「言った通りよ。これが一番、手っ取り早い」

「ふうん、そう。まあ、居候の身としては、家主の意向に従うだけだけど」

「よく言うわ。アンタからしてみれば、これがほぼ最上の結果でしょうに」

 

 

 

 

 

「そうよね? 少名針妙丸――この事件の犯人さん」

 

 

 

 

 

「……へえ、気づいていたんだ」

「巫女の勘は伊達じゃないわ。ここ最近、アンタはちょいちょい夜に抜けだしていたし。それにアンタの想いと、ついでにアイツの心中を加えれば、それなりに見当はつくわ」

「なるほどね。だったらさ、なんで見逃してくれるわけ? 加えて、同じ屋根の下にいさせてくれるなんて。仮にも妖怪退治を生業とする、博麗の巫女がさ」

「アンタを退治したところで、そう根本的な解決にはならないと思ったからよ。それこそ、アイツを連れて本気で逃げられでもしたら、私でも面倒くさい。だったらいっそ、変な形での求愛行動ってことにしたほうがちょっとはましよ」

「求愛行動って……虫や動物じゃないんだからさ」

「普通のそれじゃないって意味じゃ一緒でしょ。なんでああいうことをしたのよ、真っ当じゃない」

「やりたくなったから、かなあ? そうすれば行ける、と思ったんだよね、うん。じいっと、ずうっと見ていれば、彼も振り向いてくれるって」

「それもよ」

「え?」

「見てだのなんだの言いながら、自分が見るとか、どういうつもり? 変でしょ」

「ああ、それ。うん、実は言っていないんだよね。いや、もしかしたら言っていたのかもしれないけれど」

「はあ?」

「呟き続けていた、ってのは確かだけど、私としては別に『見て』と言ったつもりはなかったってこと。まあ、彼の聞き間違いだね。とはいえ、そういう思いがあるのも事実だから、無意識にそう言っていたかもしれないけれど」

「だったら、実際には何て言っていたのよ」

「それは――――」

 

 

『――居て』

 

 

 

「居て?」

「一緒に居て、ってね。彼、あんまり私と一緒に居てくれないし。そりゃ、小さい私には困惑もあるだろうけど、出来ればそういうのを考えずに、ただ隣に居てほしいんだけどね」

「さっさと大きくなればいいじゃない。変なことに小槌の魔力を使っていないで」

「それじゃあ駄目じゃん。そうすると、また小さくなっちゃったときに、彼は私への見方を変えちゃうし、そういう自分に嫌悪感を抱いちゃう。大きい小さい関係なく、そういうのを抜きにした関係に、私はなりたいんだよ」

「ふうん……まあ、いいけどさ」

「そういうわけだから、これからは頑張るよ。見て、居て、そして聞いて――色々としてくれるように、さ。霊夢も応援してね?」

「まあ、そうね――」

 

 

 

 

 

 

「身の丈に合った恋愛をしているうちは、応援してあげるわよ」

「……それはまた、難しいね」

 




 はい、針妙丸回です。久々にちょっと書いてみましたが、なんとも半端な感じがします。ちっちゃいから侵入しやすいとか、逃げやすいとか、そういうのを考えていたんですがね……

 今回の内容はまあ、あんまり解説もなにもないかなあ、と。見られている、という結構ヤンデレじゃべたな奴を書こうとしたら、ちょっと微妙な出来になったかな、と。ホラーにしてもそれほどじゃないし、予定以上に長くなったし、そもそも針妙丸って名前と名字のどっちで呼んでもしっくりこないし、難しいです。いやまあ、一番あれなのは随分ほっといて、しかも次回も長くなるだろう私なんですが。

 さて、次回ですが、一応お断りを。スパンは棚に上げといて、次回以降の話であるが、あまり新しいキャラは出ないと思います。割と古い娘か、二度目の娘を書くかな、と。どういうことかというと、これを明言したことがあったか不明なのですが、実は私、東方の原作ってやったことがありません。試しにやろうとした体験版が起動しなかった、というのもありますが、そもそもシューティングゲームのようにリアルタイムの行動が要求されるゲームは苦手なスペックを私自身がしているので。ながらでやれるゲームじゃないと反射神経とか間に合わないのです。そういうわけですので、東方の知識やキャラ把握に関しては、その他の媒体を主に利用していました。プレイ動画の類も見ていたりするので、一応空で書いているわけではない、つもりです。そういうわけなのですが、ここ最近は特にその手の物から離れていたのでキャラ把握が進んでいません。知らぬうちに新作が出たり出たりしていましたしね。そのため、皆さんが思う以上に、新しいキャラは出てこないと思います。いらっしゃるか不明ですが、まだこの作品を読まれて期待されている方がいらしたら、本当に申し訳ありません。そんなことを言いながら恐縮ですが、よろしければ次回も気長にお待ちください。ではまた。

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